ギレイの旅
遊んだ後は
さんざん雪の中で遊びまわった儀礼達、服はびしょ濡れ、体は冷えきり、手足は凍えている。
おまけに体はくたくたでお腹がぐーぐーとなっている。
「昼飯の時間だな。」
カナルが言う。
人一倍量を食べるカナルだ、腹の空き具合も人の数倍なのかもしれない。
力なく雪の中にしゃがみ込んだ。
全員で一度、アーデスの家の中に入り、体を温めることにする。
「お前ら、うちで飯食ってけよ。」
シュリが言う。
「いいの? 急に押しかけたら迷惑じゃない?」
もっともらしく言っている儀礼だが、アーデスの家には遠慮なく押しかけて来たのだ。
「いいって。うちは、親父の知り合いの冒険者がよく来るんだ。急に押しかけてきたり、いつの間にか居たり、アーデス達もそうだけどな。家族の人数も多いし、あんまり気にならないんだよ。」
「だが、さすがに急に昼時に邪魔するのは申し訳ないだろ。」
シュリの誘いに遠慮したように獅子が言う。
「いや、ギレイや『黒獅子』なら逆に喜んで歓迎すると思うぜ、うちの家族は。飯のことなら心配することない。うちはいつも多めに作ってあるから。足りなければ近くの飯屋で買って食えばいいし。」
「そうか?」
説明するシュリに、獅子もそこまで言うなら、とシュリの家に行くことに合意する。
「ふふ、覚悟しておいた方がいいよ。」
楽しげに儀礼は笑う。
暗にその家に何かがあると言いたげに。
「何の覚悟だよ。」
儀礼の言葉に不満げに答えたのはカナルだ。
自分の家を悪く言われるのは我慢ならない。
「気を悪くしないでね。文化の違いとか、国質の違いとかだから。」
にひひ、と儀礼はまだ楽しげに笑っている。
「文化? 国質?」
獅子が首をひねる。
「獅子は多分、まだ行った事ない国だと思うよ。この極北もある意味極端だけどね。」
「ああ、そう言う意味か。確かに、ここから俺達の国に移転するのは覚悟しておいた方がいいな。」
納得したようにシュリが頷く。
何しろ、この極寒の雪国から、シュリたちの住むグラハラア、砂漠のような、暑く乾いた国への移動になるのだ。
「決まったなら行こう、行こう!」
シュリの腕を取り、獅子の服を引き、儀礼はさっそく出発を促す。
「こら、儀礼。お前が仕切るな。人の家に連れてってもらうんだろ!」
すかさず、獅子の叱責が飛ぶ。
儀礼は小さく首をすくめた。
そんな様子を、くすりと小さくアーデスが笑って見ていた。
ワルツもくすくすと声を漏らす。
「楽しそうだな、お前ら。あたしらを置いていくつもりかい?」
「もちろん、ワルツもアーデスも来いよ。って、言わなくても来るだろ、お前らは。」
苦笑するようにシュリが言う。
「シュリ、何人移転できるの?」
儀礼が聞く。
「今はまだ、俺含めて5人だな。あ、でもアーデス連れてくのは手間だから無理。」
面倒そうに言うシュリに儀礼は不思議そうに首を傾げる。
「こいつは、魔法耐性が高すぎるんだよ。抵抗力ありすぎるの。無理やり連れて行こうと引っ張ると、着地点が変な位置にずれちまうんだ。」
「実力不足だな。」
シュリの説明をアーデスは一笑する。
「アーデス大きいから。」
何か、違う意味で解釈したらしい儀礼が頷きながら、納得したような声を出す。
「違うよ。重さは関係ない。それで言ったら、カナルも運べないだろう。」
ははは、と可笑しそうに笑ってシュリが言う。
確かに、アーデスとカナルでは、カナルの方が鎧と武器を含めて重そうだ。
「じゃ、僕達、若年組みが一緒に行くから、ワルツとアーデスが一緒に移転してよ。アーデス一人じゃ来なさそうだし、ワルツお願いね。」
「連れて行くのは俺だが……?」
にこにことワルツに頼む儀礼に、アーデスは苦い笑いを向ける。
「カナル置いてった方がいい? 獅子と二人にするのはなんか心配だし。」
まだ、知り合ったばかりの二人を二人だけにするのは気が引ける。
何か、わだかまりでもできてしまったら後々に影響する。
出会いの当初には、一触即発の雰囲気にまでなっていたのだ。
「お前が残るという選択肢はないのか。」
呆れたようにアーデスは言う。
別に深い意味はない、ただ一つの選択肢を上げただけのつもりだった。
後はせいぜい、めちゃくちゃにされた庭のトラップの片付けを、手伝わせてから行かせようという些細なことのため。
「人に攻撃魔法放つような人と一緒に居ろと。」
予想以上に辛らつな言葉を儀礼が放った。
「他人にそれを勧めているのはお前だろう。」
周囲の四人には、ギレイとアーデス、二人の間に火花が散っている様に見えた。
「とりあえず、落ち着け。」
ワルツが二人の間に割って入る。
「ギレイは庭の片付けが先な。その間に、シュリ、カナル。グラハラアの説明を黒獅子にしてやれ。あと、お前らの弟妹のこともな。」
そうして、儀礼は冷たい雪の中を、自分で仕掛けたトラップの回収と、アーデスの仕掛けてあった罠の復旧に忙しそうに手を回すことになったのだった。
楽しく遊んだ後の片付けはとても大切だ。
立つ鳥跡を濁さず。
