ギレイの旅
見えた首謀者
全員で、アーデスの研究室へ駆けつけようと解析装置の部屋を出る。
そして、走り出したアーデス達は異様な光景を目にした。
敵意を感じなかった彼らは油断していたようだ。人の気配自体を感じないことに気付いていなかった。
ギルドの中で、見る者全員が倒れている。死屍累々――ではない。
廊下に倒れる者、全員死んではいない。深く眠っているようだった。
「遠視で見ましたが、入り口付近も、受付も、ギルド内全てで皆さん眠ってるんです」
走りながらヤンが言う。
「儀礼の仕業か」
倒れた人物たちに視線だけを送りながらアーデスは言う。
「麻酔薬は儀礼の得意分野だからな」
蹴飛ばしても起きないAランクの冒険者たちにワルツが邪悪な笑みを浮かべる。
以前、儀礼がそんな話をしていたのを彼らは思い出した。
確かアーデスを倒すには、と言う話だった。儀礼は移転魔法で逃げられないように全員の動きを封じるとかなんとか言っていた。
その時は、アーデスのパーティの話だと思っていた。まさか、フロアキュールにいる全員だとは夢にも思わなかったが。
「でも、何でだ? 巻き込まないようにか?」
腑に落ちないと、コルロは眉根を寄せる。
全員がドラゴン退治のための完全装備。治療を終え、待機していたような格好。
ならば何故、この冒険者たちはキュールへ来なかったのか。
アーデスの研究室が見えてきた。廊下の凶悪なトラップが全て作動し、研究室の扉が外側から破られている。
「有得ない」
それを目視した瞬間にアーデスの気配が凄味を増した。膨れ上がった重々しい魔力にパーティの面々は息を呑む。
「俺でも、この扉を破るには手間がかかる。俺達がここに来るまでのわずかな時間で破ったのか」
儀礼、ではない。儀礼はならば扉の開け方を知っているので破る必要はない。
そして、自分の仕掛けたトラップにかかるほど間抜けでもない。
「これをやったのもさっきの研究室の奴と同じだな。魔剣を使った跡が残っている」
切れた扉の傷を見てバクラムが言う。
「ここに逃げ込んだ儀礼をその何者かが追ってきたって訳か。ダメだ妨害が多すぎて魔力を追跡できねぇ。何十人関わってんだよ」
苛立つようにコルロは床に散乱した瓦礫を蹴る。
「待て、何か魔力を感じる」
コルロの蹴った破片を元の場所に戻し、アーデスは聞き取れない声で呪文を唱える。
床や、壁、周囲一体に青い色が浮かび上がった。それは、前に儀礼の目の前でアーデスが作った薬品だった。
魔力を流せば色のつく液体。
色の途切れた部分には、複数の人の形に抜けた白い壁、床には青インクが移転魔法の陣を浮かび上がらせている。
移転魔法を使う相手に向かい、儀礼はその薬品をぶちまけたらしい。
「この陣、追えるか?」
「はい」
アーデスの声にヤンは陣の先を遠視する。
「すでに誰もいません。中継地として使っただけのようです。これは、計画性を感じるのですがっ」
不安そうにヤンが言う。
「ダークソードだ」
バクラムが低い声で言った。
「見ろ、この人物の型を。手に持った剣、特徴的な長い角のような鍔、魔剣『ダークソード』だ」
「そうか、敵は『闇の剣士』ってわけか」
その白く抜き取られた人型を睨み、ワルツが獰猛な笑みを浮かべる。
『闇の剣士』。実力ある、名の知れた冒険者だ。
その男の持つ黒い刃の魔剣、ダークソードは古代遺産。相手の魔力を吸い取り、力に変える。敵が強力であればある程強さを増す武器。
特に、魔物の魔力は闇に属する為に吸収しやすいと言われている。
「あのドラゴン、剣の強化のために使ったのかもしれん」
バクラムは言う。
「ついでにあたしらも足止めできて一石二鳥ってわけか」
握り締めた拳で、ワルツはその白い男の影を殴りつけた。
そして、走り出したアーデス達は異様な光景を目にした。
敵意を感じなかった彼らは油断していたようだ。人の気配自体を感じないことに気付いていなかった。
ギルドの中で、見る者全員が倒れている。死屍累々――ではない。
廊下に倒れる者、全員死んではいない。深く眠っているようだった。
「遠視で見ましたが、入り口付近も、受付も、ギルド内全てで皆さん眠ってるんです」
走りながらヤンが言う。
「儀礼の仕業か」
倒れた人物たちに視線だけを送りながらアーデスは言う。
「麻酔薬は儀礼の得意分野だからな」
蹴飛ばしても起きないAランクの冒険者たちにワルツが邪悪な笑みを浮かべる。
以前、儀礼がそんな話をしていたのを彼らは思い出した。
確かアーデスを倒すには、と言う話だった。儀礼は移転魔法で逃げられないように全員の動きを封じるとかなんとか言っていた。
その時は、アーデスのパーティの話だと思っていた。まさか、フロアキュールにいる全員だとは夢にも思わなかったが。
「でも、何でだ? 巻き込まないようにか?」
腑に落ちないと、コルロは眉根を寄せる。
全員がドラゴン退治のための完全装備。治療を終え、待機していたような格好。
ならば何故、この冒険者たちはキュールへ来なかったのか。
アーデスの研究室が見えてきた。廊下の凶悪なトラップが全て作動し、研究室の扉が外側から破られている。
「有得ない」
それを目視した瞬間にアーデスの気配が凄味を増した。膨れ上がった重々しい魔力にパーティの面々は息を呑む。
「俺でも、この扉を破るには手間がかかる。俺達がここに来るまでのわずかな時間で破ったのか」
儀礼、ではない。儀礼はならば扉の開け方を知っているので破る必要はない。
そして、自分の仕掛けたトラップにかかるほど間抜けでもない。
「これをやったのもさっきの研究室の奴と同じだな。魔剣を使った跡が残っている」
切れた扉の傷を見てバクラムが言う。
「ここに逃げ込んだ儀礼をその何者かが追ってきたって訳か。ダメだ妨害が多すぎて魔力を追跡できねぇ。何十人関わってんだよ」
苛立つようにコルロは床に散乱した瓦礫を蹴る。
「待て、何か魔力を感じる」
コルロの蹴った破片を元の場所に戻し、アーデスは聞き取れない声で呪文を唱える。
床や、壁、周囲一体に青い色が浮かび上がった。それは、前に儀礼の目の前でアーデスが作った薬品だった。
魔力を流せば色のつく液体。
色の途切れた部分には、複数の人の形に抜けた白い壁、床には青インクが移転魔法の陣を浮かび上がらせている。
移転魔法を使う相手に向かい、儀礼はその薬品をぶちまけたらしい。
「この陣、追えるか?」
「はい」
アーデスの声にヤンは陣の先を遠視する。
「すでに誰もいません。中継地として使っただけのようです。これは、計画性を感じるのですがっ」
不安そうにヤンが言う。
「ダークソードだ」
バクラムが低い声で言った。
「見ろ、この人物の型を。手に持った剣、特徴的な長い角のような鍔、魔剣『ダークソード』だ」
「そうか、敵は『闇の剣士』ってわけか」
その白く抜き取られた人型を睨み、ワルツが獰猛な笑みを浮かべる。
『闇の剣士』。実力ある、名の知れた冒険者だ。
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