ギレイの旅
精霊 愛華
三人は儀礼を先頭に車を止めてある場所まで歩いた。
そして、その車の姿が見えてきた所で儀礼は待ちきれないという様子で走り出した。
「愛華っ!」
走る勢いを止めず、持っていた荷物を地面に放り出し、乗り上げるようにして儀礼はその車のフロント部分へと抱きついた。
「会いたかった! ずっと待たせてごめんね。」
感動を味わうように、冷たい車のボディに体を付け、額をつけ、頬を押し付け、儀礼は嬉しそうにもたれかかる。
そこには一人の可愛らしい精霊が座っていた。
春に萌え出た新芽のような優しいきみどり色の光を放ち、腰まで伸びた真っ直ぐな長い髪。
体を覆うのは、芽吹いたばかりの若葉のように淡い緑色の、葉を縫い合わせたかのようなドレス。
背中には透明に輝く精霊の翼。
車に抱きつく儀礼の頬に、嬉しそうに頬を寄せる淡い緑色の小さな風の精霊。
《おかえりなさい! あなたが元気そうでよかったわ。》
涼やかな高い声、そよ風のように爽やかな音。
《私も、会えて嬉しいの。》
満面の笑みを称える精霊の、幼い顔立ちは7、8歳くらいの少女に見えた。
お互いに、本当に嬉しそうに寄り添う二人。見ていてとても微笑ましい光景だった。
「白、愛華だよ。僕の車。よろしく。」
にっこりと嬉しそうに笑って儀礼は白に紹介した。
フロントに座っている愛華の優しそうな萌黄色の瞳が白とシャーロットを見た。
ここまで一心に儀礼の愛を受ける精霊。
白とシャーロットが近付いても嫌がらないだろうか、と白は少し心配した。
しかし、愛華は微笑む。優しい顔に幼い笑みを浮かべて。
《私は愛華。ようこそ、新しい仲間たち。》
車に座ったまま、愛華は歓迎を示すように細い腕を広げて伸ばした。
《あなたは、移動できないの?》
白より先に、シャーロットが愛華のそばへと飛んでいった。
守護精霊であるシャーロットは白に近付く精霊を嫌がるはずなのに、珍しく興味を持ったらしかった。
愛華の背には確かに精霊の翼がある。
そして、翼のない英でさえ、本体から離れて移動して見せた。
《この車が私の本体。周りだけなら動けるわ。この車は、儀礼のとても大切なものなの。だから、離れずに私が守るの。》
幼い姿に、大人のような慈愛に満ちた笑みを浮かべて愛華は語った。幸せそうに。
《私はシャーロット。この子の守護精霊。》
シャーロットが名乗る。
《あなたも、見た目より若い精霊ね?》
トーラや英を思い起こし、確認するようにシャーロットは聞く。
朝月のような、強大な魔力は感じられなかった。
《ええ。儀礼に名前を付けてもらって、完全に姿を保てるようになって4年位かしら。本当は、もう少し成長してたんだけど……。》
愛華は頭の上に手を当てた。
《この間、儀礼に逆らって行動しちゃったらから大量に魔力を消費しちゃったの。》
重気と、ソードオブソードとの戦いの中で、愛華は儀礼の操作に逆らった。
自分の体から魔力を消費させながら。
けれどそれを話す愛華の声はやはり涼しげで、その表情も嬉しそうな笑みの浮かぶままだった。
《でもね、いいの。儀礼を守れたから。だけど内緒ね。儀礼、泣いちゃうから。》
口に人差し指を当て、白に向かってくすりと愛華は笑う。
朗らかな、優しい微笑み。幼い無邪気さと、たくさんの愛情。
愛華も契約をしていない精霊らしかった。
白が愛華に近付こうとすれば、一瞬、シャーロットが警戒を示し表情を強張らせた。
それが、守護精霊の性。
けれど、愛華はそれを理解し、シャーロットに向かい、いっそう嬉しそうに笑った。
《大好きな人と一緒にいられて、嬉しいよね。》
たくさんの花がいっせいに開花したかのような幸せに満ちた、明るい笑み。
その言葉を肯定するように、シャーロットも美しい微笑みを浮かべた。
その満面の笑みを、愛華は白にも向けてくれた。
花びらの替わりのように、春のように暖かな風が白のもとに流れてきた。
「あっ!」
白は気付いた。
その風はあの時、疲れ果て、倒れかけた白を温めた優しい風だった。
人を思いやり、気遣う精霊。契約もなく、白のことさえも助けてくれた。
そんな愛情深い、優しい精霊が存在することを、白は、知らなかった。
「っアイカー! 私も大好きだよ!」
思わず白は、儀礼と同じ様に、愛華の小さな体に飛びついていた。
愛華の体に頬を付ければ、そこは愛華の本体、儀礼の車。
白の髪を小さな手でそっと撫で、愛華は幼い年齢に見合わないほど優しい微笑みを浮かべていた。
「……同じ顔だと中身も似るのか?」
