ギレイの旅
精霊の森3
《危ない!》
声を発すると同時に、シャーロットは青色の障壁を張った。
精霊シャーロットを含めた四人の周りに透明な青色の膜ができあがる。
バシャンッ!
水が当たった、にしては硬い音が障壁にへばりついた。
シャーロットが障壁を解けば、それは氷となってボロボロと地面に落ちる。
《油断しないで、まだ狙われているわ。》
シャーロットは白へと警告する。
すでに、獅子は鞘から剣を引き抜き構えていた。
だが、攻撃はどこから来るのか分からない。
「今の、……精霊の攻撃?」
戸惑いながら、白はシャーロットに聞く。
緊張した面持ちのまま、シャーロットは頷いた。
《それも、攻撃してきたのは、おそらく強力な水の精霊よ。》
「水の精霊……。」
森にいた大勢の精霊たちが、白たちの周りを取り巻いている。
その中に、敵が紛れ込んでいないとも言い切れない。
シュルリ。
今度は木の蔦が伸びて、儀礼たちの手足を封じようと縛り上げてくる。
それをすぐさま獅子は断ち切った。
「なんだ、これ。草が勝手に動いてるぞ。魔物か?」
邪気を感じないことに疑問を感じながら、次々と獅子は草の蔦を切り落とす。
《大地の精霊もいるようね。どうやら歓迎されてないみたいだわ。》
水の刃で白の周りの延びた蔓を切り裂く。
「攻撃してきたってことは、目的の場所に近付いたって事だね。」
白いワイヤーで迫り来る蔦を切り払いながら、明るい調子の声で儀礼は言う。
「じゃ、ちょっと先を見てこようかなっと。」
軽く言って、儀礼はペースを上げて前へと進む。
「危ないよ、ギレイ君!!」
白の制止の声を振り切って、儀礼は一人で突っ走っていく。
その後を仕方なく白と獅子は追いかける。
走りながらも、次々に飛んでくる氷の刃や、木々の蔦を避け、切り払いながら、進んでいく。
森は鬱蒼と茂り、暗い影の中へと入って行く様だった。
「邪気がないのに、暗いんだね。変だと思わない? この森。」
多少息を荒げながらも、儀礼は走ることをやめない。
飛んでくる氷の正面に立って、むしろ、そちらの方へ向かって走っていく。
「魔物がいない。」
ポツリと、獅子が言った。
普通、これだけ大きな森であれば、魔物が住み着いていてもおかしくはない。
なのに、森に入ってかなりの時間がたつが、儀礼たちは一度も、魔物の気配すら感じていなかった。
「だよね。やっぱり変だよ。」
そろそろよけるのが難しくなり、儀礼はトーラの障壁を展開した。
ピンク色の障壁に守られて、儀礼はなおも走り続ける。
《……精霊の力の強い森。》
何かに思い当たったようにシャーロットが呟いた。
「精霊の力?」
シャーロットの作り出した障壁に守られながら、白も儀礼を追って走り続ける。
獅子は剣で蔦と氷を叩き落としている。その速度は、落ちることはない。
「見つけたっ!!」
息を切らした儀礼の大きな声が森の中に響いた。
いくらかの鳥が驚いて巣から飛び立っていった。
儀礼の正面には、巨大な木が生えていて、その幹には、少女が氷の縄のようなもので、魔法陣を描いたようにして縛り付けられている。
「こんな寒い季節に、氷の綱? 風邪引いて、死んじゃうよ。」
慌てたように儀礼は少女へと駆け寄ろうとして、今までの比ではない強烈な吹雪に見舞われて、背後へと送り返された。
「つめてぇ。」
被った雪を払いのけて、儀礼はトーラの結界を張りなおす。
《我らの神子に近付くな。》
人の子供ほどの大きさのある水の精霊が、姿を現した。
と言っても、見ることができるのは、精霊たちと白だけなのだが。
『精霊の神子』らしい少女は、気絶しているのか、動く気配がない。
口元から出る白い息と、僅かに上下する胸元から生きていることは確認できた。
「ギレイ君。大きな水の精霊が、神子に近付くなって。」
緊張から、つばを飲み込んでから、白は儀礼へと伝える。
こんなに強大な精霊、白は朝月以外に、見たことがない。
大きさからすれば、朝月よりは弱いのかもしれないが、敵対して勝てるかと言われれば、とても勝てるとは思えない相手だった。
《我はこの地を総べる精霊。侵入者共、一体何の用だ。》
険しい表情で儀礼たちを睨み付ける、子供サイズの水の精霊。
その威圧感は、普通の精霊の比ではない。
「何の用だ、って言ってる。」
自分で、言葉を返すことに僅かに震えて、白は精霊の言葉を儀礼に伝える。
「その子を返してもらいに来た。そのままでは、その子は、『神子』は死んでしまう。」
真っ直ぐに精霊の方を見返して、儀礼は強い口調で言った。
その視線の先には、寒さに弱ったような少女の姿がある。
《神子には、我の生まれ変わるのを手伝ってもらうのだ。運よく大量の力がこの地に集まった。我は王として生まれ変わるのだ。》
歓喜に震えるように、恍惚の表情を浮かべて、精霊は天を仰ぐ。
この精霊の言うとおり、この場には、数え切れないほどの精霊たちがいた。
その半数は、降雨のために儀礼が呼び出した精霊たちだ。
なので、水の精霊が大半を占めている。
「生まれ変わるって、どういうこと?」
白はその言葉の意味が分からず水の精霊に問いかける。
《この精霊たちと一体となって、我の力がさらに強くなるということだ。》
嬉しそうに目を細めて、精霊は答えた。
声を発すると同時に、シャーロットは青色の障壁を張った。
精霊シャーロットを含めた四人の周りに透明な青色の膜ができあがる。
バシャンッ!
