この空の下で時計を握り君を待っている

ニキ

3話 潮田先生と僕

入学式が終わった。

特にやることも無いので今日は家に帰ろうと思った。

今更だけど、本当に過去に戻ったのか。
実感湧かなそうとか言われそうだけど実際に時間が戻っていているのを身体で感じているので、怖いくらい実感が湧いている。

「水鏡ー、ちょっと生徒指導室に来てくれー。」

何故か先生に大きな声で呼び出しをされた。
何か悪いことしたっけか...。登校初日に先生に呼び出される事を...?
先生の顔は少し焦っていて少し戸惑っていたような顔だった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「どうも。」
「ああ、担任の潮田だ。」
「どうしたんですか?登校初日に呼び出しなんて。」
「突然の話なんだが、お前昨日からおかしいと思わないか?」
「!?」
「先生ももしかして3年前に戻ってるんですか...?」
「...あぁ。昨日確かにお前らの卒業式だったんだがな。今朝学校に来たらこれだ。」

どうやら先生の焦りっぷりは時間が戻ったことが原因だった。
だけど何故僕が戻っていると分かったのだろう。

「先生、何故僕が時間が戻っていると分かったのですか?」
「なんと言うか...、お前の朝の焦りっぷりを見ていたら、もしかしてと思ってな。」

鋭いな。

「原因とか、いつ戻るとか、そういう情報先生持っていませんか...?」
「俺にも初めてのことだ。分からん。調べては見るがきっと戻らないと思う。」
「そうですか。分かりました。
「...?意外と落ち着いているな。過去に未練でもあったのか?」

先生は本当に鋭い。まるで頭の中を見透かしているかのように僕を見てくるようだ。

「やりたいこともありましたし、むしろ好都合かもしれません。いつ戻るのか分かりませんが僕に出来ることをやろうと思っています。」
「そうか。それもいいかもな。兎にも角にも今日からまたお前の担任だ。なにか出来ることがあったら言ってくれ。」
「...はい。ありがとうございます。」
「あ、タバコ吸って停学になるなよ!」
「もうあんな所で吸いませんよ。」

僕は高2の頃、タバコを吸って停学になっている。
幸いにも潮田先生が見つけたので注意だけで済んだ。
潮田先生も中学の頃から吸っていたらしい。


僕は指導室を後にした。
今日はもうやることは無い。帰ろう。
また僕は、いつもの帰り道で帰宅する。片道1時間は少しキツい。
この道も4年目か。まさかこんな長い付き合いになるとは。

僕は他の人には分からないくらいに少しだけ微笑んで、少しだけ速足になった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ただいま。」
「あら、おかえり。入学式はどうだった?」
「まあ普通だよ。3年間楽しく通えそうだ。」
「そう。頑張ってね。また3年間だけど。」
「また!?どゆこと!?」
「中学の頃も3年間通ってたからよ...。」
「あ、ああ。なるほどね。」

不意打ちだったので心臓止まるかと思った。やめてくれ。

部屋に戻り、ギターを弾いて夜になったら飯を食べて、風呂に入った。
風呂上がりに僕は、ベランダで煙草に火をつけた。
まるで煙と一緒に疲れが形となって身体から出て行ってるようだ。

2度目の入学式か...。3年前のことなのに全く懐かしいと感じない。何故だろうか。

明日も学校か。もう寝よう。






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