ギレイの旅
フロアキュール 儀礼の戦い2
儀礼の入ったアーデスの研究室。そこは見える限りに彼らの狙う資料ばかり。
苦しい息を繰り返して、儀礼は考える。結果、持っていた小型の爆弾を室内に散りばめてみた。
ついでに、アーデスの薬品棚で目に留まった薬品を拝借する。その液体を作る所を儀礼は見ていた。
空調の効いた今、これを霧状にして流せばもれなく犯人達に目印を付けられる。
強盗にはペイントボール、と防犯の本に書いてあった。ちなみに、戸棚の鍵は紫の宝石と細い針金で開いた。
穴兎:“ギルドと管理局に通報したが、フロアキュールに近づけないらしい。気を付けろ、確実に大物が動いてる。”
ギルドや管理局という組織が手を出せないなど、ただ事でない。
「よし!」
薬に噴霧器を仕掛け終え、儀礼が頷いたのもつかの間、激しい破壊音と共にその研究室の扉を、黒い剣が切り裂いていた。
睨み付けるように儀礼を見る、アーデスの魔法障壁を破った男。
「お前は何者だ」
紺色の鎧の男が、漆黒の剣を儀礼に向ける。
「アーデスが生き返らせたいと願う程の者か、それとも実験のために殺されたか?」
男の言葉に、儀礼は彼らが人体蘇生術がどうと言っていたのを思い出す。
ふっ、と儀礼は笑った。勘違いも甚だしい。儀礼はあそこで寝ていただけで、死んではいない。
「その様子では、彼は逃げられたようですね」
一応、『透明人間』という存在をちらつかせてみる。
「あの靴だけの仕掛けのことか? それともそいつもお前のように睡眠ガスは効かないのか?」
黒い刃を向けたまま、男が儀礼に近付く。
背中に冷や汗が流れるのを感じながらも、儀礼は落ち着いた声を心がける。
「あなたも効いてないように見えますが? それに、靴など脱いで逃げたのでしょう」
麻酔の効かない者など意外といる。鎧や、魔法の効果も考えられる。
「お前の様にか?」
男が、剣先で儀礼の足元を示して笑った。
ダンッ
その瞬間に、儀礼は銃の引き金を引いた。
弾速の速い痺れ針でも男の実力を考えると、捉えられるギリギリの距離。
男の視線が儀礼の足に向いた一瞬の隙でそれが可能となった。
ガクリと、男がその場に倒れる。その瞳に浮くのは驚愕。
この男の驚いた顔を見るのは、これで二度目だ。
安堵の息を吐くと儀礼はポケットからマイクを取り出しワルツの持つスピーカーへと呼びかける。
「ねぇ、なんかフロアキュールおかしいんだけど」
儀礼が腕輪を通して見たフロアキュール内の冒険者、およそ300人。
その状況を作り出すためにはもっと多くの協力者がいるということになる。
本気で、この襲撃者達はアーデスと戦争でもするつもりのようだ。
その時、扉の外に白い光が現れた。
「ばかな、人が……死体じゃないのか?」
「おい、見ろ! 本当に生きてる」
白い光と共に現れた、研究者らしき男達が儀礼を見て驚いたように口々に言う。どこからか移転魔法を使ってやってきたらしい。
「げっ、まだいるのか」
フロアキュール内は片付けたと思った儀礼だが、まさかの移転魔法。
儀礼は再び銃を構える。
「おい、あれ通信装置じゃないのか?」
痺れにより倒れている男が言う。
目の前で使ったのはまずかったようだ。
「まずい、壊せ」
言いながら、一人の研究者が鎧の男に魔法をかける。一瞬で終えたそれは状態回復の魔法だったらしい。
鎧の男が飛び出すようにして間合いを詰め、黒い剣を振るった。儀礼に避ける暇はなかった。
「うわっ」
儀礼の手の中にあるマイクを黒い刃が切り裂いた。指の間の小さな機械のみを。
『いつでもお前を切れる』と、その太刀筋が語っていた。
「これは預からせてもらう」
儀礼から銃を奪い、鎧の男が言う。その強い怒りの気配に儀礼は体を固まらせる。
「っ、周りの物に触れない方がいいですよ。触れば爆発します。あなた方が無事でも、この部屋の資料は全て消えます」
アーデスの資料を奪おうとした研究者に、儀礼は緊張した声で忠告する。襲撃者たちは動きを止めた。
「自爆覚悟か? だが、それでもいい。全てのデータがなくなれば、『双璧』の降格は決まる」
男が顔を歪ませて笑う。
「時間がありません」
研究者の一人が鎧の男に耳打ちする。
この男達の目的はアーデスの失脚らしい。それに、フロアキュール全てを乗っ取る程の人が動いた。
(アーデス、嫌われてるなぁ)
儀礼は笑う。
「降格? 無理ですよ。ここにある資料、全部彼の頭に入ってますから」
