ギレイの旅
実験
フロアキュールの研究室の一室で、儀礼は大あくびをする。早起きした儀礼はひたすら眠かった。
アーデスは装置を借りる手続きに受付けに行った。なんだかんだ言いながら、アーデスも遺体解析装置に生きた人間を入れるのは興味があるらしい。
嬉々として準備を進めていた。
解剖されるよりはまし、と儀礼は自分を納得させる。
儀礼は早くも装置の上に座りもう一度、大あくびをする。
「眠い」
何日かの寝不足と、慣れない結界を張る作業。今日の早起き。早朝からの運動と逃走劇。
儀礼は今日、長い昼寝ができそうだった。永眠になることはない、はず、と思う。
そこへ呆れたような顔でワルツがこの研究室に入ってきた。
「なんだって、お前そんな危険なことを……自分から言い出したって? アーデスに操られてないか?」
心配そうにワルツが儀礼の額を触る。それで操られてるか、分かるのだろうか? 儀礼は首を傾げる。
「操るって……。ちゃんと自分の意思ですよ。たぶん、僕も知りたいんだ。精霊っていう存在」
儀礼は笑う。いつも儀礼を助けてくれる、その存在を儀礼はまだ直接見たことがない。
白い光を放つ腕輪の精霊、いたずらな炎の精霊、車を動かす風の精霊、友人たちを守るのは恐らく大地の精霊。他にも、電撃を強化したもの、儀礼の改造銃に力を貸すもの。
儀礼の周りに多くの精霊を感じられる時がある。
その繋がりが儀礼の中のどこにあるのか、儀礼にはまだわからない。
儀礼は知りたかった。その精霊という存在たちに感謝を伝える方法を。
「そうか。ならいいけど」
それでも、心配そうにワルツは大きな装置を見る。
今まで、試験的に生きた人間が使って死んだ者はいない。死ぬ前に、皆救出されている。
脱水状態で衰弱していたり、身動きできないという状況にパニックを起こしていたり、全てを解析されるという人間の理解を超えた状況に発狂した者もいたが。
「そうだ、ワルツ。これ、持っててよ。友達に渡す前に、実験したかったんだ」
そう言って、儀礼は小さな金属の塊をワルツに渡す。それは細長い形で、中心には小さな穴が幾つも空いていた。
「なんだこれ、スピーカーか?」
「うん、そう。ずっと片側だけだったから」
利香の護衛機につける予定のスピーカーだ。これがちゃんと使えれば、利香ちゃんの定時報告が獅子との会話に変わる。
「何が?」
ワルツが首を傾げる。
「ううん、こっちの話し。このマイクでしゃべると、そっちから声が聞こえるはずなんだ。どの位の距離までいけるか試したくてさ。装置の中なら何十km分か稼げるでしょう」
障害の多くなる装置の中から、呼びかけて使えればほぼ問題なく使えるだろう。
今、利香の持つ護衛機についているのより小型化することができた。
人が持ち歩くのではなく、護衛機につけるためだ。
儀礼がこんな物に入りたいと思ったのはこの実験のためもあった。
儀礼はマイクのボタンを押す。
ビーッ、とブザーが鳴った。
『聞こえる?』
儀礼の声がスピーカーから流れる。
「ああ、目の前で生の声が聞こえてるぞ」
ワルツが笑った。
『何かあったらちゃんと助け呼ぶから』
またマイクに語りかけながら、儀礼も笑う。
『助けに来てね』
にっこりとワルツの目を見て儀礼が笑えば、ワルツは照れたように顔を赤くして笑っていた。
アーデスは装置を借りる手続きに受付けに行った。なんだかんだ言いながら、アーデスも遺体解析装置に生きた人間を入れるのは興味があるらしい。
嬉々として準備を進めていた。
解剖されるよりはまし、と儀礼は自分を納得させる。
儀礼は早くも装置の上に座りもう一度、大あくびをする。
「眠い」
何日かの寝不足と、慣れない結界を張る作業。今日の早起き。早朝からの運動と逃走劇。
儀礼は今日、長い昼寝ができそうだった。永眠になることはない、はず、と思う。
そこへ呆れたような顔でワルツがこの研究室に入ってきた。
「なんだって、お前そんな危険なことを……自分から言い出したって? アーデスに操られてないか?」
心配そうにワルツが儀礼の額を触る。それで操られてるか、分かるのだろうか? 儀礼は首を傾げる。
「操るって……。ちゃんと自分の意思ですよ。たぶん、僕も知りたいんだ。精霊っていう存在」
儀礼は笑う。いつも儀礼を助けてくれる、その存在を儀礼はまだ直接見たことがない。
白い光を放つ腕輪の精霊、いたずらな炎の精霊、車を動かす風の精霊、友人たちを守るのは恐らく大地の精霊。他にも、電撃を強化したもの、儀礼の改造銃に力を貸すもの。
儀礼の周りに多くの精霊を感じられる時がある。
その繋がりが儀礼の中のどこにあるのか、儀礼にはまだわからない。
儀礼は知りたかった。その精霊という存在たちに感謝を伝える方法を。
「そうか。ならいいけど」
それでも、心配そうにワルツは大きな装置を見る。
今まで、試験的に生きた人間が使って死んだ者はいない。死ぬ前に、皆救出されている。
脱水状態で衰弱していたり、身動きできないという状況にパニックを起こしていたり、全てを解析されるという人間の理解を超えた状況に発狂した者もいたが。
「そうだ、ワルツ。これ、持っててよ。友達に渡す前に、実験したかったんだ」
そう言って、儀礼は小さな金属の塊をワルツに渡す。それは細長い形で、中心には小さな穴が幾つも空いていた。
「なんだこれ、スピーカーか?」
「うん、そう。ずっと片側だけだったから」
利香の護衛機につける予定のスピーカーだ。これがちゃんと使えれば、利香ちゃんの定時報告が獅子との会話に変わる。
「何が?」
ワルツが首を傾げる。
「ううん、こっちの話し。このマイクでしゃべると、そっちから声が聞こえるはずなんだ。どの位の距離までいけるか試したくてさ。装置の中なら何十km分か稼げるでしょう」
障害の多くなる装置の中から、呼びかけて使えればほぼ問題なく使えるだろう。
今、利香の持つ護衛機についているのより小型化することができた。
人が持ち歩くのではなく、護衛機につけるためだ。
儀礼がこんな物に入りたいと思ったのはこの実験のためもあった。
儀礼はマイクのボタンを押す。
ビーッ、とブザーが鳴った。
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「ああ、目の前で生の声が聞こえてるぞ」
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『何かあったらちゃんと助け呼ぶから』
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