ギレイの旅
パーティー内の鬼ごっこ
獅子が庭に走り出してすぐに、捉えかけた何者かの気配は庭の中へと散っていった。
どうやら、不審な者達は複数いるらしい。
「面白いじゃねぇか。退屈しないですみそうだ。」
口の端を上げ、凶悪に笑う。
何者かの気配を追いかけて、獅子は庭の中を木々の上を渡り次々に飛び越え走り抜けてゆく。
その何者かたちも獅子に距離をつめられることなく、同じ様な速度で走っているらしい。
ただのものではない。
にやりと、獅子の口元はさらに上げられる。
「楽しそうじゃねぇか。」
どういうわけか、不審な気配たちは屋敷の敷地内からは出ようとしていない。
殺気があるわけでもない。
ただ、挑発するように獅子に気を飛ばしては気配を消して逃げ回る。
相手の数はおそらく5人ほど。
何となくだが、獅子は見知った気配を感じる気がしていた。
一方、寒空の中を逃げ回っているクリームたちなのだが、実は儀礼から頼まれた「敷地内鬼ごっこ」とは別で、極秘で『アナザー』なるものから指示を与えられていた。
『蜃気楼』儀礼、の居場所を特定されかけているため、不審な者が近付く可能性がある。
速やかに排除せよ、と。
相手の数や力が予想を超える場合もあるので、正規の護衛である『黒獅子』も巻き込め。
というのが、『アナザー』から送られた作戦だった。
適当におびき出せば、後は勝手に単純な『黒獅子』は動くだろう、というのが『アナザー』の考えだった。
獅子が最初に見つけた不審者は、見知らぬ者だった。
濃い紫色の派手な衣装を身に纏った、女性。
左の肩から胸元にかけてレースのようにひらひらとした布が付いた衣装で、右肩は何もかかっていない。
大きな胸はドレスの中にきつそうに納まっている。
紐で編みこんだような模様のウエスト辺りは細く引き締まっている。
腰のすぐ下あたりからはドレスのスカート部分にスリットが入っていて、動くたびに白い足を覗かせている。
その女性を見つけて獅子が最初にしたことは――。
「絞まってる、それ以上やったら死ぬぞ。」
女性の操る二本の鞭により、首を絞められ、今にも絶命しようとしていた不審な男たちの救出だった。
「あら。殺しちゃいけないんだったかしらね。忘れてたわ。」
ふふ、と女性は笑う。
ウェーブの利いた濃い茶色の髪、赤茶色の瞳、厚く塗られたピンク色の口紅。
「こんな奴ら、生かしておいたって何の得にもならないじゃない。」
シュルリと武器である鞭を丸めて両手に収め、女性は退屈そうにそう言った。
「お前、何者だ。そいつらもな。」
油断のない構えをしたまま、獅子は女性に尋ねる。
ドレス姿の、客人風の女性よりかは、黒尽くめの捕らえられていた男達の方が不審者っぽい印象ではあるが。
「あら。そうね、私、見つかっちゃったのかしら。」
うふふ、と女性は可笑しそうに笑う。
女性が少し歩くだけで、大きな胸が揺れる。
一歩足を踏み出せば、スカートの切れ目から長い足がちらつく。
その動き方、しぐさの一つ一つが、まるで男を誘うように、もて余すことなく女性の武器を有効的に使っている。
大輪の華のような女性。
「私はマリアン。Desertのメンバーよ。」
そう言ってマリアンは太ももにつけた小さなポーチから、儀礼の名前の入った管理局ライセンスと、『Desert』のパーティーライセンスを抜き取り獅子に見せた。
その動きの一つ一つがまた、わざとらしいのだが、目を惹かれてしまう。
「分かってもらえたかしら。」
ふふっ、とまた笑って、マリアンはライセンスを元の太もものポーチへとしまった。
「って、ことは、残りの気配も『デザート』の奴らってことか? ゼラードの奴め何考えてやがる。」
「ふふふ。考えてること、わからない? 私、これで二人。」
倒れている男達を示して、マリアンは言う。
「不審者が紛れ込んでるって訳か。儀礼狙いか?」
その言葉に一瞬、マリアンは首を傾げた。
「ああ。『蜃気楼』のことね。そうよ。だって、この人たち、あの子のこと見てたもの。」
倒れた男たちの懐から、双眼鏡を取り出して、屋敷の中でのんびりとくつろいでいる儀礼を指し示す。
「他にもいるのか。」
「いるわよ。馬鹿な騒ぎを起こしたらしいから、場所を特定されてるんですって。次々来るわよ。屋敷の警備をかいくぐって、あの坊やを手に入れようとするバカな雇われ人達が。」
「お前らは何人来てるんだ? ゼラードと、ヒガあたりか?」
「そうね。味方同士で争っても困るわよね。教えといてあげる。」
じわりと獅子に身を寄せて、マリアンはフフと笑って獅子の耳元に唇を近づける。
「今日来てるのは、私と、ゼラードと、トウイに、ランジェシカ。それからヒガって男よ。」
「トウイ? そいつは知らねぇな。どんなやつだ。」
「見れば分かるは、小さな子供よ。足がないの。ああ、今は義足をつけてるんだったわね。『蜃気楼』が作ったんですって。スイッチ一つでミサイルの飛び出るおもちゃみたいな靴。」
くすくすとマリアンは笑った。
「儀礼ぃ……。」
獅子は頭を抱える。
また、たやすく武器を作り、何をしているのか、その少年は。
それがこのように、大勢の者から狙われる原因だと言うのに。
「まぁ、つまりは、不審者退治か。」
ぐるりと腕を大きく回し、獅子は肩を慣らす。
