ギレイの旅
動き出した大物
ドルエド国の南にフェードという国がある。
情報科学において他国を圧倒し、ネット環境の普及は世界一。
また、魔法文化と科学文化が調和し、程よい融合を果たしていて古くから様々に利用されている。
そのためなのか、このフェードには古代の文明が多く残されており、数多くの遺跡がある。
中にはまだ解明し切れていない遺跡もあり、冒険者達にとっても研究者にとっても興味の尽きない国である。
その未解明の遺跡の一つ、キュール。Aランクに認定されている。
Aランクの遺跡とは、Aランクの冒険者が複数人でパーティーを組み、日数をかけて攻略するもの。
その中でもキュールは攻略が難しく、1フロアーに一週間以上の時間がかかり、最下層へは今まで到達した者がいなかった。
キュールに程近い町、フロアキュールのギルド。キュール攻略のために大勢のAランク冒険者の拠点となっていた。
ギルドの扉を開けて、一人の男が入ってきた。
背は高く、普通の冒険者が使うより長い剣を腰に下げている。
全身を覆う鎧は剣同様、使い込まれているようで多くの傷がついている。
しかし、どちらも装飾の付く高価なもの。込められた魔力により、値段に見合う効果のついた古代の品。
男が顔全体を覆う兜を外せば、金色の髪と緑の瞳が現れる。この暑い季節に全身鎧で涼しい顔だ。
「遅かったじゃないか、アーデス。お前にしては時間かかったんじゃない?」
長いすに腰掛けて酒でも飲んでいた様子の女が男に話し掛ける。
「ワルツか」
ワルツといわれた女は赤茶色の髪に、明るいオレンジ色の瞳。大きく肌を露出させた服で、豊かな体を見せている。
しかし、その肩や腕には紛れもなく実践むきの防具が装着されていて、背中には常人には扱えないような大きなハンマーがかけられていた。
その隣りには酒に付き合わされたのか、酔いつぶれた黒髪の女性が木製の杖を握ったままテーブルに突っ伏している。
「たまたま最下層へ入れたんでな、そのままマッピングしてきた」
男はテーブルの上へと地図を出す。
精巧に描き込まれたそれは細かいトラップの位置や仕掛けまで書かれている。それら全てを解除・分解し、再び組み立てた上で戻ってきたという事。
「たまたまで最下層に入れるかよ」
ワルツが呟くように言い、地図を手に取る。
「さすがだな。人類未踏の地へ一人で行きやがって」
今度は笑いながらワルツは地図を返す。
「珍しいな、お前がそんな風に笑うなんて」
驚いたように瞬きをするアーデス。いつものワルツは凶悪な笑みで挑みかかるようだった。
「お前が人類の未知に潜ってる間に、世界が変わったんだよ」
楽しそうに笑うワルツ。酒のせいだけではないようだ。
意味がわからないアーデスは眉間にしわを寄せる。
「管理局に『Sランク』が出た。BランクからAをすっ飛ばしての特進だとよ。しかも、まだたったの15歳の少年だ」
アーデスの顔から表情が消えた。
「管理局が『護衛』になれる者を探してる。送り込んだ奴を次々煙に巻くらしいぜ。ついた二つ名が『蜃気楼』」
やはり楽しくて笑っているように見えるワルツ。
「あたしはそれに行こうと思ってんだ。一応待っててやったんだぜ」
座ったまま、背中にあった巨大なハンマーをくるりと回す。
「すっかり出遅れちまった。いや、情報が出揃ったとこだから、丁度いいのか」
回していたハンマーをアーデスに向けぴたりと止める。
管理局ランクA、冒険者ランクA。そのどちらもが他者を寄せ付けない実力を持ち『双璧』と称えられる男。
「どうする? アーデス、世界でもっともSランクに近かった男よ」
くすくすとワルツは笑う。
あざけっているわけではない。これは、アーデスの反応を楽しんでいるようだ。
わかっているのだろう。アーデスの次の行動を。
