ギレイの旅
フロアキュールの異変
「これだけの陣だ。作るには相当な人手と時間が必要だっただろう」
紙に、その形状を正確に描き写しながらアーデスが言う。
「その割りに、消す作業は雑。相当慌てたようだな、これは」
別の場所にも残った陣の断片を見つけ、コルロは靴の裏でその周囲を擦る。よりはっきりとその陣が姿を現した。
大勢の人の足で踏まれて判別しづらいが、竹箒か何かで擦った跡がある。
これをやった者は、魔力での完全消滅を諦め、見た目だけでも目立たないようにしたのだろう。
思い浮かぶ疑問は皆、同じ。一体誰が、何のために儀式魔法を使い、この場所にドラゴンを呼び出したのか。
「復元しますか?」
消え残ったその陣を見つめてヤンが聞く。
一部分のその陣が薄っすらと輝きだす。走るようにその欠片から光が伸び、魔法陣の形が縁取られる。
「やってみるか?」
楽しいものを見つけたように、笑いながらアーデスは言う。
「おい、今のと再戦する気か!」
コルロは実弾、と言う物をアーデスの側頭部に向けて撃ってみた。
見事に透明な障壁に跳ね返された。アーデスがコルロを振り向きゆっくりと剣を構える。
「んん? 俺が悪いって?」
頬を引きつらせてコルロは言う。
あれだけの強敵と戦っておきながら、余裕のあるメンバーに、よもや味方内での臨戦態勢かと思われた、その時。
ビーッという機械音が広間に響いた。
『ねぇ、なんかフロアキュールおかしいんだけど――』
儀礼の声が、ワルツの持つスピーカーから流れる。
『ばかな、人が……』『おい、見ろ……』
と複数人の男の小さな声がスピーカーから流れた。
『げっ、まだいるのか』
儀礼の面倒そうな声。
『おいあれ、通信装置じゃないか、まずいぞ』『壊せ!』
少し大きくなった男たちの声。儀礼へと近付いたようだ。
『うわっ、……』
ブチッ ザザザザザ……
マイクを壊されたらしく、ノイズだけがスピーカーから聞こえてくる。
「おいっ、ギレイ! お前何やってんだよ」
ワルツは思わずスピーカーに向かって叫んだ。
「落ち着け、ワルツ。こっちの声は向こうに聞こえない。それよりすぐにフロアキュールに戻るぞ!」
アーデスが言い、5人を白い光が包んだ。
********************
フロアキュールに戻ったアーデス達。
転移先の、儀礼がいるはずの古人解析装置の研究室はもぬけの殻だった。
研究室を囲むように、二重に張ってあった結界と障壁は破られているが、室内は軽い戦闘があったことを窺わせる程度に荒れているだけ。
寝台の様な解析装置自体に張ってある障壁は破られていない。
全員が部屋の中に散り手がかりを探す。
「これは……内側から開けたのか?」
眉をしかめてアーデスが解析装置のロック部分を確かめる。
「おいっ、儀礼の靴が落ちてる!」
解析装置の横に落ちていた靴を拾いワルツが叫ぶ。
「解析データ、そのまま残ってるな。ブッ、あいつ寝てたのか? あん中で。しかし、これだと40分位しかあの中にいなかったことになるぞ」
操作パネルを確かめ、コルロが言う。
「丁度、俺達が戦っていた時間、か」
解析装置の脇で、壊れたマイクの破片を拾いアーデスが言った。
「外の障壁に攻撃された途端に、解析装置の内部温度が上昇してる。何だこれは?」
データを確かめながらコルロは驚く。
「扉をぶち破ったのは魔剣の類だ。この壊れ方、魔法やハンマーではない」
研究室の扉を調べ、バクラムが言う。
「フロアキュール内に、ギレイさんの反応がありません。探索魔法にもかからないなんて、厳重な結界の中にいるとしか思えません。何者かに、攫われたんでしょうかっ!?」
焦ったように、ヤンは目元に涙を浮かべる。
「私、すぐに助け出せるように待ってるって、儀礼さんに言ったのに……っ」
