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ギレイの旅

千夜ニイ

魔虫退治の儀礼編 コルロの取引

「おい、ギレイ。それ、俺の仕事」
不審人物を撃った儀礼にくくくっと、またコルロが笑う。
風効果の腕輪を無言で返しながら、よく笑う人だなと儀礼は思う。
そんなに多く会ったわけではないが、儀礼の見ている限り笑わない日はなかった。


「じゃぁ、遠いので後始末お願いします……。あと、さっきはずした機械の回収も……お願いします」
儀礼は硬い口調で外を指差して言う。目には涙が浮いてきそうだった。
コルロの笑いが止まった。ぽんぽんと儀礼の頭を撫でるように叩く。


「その部屋出るなよ。出たら分かるからな」
窓から出ながらコルロは黄色く光る腕輪を示す。今、自分がその結界を通り越したらしい。


 窓の外に立つコルロの腕で一斉にいくつもの腕輪が光りだす。
真剣なコルロの表情に儀礼はぞくりと鳥肌が立った。急激な魔力の上昇。多分、そういうもの。
闘気を魔力と変換したならきっと、コルロの魔力は今の獅子を上回っている。
多数の魔法を瞬時に発動した。『連撃の魔法使い』やはり化け物だ。
次の瞬間には白い光と共にコルロの姿が消えた。Aランクの冒険者の様相で。


 平和になったので、儀礼はまた鳥に機械を貼り付ける作業に戻った。
窓から狙って次々に撃つ。地味な作業だ。


 5分後、白い光が室内に現れ、コルロは小さな機械を3つ手に持って帰って来た。
「何人いたか聞くか?」
機械を受け取りながら儀礼は無言で首を横に振る。
そんなこと知りたくもない、その人達がどうなったのかも。
儀礼は重い息を吐く。


 コルロに借りた腕輪が緑色に光った時、儀礼の目に映ったのは儀礼の撃った男だけではなかった。
撃てる所にいたのがその男だけだったのだ。
コルロが的から外した小さな機械はそれぞれ別の人物の手に拾われ移動している最中だということもわかった。
一日後にその機械が砕け散ると分かっていても放置するわけにはいかない。


 それがなんと言う魔法なのか儀礼は知らない。しかし、ものすごく恐ろしいものだと感じた。
遠い所からそこに居るかのように見えてしまう、つまり見られてしまう。
コルロが結界を張ったのも頷ける。
今の儀礼はあまりに無防備だった。覗いた一人から、何かよく分からない衝撃のようなものを食らった。
実際には儀礼自身に何のダメージもなかったのだが、顔を思い切り殴られたような気がした。
儀礼の手には余るので、仕方なく、全てをコルロに任せたのだが。これでまた借りが増えていく。


 護衛はいらないなどと言う儀礼は自分がひどく傲慢な人間に思えてきた。
実際はこんなに力なく、守らなければならない物も守れなくなりそうだ。


 フェード。新しい国に入ったからには新しい対策が必要と言うことか。
考え込む儀礼に、コルロが話しかけてきた。
「ギレイ、お前、本当に無防備すぎるな。魔力の反撃食らったんだろ」
ケラケラとコルロは笑う。何を持ってそう判断するのかわからないが、Aランクの魔法使いにはお見通しなのだろう。


「しょうがないよなぁ。よし、ギレイ取引しようぜ」
コルロがにやりと笑う。アーデスのような危険なものではない。いたずらっぽい笑い方だ。
「俺にもその銃作ってくれよ。代わりに俺の腕輪どれかやるから」
言いながら、コルロは自分の腕に付いている腕輪をいくつか外す。


「どんなのが欲しい? 俺のお勧めなら身を守るやつか、さっきのギレイみたいに覗き見る魔法を切るやつか、攻撃系のもあるけど」
机の上に並べられたそれを見て儀礼の瞳は輝く。
「うわ、ほんとに? いいの?」
儀礼は机の前に屈みこみ、顔を近づけるようにしてそれらを見る。


 どれも魔石の組み込まれたアクセサリーで大きな魔石の物もあれば、小さな魔石が大量に散りばめられている物もある。相当値の張る物だろう。ワイバーンの瞳といい勝負だ。
こんな物を大量に持っているとは、やはり、侮れない。アーデスのパーティ。


「魔法から身を守るのはワルツに貰ったワイバーンの瞳があるので大丈夫だと思います」
儀礼はホルダーの中、深くに隠した宝石を思い出す。紫色の、古代遺産の解封などをやってのける危険な宝物。


「ああ、ワルツの瞳か。見せてみろよ相性いいの選んでやる」
何故かワルツの瞳になっている。儀礼はホルダーの奥からそれを取り出し、コルロに渡す。
コルロはそれを明かりにかざしたり、魔力を込めているのか光らせたりして眺めていた。


「確かに防魔力が半端じゃねぇな、これ。さっき、ギレイがノーダメージだったのこいつのおかげだよ。じゃなかったら目が潰れててもおかしくなかったな。ふーん、ワルツもいい物やったな。しかし、ギレイ。これ効果発動してる……」
コルロが言い終える前に儀礼はその宝石を元のポケット、奥深くへとしまう。


「見なかったことに」
そんなことまでわかるとは思ってもいなかった。儀礼は焦って改造銃を構える。
くくくっとまたコルロは笑い出す。儀礼の構えた銃など相手ではないらしい。
まぁ、今出てくる弾はあの小さな機械なのだが。


「大丈夫、黙っとくから。その分、銃の改造に回してくれよ」
にやにやと笑う顔は打算が含まれている。相当上乗せされたようだ。大砲でも作れと言うのか。
いや、人間大砲のような攻撃型魔法使いのコルロにそんなもの必要ないだろう。


「どんなの作ればいいんです?」
とりあえず、聞いてみる。儀礼にできることだって限度がある。無理なことは無理だ。
「アーデス仕留められる様な」
笑いながらコルロが言う。
「無理です」
儀礼は即答した。そんな物、儀礼の方が欲しい。

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