この空の下で時計を握り君を待っている

ニキ

4話 2度目の部活動体験

4月10日
今日は部活動体験の日だ。

渋沢は中学の頃からベースをやっている。
本人に言うと調子に乗るからあまり言わないが、渋沢のベーススキルはなかなかだ。

僕はギターを小学生の頃からやっているので自信は結構ある。
中学の頃は弾き語りの大会でグランプリを取ったことがある。

授業が終わると僕は渋沢のクラスに行き、軽音楽部の部室である視聴覚室に向かう。

中には殆ど女子で埋め尽くされていた。
見たところ、どうやら男子部員は1人しか居ないらしい。

名前は小野 和樹(おのかずき)
僕が1年の頃本当に世話になった先輩だ。

「体験に来ました。」
「おお!男子!よろしくね!」

女子部員の中の1人が迎えてくれた。

「はい。よろしくお願いします。」
「パートはどこがいいかな?ギター、ベース、ドラム、ボーカル、キーボードがあるけど?」

僕と渋沢はとっくに決まっていた。

「僕はギターでお願いします。」
「俺はベースで」
「そかそか!了解!じゃあベースは廊下に来て!ギターはそこに座っていて!」

「じゃあな渋沢、ガチで弾いてドン引きさせるなよ。」
「それはこっちのセリフだよ。まあどこまで楽しめるかやってみるわ。」


僕達はそれぞれの場所へ行った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ギターの人は全員かな?」

辺りを見渡すと女子ばかりだったが、1人だけ男子がいた。

「全員揃ったみたいだし始めるね!経験者の人はいるかな?」

僕は手を挙げた。

「おっ、了解!じゃあそこの男の人2人ちょっと弾いてみてもらってもいい?」
「はい。分かりました。」

僕は返事をしたが、何故かもう1人の男子は反応を示さなかった。
とにかく少し弾くことにした。


♪♪♪♪♪


「こんな感じですかね。」
「ええ!すごい!結構前からやってるの?」
「小学生の頃からやっています。」

「そっか!じゃあもう1人は弾ける?」
「僕は小学生の頃やっていたのですが、4年くらいで辞めてしまって...」

小さい声で返事をしていた。

「そうなんだね!じゃあ私達が教えるからこっちに来て!」
「君は名前は何かな?」
「水鏡透と言います。」
「じゃあ透くんはそこにアンプあるから好きに弾いてていいよ!」

まじか。初っ端から放ったらかしか。
まあ向こうも大変そうだし適当に弾いているか。
しばらく弾いていたら、唯一の男子部員である小野さんが声をかけてきた?

「君、入部希望だよね?俺は部長の小野和樹!よろしく!」

この人は本当に気さくな人だ。部活引退して会う回数は減ったが性格はいつになっても変わらなかった。

「はい。ギター希望の水鏡透と言います。よろしくお願いします。」
「おう!よろしく!弾いた感じ俺より全然上手いからビックリしたよ!」
「ありがとうございます。ですがまだまだですよ。」

少し笑いながら返事をする。

「良かったら前で少し合わせない?」
「はい。適当にアドリブで合わせる感じで良いですか?」
「うん!そんな感じで!」

前に行った。するとそこには渋沢もいた。

「お前もかよ。」
「まあ適当に弾いてたら前でやろうよって言われてな。透も来ると思って。」
「ははは。じゃあやりますかね。」
「おう、透とやる分本気でやるよ。」
「僕もそのつもりだよ。」

ドラム、ボーカル、リズムギターは先輩だった。

「よろしくお願いします。先輩。」
「よろしくね!ミニライブみたいな感じで楽しくやろう!」

やる曲は僕も渋沢も知っているカバーの定番曲だった。


♪♪♪♪


やっている途中に色々な人が見に来た。おそらく1年生の人、先輩の人、さっきの男子。パッと見た感じ30人はいた。

「...!?!?」

僕は見た。いや、見てしまった。
篠崎志音がいた。
僕の大切な人。失いたくない人。

でも僕は何もすることが出来なかった。
これ以上未来を変えるのは怖かったからだ。
1番辛いのは志音と結ばれなくなること。
今は辛いが、何もしないでおこう。


演奏が終わると温かい拍手が耳に届いた。
僕はこの瞬間が好きで音楽をやっているんだ。


「君本当にすごいよ!是非軽音楽部入ってね!」
「はい。そのつもりです。ありがとうございました。」

前で演奏をさせてもらった御礼を伝え、僕と渋沢は後ろに下がった。


「どうだった?渋沢?」
「まあいい感じだったよ。3年間楽しめそうだよ。」
「じゃあ入部決定だな」
「そうだな」

僕達は爽やかな笑顔で入部を決めた。

部活動体験が終わったので帰宅した。



いつもの様にベランダで煙草に火をつけた。

前の高校生活では部活で何も出来なかったんだよな。
確か唯一の男子部員の部長が辞めてしまうんだ。原因は確か女子が多い環境に馴染めなかったから。
それで代わりに部長が見つかったは良いが全く活動しなくなる。

こんなのダメだ。部長が辞めるのを必ず阻止しないと。


目標のようなものができた。


今度は良い部活になるといいな。






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