ギレイの旅
探索(たんさく)
昼をだいぶ過ぎた頃、儀礼は極北の研究室を訪れた。
どういうわけか、『アナザー』から侵入……ではなく、訪問方法を教えられ、儀礼はそこに忘れた発信機を取りにきたのだ。
ついでに、昨夜手伝ってもらった装備のお礼を改めてしようと、手土産もさげて。
しかし、そこで儀礼が見たものは――。
散らかった空き缶や空き瓶。空のグラスや皿がいくつもテーブルの上に乱雑に積み上げられている。
寒いはずのこの場所で、上掛け一枚かけずに眠っている世界最強のはずの冒険者たち。
一人は床に転がり、一人はソファーに。
二人はテーブルに突っ伏し、一人は椅子に座ったまま。
「……大人って……」
儀礼は呆然と呟き、足元に手土産の紙袋を置く。
これは、けして怪しいものではない。ちゃんと普通の店で買ったおいしいケーキだ。
彼らが甘い物が好きかはわからないが、儀礼の辿り着いた町の名物だったので買ってきたのだ。
濃厚なチョコが売りらしい。甘すぎないので、男の人でも食べられると店の人が言っていた。
そんなことはいい。
儀礼は白衣を脱ぐと袖をまくる。
「これも恩返しってやつなのかなぁ」
首をかしげながら儀礼は散らかった缶や瓶を拾い集め、汚れた皿やグラスを流しへと運ぶ。
「お湯……出ないよね」
外の冬景色を見て、儀礼は思わず独り言をつぶやく。
「あ、これ使える」
透明の液体が入ったランプのようなものを発見し、儀礼はそれで水を温める。
調理室というよりは、実験室と言った室内で儀礼は自分の行動に首をかしげながらも食器を洗う。
洗い終えても、しまう場所まではわからないので、元あったテーブルの上にきれいに積み上げる。
それでも、酒の臭いのする大人たちは起きない。
儀礼は腕を組んで迷った末、道具入れから掃除用具を取り出した。
「久しぶりだな。旅に出てから、こういう掃除してないや。借りた研究室って生活感ないもんね」
言いながら、儀礼は部屋の隅々まではたきをかけ、ほこりを落とす。
ほこりを被った棚の上をはたいた時、ほこりと一緒に1cm程の小さな金属片が落ちる。
「やっぱり、発見! クモ型探査機。この焦げ跡は電撃っぽいな、コルロさんかな?」
クモに似たロボットの残骸を拾い、儀礼は首をかしげて観察する。
続いて窓際の棚の後ろから、3cm程の細長い金属のパーツを発見する。
「あ、こっちはハチ型だ。でも粉々。こんな器用なの、アーデスかな?」
ちりとりでそのバラバラになっているスパイロボットの破片を集め、儀礼はごみとパーツとに分別する。
さらに掃除を続けると、部屋の北側の壁に、こぶし大の水晶のような物がはめ込まれていた。
透明なその石は、外の白い景色を、小さく逆さまに映している。
「なんだろ、この石? 壁に埋まってる。結界とかそう言うやつかな??」
見たことのない様式に、儀礼は瞳を瞬かせてその石を覗き込む。
『IH』
石の中に、古代の文字が刻まれていた。
「ああ、これ、防犯なんだ。『氷』と『嵐』……ここで発動したら誰も近寄れないね」
水晶に映る雪深い景色に引きつった笑みを浮かべ、儀礼はその場を離れる。
主の眠る研究室で、少年は部屋の隅々まで探索を続けた。
掃除を終え、それでも酔いつぶれた冒険者たちは起きない。
「無用心すぎません?」
儀礼の頬は引きつる。
そして、ぐるりとその人たちを見回し、にやりと口元を緩めた。
*****************
最初に目を覚ましたのはワルツだった。
痛む頭を押さえながら、テーブルの上から顔を持ち上げる。
そして、その目に最初に映った物は――
『危険物IN。深夜0時までに解体してください』
白く四角い紙箱の上に置かれた、手書きのメッセージ。焦って書いたのか、字は少し崩れていた。
