勇者時々へたれ魔王

百合姫

第28節 女物の服なのに、下着はトランクス。キター!!

えんえんと泣いていたら、不思議とすっきりとした。
すっきりというよりは吹っ切れたと言う方が正しく伝わるかもしれない。


別に男装した女の子に見られたっていいやい!
女装が似合うのもまたどうでもいいやい!!
そう、僕は気づいたのだ。
男として足りえるかは、見た目なんかじゃない。
迸る熱きダンディズムソウル。
これをもっていれば良いのだと。
コレ一つでたとえ、女子であろうと男となりえることが出来る!!
たとえ絶世の美少女であろうと、男になれる!!
そのことに僕は気づいたのだ。


<・・・・なれないと思うよ?>
「・・・・うるさいな。
成れるといったら成れるんだ!!」
「いや・・・それはさしもの妾でも無茶だと断ずることが出来るのじゃが・・・」
「か、可愛い・・・中とか見てみたいなぁ・・・女物の服装なのに肌着は男物とか・・・かなり、そそるも・・・いや、なんでもない。」


三者三様の反応を見せてくれる。
そして、エンデ。
僕のスカートを凝視しながら”中”とか”そそる”とか言われるとリアクションに困るんだけど?
そして、スカートをガシッっと掴むのも止めて欲しい・・・
なぜ掴む!?


「食料はもう買い込んだしのう。
ついでに妾とエンデの分のバックパックも買った。
あとは何が必要かの?」
「あとは・・・バスタードソードをもう一度買いたいな。
できれば魔法剣の。ゲームみたいに炎が出るとか・・・
前回ここで見たのはファルシオンだったんだけどあれは切れ味が増すだけの魔法剣だったし。
そして、エンデ。
スカート掴むの止めて。見えちゃう。」
「私も魔法弓が欲しいな。
スカート掴むの止めない。見てみたいもの。」
「響にはもうアヤツがあるじゃろう?
セルシウスキャリバーのセルシーが。」
<そうなのよっ!!
私という者がありながら、私以外の剣を選ぶってっ!?>


僕の女装姿を見てからというもの、変になってるエンデの言葉をスルーしつつ。
なおかつスカートをめくろうとするエンデの腕を押さえつつ、僕はフェローとセルシーの疑問に答えた。
というか、僕と付き合ってるようなセルシーの口上にちょっとドキドキするのは僕の経験の少なさゆえだろうか?
なんとなく嬉しいような恥ずかしいような。
そして、スカートから手を離して欲しい。


「バスタードソードを使ったときに面白いと思ってね。
元の世界じゃ、十中八九使えない武器だからさ。
というか触れることも出来ない。だから、あれをメインの武器にしようと思って・・・」
<はいぃっ!?
ちょっと、何をバカなことを言ってるのっ!?
せっかくの私を使わないってどういうことよっ!?>
「いや、その・・・」


予想以上に怒られた。
そして、スカートを掴む手が中に忍び寄ってくる。
何を考えてるの!?エンデ!!


「まぁ、妾は賛成じゃのう。
いまだ、妾の魔力、霊力を扱いこなせてない響がセルシーを扱いこなせるとは思えぬ。
今は妾の力を使いこなすことを重視するべきじゃろうて。
それはおぬしもわかるじゃろう?」
<・・・確かにね。
今の響に私を持たせても、せいぜいこの剣の3割の力を引き出せれば良いとこ。
全力全開で扱おうとしても・・・私の魔力、霊力がフェローのと反発して霧散するのがせいぜい。
この”セルシウスキャリバー”の一番の特徴である”高位精霊を取り込んだための異常なほどの魔力、霊力”による恩恵が半減するばかりか、下手したら現状フェローから流れてる一割の魔力、霊力すらまともに扱えない・・・・
理屈としては分かるけど・・・感情としては無理なんだけどなぁ・・・・せっかくの使い手を見つけたと思ったのに・・・・はぁ。
しかたないか。>
「ええと・・・そのつまり?
・・・ひうっ!?・・・な、なんだっていうの?」


