ギレイの旅
海に行きたい
この日も、ラーシャの用意してくれた昼食は赤々とした色合いのスープと、スパイスの効いた肉、色合いの綺麗なサラダなど、グラハラアの特徴的な料理だった。
赤い色のスープを見て、獅子が口の端を引きつらせている。
儀礼はそれを見てくすくすと笑った。
「文化の違いってやつだよね。」
なんでもないことのように言って、儀礼はスープに口をつける。
儀礼が食べ始めれば、戸惑いながらも獅子もその赤いスープにスプーンを差し入れた。
「待て、黒獅子。ほら、クリームがあるから。ラーシャも、外の国の奴にこの料理は辛すぎるって、この間教えただろう。」
シュリが、前回のようにクリームを弟達の皿に入れ、ついでに儀礼と獅子の皿へも注いでくれた。
「しょうがないよ、シュリ。ラーシャはまだ学生でしょう。シュリやカナルみたいに、外の世界に出たことがないんだから。」
当たり前のこととして、儀礼はラーシャをフォローする。
普通、他国へなど中々行かないだろう。
生まれた時からラーシャはこの国で生まれ育ったのだ。
それに、辛味の効いたこの肉は儀礼でもおいしいと思えた。
「まぁ、確かに。俺達も冒険者として外国の連中と知り合うようになってからこの国の料理が特別だって教えてもらったんだけどな。」
うんうん、とそうだった、とシュリが納得したように頷く。
「俺からすると、他の国の料理は味が薄くていまいちだけどな。」
そう言いながら、カナルはおかわりに走る。
儀礼の皿の中身は半分も減ってはいない。
「色々違うよね。でも、シュリたちはフェードの言葉は上手に話せるんだね。」
不思議そうに儀礼は聞く。
今日、シュリたちが使っているのは、獅子にも理解できるフェードの言葉だった。
「これは、親父が冒険者だったからな。一応、文字の公用語になってるフェードの言葉が世界で一番通用するからな。それに、俺達もネットは使うからどっちにしろフェードの言葉は覚えておいて損はない。」
「そっか。そうだよね。」
納得したように頷き、儀礼はスプーンを動かす。
獅子がおかわりをする所だった。
国が違っても、食べる量はそう、変わらないらしい。
「でも、皆で雪遊びだなんて。」
濡れた服を外に干してくれたラーシャとメルがくすくすと笑う。
「アーデスまで一緒になってやってきたのね。」
おかしそうにメルが笑う。
それに、微妙に引きつった顔でアーデスは苦い表情を浮かべていた。
「今度はラーシャも一緒にやろう。」
儀礼は楽しそうにラーシャを誘う。
「楽しそうだけど、私、寒い所は苦手なのよね。極北は寒いから。夏の海には毎年行ってるんだけど。」
バクラムの一家は夏には一度、全員で海に遊びに行くらしい。
その時はアーデスやワルツ達も一緒らしい。
「海か、いいね。」
昼食の合間に出た話題に、儀礼は羨ましそうに笑う。
儀礼の育ったシエンからは、海は見ることも出来なかった。
本で読み、図鑑で知り、写真を見て、そっと憧れを持った青く綺麗な風景を思い出す。
「ギレイ達も行くか? どうせ、ヤンが移転魔法で送ってくれるから人数増えても変わんないし。」
シュリが笑いながら言う。
「そうなんだ。友達も大丈夫? 僕らだけじゃもったいない。夏だよね。」
「大丈夫、大丈夫。ははっ、確かに半年先だな。学校の休みに合わせるからな。」
シュリは笑う。
「行くんですか? 海。」
アーデスが儀礼を見定めるように見る。危険物の入った白衣を儀礼は今は着ていない。
暑さに耐えかねて脱いでいた。
こういう普通の格好ならば不審者にはならないだろう、と儀礼は考える。
海岸は不審者に対する警備が厳しいと聞いたことがあった。
密漁とか盗撮とかいろいろあるらしい。
「さらわれないで下さいね。」
にっこりと、爽やかな笑みを浮かべてアーデスは儀礼に言う。
波にさらわれ、行方不明になると言う事故は毎年必ずある。
「心配しなくていいよ。僕は川で泳ぐのには慣れてるし。離岸流には近づかないようにするよ。」
それでも、わかってない、と言う顔でアーデスが儀礼を見る。
海に行ったことのない儀礼。
本で読んだだけの知識ではやはり不安があるのかもしれない。
「そんなに心配なら浮き輪でも持って行こうか?」
不満げに眉を寄せながらも儀礼は提案する。
アーデスは、諦めたように力なく笑った。
「まぁ、護衛ですから、可能な限りは頑張りますが……。」
「あ、ごめん。アーデス達も遊びたいよね。いいよ、僕のことは気にしなくて。獅子が一緒だし。」
楽しそうに儀礼は笑う。
海を見たことがないのは獅子も同じだ。きっと驚くことだろう。
「いえ……。やはり、さらわれそうですねぇ。」
「僕は泳げるって。」
頬を膨らませて儀礼は反論する。
「シュリなら分かるよな。こいつを海岸に連れて行った時に考えられる状況。」
儀礼に対して、意味が通じないとばかりに頭を振ってアーデスはシュリに話しかける。
シュリはしばし、儀礼を見て、瞬きをいくつか。
「ギレイ、近寄ってくるやつは片っ端から殴り倒せ。」
拳を握ってシュリは言った。
やはり、儀礼にはその意味が理解できない。海とは、そこまで不審者が多いのだろうか。
「海岸は、波以外にも人をさらっていく者が多いんですよ。特に込み合う時期には、迷子も増えますし。日にちずらして、ノーグ家と別にしますか。」
たくさん子供のいるノーグ一家。
