ギレイの旅
氷の谷8
夜が明けるまで、儀礼達は仮眠についていた。
夜が明け始めたころに、儀礼は目を覚ます。
管理局のその部屋は研究設備以外にも、泊り込むための設備が充実していて、個別の寝室が5つ、風呂にトイレに食事室に、会議室。
誰が使うんだ、と儀礼は本気で思っていた。まさか自分が使うことになるとは。
拓と利香、二人の少女と少年が5つのベッドをそれぞれ使って寝ている。
獅子はソファーで寝たままだ。慣れているので、大丈夫だろう。
儀礼はモニターの前で突っ伏したまま眠っていた。うたた寝ではない、そうやって寝ようと思って寝たのだ。
いつものことだし。
うーん、と伸びをして、眠っていた間の報告書を確認する。作業は順調に進んでいて、特に問題はないようだ。
なるべく近い時代の者から一人ずつ人間に戻している。
戻した者はサウルの研究施設へ送り、健康であるかなどを調べるとともに、長い説明の時間と、話しをする相手が必要で、時間と人手がかかってしまう。
数百年前の人になると、言葉が通じない可能性が出てくる。
邪魔をする人間は後を絶たないし、関わってる人間には疲れが出てくる。
昼頃になれば管理局の方で、専門の対策本部を設立してくれるだろうから、それまでが儀礼たちの凌ぎ場だ。
儀礼が要請を出したのが真夜中。後半日頑張りどころだ。
「ギレイ、だいぶ終わったぞ。残りは28人。悪いが俺、限界だ。寝る」
儀礼が氷の谷に着いた直後に、コルロが遺跡から出てきた。魔力切れ、らしい。
この数時間は相当大変な作業だったろう。
「ありがとう、かわります。他の皆も順次休ませるから」
夜が明けて、要請に気付いていなかった者もメッセージに気付いたらしく、他国からも援助の申し出が増えてきた。
それを信用できるかが問題だが、エーダのチェックと、直接の監視で、今の所不備は出ていない。
魔法障壁を修復したので、抜け穴は通れなくなっていた。侵入箇所が減れば守りは楽になる。崩壊も治まり、地面が崩れ落ちることもなくなった。
「っ~~~~~っ!」
突然、意味不明な叫び声が遺跡の中から聞こえてきた。儀礼は入り口から入り、階段を駆け下りる。
人に戻すための部屋の前で、大柄な男が暴れている。アーデスが男の動きを抑えながら、色々な言語で呼びかけている。
儀礼の知らない言葉もある。だが、聞き入れる反応が見られない。
言葉の通じない時代へと変わったようだ。
アーデスが男を落ち着かせるために一度気絶させようとしているのがわかった。
「待って、アーデス」
儀礼は二人の間に割り込む。
男はずっと、何かを叫び続けていた。
「~~~~~~っ、~~~~~!?」
突然目の前に現れた儀礼にも、男は力任せに腕を振るう。
それをかわしながら、儀礼は慎重に、口を開いた。
「~~~っ~~~?」
儀礼の言った音に、男が動きを止める。
「~~~~~~~?」
儀礼はもう一度繰り返す。
「~~。~~~、~~~っ!」
男が言う。儀礼は聞いているように、頷く。男が何かを言い、儀礼は頷く。それを繰り返すうち、男はひざをつき、うなだれるように、泣き始めた。
「儀礼様、その者の言葉がわかるのですか?」
驚いたようにアーデス達が見ている。
「ううん。わからない」
残念そうに、儀礼は首を横に振る。
「ですが、今、話しを……」
「彼の言うことを繰り返して言ってみただけ。今までの人も初めに言ったのは同じようなことでしょ。ここはどこだ、お前らは誰だ、とか。そういうのを当てはめて、あなたは誰ですかって聞いたんだ。そしたら、色々話してくれたから。古い文字と音を合わせたら、なんとなく理解できたって言う程度……」
儀礼は悲しそうに俯く。
「僕の知ってる単語では、あなたの知らない世界とか、ここは新しい国だとか、そんなことしか言えない……」
「儀礼様、言語パターンをこちらに」
アーデスがパソコンを持ち出す。
「過去の全ての文字の資料と言語を結び付けましょう。会話できるだけの言語が判明するかもしれません」
二人がわき目も振らずにデータ入力に集中してしまうと、残された人々は途方にくれる。
