ギレイの旅
ストーフィムの遺跡
翌日、大会の運営から獅子とウォールが呼び出されていた。
「実は君達に頼みがあるんだ。毎年、剣術大会の優秀者には町外れの遺跡に行って探索をしてもらうことになっているんだ。危険が多いんだが、やってもらえないだろうか?」
町長が自ら頭を下げる。
「なぜ剣術大会の優秀者なんです? 町で別に探索隊を組むのではだめなのか?」
ウォールのもっともな言葉に町長は頭を押さえる。
「その通りなんだが、実はその遺跡探索には宝石がからんでいてね。剣術大会の優勝者だけが手に入れる権利を得るということに昔から決まっているんだ」
お金が絡めば争いの元となる。その争いを平和に解決したのがあの剣術大会というわけだ。
「優勝しちまったもんは仕方ないか。特に急ぐ用事もないし俺はかまわないぞ」
ウォールが受ければ、すでに儀礼から話を聞かされ、初めての遺跡探索にわくわくしていた獅子は俺も俺も、と二つ返事で引き受ける。
「ありがたい」
こうして、ストーフィムの遺跡に行くことが決まった。
遺跡に行くメンバーはウォール、獅子、儀礼、ティル、キサ。それとトッコとイムというストーフィムに住む兄妹で七人。二人ともベスト16に残った実力者だ。兄のトッコはキサに敗れ、妹イムは大剣を使う男に負けたのだった。
「昨日のことは水に流して仲良くやろうね~」
さすがに対戦相手の顔は覚えていて、キサはトッコに明るく手を振る。
「もちろん、勝負は勝負ですから。ぜひ仲良くしてください」
トッコは丁寧に腰を折る。体育会系の人なんだろうか。
「で、迷子君は一緒に来て大丈夫なの? ちゃんと自分の身は守れる?」
キサが儀礼に言う。
「いい加減迷子はやめてください! ちゃんとミハイさんに遺跡の内部について聞いてきましたから。自分の身くらい守れますよ」
口を尖らせて言う儀礼。
ミハイは獅子が破ったおじいさんだ。何度も遺跡に行った常連だと言うので儀礼は昨日のうちに話しを聞きに行き、詳しい地図まで作っておいたのだった。
「何この子、可愛い~。迷子になっちゃったの?」
その儀礼を今度はイムが撫で回す。
遺跡よりも女性達の方が重大な問題に思える儀礼だった。
ストーフィムの遺跡は町を出てすぐの所にあった。遺跡と言うよりは岩場を切り出して作った洞窟のようである。
入り口には大きな岩の扉。男、五人がかりで押せば時間もかからずに開く。
小さな穴が大量に開いていて天井から光が入っている。松明は必要ないほどの明かりが確保されていた。
「ああ、ついに今年もあの宝石が手に入るのねっ」
瞳を輝かせてイムが言う。
「宝石って、どんなのなんです?」
儀礼が聞けば、なんだかなついたイムが頭をなでながら説明してくれる。
「とっても綺麗なのよ。キラキラと鮮やかで、何種類も色があるの。赤、青、緑、黄色。オレンジや紫が見つかることもあるの」
そんな宝石に心当たりがない。いろいろな種類の宝石が出ると言うことだろうか? それなら何故、この時期限定になるのか。
「この遺跡に入ったことある人っていますか?」
「ないわよ。っていうか私は大会には毎年出てたけど遺跡があるなんてことも知らなかったわー」
と、キサ。
「私も、入ったことはないの。今年が始めてよ。話にはいろいろ聞いてたんだけど、入った人って何かみんな口が堅くなるのよね」
イムが不思議そうに唇に手を当てている。
「残念、俺もないんだよね。こんな上位に残れたの初めてだし。俺の実力が上がったのか、それともやっぱAランクの奴らがどっかの護衛に借り出されてるからかなぁ」
ティルの言葉に儀礼はこっそり汗を拭う。
「ああ、あのSランクの噂ですね。遺跡に入ったことある人みんなそっちに行っちゃいましたよね。なんでも報酬がすごくいいとか」
はぁ、と何に対してかわからないため息を吐くトッコ。
「ってことは、この中で誰もいないんですか? 参ったなぁ、さすがに一人くらいいると思ってました」
心配そうにミハイ情報の地図を見る儀礼。
「子供のお守りに借り出された気分だな」
何か、の気配を大量に感じて、白い布袋に入った木刀を確認し、ウォールは周囲に気を配っていた。
小さな魔獣か何かが棲みついているかもしれない。
「何が起こるかわからないって事だろ、わくわくするじゃねぇか」
