ギレイの旅
計略の遺跡9
無事遺跡から脱出することに成功した儀礼とクリーム。
東南の塔にまで入り、コントロールルームから全ての遺跡内部を把握することができて、儀礼は大満足で歩いていた。
その扉の前に来るまでは。
「クリーム。やっぱりもう一回地下の道見てこないかな」
ぎこちなく儀礼が言う。マップを把握した段階ですでに地下の落とし穴に用はない。
「何言ってんだ。向こうで黒獅子が待ってんだろ」
クリームは鍵となる水晶を扉にかざした。水晶が光り輝き重い扉が勝手に開いてゆく。
案の定、扉の前で、獅子が怒り心頭で出迎えている。固まる儀礼。
その儀礼をかばうようにして、儀礼の腕を引き現れたクリーム。
「お前……!」
騙されたことから闘志剥き出しの獅子。だがクリームは案外平然としている。
「あたしはお前がうらやましいよ」
そう言って、儀礼の体を投げ渡す。
「?」
戦う様子のないゼラードに調子を狂わされる獅子。
「悪かったな、騙したりして。あたしは儀礼の敵にはならない」
意味がわからず、頭に疑問付を並べる獅子。
「彼女は、人違いして僕を捕まえようとしたんだって。でも間違いに気付いて、反省して僕の頼みを聞いてもらったんだ。これからは冒険者ギルドでしっかり働くってさ」
ようやく硬直から戻った儀礼が言った。
「彼……女!?」
「クリーム・ゼラードだ、改めてよろしく」
片方の口端を上げ、挑むように片手を獅子の前に差し出すクリーム。
「儀礼、こいつは改心なんてしていない、騙されるな! クリーム・ジェラートなんて俺でもわかる偽名だ」
クリームを指差して儀礼を見る獅子。
「獅子……」
はぁ、とため息をつく儀礼。
「人を指差すな!」
怒った様子で双剣を構えるクリーム。
「やるか!?」
光の剣を抜く獅子。
理由はなんでもよくて、ただ二人が腕試しをしたかっただけらしい。
キン キン
と金属音を響かせ始めた二人に、服の濡れたままでいて、ひどく疲れた儀礼は、こめかみに青筋を浮かべる。
「二人とも、僕のいないところでやってくれ!」
怒りに任せて、門番のライオンの口から鎖を引っ張る。
ガコン
にぶい音とともに、二人の足元の地面が消えた。
「いってらっしゃい」
二人の見た儀礼の顔はさわやかな笑顔だった。
「儀礼の奴めっ」
落ちた穴の底に二人は見事に着地する。顔を見合わせ、仕方なく武器を仕舞う。
「お前、出口わかるか」
獅子が聞く。
「ああ。さっき全体のマップを見たからな」
薄暗い遺跡の中を獅子とクリームは仕方なく二人で歩く。互いに相手の強さはわかっていた。
ガーディアンに出会った場合重要な戦力になるためはぐれるのは得策でない。
日は完全に落ち、十六夜月が小さな明り取りからかすかに遺跡内部を照らしていた。
「ともせ」
さっき、儀礼がしたようにクリームもその言葉を遺跡に呼びかける。
『コード認証』
遺跡が答え、薄暗い道に炎がともった。それを見て、あの恐ろしいガーディアンを思い出す。
それをクリームは倒したのだ。
「なんか、A級ガーディアンって割には結構簡単に倒せちまって……いや、一人だったら確かに死んでる位だったのはわかるんだけど……実感がないと言うか……」
歩きながらクリームは双剣に触れて、口を開いた。自分でもまだ、戸惑っている。
「あー、それ俺もわかる。初めてB級悪魔倒したとき、多分そんな感じだったな」
無敵に近い者に、いつのまにか自分の力が勝っていた。 
「そうか。でもあれ本当にA級……」
だったのか、と言う前に獅子が口を挟む。
「ま、Sランク連れてりゃ、そんなもんなのかもな」
「S?」
獅子の言葉に頭がついていかないクリーム。
「だって、儀礼、管理局ランクSだろ」
当然のように言う。
「へ?」
まぬけな顔で声をもらすクリーム。
「ええー!!」
立ち止まって驚愕の叫びをあげた。
(どうりで……キャンセル料も、ぽんと払えるわけだ)
いくつもの罠を見破り、回避し、ガーディアンを押さえ込み、自分を信じた。
(……至高の時)
父のことを思い出す。何年ぶりかに、怨みではなく、懐かしさを。
『自分の全てをかけてついて行ける人。そんな人に出会えたら、最高だな』
けして、先頭に立つタイプではなかったけれど、裏舞台で活躍していた父。
信じていた主に裏切られるまでは……。 
(怨んだよ、恨んだし、呪ったよ。……でも、何にもならなかった……。だから殺した。でも……自分が苦しくなるばかりだった)
立ち止まったクリームを、どうしたんだ? と見る獅子。闇の欠片も見えない、のんきな姿。
「……やっぱり、お前が羨ましいよ」