本来なら、サウルへ移転したいが言葉がわからず茫然自失している男、次の者に移ろうにもまた言語もわからず暴れだす可能性がある。
しかし、目を上げた男が儀礼たちのパソコンに目を留める。その中に表示された石版の文字に反応を示した。
「読めるのか?」
アーデスが問うが、当然言葉は通じない。
「アーデス、紙」
儀礼がまたどこからか紙とペンを取り出した。アーデスはそのうち一度あの白衣を徹底的に調べてみようと思う。
アーデスはその文字を使い文を書く。発音はわからないが、文字だけならば解読されている。
読めるか? と問う。男は頷く。
奪うようにペンを取り、いったい自分の身に何が起こったのかと書きなぐる。字はあまりきれいではない。
幾度か文字を交わすと、男は何度も頷く。
「とりあえず、この男はここに残したまま、次の者に移ろう。同じ国、近い時代の者なら言葉のわかる可能性がある」
アーデスの言葉に、研究者達が条件に当てはまりそうな者を何名か選び出す。
暴れだすことに警戒し、戦闘要員数名を待機させる。三名を同時に人に戻した。
成功だったらしい。少しずつ音の違いはあるが、お互いに身振りを交えて会話できる程度には統一性があったらしい。
「このまま少しずつ時代と場所を変えていく。暴れる者はゆっくりと落ち着かせろ。周りの者に警戒心を与えぬよう攻撃はするな」
アーデスが取り仕切る。
やることのなくなった儀礼は、思いついたように紙に文字を書き出す。古い時代の文字をいくつも。
大人たちが真剣な顔で仕事に取り掛かる中、儀礼は何枚もの紙を持ち、まだ固まったままの人の元へ行く。
紙芝居のように、書いた言葉を一つ一つ見せてみる。
「何やってるんだ、ギレイ」
遊んでいると思われたらしい。交代して休憩になったワルツに背後からのしかかられた。
疲れているらしく、儀礼を支えにしようと言う魂胆だろう。仮眠を取ってきた儀礼は仕方なく杖の代わりになる。
「最初の方の人には、この状態での説明で戻した後の理解がかなり早かったと聞きました。なので、この人達にもわかる言葉があれば、これで少しでも不安を和らげてあげられないかと思って」
儀礼の持つ紙には今の時代、彼らの状態、何が起こったか、簡単なことしか書かれていないが、必ず助ける、と100を超える種類の言語で書かれていた。
これで、一つも当たらなければ仕方がない。儀礼は紙をめくる作業を人数分繰り返した。
外には日が昇りきっていた。だが、遺跡の中には日の光は届かない。薄ら寒い気分になる。
「外を見る?」
儀礼は途方にくれている人たちに言う。もちろん言葉は通じない。
全員が元通りの姿に戻されていた。ここにいる28人は相互の言語理解の可能性を願って、サウルへ送らずこの場で待ってもらっていたのだ。
言葉の通じ合う者もいれば、わからない者もいる。しかし、儀礼のやった紙芝居は功を奏していた。
あれから、いきなり暴れだす者はいなかった。動けるようになった者が、最初に儀礼の持つ紙の束を指差し、自分の読める言語を示す。
それさえわかれば、作業は早く進んだ。時をかけるうちに、訳せる言葉も増えた。
話した言葉を、それぞれに持たせたモニターに文字として表示させる。
「外を見たい?」
儀礼はもう一度聞きなおした。自身の腕に取り付けられたモニターを見て、全員がうなずく。
彼らは自分たちの立場を理解してくれた。
(どれほどだろう。何百年も、千年も、動けずに、じっとしている気持ちは)
「サウルとここで外に出るの、どっちがいいかな?」
儀礼はアーデスに問う。
「儀礼様、連れ去られる危険のある者達を不用意に外に出さないでください」
はぁ、と儀礼はため息をつく。
「お日様に当たりたい」
儀礼がつぶやけば、モニターが音を拾ったらしく、すぐそばにいた女性が頭をなでる。
老齢の女性の発する言葉はわからないが、優しそうな表情はいい子ね、とか大丈夫よ、と言っているよう。
何故自分はこんな大変な目に合った女性に慰められているのだろう、と儀礼は首をかしげる。
