ギレイの旅

千夜ニイ

呼び名

 ギレイ 「アーデス」「ワルツ」
 アーデス「はい、儀礼様」
 ワルツ 「なんだ?」
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 ギレイ 「コルロさん」「ヤンさん」
 コルロ 「ん?」
 ヤン  「はいっ」
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「なぁ、ギレイ。何で俺達はさん付けで、アーデスたちは呼び捨てなんだ?」
 違和感をもったコルロは聞いてみた。どうでもいいことだったが、アーデスの態度が妙で気味が悪い。
「やっぱり変ですよね」
 儀礼は言う。
「変てこたーねぇけど、一応アーデスはリーダーだからなぁ」
「だって、そうしないとアーデスさんがキュールやハルバーラの隠しマップ見せてくれないって言うんです」
 儀礼は泣き出しそうな顔をしている。
 キュールもハルバーラもAランクの中でも上位の遺跡だ。ほとんどの隠しマップまで持ってるのはアーデス位だろう。
「ワルツはワイバーンの瞳と交換だって」
 なぜだか悔しそうな表情の儀礼。
 ワイバーンの瞳は、ワイバーン(小型翼竜)を倒したときに稀に手に入る宝石で、遺跡の鍵となったり、マップとなったりする不思議な物質だ。
 当の二人は、声を出さずに笑う笑う。背中を向けている儀礼は、そんな二人の様子に気付いていない。
「ギレイ、あいつらの冗談に、本気で付き合わなくていいんだぞ?」
 儀礼が憐れになり、コルロはその肩を叩いた。


 可笑しそうに笑っているアーデスを見て、コルロたち仲間は思う。
 変わった、と。
 Sランクになる男と言われたアーデスのパーティに加わり、足を引っ張るわけにいかないと、メンバーはいつも緊張していた。
 逆に、アーデスはパーティのことなど気にもせず、一人でクエストに出て偉業をなしてくる。
 他の者がどうあろうと、アーデスは一人でSランクになる。そんな雰囲気だった。
 なのに、今はこのばかげた空気だ。しかも、アーデスが率先してふざけたことをやりだす。
 他国の小さな誘拐事件にAランクパーティで出動したり、相手にもならない弱い奴らを全員で囲んでみたり。
 それはもう、楽しそうに。ついてく方もなんだかんだで楽しんでいるのだが。
 人類の頂点に立つと言われた男が、Sランクとなった少年を自分と対等もしくはそれ以上、と認めたせいなのかもしれない。

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