テーブルの上に乗るその箱の周りには、綺麗に積み上げられた洗浄済みの食器。
「おい、おい! 何だこれ?!」
とりあえずワルツは目の前でテーブルに突っ伏して眠っているヤンを揺り起こす。
「あ、はい。なんでしょう。私眠ってしまって……」
寝ぼけながら丸い眼鏡をかけなおしている。
「見ろ、これ」
ワルツはテーブルの上の状態を見せる。
「あ、ワルツさんが片付けてくれたんですか? ありがとうございます」
丁寧に頭を下げ、ヤンはそのままテーブルに頭を付けまた眠りに着く。
「おいー! ヤンっ」
苛立たしそうに頭をかくと、ヤンは布張りの椅子に座るアーデスと、床に眠るコルロを蹴り起こす。
「起きろお前らっ」
先に目を開いたのはアーデス。
「朝からケンカを売るとはいい度胸――」
薄く開いた目に鋭い眼光を宿らせて魔力を練り上げる。
「寝ぼけんなアーデス! もう夜だっ、あたしら昼過ぎまで飲んでただろ」
愛用のハンマーを持ち出して、ワルツは風圧を送る。
巻き起こる冷たい風に、アーデスはようやく目を覚ます。
「お前ら、元気だな。俺は頭いてぇ……」
床に座ったまま、コルロは額を押さえている。
「ギレイの字だな」
メッセージを一瞥し、そう言ってアーデスが箱を開けてみれば、中味はケーキ。
「なんだ、ケーキ? まさか毒入りとか……」
ワルツは顔を近づけてその茶色い物の匂いをかぐ。
「やばい、うまそう」
ワルツの顔が笑う。
アーデスは簡単な魔力探査を発動し、その円い物体を調べる。
「……毒はないな。不審物も発見できなかった。これはただの食べ物だ」
騙されたのだと気付き、アーデス達は苦笑する。
「なんの冗談だよ。ってか、あいつ、いつここに来たんだ?」
きょろきょろとワルツは周囲を見回す。
寝る前のことは途中までしかよく覚えていないが、そこそこに散らかした覚えがあった。
それが、その記憶こそが夢だったのではと思えるほど、部屋中がずいぶんと綺麗に片付けられている。
「とにかく、解体してくれってことか?」
メッセージの書かれた紙にも何の仕掛けもないことを確かめて、コルロが言う。
「おーい、バクラム。兄弟子。ギレイの差し入れ食うかぁ~」
ワルツは遠慮がちにソファーで眠るバクラムを起こす。
「……おう、今何時だ?」
ゆっくりと体を起こし、バクラムは大きなあくびをする。
「もうすぐ夜中だ。食うなら食って帰れ。子供らが待ってんだろ」
ワルツは切り分けられたケーキをさらに乗せ、バクラムの手に押し付ける。
「ケーキか。いいな、たまには。後で土産に買って帰るか」
その半分を一口で消し、バクラムは父親の顔で微笑む。
「ん? 皿の底に何か書いてあるな」
ワルツが言う。
空になった箱の中の、ケーキの乗せられていた皿に模様のようなものがあるのに気付いた。
「文字のようですね」
ヤンが箱の中を覗き込む。
次に、コルロもそれを覗き込むと箱から皿を取り出した。
「ケーキのクリームと同じ色で書いたんだな。手の込んだことを」
書かれている文字を読み、全員の顔に笑いのようなものが浮き上がる。
『今年はお世話になりました。来年もよろしくお願いします。byギレイ』
「来年って。今、何月だと思ってんだ? まだ11月が終わってないぞ」
ワルツは笑う。
「来年まで来るなってことじゃねぇか?」
けたけたとコルロが笑い出す。
「来るなと言われてもな、こっちは仕事なんだが」
口の端をわざとらしく上げてアーデスが笑う。
「この様子だともう、あそこの街にはいないようだな。ヤン、探してくれ」
アーデスが言えば、ヤンはケーキの皿を置いて杖を掲げる。
