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ギレイの旅

千夜ニイ

計略の遺跡6

 広場を出て再び儀礼が前を走り、ゼラードがまるきり同じ後を踏む。
 ドーン!
後方で爆発の音がする。パラパラと天井から粉が降ってきた。
(三本目を右、突き当たるまで回避、左に……)
「ちっ」
儀礼が舌打ちをする。頭の中のマップを進んでいたが、目の前にわらわらとロボットの山が現れた。
「回っていこう」
すぐに別のルートを探り、身をひるがえす儀礼。どうやら、道に変更があるようだ。


「やっぱり遺跡が起動した時点でこの遺跡に変更が起きてる。主にあの小さいロボットどもが出てくる道が出現してるのかな。大体の把握はできたけど、だいぶ遠回りさせられる。くそっ、制御コードがわかればな。音声認識だと探すのが手間だ。言語が、音が変わってないのだけが救いか」
ついこの間、言葉の違いに悩まされた。何千年と経った遺跡で言語が変わらないのは奇跡だと感じる。
独り言に近いペースで話し続ける儀礼。それでも、トラップをよける足元に危なげがないのが不思議だ。
「これだと、搭の入り口を開けるのも大変かもな。いや……逆に、入り口は音声コードじゃない可能性が高いか。まぐれでも逃げ回る人間が入ってきたら危険だしな。何か、ワイバーンの瞳のようなアイテムか。……だとするとあのガーディアン、倒さなきゃだめか」
ぶつぶつと儀礼が一人で呟くのは考えをまとめようとしているらしい。


「そろそろ1分だぞ」
ゼラードが後方の気配を探りながら言う。
「ああ、わかった。ちょっと足りなかったな。もう少し回るけど大丈夫?」
ついてこれるか、と儀礼は聞く。
「問題ない。生きて出られるなら、な」
皮肉のようにゼラードは答える。
できれば、あの化け物のような敵は相手にしたくない。目の前にいれば、一分と持たず殺されるだろう。あの力と速さはまさしく反則だと二人には思えた。


 シュー
いつかのミサイルの音が聞こえてきた。だが、その音は以前より大きい。
「まさか!!」
 ドーン!! ガラガラ……
轟音と砂煙と共に、二人の走る道の側面の壁が破壊される。儀礼と獅子が二人がかりで壊せなかった遺跡の壁をたやすく破壊した。
「遺跡を崩壊させるなんて、ガーディアンのすることじゃないぞ。目的が違うからか。ここまで常識外れるとほんと狂うな」
儀礼はそう言いながらも、どこか楽しげに瞳が輝いているのは気のせいだろうか……。
砂煙の向こうから巨体のガーディアンが姿を現す。
広間から、外回りの道まで見事な穴を開けてくれた。
 シュー、シュー、シュー。
そのミサイルが、複数で飛んでくる。さらに、動き出したガーディアンがその凶悪な腕を振るう。
周りの壁を粉砕し、前進できるだけの道を作り、迫ってくる。
「狩るだけのものか。ガーディアン(守護者)と言うより、ハンター(狩人)かな。管理局側としては貴重な遺産を壊す奴は、格下げしたい気分だよ」


「お前、よく軽口言ってられるな」
ゼラードは、顔を引きつらせている。明らかな命の危機を本能が告げている。
「並走しよう、後ろにいたら危ない。道の交差地点は落とし穴がある、中心部は踏むな。それから、蜀台の直線状も、トラップの定位置。張ってある鉄線は、君なら見えるな。引っかかれば矢が飛んでくるから。浮き上がってたり、色の違うブロックは避けて。ひび入ってたり、欠けてるブロックはかえって安全だから」
儀礼は簡単にできる限りの説明をする。
「だいたいはわかった。で、逃げ回ってどうすんだ?」
速度を上げ、儀礼の隣りに並び立つと、ゼラードはその後の対応を問い詰める。
「搭についてもロック開けてる暇はないね。外壁壊して、外に出てもこいつが止まる保証ないし。こっち。次の道、左」
ゼラードの言葉から考えて作戦を変えたようで、儀礼は進むべき道を指し示した。
 シュー、シュー、シュー、 ドーン!!
逃げる二人の後ろから休む暇もなく、ミサイルや、ガーディアンの腕が飛んでくる。
それを、打ち落とし、かわし、走りながら儀礼は説明する。
「基本的に、こういうやつらの核は体の中心にある。大切な部分を守るためと、起動時のバランスが大切だから」
後ろにいるガーディアンを振り向かずに示す儀礼。
「中心?」
ゼラードは聞き返す。そう言われても、どこが中心に当たるのか、堅そうな外壁の中では手の出しようがない、と。
「狙うなら、頭か胴体。情報収拾のための機関、レンズとかマイクは頭部に集めることが多いから」
迫り来るガーディアンの攻撃を交わしつつ、道を進みながら会話を続ける二人。
更に儀礼は、この状態で、脱出ルートとこの遺跡の掌握、ガーディアンの退治方法を探っていた。


「まず、額についてるレンズを壊したい。多分、あれで僕らの動きを追ってる。僕が気をそらせるから、上からうまく攻撃できない?」
上から、と儀礼は言うが、ガーディアンの大きな体で天井にそれほど隙間はない。
「どうすんだよ?」
二本の剣を構えたはいいが、手の出しようがなく走りながら問い返すゼラード。
「こうするんだっ!」
儀礼はくるりと振り返ると腕から二本のワイヤーを出し、両側の壁の燭台に引っ掛けてからガーディアンの太い腕に巻きつける。ガーディアンが腕を動かせば、両方の燭台が引かれ、ガーディアンの足元に穴が開いた。両腕を固定された状態でガーディアンは穴に宙吊りとなる。
「なるほどな」
言いながら、ゼラードはもう走っていた。この敵を長い時間の拘束など無理だ。
勢いをつけるためゼラードが飛び上がれば、儀礼のいる方向で炎のようなものが上がり、ガーディアンの注意がそちらに向いた。


 ゼラードは双つの剣を一箇所に狙いを定めて、突き刺した。
ガーディアンの硬い頭にゼラードの薄い剣がすべるように突き刺さった。
透明な小さなレンズが火花を散らし爆発する。
ゼラードは素早く後退し、儀礼の横にまで戻った。
「……その剣、もしかして普通のじゃない?」
儀礼が驚いたように目を見張る。
「父親の形見だ」
ゼラードは油断なくガーディアンへと双剣を構える。ガーディアンは腕を振り回し、儀礼のワイヤーを引きちぎった。
そのまま落とし穴へと落下したらしく、轟音が遺跡を揺らす。
「えっと、ごめん。そうじゃなくて。名のある剣?」
千切れたワイヤーを腕の中に回収しながら慌てる様子もなく儀礼は言う。
命の危険より剣の名が大事なのか。
「名があるのかは知らない。何も聞く前に父は死んだ」
答えるゼラードの瞳は暗い。父親がこの剣を振るっているのは見たことがあるが、その使い方を教えてはくれなかった。

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