「もっと退屈しなさそうだ。」
両方の口角を上げ、楽しそうに獅子は呟いた。
どうやら、不審な者達は複数いるらしい。
「面白いじゃねぇか。退屈しないですみそうだ。」
口の端を上げ、凶悪に笑う。
何者かの気配を追いかけて、獅子は庭の中を木々の上を渡り次々に飛び越え走り抜けてゆく。
その何者かたちも獅子に距離をつめられることなく、同じ様な速度で走っているらしい。
ただのものではない。
にやりと、獅子の口元はさらに上げられる。
「楽しそうじゃねぇか。」
どういうわけか、不審な気配たちは屋敷の敷地内からは出ようとしていない。
殺気があるわけでもない。
ただ、挑発するように獅子に気を飛ばしては気配を消して逃げ回る。
相手の数はおそらく5人ほど。
何となくだが、獅子は見知った気配を感じる気がしていた。
一方、寒空の中を逃げ回っているクリームたちなのだが、実は儀礼から頼まれた「敷地内鬼ごっこ」とは別で、極秘で『アナザー』なるものから指示を与えられていた。
『蜃気楼』儀礼、の居場所を特定されかけているため、不審な者が近付く可能性がある。
速やかに排除せよ、と。
相手の数や力が予想を超える場合もあるので、正規の護衛である『黒獅子』も巻き込め。
というのが、『アナザー』から送られた作戦だった。
適当におびき出せば、後は勝手に単純な『黒獅子』は動くだろう、というのが『アナザー』の考えだった。
獅子が最初に見つけた不審者は、見知らぬ者だった。
濃い紫色の派手な衣装を身に纏った、女性。
左の肩から胸元にかけてレースのようにひらひらとした布が付いた衣装で、右肩は何もかかっていない。
大きな胸はドレスの中にきつそうに納まっている。
紐で編みこんだような模様のウエスト辺りは細く引き締まっている。
腰のすぐ下あたりからはドレスのスカート部分にスリットが入っていて、動くたびに白い足を覗かせている。
その女性を見つけて獅子が最初にしたことは――。
「絞まってる、それ以上やったら死ぬぞ。」
女性の操る二本の鞭により、首を絞められ、今にも絶命しようとしていた不審な男たちの救出だった。
「あら。殺しちゃいけないんだったかしらね。忘れてたわ。」
ふふ、と女性は笑う。
ウェーブの利いた濃い茶色の髪、赤茶色の瞳、厚く塗られたピンク色の口紅。
「こんな奴ら、生かしておいたって何の得にもならないじゃない。」
シュルリと武器である鞭を丸めて両手に収め、女性は退屈そうにそう言った。
「お前、何者だ。そいつらもな。」
油断のない構えをしたまま、獅子は女性に尋ねる。
ドレス姿の、客人風の女性よりかは、黒尽くめの捕らえられていた男達の方が不審者っぽい印象ではあるが。
「あら。そうね、私、見つかっちゃったのかしら。」
うふふ、と女性は可笑しそうに笑う。
女性が少し歩くだけで、大きな胸が揺れる。
一歩足を踏み出せば、スカートの切れ目から長い足がちらつく。
その動き方、しぐさの一つ一つが、まるで男を誘うように、もて余すことなく女性の武器を有効的に使っている。
大輪の華のような女性。
「私はマリアン。Desertのメンバーよ。」
そう言ってマリアンは太ももにつけた小さなポーチから、儀礼の名前の入った管理局ライセンスと、『Desert』のパーティーライセンスを抜き取り獅子に見せた。
その動きの一つ一つがまた、わざとらしいのだが、目を惹かれてしまう。
「分かってもらえたかしら。」
ふふっ、とまた笑って、マリアンはライセンスを元の太もものポーチへとしまった。
「って、ことは、残りの気配も『デザート』の奴らってことか? ゼラードの奴め何考えてやがる。」
「ふふふ。考えてること、わからない? 私、これで二人。」
倒れている男達を示して、マリアンは言う。
「不審者が紛れ込んでるって訳か。儀礼狙いか?」
その言葉に一瞬、マリアンは首を傾げた。
「ああ。『蜃気楼』のことね。そうよ。だって、この人たち、あの子のこと見てたもの。」
倒れた男たちの懐から、双眼鏡を取り出して、屋敷の中でのんびりとくつろいでいる儀礼を指し示す。
「他にもいるのか。」
「いるわよ。馬鹿な騒ぎを起こしたらしいから、場所を特定されてるんですって。次々来るわよ。屋敷の警備をかいくぐって、あの坊やを手に入れようとするバカな雇われ人達が。」
「お前らは何人来てるんだ? ゼラードと、ヒガあたりか?」
「そうね。味方同士で争っても困るわよね。教えといてあげる。」
じわりと獅子に身を寄せて、マリアンはフフと笑って獅子の耳元に唇を近づける。
「今日来てるのは、私と、ゼラードと、トウイに、ランジェシカ。それからヒガって男よ。」
「トウイ? そいつは知らねぇな。どんなやつだ。」
「見れば分かるは、小さな子供よ。足がないの。ああ、今は義足をつけてるんだったわね。『蜃気楼』が作ったんですって。スイッチ一つでミサイルの飛び出るおもちゃみたいな靴。」
くすくすとマリアンは笑った。
「儀礼ぃ……。」
獅子は頭を抱える。
また、たやすく武器を作り、何をしているのか、その少年は。
それがこのように、大勢の者から狙われる原因だと言うのに。
「まぁ、つまりは、不審者退治か。」
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