その動作が可笑しかったのか、女性が何かを言って笑う。それを聞いた周りの者がまたつられて笑う。その笑いが、人を介して、広がる。
「~~~~っ?」
女性が問いかけるように儀礼に話しかけた。
「~~~~っ?」
首をかしげて繰り返してみれば、なぜかまたみなが笑い出す。
「僕、何か可笑しい?」
儀礼が言って、彼女達はモニターを見る。女性は首を横に振ったが、周りの者はさらに笑い出す。
「意味わかんない」
儀礼は頬を膨らませる。それを見て、また笑っているらしい。
「アーデス、もうサウルに連れてっちゃおうよ。ここで時間食うより、向こうのが設備いいし」
そう言って振り返れば、呆然とする研究者達。
アーデスを見れば、アーデスは儀礼の顔を覗き込む。
「なに」
ちょっと驚いて、儀礼は引く。
「子供の愛嬌は万国共通というわけですか」
アーデスが言い、サウルと連絡を取り始める。
「それ、失礼な意味含まれてません?」
儀礼は頬を引きつらせた。
管理局で専門の対策本部がしかれた。これでもう儀礼たちが無理をする必要はなくなった。
どこから企みを持つ者が入り込むかわからないが、監視する目も格段に増えたのだ。
サウルでは、すでに環境が整っていた。
大きなモニターが壁に並び、誰かが話せば、そこにそれぞれの言葉で表示される。
ドルエドの言葉でも表示されるため、コミュニケーションが取れるようになっていた。
そこへ送られた古き時代の者達は珍しそうに室内を見回す。そして、楽しそうに会話を始めた。
”あなたたち、どんな魔法を使ったんです?”
サウルの責任者アンから驚いた、とメッセージが届いた。
今までに送られてきた者達は言葉が通じたのに、一対一での対話で長い時間をかけ、ようやくこの時代を理解してきたところだ。
なのに、今来た、言葉の通じない者は楽しそうにしている。わけもわからない不思議なものを見て、喜んでいるのだ、と。
”儀礼様がたぶらかしました”
楽しそうに、アーデスが返信した。
”そう、納得したわ”
アンからの返答で、アーデスは腹を抱えて笑っていた。
夜が明け始めたころに、儀礼は目を覚ます。
管理局のその部屋は研究設備以外にも、泊り込むための設備が充実していて、個別の寝室が5つ、風呂にトイレに食事室に、会議室。
誰が使うんだ、と儀礼は本気で思っていた。まさか自分が使うことになるとは。
拓と利香、二人の少女と少年が5つのベッドをそれぞれ使って寝ている。
獅子はソファーで寝たままだ。慣れているので、大丈夫だろう。
儀礼はモニターの前で突っ伏したまま眠っていた。うたた寝ではない、そうやって寝ようと思って寝たのだ。
いつものことだし。
うーん、と伸びをして、眠っていた間の報告書を確認する。作業は順調に進んでいて、特に問題はないようだ。
なるべく近い時代の者から一人ずつ人間に戻している。
戻した者はサウルの研究施設へ送り、健康であるかなどを調べるとともに、長い説明の時間と、話しをする相手が必要で、時間と人手がかかってしまう。
数百年前の人になると、言葉が通じない可能性が出てくる。
邪魔をする人間は後を絶たないし、関わってる人間には疲れが出てくる。
昼頃になれば管理局の方で、専門の対策本部を設立してくれるだろうから、それまでが儀礼たちの凌ぎ場だ。
儀礼が要請を出したのが真夜中。後半日頑張りどころだ。
「ギレイ、だいぶ終わったぞ。残りは28人。悪いが俺、限界だ。寝る」
儀礼が氷の谷に着いた直後に、コルロが遺跡から出てきた。魔力切れ、らしい。
この数時間は相当大変な作業だったろう。
「ありがとう、かわります。他の皆も順次休ませるから」
夜が明けて、要請に気付いていなかった者もメッセージに気付いたらしく、他国からも援助の申し出が増えてきた。
それを信用できるかが問題だが、エーダのチェックと、直接の監視で、今の所不備は出ていない。
魔法障壁を修復したので、抜け穴は通れなくなっていた。侵入箇所が減れば守りは楽になる。崩壊も治まり、地面が崩れ落ちることもなくなった。
「っ~~~~~っ!」