車に抱きつくそっくりな二人を見て、呆れた様子で獅子は呟いた。
そして、その車の姿が見えてきた所で儀礼は待ちきれないという様子で走り出した。
「愛華っ!」
走る勢いを止めず、持っていた荷物を地面に放り出し、乗り上げるようにして儀礼はその車のフロント部分へと抱きついた。
「会いたかった! ずっと待たせてごめんね。」
感動を味わうように、冷たい車のボディに体を付け、額をつけ、頬を押し付け、儀礼は嬉しそうにもたれかかる。
そこには一人の可愛らしい精霊が座っていた。
春に萌え出た新芽のような優しいきみどり色の光を放ち、腰まで伸びた真っ直ぐな長い髪。
体を覆うのは、芽吹いたばかりの若葉のように淡い緑色の、葉を縫い合わせたかのようなドレス。
背中には透明に輝く精霊の翼。
車に抱きつく儀礼の頬に、嬉しそうに頬を寄せる淡い緑色の小さな風の精霊。
《おかえりなさい! あなたが元気そうでよかったわ。》
涼やかな高い声、そよ風のように爽やかな音。
《私も、会えて嬉しいの。》
満面の笑みを称える精霊の、幼い顔立ちは7、8歳くらいの少女に見えた。
お互いに、本当に嬉しそうに寄り添う二人。見ていてとても微笑ましい光景だった。
「白、愛華だよ。僕の車。よろしく。」
にっこりと嬉しそうに笑って儀礼は白に紹介した。
フロントに座っている愛華の優しそうな萌黄色の瞳が白とシャーロットを見た。
ここまで一心に儀礼の愛を受ける精霊。
白とシャーロットが近付いても嫌がらないだろうか、と白は少し心配した。
しかし、愛華は微笑む。優しい顔に幼い笑みを浮かべて。
《私は愛華。ようこそ、新しい仲間たち。》
車に座ったまま、愛華は歓迎を示すように細い腕を広げて伸ばした。
《あなたは、移動できないの?》
白より先に、シャーロットが愛華のそばへと飛んでいった。
守護精霊であるシャーロットは白に近付く精霊を嫌がるはずなのに、珍しく興味を持ったらしかった。
愛華の背には確かに精霊の翼がある。
そして、翼のない英でさえ、本体から離れて移動して見せた。
《この車が私の本体。周りだけなら動けるわ。この車は、儀礼のとても大切なものなの。だから、離れずに私が守るの。》
幼い姿に、大人のような慈愛に満ちた笑みを浮かべて愛華は語った。幸せそうに。
《私はシャーロット。この子の守護精霊。》
シャーロットが名乗る。
《あなたも、見た目より若い精霊ね?》
トーラや英を思い起こし、確認するようにシャーロットは聞く。
朝月のような、強大な魔力は感じられなかった。
《ええ。儀礼に名前を付けてもらって、完全に姿を保てるようになって4年位かしら。本当は、もう少し成長してたんだけど……。》
愛華は頭の上に手を当てた。
《この間、儀礼に逆らって行動しちゃったらから大量に魔力を消費しちゃったの。》
重気と、ソードオブソードとの戦いの中で、愛華は儀礼の操作に逆らった。
自分の体から魔力を消費させながら。
けれどそれを話す愛華の声はやはり涼しげで、その表情も嬉しそうな笑みの浮かぶままだった。
《でもね、いいの。儀礼を守れたから。だけど内緒ね。儀礼、泣いちゃうから。》
口に人差し指を当て、白に向かってくすりと愛華は笑う。
朗らかな、優しい微笑み。幼い無邪気さと、たくさんの愛情。
愛華も契約をしていない精霊らしかった。
白が愛華に近付こうとすれば、一瞬、シャーロットが警戒を示し表情を強張らせた。
それが、守護精霊の性。
けれど、愛華はそれを理解し、シャーロットに向かい、いっそう嬉しそうに笑った。
《大好きな人と一緒にいられて、嬉しいよね。》
たくさんの花がいっせいに開花したかのような幸せに満ちた、明るい笑み。
その言葉を肯定するように、シャーロットも美しい微笑みを浮かべた。
その満面の笑みを、愛華は白にも向けてくれた。
花びらの替わりのように、春のように暖かな風が白のもとに流れてきた。
「あっ!」
白は気付いた。
その風はあの時、疲れ果て、倒れかけた白を温めた優しい風だった。
人を思いやり、気遣う精霊。契約もなく、白のことさえも助けてくれた。
そんな愛情深い、優しい精霊が存在することを、白は、知らなかった。
「っアイカー! 私も大好きだよ!」
思わず白は、儀礼と同じ様に、愛華の小さな体に飛びついていた。
愛華の体に頬を付ければ、そこは愛華の本体、儀礼の車。
白の髪を小さな手でそっと撫で、愛華は幼い年齢に見合わないほど優しい微笑みを浮かべていた。
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