ヤンは儀礼を探すため、まず昨夜儀礼を送り届けた管理局の『地下研究室』を探索した。
そして――それを見てしまった。
「あ、あのっ! わた、ワタクシ今日のトコロはこれでおイトマさせていただきますぅっ!!!!」
顔面蒼白になってガタガタと声を震わせると、ヤンは白い光と共に、極北の研究室を飛び去った。
「……なんだ?」
呆然と見送るアーデス達。
「まぁ、ヤンが変なのはいつものことだが」
ワルツが気にした様子もなく、ヤンの残していったケーキに手を付ける。
「ああ、明日になりゃ帰ってくんじゃねぇ?」
ケラケラと、フォークをくわえたままコルロが笑う。
「ギレイの奴、ヤンの追跡を払うような手を考えたと言う事か」
苦々しく笑い、アーデスは自分で儀礼の居場所を探索する。
その探索魔法に儀礼は簡単にかかった。
小さな宿の中で、手元のランプを頼りに儀礼は小さな機械を楽しそうに改造している。
白く光る腕輪の石に気付き、儀礼が慌てたようにきょろきょろと周囲を見回した。
光が消えないことに苦い顔をし、儀礼は机の上の細かな機械をポケットにしまいこみ、ランプを吹き消した。
視界が真っ暗になったので、アーデスは魔法を打ち切る。
「……特におかしな様子はなかったが」
アーデスは首をかしげる。
「だから、ヤンの行動を気にしちゃだめだって」
ワルツは笑い、空になった皿を片付け始める。
「おお、すげぇ。お湯が出るようになってるぞ」
流し場からワルツが声を上げた。
「器用なことを」
その『装置』を見て、アーデスは呆れる。
水のタンクから引かれた管の下にアルコールランプが置かれているだけ。
『お湯』と書かれたレバーを引けば火花が散って火がつき、レバーを戻せばガラスのふたが炎を消す。
本当に単純な仕組み。
まず、これで大量の湯ができるわけがない。ないのに、蛇口からは暖かな湯が出続けている。
「器用なことを」
流れ出る湯の中に手を入れたまま、アーデスはもう一度呟いた。
どういうわけか、『アナザー』から侵入……ではなく、訪問方法を教えられ、儀礼はそこに忘れた発信機を取りにきたのだ。
ついでに、昨夜手伝ってもらった装備のお礼を改めてしようと、手土産もさげて。
しかし、そこで儀礼が見たものは――。
散らかった空き缶や空き瓶。空のグラスや皿がいくつもテーブルの上に乱雑に積み上げられている。
寒いはずのこの場所で、上掛け一枚かけずに眠っている世界最強のはずの冒険者たち。
一人は床に転がり、一人はソファーに。
二人はテーブルに突っ伏し、一人は椅子に座ったまま。
「……大人って……」
儀礼は呆然と呟き、足元に手土産の紙袋を置く。
これは、けして怪しいものではない。ちゃんと普通の店で買ったおいしいケーキだ。
彼らが甘い物が好きかはわからないが、儀礼の辿り着いた町の名物だったので買ってきたのだ。
濃厚なチョコが売りらしい。甘すぎないので、男の人でも食べられると店の人が言っていた。
そんなことはいい。
儀礼は白衣を脱ぐと袖をまくる。
「これも恩返しってやつなのかなぁ」
首をかしげながら儀礼は散らかった缶や瓶を拾い集め、汚れた皿やグラスを流しへと運ぶ。
「お湯……出ないよね」
外の冬景色を見て、儀礼は思わず独り言をつぶやく。
「あ、これ使える」
透明の液体が入ったランプのようなものを発見し、儀礼はそれで水を温める。
調理室というよりは、実験室と言った室内で儀礼は自分の行動に首をかしげながらも食器を洗う。
洗い終えても、しまう場所まではわからないので、元あったテーブルの上にきれいに積み上げる。
それでも、酒の臭いのする大人たちは起きない。
儀礼は腕を組んで迷った末、道具入れから掃除用具を取り出した。
