儀礼への疑惑２

　かなづち？

　俺、拓が１２歳の夏。
　妹の利香たちは学校入って初めての川での授業。泳ぎを覚えるのはここしかない。皆もう泳げるが。
　ほとんどの奴は薄手の服のまま泳いでいる。どうせいつも服のまま泳いで遊んでるのだ。
　なのに、儀礼が入りたがらない。
　二つ下の問題児だ。教師は親のくせに説得もしない。またひいきか……。
（今年度、残念ながらエリさんは低学年の担当だ）
「放課後に補修受けるから」と逃げ回る。
「今やれ、授業だろ！」
　俺が言うと、利香の後ろに逃げ込む。
　利香は真面目に授業に参加しているので、服も頭も濡れている。
「兄様、儀礼君は水に濡れると壊れちゃうのかも」
　儀礼をかばっているのか、よくわからないことを真面目な顔で俺の耳元にささやく。

「利香ちゃんとなら入ってもいい」
　突然言い出した儀礼に、背後から来た了が無理やり服を剥ぎ取り儀礼を川へ投げ込んだ。
　ドバンッ
　いい水音。川は、飛び込める程度の高さと深さがある。
　ガチャンッ
　と了が落とした儀礼の服が重そうな金属音をたてる。服のたてる音じゃない。
　何ｋｇあるんだ……。

「ちょ、危ないだろ！」
　了へと怒るように言い浅瀬へ歩いて向かう儀礼。
　川の中にいる儀礼は異様に白かった。焼けてないレベルではない。
　髪の色同様、外国人なのだと再認識する。半分だが。
　結局、儀礼は河原でばしゃばしゃ水遊びして授業を終えた。
　白い石に囲まれてる方が目立たない。気にしてんのか……。なんとなくそう思った。

　了が儀礼に近寄る。儀礼を投げ込む。もがく。……泳げないだけか。さらに儀礼の評価を下げた。

　Ａ、儀礼、泳げます。自分の肌を気にしてました。
　ちなみに、獅子に「利香ちゃん、白いね」と言って投げ込まれました。
　利香といれば目立たないかな、と思ったようですが、取りようによっては問題発言だな。

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