突然、意味不明な叫び声が遺跡の中から聞こえてきた。儀礼は入り口から入り、階段を駆け下りる。
人に戻すための部屋の前で、大柄な男が暴れている。アーデスが男の動きを抑えながら、色々な言語で呼びかけている。
儀礼の知らない言葉もある。だが、聞き入れる反応が見られない。
言葉の通じない時代へと変わったようだ。
アーデスが男を落ち着かせるために一度気絶させようとしているのがわかった。
「待って、アーデス」
儀礼は二人の間に割り込む。
男はずっと、何かを叫び続けていた。
「~~~~~~っ、~~~~~!?」
突然目の前に現れた儀礼にも、男は力任せに腕を振るう。
それをかわしながら、儀礼は慎重に、口を開いた。
「~~~っ~~~?」
儀礼の言った音に、男が動きを止める。
「~~~~~~~?」
儀礼はもう一度繰り返す。
「~~。~~~、~~~っ!」
男が言う。儀礼は聞いているように、頷く。男が何かを言い、儀礼は頷く。それを繰り返すうち、男はひざをつき、うなだれるように、泣き始めた。
「儀礼様、その者の言葉がわかるのですか?」
驚いたようにアーデス達が見ている。
「ううん。わからない」
残念そうに、儀礼は首を横に振る。
「ですが、今、話しを……」
「彼の言うことを繰り返して言ってみただけ。今までの人も初めに言ったのは同じようなことでしょ。ここはどこだ、お前らは誰だ、とか。そういうのを当てはめて、あなたは誰ですかって聞いたんだ。そしたら、色々話してくれたから。古い文字と音を合わせたら、なんとなく理解できたって言う程度……」
儀礼は悲しそうに俯く。
「僕の知ってる単語では、あなたの知らない世界とか、ここは新しい国だとか、そんなことしか言えない……」
「儀礼様、言語パターンをこちらに」
アーデスがパソコンを持ち出す。
「過去の全ての文字の資料と言語を結び付けましょう。会話できるだけの言語が判明するかもしれません」
二人がわき目も振らずにデータ入力に集中してしまうと、残された人々は途方にくれる。
本来なら、サウルへ移転したいが言葉がわからず茫然自失している男、次の者に移ろうにもまた言語もわからず暴れだす可能性がある。
しかし、目を上げた男が儀礼たちのパソコンに目を留める。その中に表示された石版の文字に反応を示した。
「読めるのか?」
アーデスが問うが、当然言葉は通じない。
「アーデス、紙」
儀礼がまたどこからか紙とペンを取り出した。アーデスはそのうち一度あの白衣を徹底的に調べてみようと思う。
アーデスはその文字を使い文を書く。発音はわからないが、文字だけならば解読されている。
読めるか? と問う。男は頷く。
奪うようにペンを取り、いったい自分の身に何が起こったのかと書きなぐる。字はあまりきれいではない。
幾度か文字を交わすと、男は何度も頷く。
「とりあえず、この男はここに残したまま、次の者に移ろう。同じ国、近い時代の者なら言葉のわかる可能性がある」
アーデスの言葉に、研究者達が条件に当てはまりそうな者を何名か選び出す。
暴れだすことに警戒し、戦闘要員数名を待機させる。三名を同時に人に戻した。
成功だったらしい。少しずつ音の違いはあるが、お互いに身振りを交えて会話できる程度には統一性があったらしい。
「このまま少しずつ時代と場所を変えていく。暴れる者はゆっくりと落ち着かせろ。周りの者に警戒心を与えぬよう攻撃はするな」
アーデスが取り仕切る。
やることのなくなった儀礼は、思いついたように紙に文字を書き出す。古い時代の文字をいくつも。
大人たちが真剣な顔で仕事に取り掛かる中、儀礼は何枚もの紙を持ち、まだ固まったままの人の元へ行く。
紙芝居のように、書いた言葉を一つ一つ見せてみる。
「何やってるんだ、ギレイ」
遊んでいると思われたらしい。交代して休憩になったワルツに背後からのしかかられた。
疲れているらしく、儀礼を支えにしようと言う魂胆だろう。仮眠を取ってきた儀礼は仕方なく杖の代わりになる。
