勇者時々へたれ魔王

百合姫

第18節 勇者フラグ

「やっとついたぁ!!」
「本当によかったぁ・・・」
「ふむ。魔力体で来るのとはやはり違うのう。」


ようやくルベルークの門前まで来た僕達一行。
時刻は夜の7時といったところだろう。
「んじゃね。
また縁があったらどこかで会いましょう。」
「次会うときも面倒ごとに遭いそうだから遠慮しとく。」
「同感じゃ。」
「最後まであんた達って、むかつくわよね。」


ぶすっとむくれるエンデ。
可愛いと思ったのは内緒のことである。
「で、でも・・・・か、感謝はしてるから・・・」
「なんだって?
声が小さくて聞こえぐはぅっ!?」
「う、うるさいっ!!
デリカシーがないよっ!!」
「くくく。青い奴らじゃのう。」


良く分からんが、殴られたのは理不尽なことだと思う。多分。
不思議と断言できないのはなぜなのか。
そして、傍らでニヤニヤしてるフェローは殴っても良いだろう。殴らないけど。
「・・・・あの・・・いや、やっぱなんでもない。」
「何?
また何か願い事でもあるわけ?」
「なんでもないよ・・・じゃ、じゃね!」


背を向けて駆けていくエンデ。
最後まで元気一杯な女の子である。
若干、去り際の顔色の悪さが気になったが、なんでもないと言ってるんだしお節介は好きじゃない。
どうにもならないことになったら、逃げるか助けを求めてくるかしてくるだろう。


「気になるのか?」
「別に・・・せいせいしたよ。」
「嘘をつけ。」
フェローがニヤニヤしたまま問いかけてくる。
なんだ、そのニヤニヤは?
僕と冬香ふゆかが一緒に居た所を見た母さんのような表情で、まことに不愉快極まりない。
冬香とは僕と中学の頃からの付き合いのおとなしい女の子である。
ひょんなことから仲良くなった挨拶以上のことができるクラスメイトでもあった。
友達と言っても良いかもしれない。相手がどう思ってるかはともかく。
大体にして、他のクラスメイトは僕を怖がって近づかない。刀傷を隠すために、必ずどこかに包帯がグルグル巻きにされてるのが常だからだ。
逆の立場だったら、僕だってそりゃ避ける。
これが、数日とかならまだしもほぼ毎日においてグルグル巻きの包帯野郎なのだから手に負えない。
姉さんの刀傷は治りが早く、痛みが少ない。というのも、姉さんは僕と死合う際にわざわざ、皮膚の筋や筋肉の筋に沿って綺麗にスッパリ斬るのだ。
本当にあんた何者って感じ。
そのせいか、3日ほどで治るのだが如何せん毎日のように斬られているので包帯を外せる日は365日、まったくもってない。
そんな不気味な僕に対して、普通に接してくれてる唯一無二の親友といってもいいだろう。
重ねて言うが、相手がどう思ってるかはしらない。
口数が少ないので、どうにもこうにも何を考えているか分からないのだ。
概ねこっちから話しかけるのだが普通に頷いたり、口数が少ないながらも応答をしてくれている。
それが好意的に受け止められてるーーーと僕は解釈しているのだけど、実際は僕が怖くて逆鱗に触れないように怒らせないようにしてるだけじゃないかと疑ったこともある。
そんなことを思って、一回距離を置いたのだがあまりにも僕の心が落ち着かなかった。
別に異性として好きだとかではないと思う。
単純にクラスで孤立してるのが寂しいのです。とりあえず、少しでも嫌がるそぶりをしたら離れようと考えて、そのことは考えないようにしたのだけど・・・・今考えるとやっぱり、怖がっていたのかもしれない。


今頃冬香はどうしてるんだろうか。
僕がいなくなって少しは寂しがってくれてると嬉しい。
なんとも思ってない可能性も大なんだけどね。
僕がいなくなって寂しがる奴など、家族含めてミドリガメの”にとり”くらいしか思いつかない。
父さんは娘バカ、母さんは天然の最高峰、姉さんは・・・アレであるからして。


自分の環境を思って、目から汗が出てくるのは仕方ないとあきらめて欲しい。
決して女々しいわけではなく、自分で自分に感動したのだ。
”ああ、よくこの環境でグレなかったな”と。
僕ってホント良い子である。