嬉しそうに獅子が言い、つられて儀礼も笑ってしまった。
誰も見たことのない遺跡、そういう物の謎を解くのが儀礼は大好きなのだ。
「実は君達に頼みがあるんだ。毎年、剣術大会の優秀者には町外れの遺跡に行って探索をしてもらうことになっているんだ。危険が多いんだが、やってもらえないだろうか?」
町長が自ら頭を下げる。
「なぜ剣術大会の優秀者なんです? 町で別に探索隊を組むのではだめなのか?」
ウォールのもっともな言葉に町長は頭を押さえる。
「その通りなんだが、実はその遺跡探索には宝石がからんでいてね。剣術大会の優勝者だけが手に入れる権利を得るということに昔から決まっているんだ」
お金が絡めば争いの元となる。その争いを平和に解決したのがあの剣術大会というわけだ。
「優勝しちまったもんは仕方ないか。特に急ぐ用事もないし俺はかまわないぞ」
ウォールが受ければ、すでに儀礼から話を聞かされ、初めての遺跡探索にわくわくしていた獅子は俺も俺も、と二つ返事で引き受ける。
「ありがたい」
こうして、ストーフィムの遺跡に行くことが決まった。
遺跡に行くメンバーはウォール、獅子、儀礼、ティル、キサ。それとトッコとイムというストーフィムに住む兄妹で七人。二人ともベスト16に残った実力者だ。兄のトッコはキサに敗れ、妹イムは大剣を使う男に負けたのだった。
「昨日のことは水に流して仲良くやろうね~」
さすがに対戦相手の顔は覚えていて、キサはトッコに明るく手を振る。
「もちろん、勝負は勝負ですから。ぜひ仲良くしてください」
トッコは丁寧に腰を折る。体育会系の人なんだろうか。
「で、迷子君は一緒に来て大丈夫なの? ちゃんと自分の身は守れる?」
キサが儀礼に言う。
「いい加減迷子はやめてください! ちゃんとミハイさんに遺跡の内部について聞いてきましたから。自分の身くらい守れますよ」
口を尖らせて言う儀礼。
ミハイは獅子が破ったおじいさんだ。何度も遺跡に行った常連だと言うので儀礼は昨日のうちに話しを聞きに行き、詳しい地図まで作っておいたのだった。
「何この子、可愛い~。迷子になっちゃったの?」
その儀礼を今度はイムが撫で回す。
遺跡よりも女性達の方が重大な問題に思える儀礼だった。
ストーフィムの遺跡は町を出てすぐの所にあった。遺跡と言うよりは岩場を切り出して作った洞窟のようである。
入り口には大きな岩の扉。男、五人がかりで押せば時間もかからずに開く。
小さな穴が大量に開いていて天井から光が入っている。松明は必要ないほどの明かりが確保されていた。
「ああ、ついに今年もあの宝石が手に入るのねっ」
瞳を輝かせてイムが言う。
「宝石って、どんなのなんです?」
儀礼が聞けば、なんだかなついたイムが頭をなでながら説明してくれる。
「とっても綺麗なのよ。キラキラと鮮やかで、何種類も色があるの。赤、青、緑、黄色。オレンジや紫が見つかることもあるの」
そんな宝石に心当たりがない。いろいろな種類の宝石が出ると言うことだろうか? それなら何故、この時期限定になるのか。
「この遺跡に入ったことある人っていますか?」
「ないわよ。っていうか私は大会には毎年出てたけど遺跡があるなんてことも知らなかったわー」
と、キサ。
「私も、入ったことはないの。今年が始めてよ。話にはいろいろ聞いてたんだけど、入った人って何かみんな口が堅くなるのよね」
イムが不思議そうに唇に手を当てている。
「残念、俺もないんだよね。こんな上位に残れたの初めてだし。俺の実力が上がったのか、それともやっぱAランクの奴らがどっかの護衛に借り出されてるからかなぁ」
ティルの言葉に儀礼はこっそり汗を拭う。
「ああ、あのSランクの噂ですね。遺跡に入ったことある人みんなそっちに行っちゃいましたよね。なんでも報酬がすごくいいとか」
はぁ、と何に対してかわからないため息を吐くトッコ。
「ってことは、この中で誰もいないんですか? 参ったなぁ、さすがに一人くらいいると思ってました」
心配そうにミハイ情報の地図を見る儀礼。
「子供のお守りに借り出された気分だな」
何か、の気配を大量に感じて、白い布袋に入った木刀を確認し、ウォールは周囲に気を配っていた。
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