「最初の方の人には、この状態での説明で戻した後の理解がかなり早かったと聞きました。なので、この人達にもわかる言葉があれば、これで少しでも不安を和らげてあげられないかと思って」
儀礼の持つ紙には今の時代、彼らの状態、何が起こったか、簡単なことしか書かれていないが、必ず助ける、と100を超える種類の言語で書かれていた。
これで、一つも当たらなければ仕方がない。儀礼は紙をめくる作業を人数分繰り返した。
外には日が昇りきっていた。だが、遺跡の中には日の光は届かない。薄ら寒い気分になる。
「外を見る?」
儀礼は途方にくれている人たちに言う。もちろん言葉は通じない。
全員が元通りの姿に戻されていた。ここにいる28人は相互の言語理解の可能性を願って、サウルへ送らずこの場で待ってもらっていたのだ。
言葉の通じ合う者もいれば、わからない者もいる。しかし、儀礼のやった紙芝居は功を奏していた。
あれから、いきなり暴れだす者はいなかった。動けるようになった者が、最初に儀礼の持つ紙の束を指差し、自分の読める言語を示す。
それさえわかれば、作業は早く進んだ。時をかけるうちに、訳せる言葉も増えた。
話した言葉を、それぞれに持たせたモニターに文字として表示させる。
「外を見たい?」
儀礼はもう一度聞きなおした。自身の腕に取り付けられたモニターを見て、全員がうなずく。
彼らは自分たちの立場を理解してくれた。
(どれほどだろう。何百年も、千年も、動けずに、じっとしている気持ちは)
「サウルとここで外に出るの、どっちがいいかな?」
儀礼はアーデスに問う。
「儀礼様、連れ去られる危険のある者達を不用意に外に出さないでください」
はぁ、と儀礼はため息をつく。
「お日様に当たりたい」
儀礼がつぶやけば、モニターが音を拾ったらしく、すぐそばにいた女性が頭をなでる。
老齢の女性の発する言葉はわからないが、優しそうな表情はいい子ね、とか大丈夫よ、と言っているよう。
何故自分はこんな大変な目に合った女性に慰められているのだろう、と儀礼は首をかしげる。
その動作が可笑しかったのか、女性が何かを言って笑う。それを聞いた周りの者がまたつられて笑う。その笑いが、人を介して、広がる。
「~~~~っ?」
女性が問いかけるように儀礼に話しかけた。
「~~~~っ?」
首をかしげて繰り返してみれば、なぜかまたみなが笑い出す。
「僕、何か可笑しい?」
儀礼が言って、彼女達はモニターを見る。女性は首を横に振ったが、周りの者はさらに笑い出す。
「意味わかんない」
儀礼は頬を膨らませる。それを見て、また笑っているらしい。
「アーデス、もうサウルに連れてっちゃおうよ。ここで時間食うより、向こうのが設備いいし」
そう言って振り返れば、呆然とする研究者達。
アーデスを見れば、アーデスは儀礼の顔を覗き込む。
「なに」
ちょっと驚いて、儀礼は引く。
「子供の愛嬌は万国共通というわけですか」
アーデスが言い、サウルと連絡を取り始める。
「それ、失礼な意味含まれてません?」
儀礼は頬を引きつらせた。
管理局で専門の対策本部がしかれた。これでもう儀礼たちが無理をする必要はなくなった。
どこから企みを持つ者が入り込むかわからないが、監視する目も格段に増えたのだ。
サウルでは、すでに環境が整っていた。
大きなモニターが壁に並び、誰かが話せば、そこにそれぞれの言葉で表示される。
ドルエドの言葉でも表示されるため、コミュニケーションが取れるようになっていた。
そこへ送られた古き時代の者達は珍しそうに室内を見回す。そして、楽しそうに会話を始めた。
”あなたたち、どんな魔法を使ったんです?”
サウルの責任者アンから驚いた、とメッセージが届いた。
今までに送られてきた者達は言葉が通じたのに、一対一での対話で長い時間をかけ、ようやくこの時代を理解してきたところだ。
なのに、今来た、言葉の通じない者は楽しそうにしている。わけもわからない不思議なものを見て、喜んでいるのだ、と。
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