来たときよりも綺麗にして帰るのが行楽のマナーだ。
おまけに体はくたくたでお腹がぐーぐーとなっている。
「昼飯の時間だな。」
カナルが言う。
人一倍量を食べるカナルだ、腹の空き具合も人の数倍なのかもしれない。
力なく雪の中にしゃがみ込んだ。
全員で一度、アーデスの家の中に入り、体を温めることにする。
「お前ら、うちで飯食ってけよ。」
シュリが言う。
「いいの? 急に押しかけたら迷惑じゃない?」
もっともらしく言っている儀礼だが、アーデスの家には遠慮なく押しかけて来たのだ。
「いいって。うちは、親父の知り合いの冒険者がよく来るんだ。急に押しかけてきたり、いつの間にか居たり、アーデス達もそうだけどな。家族の人数も多いし、あんまり気にならないんだよ。」
「だが、さすがに急に昼時に邪魔するのは申し訳ないだろ。」
シュリの誘いに遠慮したように獅子が言う。
「いや、ギレイや『黒獅子』なら逆に喜んで歓迎すると思うぜ、うちの家族は。飯のことなら心配することない。うちはいつも多めに作ってあるから。足りなければ近くの飯屋で買って食えばいいし。」
「そうか?」
説明するシュリに、獅子もそこまで言うなら、とシュリの家に行くことに合意する。
「ふふ、覚悟しておいた方がいいよ。」
楽しげに儀礼は笑う。
暗にその家に何かがあると言いたげに。
「何の覚悟だよ。」
儀礼の言葉に不満げに答えたのはカナルだ。
自分の家を悪く言われるのは我慢ならない。
「気を悪くしないでね。文化の違いとか、国質の違いとかだから。」
にひひ、と儀礼はまだ楽しげに笑っている。
「文化? 国質?」
獅子が首をひねる。
「獅子は多分、まだ行った事ない国だと思うよ。この極北もある意味極端だけどね。」
「ああ、そう言う意味か。確かに、ここから俺達の国に移転するのは覚悟しておいた方がいいな。」
納得したようにシュリが頷く。
何しろ、この極寒の雪国から、シュリたちの住むグラハラア、砂漠のような、暑く乾いた国への移動になるのだ。
「決まったなら行こう、行こう!」
シュリの腕を取り、獅子の服を引き、儀礼はさっそく出発を促す。
「こら、儀礼。お前が仕切るな。人の家に連れてってもらうんだろ!」
すかさず、獅子の叱責が飛ぶ。
儀礼は小さく首をすくめた。
そんな様子を、くすりと小さくアーデスが笑って見ていた。
ワルツもくすくすと声を漏らす。
「楽しそうだな、お前ら。あたしらを置いていくつもりかい?」
「もちろん、ワルツもアーデスも来いよ。って、言わなくても来るだろ、お前らは。」
苦笑するようにシュリが言う。
「シュリ、何人移転できるの?」
儀礼が聞く。
「今はまだ、俺含めて5人だな。あ、でもアーデス連れてくのは手間だから無理。」
面倒そうに言うシュリに儀礼は不思議そうに首を傾げる。
「こいつは、魔法耐性が高すぎるんだよ。抵抗力ありすぎるの。無理やり連れて行こうと引っ張ると、着地点が変な位置にずれちまうんだ。」
「実力不足だな。」
シュリの説明をアーデスは一笑する。
「アーデス大きいから。」
何か、違う意味で解釈したらしい儀礼が頷きながら、納得したような声を出す。
「違うよ。重さは関係ない。それで言ったら、カナルも運べないだろう。」
ははは、と可笑しそうに笑ってシュリが言う。
確かに、アーデスとカナルでは、カナルの方が鎧と武器を含めて重そうだ。
「じゃ、僕達、若年組みが一緒に行くから、ワルツとアーデスが一緒に移転してよ。アーデス一人じゃ来なさそうだし、ワルツお願いね。」
「連れて行くのは俺だが……?」
にこにことワルツに頼む儀礼に、アーデスは苦い笑いを向ける。
「カナル置いてった方がいい? 獅子と二人にするのはなんか心配だし。」
まだ、知り合ったばかりの二人を二人だけにするのは気が引ける。
何か、わだかまりでもできてしまったら後々に影響する。
出会いの当初には、一触即発の雰囲気にまでなっていたのだ。
「お前が残るという選択肢はないのか。」
呆れたようにアーデスは言う。
別に深い意味はない、ただ一つの選択肢を上げただけのつもりだった。
後はせいぜい、めちゃくちゃにされた庭のトラップの片付けを、手伝わせてから行かせようという些細なことのため。
「人に攻撃魔法放つような人と一緒に居ろと。」
予想以上に辛らつな言葉を儀礼が放った。
「他人にそれを勧めているのはお前だろう。」
周囲の四人には、ギレイとアーデス、二人の間に火花が散っている様に見えた。
「とりあえず、落ち着け。」
ワルツが二人の間に割って入る。
「ギレイは庭の片付けが先な。その間に、シュリ、カナル。グラハラアの説明を黒獅子にしてやれ。あと、お前らの弟妹のこともな。」
そうして、儀礼は冷たい雪の中を、自分で仕掛けたトラップの回収と、アーデスの仕掛けてあった罠の復旧に忙しそうに手を回すことになったのだった。
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