ギレイの旅
精霊の森1
儀礼たちが次に辿り着いた村の中で、人々が騒がしく駆け回っていた。
聞こえてくる声に耳を傾け聞き取ってみれば、誰かがさらわれたらしい。
深い森の奥に。
攫った犯人は、人ではないが、魔物でもなさそうだった。
「『精霊の神子』をいただく」と書置きの様に村の木に文字を記していったらしい。
その村では、精霊を見ることのできる者を『精霊の神子』と呼んでいた。
そして、精霊に力を借りて生活を豊かにしていた。
しかし、その神子が攫われた。
「ふーん、アルバドリスクでは、『精霊の隣人』とか、『精霊の繋ぎ人』だけど、この村では『精霊の神子』なんだね。」
興味深そうに儀礼は呟く。
「ギレイ君、ふーんとか言ってる場合じゃないよ。誰かが攫われたんだって。どうしよう。助けた方がいいかもしれないよ。」
車の中から様子を見ていた白は、慌てている村人に同調したようにそわそわと一緒になって心配している。
この前、自分が恐ろしい組織に攫われたというのに、他人の心配をする余裕があるのか、と儀礼は呆れる。
しかし、ちゃっかり、先日攫われている儀礼も白のことは言えない。
立ち寄った村でのできごと。
やはり放っては置けず、3人はギルドで依頼を受けて、捜索隊に加わることにした。
それに何より、『精霊の神子』と言う存在に、白も儀礼も少し興味を引かれていた。
村から少し離れたところには大きな森があった。
奥は深くて先の見えないような、どことなく入ることをためらわれるような神聖さを感じる森だった。
森深くに入るにつれ、儀礼達3人のように、険しい道のりに慣れたものと、ただの村人との差が出始める。
山道や深い森に慣れている儀礼達は、少し先を行き、安全を確かめ、より可能性の高い方を探し、後方部隊を先導する。
村人達からは、偉そうに指示する雇われただけの冒険者である、儀礼達に対しての、不満感や不信感が募っていっていた。
森にかなり深く入った頃、突然、白の守護精霊が白にストップをかける。
《それ以上行ってはだめ。》
精霊の声は、空気に振動しないため、不確かで、聞き取りずらいが、確かに、白は聞き取った。
だが、白一人が言ったところで、後方の人々はその言葉を信じてくれないだろう。
大切な神子を救うために決死の思いで捜索に来ているのだから。
それに、白よりも先に、先頭の儀礼と獅子が歩いて行ってしまっている。
白が二人を心配した矢先、突然儀礼が立ち止まった。
「ごめん、獅子。ちょっと休憩しよう。なんか寒気がする。」
儀礼が言った。
「ん。了解。風邪か?」
話しながら二人が白の元まで戻ってくる。
「ん~、そうじゃないんだけど。なんか背中が冷たいというか、嫌な予感がすると言うか……。」
儀礼は眉間にしわをよせ、どう言い表そうか悩んでいる。
「悪寒がしたってことか?」
「あー、そんな感じ。」
珍しく獅子が的を得た言葉を使う。
「あの……。」
精霊の言葉を伝えようとした白は、儀礼の背後で、冷気を高める水の精霊を見つけた。
それはまるで、冷気の幕を作るようにして、儀礼の行く手を塞いでいる。
その表情は真剣で、どこか悲しそうでもあった。
「ギレイ君……。私の精霊が、『それ以上行ってはだめ』って……。それに、儀礼君のそばで、水の精霊が進むのやめさせようとしてる。」
不安そうに白は言った。
儀礼はぽん、とその頭を叩く。
「そっか、ありがとう。この先に何かあるのは確かみたいだね。策を考えよう。精霊は入ってほしくないみたい? それとも、危険だから行ってほしくないのかな?」
儀礼は悩む様子もなく白に聞く。
入って欲しくないなら、精霊達にとっての聖域。
むやみに立ち入って汚すわけにはいかない。
何か別の方法を探さなくてはならない。
もし危険だから行かせたくないというならば、本当に危険なのだろう。
それこそ、白や儀礼達の命が危ういほどに。
だとすれば、この程度の森で後れを取る村人達では、命が5度程あっても足りないだろう。
さすがに100でもあれば足るかもしれないが……、馬鹿な考えはやめておこう。
できないことを考えてもむなしくなるだけだ。
その際の作戦としては……。
儀礼は考え始める。
「えっと、……『危険』だって。」
白からそれを聞き、
「了解。」
儀礼は悪意を含めた笑顔でニヤリと笑った。
「嫌な予感がするぅ?」
馬鹿にしたように言う、村人のリーダー。
「まぁ、そんな感じですが、とにかく、ここから先は危険なようです。」
穏やかな調子で話す儀礼にリーダーは何か考えている様子。
「でも、ようはその先に神子がいるってことなんだろ?」
「はい。可能性はとても高いです。」
頷く儀礼に村人達は、馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「本当は怖くなったんだろ!? 素直に言えよ。」
わははは、といくつもの笑い声が上がる。
「子供なんだから、いなくなったって誰も文句言わねぇよ。」
ぷぷぷと、控えたような笑いがまだ聞こえている。
「いえ、そうじゃなくて……。危険なのは事実です。白が精霊から警告されたそうです。あなたたちの言う『精霊の神子』が信用できませんか?」
儀礼の言葉に村人達は白を見て口をつぐむ。