自分の頭を指差し、余裕の笑みを見せる儀礼に、男の黒い剣が振るわれた。
苦しい息を繰り返して、儀礼は考える。結果、持っていた小型の爆弾を室内に散りばめてみた。
ついでに、アーデスの薬品棚で目に留まった薬品を拝借する。その液体を作る所を儀礼は見ていた。
空調の効いた今、これを霧状にして流せばもれなく犯人達に目印を付けられる。
強盗にはペイントボール、と防犯の本に書いてあった。ちなみに、戸棚の鍵は紫の宝石と細い針金で開いた。
穴兎:“ギルドと管理局に通報したが、フロアキュールに近づけないらしい。気を付けろ、確実に大物が動いてる。”
ギルドや管理局という組織が手を出せないなど、ただ事でない。
「よし!」
薬に噴霧器を仕掛け終え、儀礼が頷いたのもつかの間、激しい破壊音と共にその研究室の扉を、黒い剣が切り裂いていた。
睨み付けるように儀礼を見る、アーデスの魔法障壁を破った男。
「お前は何者だ」
紺色の鎧の男が、漆黒の剣を儀礼に向ける。
「アーデスが生き返らせたいと願う程の者か、それとも実験のために殺されたか?」
男の言葉に、儀礼は彼らが人体蘇生術がどうと言っていたのを思い出す。
ふっ、と儀礼は笑った。勘違いも甚だしい。儀礼はあそこで寝ていただけで、死んではいない。
「その様子では、彼は逃げられたようですね」
一応、『透明人間』という存在をちらつかせてみる。
「あの靴だけの仕掛けのことか? それともそいつもお前のように睡眠ガスは効かないのか?」
黒い刃を向けたまま、男が儀礼に近付く。
背中に冷や汗が流れるのを感じながらも、儀礼は落ち着いた声を心がける。
「あなたも効いてないように見えますが? それに、靴など脱いで逃げたのでしょう」
麻酔の効かない者など意外といる。鎧や、魔法の効果も考えられる。
「お前の様にか?」
男が、剣先で儀礼の足元を示して笑った。
ダンッ
その瞬間に、儀礼は銃の引き金を引いた。
弾速の速い痺れ針でも男の実力を考えると、捉えられるギリギリの距離。
男の視線が儀礼の足に向いた一瞬の隙でそれが可能となった。
ガクリと、男がその場に倒れる。その瞳に浮くのは驚愕。
この男の驚いた顔を見るのは、これで二度目だ。
安堵の息を吐くと儀礼はポケットからマイクを取り出しワルツの持つスピーカーへと呼びかける。
「ねぇ、なんかフロアキュールおかしいんだけど」
儀礼が腕輪を通して見たフロアキュール内の冒険者、およそ300人。
その状況を作り出すためにはもっと多くの協力者がいるということになる。
本気で、この襲撃者達はアーデスと戦争でもするつもりのようだ。
その時、扉の外に白い光が現れた。
「ばかな、人が……死体じゃないのか?」
「おい、見ろ! 本当に生きてる」
白い光と共に現れた、研究者らしき男達が儀礼を見て驚いたように口々に言う。どこからか移転魔法を使ってやってきたらしい。
「げっ、まだいるのか」
フロアキュール内は片付けたと思った儀礼だが、まさかの移転魔法。
儀礼は再び銃を構える。
「おい、あれ通信装置じゃないのか?」
痺れにより倒れている男が言う。
目の前で使ったのはまずかったようだ。
「まずい、壊せ」
言いながら、一人の研究者が鎧の男に魔法をかける。一瞬で終えたそれは状態回復の魔法だったらしい。
鎧の男が飛び出すようにして間合いを詰め、黒い剣を振るった。儀礼に避ける暇はなかった。
「うわっ」
儀礼の手の中にあるマイクを黒い刃が切り裂いた。指の間の小さな機械のみを。
『いつでもお前を切れる』と、その太刀筋が語っていた。
「これは預からせてもらう」
儀礼から銃を奪い、鎧の男が言う。その強い怒りの気配に儀礼は体を固まらせる。
「っ、周りの物に触れない方がいいですよ。触れば爆発します。あなた方が無事でも、この部屋の資料は全て消えます」
アーデスの資料を奪おうとした研究者に、儀礼は緊張した声で忠告する。襲撃者たちは動きを止めた。
「自爆覚悟か? だが、それでもいい。全てのデータがなくなれば、『双璧』の降格は決まる」
男が顔を歪ませて笑う。
「時間がありません」
研究者の一人が鎧の男に耳打ちする。
この男達の目的はアーデスの失脚らしい。それに、フロアキュール全てを乗っ取る程の人が動いた。
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