そしてエンデの手がスカートに入り込んでくるのもなんだって言うの!?
お尻から徐々に前へ前へとスルスル迫ってきてるんだけどっ!?
払いのけようとしても、尋常じゃないパワーでじわじわ追い詰められてるんだけどっ!?
ついでに、奇声を上げてもフェローとセルシーは我関せずの態度である。


「そうじゃのう・・・・
魔力、霊力と言うのは自身と他者のとで反発し、互いに互いを害するという特徴を持っておる。
そのために魔力を分け与えるということは不可能じゃ。」
「ふむふむ。」
「ただし、もちろんそれには例外がある。
治癒魔法や精霊との契約じゃ。
治癒魔法は、自身の体内で”指向”、”効果”などを定めて対象に魔力や霊力を打ち込むというものじゃが・・・契約は”りんく”・・・というべきか?
おぬしの右腕の黒手袋・・・契約用の魔具に彫られる契約の紋によって、精霊の魔力、霊力を自身の物として変換する。
この変換された魔力は響自身の魔力として扱えるのじゃが・・・」


「セルシーの剣から流れる魔力と霊力は自身の魔力として変換されないと?」
「本来ならそういうことじゃな。
しかし、この剣には魔力を持つ人間が扱っても大丈夫なように特殊な加工がされておる。」
<それが、私の柄にある魔力変換用紋様。
でも、これには欠点があってね。>
「欠点?
・・・ひぅっ!?
ちょっと、エンデ!?
いい加減にしてくれないっ!?
というか、それ以上はまず・・・ふぁっ!?」


エンデは相変わらず、僕のスカートの中をまさぐる。
このままでは僕のアレに手が届くと言うところで・・・さすがにそれはまずいと思ったフェローがビンタを繰り出した。
「あうっ!?
い、痛いじゃないっ!?
なにすんのよっ!?
ちびっ子っ!!」
「おぬしこそ何をしておるのじゃ・・・・いい加減、目を覚ませ。」
頬を押さえるエンデをジト目でにらむフェロー。
今の僕にはフェローが神様のように思えるよぉ!?
僕が殴ってとめるわけにも行かなかったしっ!!


「何をしてるって可愛い男のをまさぐって・・・・・まさぐってたの?」
「妾に聞くな。」
「はぅ・・・はぅ・・・えと・・・ち、違うの!
さ、最初はもちろん!!
女服に男物の下着という一見ミスマッチな組み合わせの黄金比的なものを見たくて・・・・あれ?
わ、私ってこんな趣味だったかな?
というか、途中からヒートアップしすぎて・・・・記憶が・・・私って何してた?」
「・・・・知らんわ。」
「僕の口からはとてもじゃないですけどいえないです。」


顔を真っ赤にしながら、言い訳?をするエンデに言えることは無い。
僕に何が言えるというのだ。
暴走しすぎて記憶が飛んでるようだし、これは好都合。
そのまま忘れてもらおう。
僕のお尻の感触とか、痴態とか奇声とか。
忘れてください。
そのまま忘れていてください。
僕も忘れるからっ!!


「何か・・・右手にちょっとやんわりとした・・・何かを触ったような感触が・・・」
「ははははあははははっ!!
なんだろうねっ!!
さぁ、話の続きをしようじゃないかっ!!」


思い出すなぁぁあああああっ!?
全身全霊で話をそらす僕。


<顔、真っ赤だよん?ヒー君。>
「ほ、ほっといてっ!!
さぁ早く、話の続きをっ!!」
<はいはい。
で、どこまで言ったっけ・・・・?
ああ、柄に彫った変換陣式魔法の欠点を話したところだったかな。
その欠点が今のヒー君に私は相応しくないって理由なのよ。
本来、契約魔具を使って契約した契約者同士はお互いに自由に魔力、霊力を分け与えあうことができるの。傷の痛みわけとかもね。
でも、この紋は私の膨大な魔力、霊力を一方的にヒー君の体に送り込むわけで・・・・擬似的な精霊契約を行うの。>