「久しぶりだな。旅に出てから、こういう掃除してないや。借りた研究室って生活感ないもんね」
言いながら、儀礼は部屋の隅々まではたきをかけ、ほこりを落とす。
ほこりを被った棚の上をはたいた時、ほこりと一緒に1cm程の小さな金属片が落ちる。
「やっぱり、発見! クモ型探査機。この焦げ跡は電撃っぽいな、コルロさんかな?」
クモに似たロボットの残骸を拾い、儀礼は首をかしげて観察する。
続いて窓際の棚の後ろから、3cm程の細長い金属のパーツを発見する。
「あ、こっちはハチ型だ。でも粉々。こんな器用なの、アーデスかな?」
ちりとりでそのバラバラになっているスパイロボットの破片を集め、儀礼はごみとパーツとに分別する。
さらに掃除を続けると、部屋の北側の壁に、こぶし大の水晶のような物がはめ込まれていた。
透明なその石は、外の白い景色を、小さく逆さまに映している。
「なんだろ、この石? 壁に埋まってる。結界とかそう言うやつかな??」
見たことのない様式に、儀礼は瞳を瞬かせてその石を覗き込む。
『IH』
石の中に、古代の文字が刻まれていた。
「ああ、これ、防犯なんだ。『氷』と『嵐』……ここで発動したら誰も近寄れないね」
水晶に映る雪深い景色に引きつった笑みを浮かべ、儀礼はその場を離れる。
主の眠る研究室で、少年は部屋の隅々まで探索を続けた。
掃除を終え、それでも酔いつぶれた冒険者たちは起きない。
「無用心すぎません?」
儀礼の頬は引きつる。
そして、ぐるりとその人たちを見回し、にやりと口元を緩めた。
*****************
最初に目を覚ましたのはワルツだった。
痛む頭を押さえながら、テーブルの上から顔を持ち上げる。
そして、その目に最初に映った物は――
『危険物IN。深夜0時までに解体してください』
白く四角い紙箱の上に置かれた、手書きのメッセージ。焦って書いたのか、字は少し崩れていた。
テーブルの上に乗るその箱の周りには、綺麗に積み上げられた洗浄済みの食器。
「おい、おい! 何だこれ?!」
とりあえずワルツは目の前でテーブルに突っ伏して眠っているヤンを揺り起こす。
「あ、はい。なんでしょう。私眠ってしまって……」
寝ぼけながら丸い眼鏡をかけなおしている。
「見ろ、これ」
ワルツはテーブルの上の状態を見せる。
「あ、ワルツさんが片付けてくれたんですか? ありがとうございます」
丁寧に頭を下げ、ヤンはそのままテーブルに頭を付けまた眠りに着く。
「おいー! ヤンっ」
苛立たしそうに頭をかくと、ヤンは布張りの椅子に座るアーデスと、床に眠るコルロを蹴り起こす。
「起きろお前らっ」
先に目を開いたのはアーデス。
「朝からケンカを売るとはいい度胸――」
薄く開いた目に鋭い眼光を宿らせて魔力を練り上げる。
「寝ぼけんなアーデス! もう夜だっ、あたしら昼過ぎまで飲んでただろ」
愛用のハンマーを持ち出して、ワルツは風圧を送る。
巻き起こる冷たい風に、アーデスはようやく目を覚ます。
「お前ら、元気だな。俺は頭いてぇ……」
床に座ったまま、コルロは額を押さえている。
「ギレイの字だな」
メッセージを一瞥し、そう言ってアーデスが箱を開けてみれば、中味はケーキ。
「なんだ、ケーキ? まさか毒入りとか……」
ワルツは顔を近づけてその茶色い物の匂いをかぐ。
「やばい、うまそう」
ワルツの顔が笑う。
アーデスは簡単な魔力探査を発動し、その円い物体を調べる。
「……毒はないな。不審物も発見できなかった。これはただの食べ物だ」
騙されたのだと気付き、アーデス達は苦笑する。
「なんの冗談だよ。ってか、あいつ、いつここに来たんだ?」
きょろきょろとワルツは周囲を見回す。