アーデスは今入ってきたばかりのギルドの扉へ向かう。
「その少年。本当にSランクに相応しいか、調べてやる」
その顔は挑むように笑っていた。
情報科学において他国を圧倒し、ネット環境の普及は世界一。
また、魔法文化と科学文化が調和し、程よい融合を果たしていて古くから様々に利用されている。
そのためなのか、このフェードには古代の文明が多く残されており、数多くの遺跡がある。
中にはまだ解明し切れていない遺跡もあり、冒険者達にとっても研究者にとっても興味の尽きない国である。
その未解明の遺跡の一つ、キュール。Aランクに認定されている。
Aランクの遺跡とは、Aランクの冒険者が複数人でパーティーを組み、日数をかけて攻略するもの。
その中でもキュールは攻略が難しく、1フロアーに一週間以上の時間がかかり、最下層へは今まで到達した者がいなかった。
キュールに程近い町、フロアキュールのギルド。キュール攻略のために大勢のAランク冒険者の拠点となっていた。
ギルドの扉を開けて、一人の男が入ってきた。
背は高く、普通の冒険者が使うより長い剣を腰に下げている。
全身を覆う鎧は剣同様、使い込まれているようで多くの傷がついている。
しかし、どちらも装飾の付く高価なもの。込められた魔力により、値段に見合う効果のついた古代の品。
男が顔全体を覆う兜を外せば、金色の髪と緑の瞳が現れる。この暑い季節に全身鎧で涼しい顔だ。
「遅かったじゃないか、アーデス。お前にしては時間かかったんじゃない?」
長いすに腰掛けて酒でも飲んでいた様子の女が男に話し掛ける。
「ワルツか」
ワルツといわれた女は赤茶色の髪に、明るいオレンジ色の瞳。大きく肌を露出させた服で、豊かな体を見せている。
しかし、その肩や腕には紛れもなく実践むきの防具が装着されていて、背中には常人には扱えないような大きなハンマーがかけられていた。
その隣りには酒に付き合わされたのか、酔いつぶれた黒髪の女性が木製の杖を握ったままテーブルに突っ伏している。
「たまたま最下層へ入れたんでな、そのままマッピングしてきた」
男はテーブルの上へと地図を出す。
精巧に描き込まれたそれは細かいトラップの位置や仕掛けまで書かれている。それら全てを解除・分解し、再び組み立てた上で戻ってきたという事。
「たまたまで最下層に入れるかよ」
ワルツが呟くように言い、地図を手に取る。
「さすがだな。人類未踏の地へ一人で行きやがって」
今度は笑いながらワルツは地図を返す。
「珍しいな、お前がそんな風に笑うなんて」
驚いたように瞬きをするアーデス。いつものワルツは凶悪な笑みで挑みかかるようだった。
「お前が人類の未知に潜ってる間に、世界が変わったんだよ」
楽しそうに笑うワルツ。酒のせいだけではないようだ。
意味がわからないアーデスは眉間にしわを寄せる。
「管理局に『Sランク』が出た。BランクからAをすっ飛ばしての特進だとよ。しかも、まだたったの15歳の少年だ」
アーデスの顔から表情が消えた。
「管理局が『護衛』になれる者を探してる。送り込んだ奴を次々煙に巻くらしいぜ。ついた二つ名が『蜃気楼』」
やはり楽しくて笑っているように見えるワルツ。
「あたしはそれに行こうと思ってんだ。一応待っててやったんだぜ」
座ったまま、背中にあった巨大なハンマーをくるりと回す。
「すっかり出遅れちまった。いや、情報が出揃ったとこだから、丁度いいのか」
回していたハンマーをアーデスに向けぴたりと止める。
管理局ランクA、冒険者ランクA。そのどちらもが他者を寄せ付けない実力を持ち『双璧』と称えられる男。
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