「良い子にしてたから、サンタさんがプレゼントをくれたんだよね?」
「な、何をいっておるのじゃ?」


フェローが怪訝な顔を向けたが無視する。
サンタさん。ありがとう。僕が良い子にしてたからこの世界に呼ばれたんだと僕は信じてる。
これが本当のクリスマスプレゼントなのだろう。
念のため言っておくが、日本においてサンタが親であることは知っている。
それもかなり初期の段階で気づいたものだ。
だって、一般家庭においてサンタさんになり得るのは母親か父親なのだ。
本来ならば”子供が欲しがっているであろう玩具を予測”してクリスマスプレゼントを渡す。
他にもサンタへの手紙を書いたらどう?とか会話でさりげなく聞き出すなど、それなりに世のお父さんお母さんは子供のことを思い、考えてプレゼントを決定、枕元に置いておくものだ。
だがしかし。僕の親は人格的な意味で本来の親ではない!


娘バカ過ぎて、もはや変態の域に達している”変態”という名の父親へんたい。自然界であれば確実に自然淘汰されているであろうド天然の母親バカ
あの2人のクリスマスプレゼントを見れば小学生でも分かる。
「あ、これってあのバカ親父とド天然の仕業だ」と。
その確信を抱いたのは小3の頃。そのころからクリスマスというものに関心が出始めて、その年がクリスマスプレゼントの初だった。
くしくも、初めてのクリスマスプレゼントで、サンタはいないと気づいた子供は全国広しといえど、僕だけなはずだ。
だってプレゼントは”女装セット”であったのだから。


いや、もちろん我が目を疑ったさ。
朝起きたら、大仰に装飾された箱があって「サンタさんが来てくれたんだっ!!」と無邪気に喜んだものである。
この日のために良い子となるべく、家事手伝いをして母親に「良い子ねぇ、ヒビは。」とか言われたりしていた。
確実に良い子になれたと思った僕はワクワクしながら寝たのだ。
そして次の日。
装飾された箱を開けて見ると女物の服がある。
わざわざピンクのランドセルまで入っていた。
最初こそ、サンタさんが他の子にあげるものを間違えて持ってきたのでは?と思ったが、中には一通の手紙が入ってあり、「女の子だったらよかったのに」と一言。
常日頃から、僕に対してこうしたことを言ってくる人間に心当たりがあった。
・・・・ぐず。
思い出したら泣けてきた。
もちろんのことそんなことを言ってくるのは父親であり、自分で言うのもなんだが比較的聡明な子供であった僕にとって、サンタが空想の人物でしかないと理解するのはさほど難しいことではなかった。
もちろん、泣きじゃくった。
これでもかと泣いたものだった。
てっきり冗談だと思ってた「女の子だったらいいのに」発言がわりと本気だと理解し、男としての僕は要らないと思われてることに加え、せっかく良い子にしてたのにそれがただの無駄な努力に終わったこと。
さらにはサンタが居ない。あれだけ楽しみにしていたサンタがいないということに気づかされた僕はもうそれは泣いた。
近所迷惑になるほど泣いたものである。
泣きじゃくる僕に最初に気づいた姉さんが抱きしめて頭を撫でてくれ(この時の優しさはどこへ行ったのだろう?)、なんとか収まって姉さんに事情を話すと、木刀を持ってどこかへ行った。
次に母さんが駆け込んで来て、また事情を話すと母さんは珍しく微笑みを消してまたもやどこかに行った。


今思うと、父のところへ行ったのだろうと思うのだが真偽は定かではない。
僕はいじけて部屋の布団から一度も出ていかず、父がどうなったのかは知らないし知りたくも無い。
それから、父が妙に優しくなったのは・・・・言うまでも無い。
ド天然の方。母さんのプレゼントはなぜか木の鞘と木の柄で一見木刀にしか見えない”真剣”である。
今思うと、どっちもどっちだが真剣というのは十万~百万単位で買うものであり、そう考えると息子として大切に思ってくれてはいるのだろうと思う。この頃はまだ剣を握ったことが無く、単にカッコいいということで母さんの方のプレゼントはそれなりに嬉しかったりする。
姉さんとの稽古の時にいつも使っている愛剣である。
でも、これが姉さんとの死合いのきっかけになったのだから、複雑だ。


「・・・クリスマスなんて嫌いだ。」
「さっきから何を言っておるのじゃ?」
「いや、ちょっと故郷のことを思い出してね。」
とりあえず、宿を取ろう。
いよいよフカフカベッドに入れるだから。