また説明が小難しくなってきたけれど・・・
「ダムにためた水を一気にコップに注ぎこむ・・・というのを想像するといいじゃろう。」
「殆ど全てが垂れ流しになっちゃうってこと?」
「そうなるの。
あの勇者モドキが良い礼じゃ。
響が魔眼で見た時、あやつが魔力と霊力の流れで見づらいといったじゃろ?」
「うん。
見ないようにと意識すれば、ある程度緩和できるはずなんだけど・・・あの時はまるで変わらなかったな・・・」
「あのモドキがセルシーの力を3割ほどしか引き出せなかったのもそれが原因でのう。
魔力、霊力の流れはすなわち、すべて剣から漏れでてた物なのじゃよ。
あのモドキは魔力、霊力の操作に関しては素人同然じゃったからな。
コップ程度の器に見合わない武具を扱った結果があれになったというわけよのう。」
「なるほど。
魔力、霊力に関してコップ程度の器しかない僕がセルシーを扱っても殆ど垂れ流しになってしまうと?」
「そうなる。
じゃが、悲嘆することはない。
そのために妾が時間をかけて響の体に大量の魔力、霊力をなじませている。
いずれ、きっちり受け切れるくらいの器が仕上がると思うぞ。」




なるほど。
だから、僕の体には常時フェローの魔力の1割が右腕の手袋を介して循環してるわけか。


「モドキを倒した時、主が黒い鎧みたいなものを纏ったときじゃが、あの時は一時的にとはいえ妾の6~7割の魔力、霊力を完全に操っておったしのう。
わりとすぐかと思うのじゃ。」
「あの時は・・・本当に必死で、あまりはっきりとした意識は無かったんだけどな・・・」


<とにかく、早く私を扱えるくらいになってよ!?
まったく・・・剣は振るわれることで初めて喜びを感じるというのに・・・>
「うん。努力するよ。」


そのまま武器やへ直行して、バスタードソードを購入。
結局、炎をまとうなんて効果のあるバスタードソードは手に入らず、通常よりも重さと頑丈さが増す”地の魔力”がこめられたバスタードソードを購入した。
ファルシオンはそのまま残っているし、ギルドのお姉さんーーーーもといティリアさんから受けとったナイフも未だ健在だ。そしてセルシーもある。
僕の装備はこれで十分だろう。


次はフェローとエンデだが、本体は手甲で、ガード時にシールドを展開する魔法盾を2人に買い与えてエンデは魔法弓も買ってあげた。
当初、自分のお金でと言っていたのだがこれからも付いてくる以上、仲間である。
そんな遠慮は無用だと強引に僕がお金を出した。
僕はお金を持っていても、元の世界に戻ったとき意味が無い。しかし、彼女にはこれからの生活がある。
そのためでもある。


魔法弓はエルヴァンボウ。
”ユグドラシウル”という大樹を弓として加工した一品で、ところどころミスリル鋼というので補強してりる強弓だそうだ。
魔力を込めることによって、威力、引き安さ、連射性能、精度などが変わるらしい。
そこそこ希少な弓で、作った人が「アスタナシアの森」とかいう辺鄙なところに住むらしい・・・腕の良いドワーフ族が作った弓ということで特に価値が高かった弓である。
ロロリエの付近にアタナシアの森があるらしく、時たまロロリエの武具屋に売りに来るそうな。
ついこの前に入荷されたものらしい。
ちなみにお値段は10万ガルド。すなわち100金貨もして、ほとんどの有り金を持っていかれてしまった。
150あった金貨も今では一枚を切って、銀貨が40枚と銅貨が数枚といったところになったのだ。