全員が動いたその間は1分ほど。
「アーデス様、ギルド内が!……っアーデス様! 研究室が!!」
涙を堪えながらも遠視魔法で手がかりを探していたヤンが、驚いたように叫んだ。
紙に、その形状を正確に描き写しながらアーデスが言う。
「その割りに、消す作業は雑。相当慌てたようだな、これは」
別の場所にも残った陣の断片を見つけ、コルロは靴の裏でその周囲を擦る。よりはっきりとその陣が姿を現した。
大勢の人の足で踏まれて判別しづらいが、竹箒か何かで擦った跡がある。
これをやった者は、魔力での完全消滅を諦め、見た目だけでも目立たないようにしたのだろう。
思い浮かぶ疑問は皆、同じ。一体誰が、何のために儀式魔法を使い、この場所にドラゴンを呼び出したのか。
「復元しますか?」
消え残ったその陣を見つめてヤンが聞く。
一部分のその陣が薄っすらと輝きだす。走るようにその欠片から光が伸び、魔法陣の形が縁取られる。
「やってみるか?」
楽しいものを見つけたように、笑いながらアーデスは言う。
「おい、今のと再戦する気か!」
コルロは実弾、と言う物をアーデスの側頭部に向けて撃ってみた。
見事に透明な障壁に跳ね返された。アーデスがコルロを振り向きゆっくりと剣を構える。
「んん? 俺が悪いって?」
頬を引きつらせてコルロは言う。
あれだけの強敵と戦っておきながら、余裕のあるメンバーに、よもや味方内での臨戦態勢かと思われた、その時。
ビーッという機械音が広間に響いた。
『ねぇ、なんかフロアキュールおかしいんだけど――』
儀礼の声が、ワルツの持つスピーカーから流れる。
『ばかな、人が……』『おい、見ろ……』
と複数人の男の小さな声がスピーカーから流れた。
『げっ、まだいるのか』
儀礼の面倒そうな声。
『おいあれ、通信装置じゃないか、まずいぞ』『壊せ!』
少し大きくなった男たちの声。儀礼へと近付いたようだ。
『うわっ、……』
ブチッ ザザザザザ……
マイクを壊されたらしく、ノイズだけがスピーカーから聞こえてくる。
「おいっ、ギレイ! お前何やってんだよ」
ワルツは思わずスピーカーに向かって叫んだ。
「落ち着け、ワルツ。こっちの声は向こうに聞こえない。それよりすぐにフロアキュールに戻るぞ!」
アーデスが言い、5人を白い光が包んだ。
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フロアキュールに戻ったアーデス達。
転移先の、儀礼がいるはずの古人解析装置の研究室はもぬけの殻だった。
研究室を囲むように、二重に張ってあった結界と障壁は破られているが、室内は軽い戦闘があったことを窺わせる程度に荒れているだけ。
寝台の様な解析装置自体に張ってある障壁は破られていない。
全員が部屋の中に散り手がかりを探す。
「これは……内側から開けたのか?」
眉をしかめてアーデスが解析装置のロック部分を確かめる。
「おいっ、儀礼の靴が落ちてる!」
解析装置の横に落ちていた靴を拾いワルツが叫ぶ。
「解析データ、そのまま残ってるな。ブッ、あいつ寝てたのか? あん中で。しかし、これだと40分位しかあの中にいなかったことになるぞ」
操作パネルを確かめ、コルロが言う。
「丁度、俺達が戦っていた時間、か」
解析装置の脇で、壊れたマイクの破片を拾いアーデスが言った。
「外の障壁に攻撃された途端に、解析装置の内部温度が上昇してる。何だこれは?」
データを確かめながらコルロは驚く。
「扉をぶち破ったのは魔剣の類だ。この壊れ方、魔法やハンマーではない」
研究室の扉を調べ、バクラムが言う。
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