宿に行く際に通りかかった武器屋で、バスタードソードという刀身がロングソードの倍(約2メートル)の大剣とまたもやファルシオンを買った。
ついでに簡易的な冒険者風の服も買う。
今回も軽装で、鎧板は全く無く防具らしい防具といえば足甲のみ。
ちなみにバスタードソードも選んだ理由は、使ってみたかったからと固い敵も叩き潰せると思ったからである。
そのまま宿へ直行して次の日を迎えた。




☆ ☆ ☆
「これからどうするのじゃ?」
フェローが起き抜けにこんなことを聞いてきた。
「とりあえず・・・武器を買って、ほぼ無一文になったからお金稼ぎかな。
ギルドで討伐依頼の一つでも受けるついでにアースヘッドの素材と帰ってくるときに狩った魔獣の素材も売り払えば、大分まとまったお金が手に入ると思うし。」
「ギルドかのう。
魔力体で見たことはあるが、実際に足を入れるのは初めてじゃ。
妾が普通に過ごしていた昔にはそんなもの無かったしのう。」
「ところで、ちょいちょい聞く魔力体って何?」
「ん?魔力体か?
魔力体とは・・・あれじゃな。零体とも言われており、肉体と意識を離す高位魔術、ないしは高位奇跡じゃ。
離れていられる時間が決まっているために肉体からあまり離れられない、術中は肉体が無防備になる、話したり触れたりは出来ない。というデメリットはあるものの、見つからない触れられない、扉や壁を貫通して徘徊できるという強力な探索術の一つじゃ。」


幽体離脱を自由に出来るってことかな。
確かに便利である。
「ほれ。いくのじゃろ?
早くいこうではないか。」
「ちょっと急かすなよ!」
僕の背に回って押し出すように急かすフェロー。
長い間あんな場所で篭っていたのだから気持ちは分からないでもないけれど。
宿屋から歩いて10分ほどたち、ギルドらしき場所に着いた。


「あのすいま・・・ってお姉さんっ!?」
僕が最初に居た街、レヴァンテのギルドにいたお姉さんが受付をしていた。


「あら?
奇遇ね。
すっかり立派な姿になって・・・・冒険者チェスとしての生活に慣れたのかしら?」
「す、少しは・・・お姉さんはなぜ?」
「ここにってこと?
たまたま受付係が少ないってことで、ここに転勤したのよ。
つい先日ね。」
「へぇ~まぁいいや。
素材を売りたいのですけど・・・」
「あら?そう。
じゃぁそっちの素材部屋に来て頂戴。」
「はい。」


僕達がお姉さんについていくとフェローが苦虫を噛み潰したような顔で瞑目していた。
「どうしたの?フェロー。」
「いや・・・・どこかで感じたことのある魔力じゃと思うてな。
それも・・・いや、ありえるはずあるまいて。
妾ですら1000年が限界なのじゃから。」


何の話をしてるのか分からないが、勝手に納得して勝手に自己完結したようだ。
「さ、そこに素材を置いてくれる?」
「は、はい。
えと・・・これとこれと・・・」


出したのはアースヘッドの犬歯にあたる大きな牙が数点と小さな牙が数十点。鱗が50枚ほど、肉片が数キロ。皮が5平方メートル分。
太ももほどもある大きな爪が10個。へし折った角が一本。
これがバックパックに少しの余裕を持たせた限界量であった。
なんかの魔術で要領が見た目の数百倍に引きあがってるバックパックは凄い。
お姉さんもこれを見ていささか驚いたらしく。
「・・・・あなたは魔術を使えたり、奇跡を使えたかしら?」
やけに強張った表情でこんな質問をしてきた。
「いえ、特には・・・」
「私と初めて会ったときには無かった、その腕の紋様が関係してるのかしら?」
質問の意図が読めない。
まるで、誰かに聞かれると困る単語を言えないがために、回りくどくそれと気づかれないよう自分の欲する答えを求めているようだ。


「いえ・・・けいや・・・じゃなくて、紋様が出る前に戦ってましたし。」
フェローとの契約のことはなんとなく伏せておくことにした。
フェローはフェローでかなりの眼力でお姉さんを睨み付けている。


「ふふふ。まぁいいわ。換金するからちょっと待っていて。
あ、それとそっちのお嬢さんは残ってくれないかしら?」
「え、えと・・・」
「かまわん。
ちと席を外すのじゃ、響。」
「べ、別にいいけど・・・・」