「東大陸についたらまずお金を稼がないとね・・・」
「わ、私・・・こんな高価なもの・・ヒビキ・・・本当に良かったの?」
「別に良いよ。
また、すぐ稼げるし。それに装備に妥協しちゃいけないでしょ?」
「そ、それはそうだけど・・・私っていつもヒビキにお世話になってるばかりで、申し訳なく思うばかりだもの。」
「気にしないで良いって・・・・言っても、さすがに難しいかな。
僕も逆の立場なら恐縮しちゃうと思うし・・・とりあえず、考えないようにしてくれてたら良いよ。」
「いや、それも・・・かなり無茶じゃない?」


そうだろうか?
本当に何も思わなくても良いのだが。
そうだ、こうしよう。
いつか、どっかの漫画で聞いたような聞かないような台詞を聞かせてやれば大丈夫なはずだ。


「・・・あ、あれだよ。
好きな人にプレゼントをするのにいちいち理由がいるかい?」
「ふぅあぅっ!?
す、すすすっすすすっす、、、すっすすすすき、しゅきっ!?」


ボンと音をたてるように一気に上気するエンデの頬。
そんな反応をされるとまるで、僕が回りくどく告白してる気分になってくるーーーーじゃ、ないか?




あれ?
もしかしたら、そんな風にーーーーー取られちゃった、のかな?


「い、いや、あの!!
もちろん、友達としてだよ!?
友達として!!
ほら、あくまでも友達としてねっ!?」
「そんなに念を入れて否定しなくても良いでしょっ!?
ばかたれっ!!!」
「ごぼはっ!?」


誤解を解くための行動だったのに、なぜか殴られる僕。
少し理不尽。


「のろけておるのう・・・とりあえず、すぐに街をでるか。
嫌な予感もするしのう。」
「うん。シロが待ってるだろうしね。」


早く、女装も解きたいしね。


「おや、お二人さん?
とエンデちゃん・・・だったかな?」


とか思ってると後ろから声をかけられた僕。


「誰で・・・ティリアさんっ!?」


振り向くとギルドのお姉さんもといティリアさんがいた。
神出鬼没とはこの人のことを指すのだろう。
そういえば、モドキと戦ったときもいたような・・・いなかったような?


「妾の知り合いにピンチに陥った瞬間、1人だけ逃げ折った薄情なやからはおらんのう。
誰じゃおぬしは?
気安く話しかけるでない。
おっぱい星人め。」
やっぱりいたんだね。
そして、ひとりだけ逃げ去ったと?
それにしてもおっぱ・・・ごほごほん。
”ソレ”はは酷いと思う。


「女のひがみはみっともないわよ?
それと薄情なんじゃなくて、あの時は仕方なかったのよ。」
「どこぞのおっぱい星人二号と同じような台詞を吐きおって・・・
かわやの角に頭をぶつけて死ねば良い。」
「私って不器用な方だから・・・そんな器用な死に方は出来ないわね。」
「おっぱい星人二号って私のことっ!?」


ティリアさんとフェローの会話中、BGMのようにエンデの叫びが聞こえた。
二号はエンデのことだったのかな?
確かに、二号といってもいいプロポーションはして・・・・ごほごほんっ!


「そんなにカッカしてたらすぐにシワができるわよ?
・・・・とりあえず、助けれなかった理由は潜入調査中だったからよ。
近くに監視の手の者がいたし。
ちなみに、早くに検問がしかれたのはこれのせいね。」
「ふん。
言われずともそのくらい察せるわ。
うつけめ。」
「でしょうね。
それはそうと響君?」
「な、なんでしょう?」
「強くなってね?」
「あ、・・・えと・・・・は、はい。」


いきなりわけがわからん。


<ティリアじゃないのよっ!?
おっひさーっ!!
元気にしてたかしらっ!?>
「もちろんよ、セルシー!
超元気!!
もう少し話していたいんだけ・・・こう見えて今結構忙しいのよ。
次会うときまで、セルシーも元気でね。」
<もちろんなのよっ!!>


旧友?に会えたのか一気にテンションの上がる二人。
それを苦虫を噛み潰したような顔で眺めるフェロー。
一体なんなんだろうか?


そのあと二言三言交わしたあと。
ティリアさんと別れて僕達はシロの待つ場所へと戻るのである。

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品