寝る前のことは途中までしかよく覚えていないが、そこそこに散らかした覚えがあった。
それが、その記憶こそが夢だったのではと思えるほど、部屋中がずいぶんと綺麗に片付けられている。
「とにかく、解体してくれってことか?」
メッセージの書かれた紙にも何の仕掛けもないことを確かめて、コルロが言う。
「おーい、バクラム。兄弟子。ギレイの差し入れ食うかぁ~」
ワルツは遠慮がちにソファーで眠るバクラムを起こす。
「……おう、今何時だ?」
ゆっくりと体を起こし、バクラムは大きなあくびをする。
「もうすぐ夜中だ。食うなら食って帰れ。子供らが待ってんだろ」
ワルツは切り分けられたケーキをさらに乗せ、バクラムの手に押し付ける。
「ケーキか。いいな、たまには。後で土産に買って帰るか」
その半分を一口で消し、バクラムは父親の顔で微笑む。
「ん? 皿の底に何か書いてあるな」
ワルツが言う。
空になった箱の中の、ケーキの乗せられていた皿に模様のようなものがあるのに気付いた。
「文字のようですね」
ヤンが箱の中を覗き込む。
次に、コルロもそれを覗き込むと箱から皿を取り出した。
「ケーキのクリームと同じ色で書いたんだな。手の込んだことを」
書かれている文字を読み、全員の顔に笑いのようなものが浮き上がる。
『今年はお世話になりました。来年もよろしくお願いします。byギレイ』
「来年って。今、何月だと思ってんだ? まだ11月が終わってないぞ」
ワルツは笑う。
「来年まで来るなってことじゃねぇか?」
けたけたとコルロが笑い出す。
「来るなと言われてもな、こっちは仕事なんだが」
口の端をわざとらしく上げてアーデスが笑う。
「この様子だともう、あそこの街にはいないようだな。ヤン、探してくれ」
アーデスが言えば、ヤンはケーキの皿を置いて杖を掲げる。
ヤンは儀礼を探すため、まず昨夜儀礼を送り届けた管理局の『地下研究室』を探索した。
そして――それを見てしまった。
「あ、あのっ! わた、ワタクシ今日のトコロはこれでおイトマさせていただきますぅっ!!!!」
顔面蒼白になってガタガタと声を震わせると、ヤンは白い光と共に、極北の研究室を飛び去った。
「……なんだ?」
呆然と見送るアーデス達。
「まぁ、ヤンが変なのはいつものことだが」
ワルツが気にした様子もなく、ヤンの残していったケーキに手を付ける。
「ああ、明日になりゃ帰ってくんじゃねぇ?」
ケラケラと、フォークをくわえたままコルロが笑う。
「ギレイの奴、ヤンの追跡を払うような手を考えたと言う事か」
苦々しく笑い、アーデスは自分で儀礼の居場所を探索する。
その探索魔法に儀礼は簡単にかかった。
小さな宿の中で、手元のランプを頼りに儀礼は小さな機械を楽しそうに改造している。
白く光る腕輪の石に気付き、儀礼が慌てたようにきょろきょろと周囲を見回した。
光が消えないことに苦い顔をし、儀礼は机の上の細かな機械をポケットにしまいこみ、ランプを吹き消した。
視界が真っ暗になったので、アーデスは魔法を打ち切る。
「……特におかしな様子はなかったが」
アーデスは首をかしげる。
「だから、ヤンの行動を気にしちゃだめだって」
ワルツは笑い、空になった皿を片付け始める。
「おお、すげぇ。お湯が出るようになってるぞ」
流し場からワルツが声を上げた。
「器用なことを」
その『装置』を見て、アーデスは呆れる。
水のタンクから引かれた管の下にアルコールランプが置かれているだけ。
『お湯』と書かれたレバーを引けば火花が散って火がつき、レバーを戻せばガラスのふたが炎を消す。
本当に単純な仕組み。
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