素直な気持ちで、クリームは笑った。
東南の塔にまで入り、コントロールルームから全ての遺跡内部を把握することができて、儀礼は大満足で歩いていた。
その扉の前に来るまでは。
「クリーム。やっぱりもう一回地下の道見てこないかな」
ぎこちなく儀礼が言う。マップを把握した段階ですでに地下の落とし穴に用はない。
「何言ってんだ。向こうで黒獅子が待ってんだろ」
クリームは鍵となる水晶を扉にかざした。水晶が光り輝き重い扉が勝手に開いてゆく。
案の定、扉の前で、獅子が怒り心頭で出迎えている。固まる儀礼。
その儀礼をかばうようにして、儀礼の腕を引き現れたクリーム。
「お前……!」
騙されたことから闘志剥き出しの獅子。だがクリームは案外平然としている。
「あたしはお前がうらやましいよ」
そう言って、儀礼の体を投げ渡す。
「?」
戦う様子のないゼラードに調子を狂わされる獅子。
「悪かったな、騙したりして。あたしは儀礼の敵にはならない」
意味がわからず、頭に疑問付を並べる獅子。
「彼女は、人違いして僕を捕まえようとしたんだって。でも間違いに気付いて、反省して僕の頼みを聞いてもらったんだ。これからは冒険者ギルドでしっかり働くってさ」
ようやく硬直から戻った儀礼が言った。
「彼……女!?」
「クリーム・ゼラードだ、改めてよろしく」
片方の口端を上げ、挑むように片手を獅子の前に差し出すクリーム。
「儀礼、こいつは改心なんてしていない、騙されるな! クリーム・ジェラートなんて俺でもわかる偽名だ」
クリームを指差して儀礼を見る獅子。
「獅子……」
はぁ、とため息をつく儀礼。
「人を指差すな!」
怒った様子で双剣を構えるクリーム。
「やるか!?」
光の剣を抜く獅子。
理由はなんでもよくて、ただ二人が腕試しをしたかっただけらしい。
キン キン
と金属音を響かせ始めた二人に、服の濡れたままでいて、ひどく疲れた儀礼は、こめかみに青筋を浮かべる。
「二人とも、僕のいないところでやってくれ!」
怒りに任せて、門番のライオンの口から鎖を引っ張る。
ガコン
にぶい音とともに、二人の足元の地面が消えた。
「いってらっしゃい」
二人の見た儀礼の顔はさわやかな笑顔だった。
「儀礼の奴めっ」
落ちた穴の底に二人は見事に着地する。顔を見合わせ、仕方なく武器を仕舞う。
「お前、出口わかるか」
獅子が聞く。
「ああ。さっき全体のマップを見たからな」
薄暗い遺跡の中を獅子とクリームは仕方なく二人で歩く。互いに相手の強さはわかっていた。
ガーディアンに出会った場合重要な戦力になるためはぐれるのは得策でない。
日は完全に落ち、十六夜月が小さな明り取りからかすかに遺跡内部を照らしていた。
「ともせ」
さっき、儀礼がしたようにクリームもその言葉を遺跡に呼びかける。
『コード認証』
遺跡が答え、薄暗い道に炎がともった。それを見て、あの恐ろしいガーディアンを思い出す。
それをクリームは倒したのだ。
「なんか、A級ガーディアンって割には結構簡単に倒せちまって……いや、一人だったら確かに死んでる位だったのはわかるんだけど……実感がないと言うか……」
歩きながらクリームは双剣に触れて、口を開いた。自分でもまだ、戸惑っている。
「あー、それ俺もわかる。初めてB級悪魔倒したとき、多分そんな感じだったな」
無敵に近い者に、いつのまにか自分の力が勝っていた。 
「そうか。でもあれ本当にA級……」
だったのか、と言う前に獅子が口を挟む。
「ま、Sランク連れてりゃ、そんなもんなのかもな」
「S?」
獅子の言葉に頭がついていかないクリーム。
「だって、儀礼、管理局ランクSだろ」
当然のように言う。
「へ?」
まぬけな顔で声をもらすクリーム。
「ええー!!」
立ち止まって驚愕の叫びをあげた。
(どうりで……キャンセル料も、ぽんと払えるわけだ)
いくつもの罠を見破り、回避し、ガーディアンを押さえ込み、自分を信じた。
(……至高の時)
父のことを思い出す。何年ぶりかに、怨みではなく、懐かしさを。
『自分の全てをかけてついて行ける人。そんな人に出会えたら、最高だな』
けして、先頭に立つタイプではなかったけれど、裏舞台で活躍していた父。
信じていた主に裏切られるまでは……。 
(怨んだよ、恨んだし、呪ったよ。……でも、何にもならなかった……。だから殺した。でも……自分が苦しくなるばかりだった)
立ち止まったクリームを、どうしたんだ? と見る獅子。闇の欠片も見えない、のんきな姿。
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