アーデス達が着いて見張ってるらしい。
確かに、儀礼がうろちょろしては邪魔になりそうだった。
赤い色のスープを見て、獅子が口の端を引きつらせている。
儀礼はそれを見てくすくすと笑った。
「文化の違いってやつだよね。」
なんでもないことのように言って、儀礼はスープに口をつける。
儀礼が食べ始めれば、戸惑いながらも獅子もその赤いスープにスプーンを差し入れた。
「待て、黒獅子。ほら、クリームがあるから。ラーシャも、外の国の奴にこの料理は辛すぎるって、この間教えただろう。」
シュリが、前回のようにクリームを弟達の皿に入れ、ついでに儀礼と獅子の皿へも注いでくれた。
「しょうがないよ、シュリ。ラーシャはまだ学生でしょう。シュリやカナルみたいに、外の世界に出たことがないんだから。」
当たり前のこととして、儀礼はラーシャをフォローする。
普通、他国へなど中々行かないだろう。
生まれた時からラーシャはこの国で生まれ育ったのだ。
それに、辛味の効いたこの肉は儀礼でもおいしいと思えた。
「まぁ、確かに。俺達も冒険者として外国の連中と知り合うようになってからこの国の料理が特別だって教えてもらったんだけどな。」
うんうん、とそうだった、とシュリが納得したように頷く。
「俺からすると、他の国の料理は味が薄くていまいちだけどな。」
そう言いながら、カナルはおかわりに走る。
儀礼の皿の中身は半分も減ってはいない。
「色々違うよね。でも、シュリたちはフェードの言葉は上手に話せるんだね。」
不思議そうに儀礼は聞く。
今日、シュリたちが使っているのは、獅子にも理解できるフェードの言葉だった。
「これは、親父が冒険者だったからな。一応、文字の公用語になってるフェードの言葉が世界で一番通用するからな。それに、俺達もネットは使うからどっちにしろフェードの言葉は覚えておいて損はない。」
「そっか。そうだよね。」
納得したように頷き、儀礼はスプーンを動かす。
獅子がおかわりをする所だった。
国が違っても、食べる量はそう、変わらないらしい。
「でも、皆で雪遊びだなんて。」
濡れた服を外に干してくれたラーシャとメルがくすくすと笑う。
「アーデスまで一緒になってやってきたのね。」
おかしそうにメルが笑う。
それに、微妙に引きつった顔でアーデスは苦い表情を浮かべていた。
「今度はラーシャも一緒にやろう。」
儀礼は楽しそうにラーシャを誘う。
「楽しそうだけど、私、寒い所は苦手なのよね。極北は寒いから。夏の海には毎年行ってるんだけど。」
バクラムの一家は夏には一度、全員で海に遊びに行くらしい。
その時はアーデスやワルツ達も一緒らしい。
「海か、いいね。」
昼食の合間に出た話題に、儀礼は羨ましそうに笑う。
儀礼の育ったシエンからは、海は見ることも出来なかった。
本で読み、図鑑で知り、写真を見て、そっと憧れを持った青く綺麗な風景を思い出す。
「ギレイ達も行くか? どうせ、ヤンが移転魔法で送ってくれるから人数増えても変わんないし。」
シュリが笑いながら言う。
「そうなんだ。友達も大丈夫? 僕らだけじゃもったいない。夏だよね。」
「大丈夫、大丈夫。ははっ、確かに半年先だな。学校の休みに合わせるからな。」
シュリは笑う。
「行くんですか? 海。」
アーデスが儀礼を見定めるように見る。危険物の入った白衣を儀礼は今は着ていない。
暑さに耐えかねて脱いでいた。
こういう普通の格好ならば不審者にはならないだろう、と儀礼は考える。
海岸は不審者に対する警備が厳しいと聞いたことがあった。
密漁とか盗撮とかいろいろあるらしい。
「さらわれないで下さいね。」
にっこりと、爽やかな笑みを浮かべてアーデスは儀礼に言う。
波にさらわれ、行方不明になると言う事故は毎年必ずある。
「心配しなくていいよ。僕は川で泳ぐのには慣れてるし。離岸流には近づかないようにするよ。」
それでも、わかってない、と言う顔でアーデスが儀礼を見る。
海に行ったことのない儀礼。
本で読んだだけの知識ではやはり不安があるのかもしれない。
「そんなに心配なら浮き輪でも持って行こうか?」
不満げに眉を寄せながらも儀礼は提案する。
アーデスは、諦めたように力なく笑った。
「まぁ、護衛ですから、可能な限りは頑張りますが……。」
「あ、ごめん。アーデス達も遊びたいよね。いいよ、僕のことは気にしなくて。獅子が一緒だし。」
楽しそうに儀礼は笑う。
海を見たことがないのは獅子も同じだ。きっと驚くことだろう。
「いえ……。やはり、さらわれそうですねぇ。」
「僕は泳げるって。」
頬を膨らませて儀礼は反論する。
「シュリなら分かるよな。こいつを海岸に連れて行った時に考えられる状況。」
儀礼に対して、意味が通じないとばかりに頭を振ってアーデスはシュリに話しかける。
シュリはしばし、儀礼を見て、瞬きをいくつか。
「ギレイ、近寄ってくるやつは片っ端から殴り倒せ。」
拳を握ってシュリは言った。
やはり、儀礼にはその意味が理解できない。海とは、そこまで不審者が多いのだろうか。
「海岸は、波以外にも人をさらっていく者が多いんですよ。特に込み合う時期には、迷子も増えますし。日にちずらして、ノーグ家と別にしますか。」
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