ギレイの旅

千夜ニイ

剣術大会2

 今年の大会の参加者は全部で百二十六人だという。例年は二百人前後いるというから大幅に減っていることになる。
 ストーフィム出身のティルはひどく嘆いていた。


「この人数だと、三回戦までが予選で、四回戦からが本番だな。毎回抽選で相手が決まるから運も必要だぞ」


 100番の男が獅子に説明を始める。


「剣は手持ちのでも大会貸し出しのでもOK。飛び道具は禁止。予選は三メートル×一・五メートルってぇ狭い舞台で相手を落としたら勝ちだ」


 男が地面に小さな長方形を書く。


「強い奴は一撃で決めてくからな。一回戦を見れば誰が残るか大体わかる。八つの舞台で同時に試合するから見逃すなよ」


 男は長方形を八つに増やした。


「百二十六人で三回戦までなら、本番は十五、いや十六人かな?」


「どっかで不戦勝があって十六人になるはずだ。午前最後に舞台を少し広げて、十六人から準々決勝の八人を決める」


 人数の話しで獅子の頭にハテナマークが浮いている。


「とにかく、予選で三回勝てばいいんだよ。獅子、武器はどうする? 僕の短剣でもいいけど、短いよね。貸し出しの見てくる?」


 瞬きを繰り返し、ああ、と獅子が言う。剣の事を忘れていたらしい。


「俺、もう素手でもいいかなって」


「何の大会だと思ってんだよ」


 儀礼は頭を抱えたくなった。


 受付に行き、貸し出し用の武器を見る。
 どこにでも売っている既製品の剣だ。質がいいわけでもないので優勝を狙う者なら自分の剣を持ってきている。


「うーん、どれでも同じか。長さ的にはこの位が扱いやすいかな」


 獅子が自分の腕程の長さの剣を選ぶ。


「これを借りたい」


 獅子の後ろで背の高い男が武器を借りに来た。持っているのは細長い片刃の剣。刀と呼ばれる部類の物。
 フードを目深く被っていて顔はよく見えない。


「はい。こちらに名前と番号を書いてください。了解です、どうぞー」


 獅子はその男の姿を呆然と見送る。


「どうしたの?」


 獅子が固まっているので、代わりに剣の貸し出し手続きを済ませる儀礼。


「今の奴、強い」


 楽しいものを見つけたと言うように、獅子の目が輝いている。


「貸し出しの武器を使うのに?」


 首を傾げる儀礼。


「ああ」


 借りた剣を慣れた動作で振り回し、獅子は鞘に収める。


「ふーん、獅子が言うなら間違いないか。ウォール・カシュリー、23番」


 儀礼の言葉に今度は獅子が首を傾げる。


「今の人の名前。貸し出しの名簿に書いてあった」


「ウォールか。戦うのが楽しみだな」


 獅子が不敵に笑っている。


「その前に負けなければね」


 にぃー、と儀礼はからかうように笑った。

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