水が当たった、にしては硬い音が障壁にへばりついた。
シャーロットが障壁を解けば、それは氷となってボロボロと地面に落ちる。
《油断しないで、まだ狙われているわ。》
シャーロットは白へと警告する。
すでに、獅子は鞘から剣を引き抜き構えていた。
だが、攻撃はどこから来るのか分からない。
「今の、……精霊の攻撃?」
戸惑いながら、白はシャーロットに聞く。
緊張した面持ちのまま、シャーロットは頷いた。
《それも、攻撃してきたのは、おそらく強力な水の精霊よ。》
「水の精霊……。」
森にいた大勢の精霊たちが、白たちの周りを取り巻いている。
その中に、敵が紛れ込んでいないとも言い切れない。
シュルリ。
今度は木の蔦が伸びて、儀礼たちの手足を封じようと縛り上げてくる。
それをすぐさま獅子は断ち切った。
「なんだ、これ。草が勝手に動いてるぞ。魔物か?」
邪気を感じないことに疑問を感じながら、次々と獅子は草の蔦を切り落とす。
《大地の精霊もいるようね。どうやら歓迎されてないみたいだわ。》
水の刃で白の周りの延びた蔓を切り裂く。
「攻撃してきたってことは、目的の場所に近付いたって事だね。」
白いワイヤーで迫り来る蔦を切り払いながら、明るい調子の声で儀礼は言う。
「じゃ、ちょっと先を見てこようかなっと。」
軽く言って、儀礼はペースを上げて前へと進む。
「危ないよ、ギレイ君!!」
白の制止の声を振り切って、儀礼は一人で突っ走っていく。
その後を仕方なく白と獅子は追いかける。
走りながらも、次々に飛んでくる氷の刃や、木々の蔦を避け、切り払いながら、進んでいく。
森は鬱蒼と茂り、暗い影の中へと入って行く様だった。
「邪気がないのに、暗いんだね。変だと思わない? この森。」
多少息を荒げながらも、儀礼は走ることをやめない。
飛んでくる氷の正面に立って、むしろ、そちらの方へ向かって走っていく。
「魔物がいない。」
ポツリと、獅子が言った。
普通、これだけ大きな森であれば、魔物が住み着いていてもおかしくはない。
なのに、森に入ってかなりの時間がたつが、儀礼たちは一度も、魔物の気配すら感じていなかった。
「だよね。やっぱり変だよ。」
そろそろよけるのが難しくなり、儀礼はトーラの障壁を展開した。
ピンク色の障壁に守られて、儀礼はなおも走り続ける。
《……精霊の力の強い森。》
何かに思い当たったようにシャーロットが呟いた。
「精霊の力?」
シャーロットの作り出した障壁に守られながら、白も儀礼を追って走り続ける。
獅子は剣で蔦と氷を叩き落としている。その速度は、落ちることはない。
「見つけたっ!!」
息を切らした儀礼の大きな声が森の中に響いた。
いくらかの鳥が驚いて巣から飛び立っていった。
儀礼の正面には、巨大な木が生えていて、その幹には、少女が氷の縄のようなもので、魔法陣を描いたようにして縛り付けられている。
「こんな寒い季節に、氷の綱? 風邪引いて、死んじゃうよ。」
慌てたように儀礼は少女へと駆け寄ろうとして、今までの比ではない強烈な吹雪に見舞われて、背後へと送り返された。
「つめてぇ。」
被った雪を払いのけて、儀礼はトーラの結界を張りなおす。
《我らの神子に近付くな。》
人の子供ほどの大きさのある水の精霊が、姿を現した。
と言っても、見ることができるのは、精霊たちと白だけなのだが。
『精霊の神子』らしい少女は、気絶しているのか、動く気配がない。
口元から出る白い息と、僅かに上下する胸元から生きていることは確認できた。
「ギレイ君。大きな水の精霊が、神子に近付くなって。」
緊張から、つばを飲み込んでから、白は儀礼へと伝える。
こんなに強大な精霊、白は朝月以外に、見たことがない。
大きさからすれば、朝月よりは弱いのかもしれないが、敵対して勝てるかと言われれば、とても勝てるとは思えない相手だった。
《我はこの地を総べる精霊。侵入者共、一体何の用だ。》
険しい表情で儀礼たちを睨み付ける、子供サイズの水の精霊。
その威圧感は、普通の精霊の比ではない。
「何の用だ、って言ってる。」
自分で、言葉を返すことに僅かに震えて、白は精霊の言葉を儀礼に伝える。
「その子を返してもらいに来た。そのままでは、その子は、『神子』は死んでしまう。」
真っ直ぐに精霊の方を見返して、儀礼は強い口調で言った。
その視線の先には、寒さに弱ったような少女の姿がある。
《神子には、我の生まれ変わるのを手伝ってもらうのだ。運よく大量の力がこの地に集まった。我は王として生まれ変わるのだ。》
歓喜に震えるように、恍惚の表情を浮かべて、精霊は天を仰ぐ。
この精霊の言うとおり、この場には、数え切れないほどの精霊たちがいた。
その半数は、降雨のために儀礼が呼び出した精霊たちだ。
なので、水の精霊が大半を占めている。
「生まれ変わるって、どういうこと?」
白はその言葉の意味が分からず水の精霊に問いかける。
《この精霊たちと一体となって、我の力がさらに強くなるということだ。》
嬉しそうに目を細めて、精霊は答えた。
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