白の持つ深い青い瞳は、確かに、村人達の知る『精霊の神子』と同じものだった。
聞こえてくる声に耳を傾け聞き取ってみれば、誰かがさらわれたらしい。
深い森の奥に。
攫った犯人は、人ではないが、魔物でもなさそうだった。
「『精霊の神子』をいただく」と書置きの様に村の木に文字を記していったらしい。
その村では、精霊を見ることのできる者を『精霊の神子』と呼んでいた。
そして、精霊に力を借りて生活を豊かにしていた。
しかし、その神子が攫われた。
「ふーん、アルバドリスクでは、『精霊の隣人』とか、『精霊の繋ぎ人』だけど、この村では『精霊の神子』なんだね。」
興味深そうに儀礼は呟く。
「ギレイ君、ふーんとか言ってる場合じゃないよ。誰かが攫われたんだって。どうしよう。助けた方がいいかもしれないよ。」
車の中から様子を見ていた白は、慌てている村人に同調したようにそわそわと一緒になって心配している。
この前、自分が恐ろしい組織に攫われたというのに、他人の心配をする余裕があるのか、と儀礼は呆れる。
しかし、ちゃっかり、先日攫われている儀礼も白のことは言えない。
立ち寄った村でのできごと。
やはり放っては置けず、3人はギルドで依頼を受けて、捜索隊に加わることにした。
それに何より、『精霊の神子』と言う存在に、白も儀礼も少し興味を引かれていた。
村から少し離れたところには大きな森があった。
奥は深くて先の見えないような、どことなく入ることをためらわれるような神聖さを感じる森だった。
森深くに入るにつれ、儀礼達3人のように、険しい道のりに慣れたものと、ただの村人との差が出始める。
山道や深い森に慣れている儀礼達は、少し先を行き、安全を確かめ、より可能性の高い方を探し、後方部隊を先導する。
村人達からは、偉そうに指示する雇われただけの冒険者である、儀礼達に対しての、不満感や不信感が募っていっていた。
森にかなり深く入った頃、突然、白の守護精霊が白にストップをかける。
《それ以上行ってはだめ。》
精霊の声は、空気に振動しないため、不確かで、聞き取りずらいが、確かに、白は聞き取った。
だが、白一人が言ったところで、後方の人々はその言葉を信じてくれないだろう。
大切な神子を救うために決死の思いで捜索に来ているのだから。
それに、白よりも先に、先頭の儀礼と獅子が歩いて行ってしまっている。
白が二人を心配した矢先、突然儀礼が立ち止まった。
「ごめん、獅子。ちょっと休憩しよう。なんか寒気がする。」
儀礼が言った。
「ん。了解。風邪か?」
話しながら二人が白の元まで戻ってくる。
「ん~、そうじゃないんだけど。なんか背中が冷たいというか、嫌な予感がすると言うか……。」
儀礼は眉間にしわをよせ、どう言い表そうか悩んでいる。
「悪寒がしたってことか?」
「あー、そんな感じ。」
珍しく獅子が的を得た言葉を使う。
「あの……。」
精霊の言葉を伝えようとした白は、儀礼の背後で、冷気を高める水の精霊を見つけた。
それはまるで、冷気の幕を作るようにして、儀礼の行く手を塞いでいる。
その表情は真剣で、どこか悲しそうでもあった。
「ギレイ君……。私の精霊が、『それ以上行ってはだめ』って……。それに、儀礼君のそばで、水の精霊が進むのやめさせようとしてる。」
不安そうに白は言った。
儀礼はぽん、とその頭を叩く。
「そっか、ありがとう。この先に何かあるのは確かみたいだね。策を考えよう。精霊は入ってほしくないみたい? それとも、危険だから行ってほしくないのかな?」
儀礼は悩む様子もなく白に聞く。
入って欲しくないなら、精霊達にとっての聖域。
むやみに立ち入って汚すわけにはいかない。
何か別の方法を探さなくてはならない。
もし危険だから行かせたくないというならば、本当に危険なのだろう。
それこそ、白や儀礼達の命が危ういほどに。
だとすれば、この程度の森で後れを取る村人達では、命が5度程あっても足りないだろう。
さすがに100でもあれば足るかもしれないが……、馬鹿な考えはやめておこう。
できないことを考えてもむなしくなるだけだ。
その際の作戦としては……。
儀礼は考え始める。
「えっと、……『危険』だって。」
白からそれを聞き、
「了解。」
儀礼は悪意を含めた笑顔でニヤリと笑った。
「嫌な予感がするぅ?」
馬鹿にしたように言う、村人のリーダー。
「まぁ、そんな感じですが、とにかく、ここから先は危険なようです。」
穏やかな調子で話す儀礼にリーダーは何か考えている様子。
「でも、ようはその先に神子がいるってことなんだろ?」
「はい。可能性はとても高いです。」
頷く儀礼に村人達は、馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「本当は怖くなったんだろ!? 素直に言えよ。」
わははは、といくつもの笑い声が上がる。
「子供なんだから、いなくなったって誰も文句言わねぇよ。」
ぷぷぷと、控えたような笑いがまだ聞こえている。
「いえ、そうじゃなくて……。危険なのは事実です。白が精霊から警告されたそうです。あなたたちの言う『精霊の神子』が信用できませんか?」
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