フェローの顔は険悪なままで、もしかしたらお姉さんのスタイルの良さに嫉妬して居るのかもしれない。
フェローは幼児体系だし。
「嫉妬は醜いよフェロー。」
「声に出とるわ。たわけがっ!!」
マジですかっ!?
「ひでぶっ!?」
ビンタを受ける僕。
思いっきり良いのが入ったせいか気絶した。




「さて?
主の魔力に覚えがあるのじゃが?
主は誰じゃ?
いや、違うな。
主は”奴”本人か?」
フェローは言った。


「ふふふ。
やっぱりばれちゃうか。
ご明察のとおり、私は・・・いや、君が相手ならこう言う方がいいかな。
”僕”はティリア。
北大陸にある鬼神の都”風雷の郷”を統べる魔王。
それだよ。よく覚えてくれていたものだ。」
「はっ!
気色悪いのう。
女の肉体になんぞなりおって気持ち悪い。」
最上級の嫌悪感を悪びれもせずに表情に出すフェロー。
それをみて肩を竦め、苦笑するティリア。
「気色悪いのか気持ち悪いのかどっちかにしてほしいな。
それと、僕の・・・いや、私の本来の性別は女なのよ。
フィジカル的にもメンタル的にもね。」
「ふぃじかる?めんたる?」
「肉体的にも精神的にもってことよ。」
「なるほどのう。
じゃから、ティリアなどという女子のような名前じゃったわけか。
そしてよくもまぁ、一億年以上も騙しておったな。
妾のみならず、主の民草も。」
「ふふふ。
そうなるわね。でも、もともとは女のままだったのよ?
でも、多種族が北大陸の王族を魔王とか呼ぶようになってからは性別を変えたの。
あのごっつい汗臭そうな姿にね。
最初は発狂しそうなほどに嫌だったわ。」
その時の心情は今でも思い出せるのか、ティリアは顔をしかめてハッキリとした不機嫌さを表した。


「別に女のままでも構わぬだろうに。」
「それだと魔女王になってしまうじゃない?
語呂が悪いってだけで、審議にかけられて・・・」
「な、なんというか・・・・のんきな国民性じゃのう。」
「そこが私の都の良いところよ。」
「まぁそこまでともなれば長所と言って構わぬじゃろうな。
短所にもなるかもしれんが。」


などという他愛の無い雑談は終わりだと言うばかりにフェローは表情を引き締めた。
「それで?
わざわざ、壁を越えてまでこっちに来た理由はなんじゃ?」
「ただ遊びに来ただけよ。」
「嘘をつけ。
いや、違うな。
すべて喋れ。」
こやつは昔から嘘は付かない。
本当のことしか喋らないが、一部のみを喋るだけであったな、と思ってフェローは言い方を変えた。
「い・や・よ。」
満面の笑顔でフェローの命令を拒否するティリア。
「・・・じゃろうな。」
「心配しなくてもそのうち嫌でも分かると思うわ。
私個人としては、迷惑をかけるつもりもないし。
引き止めたのは、それを言いたかっただけなの。下手に敵対視されるのも嫌だもの。
だから、また今度縁があったらお茶でもしましょうか?」
「とか言って、行く先々を先回りするつもりじゃろ?」
「ふふふ。そうなるかしらね。
彼・・・面白いし。
異世界に呼ばれて、ちょっとおまけ程度の肉体強化とこのそのへんのありきたり装備のみで上位竜種を殺すなんて・・・普通は出来ないわよ?」
「当然じゃ。
妾が認めた契約者なのじゃからな。」
「そうそう。それも驚き。
紋様を見て我が目を疑っちゃったわ。
あなたの魔力と霊力が彼の体をめぐっているのを見たときも夢かと思ったもの。
あなた人間嫌いだったでしょう?」
「・・・・時は人を変えるのじゃ。
特に寂しさというのは・・・」
「ああ・・・言わなくても分かったわ。」
すっごく優しい目をフェローに向けるティリア。
フェローはフェローで何も言うなと言外に表情で示している。
「そろそろ起こしましょうかね。というか、いつもあんな強力なビンタを打ち込んでるの?それも魔力を込めながら・・・いくらなんでも可哀想よ。」
「ふん。
バカなことを言うからじゃ。」
「まぁ・・・そのスタイルじゃあねぇ・・・」
「殺されたいのかのう?」
「ふふふ。大丈夫よ。幼児体系もその道の人なら需要があるんじゃないかしら?」
「だまれ!」
バチンとティリアの頬を張るフェロー。
「はひぁっ!?
痛いじゃないっ!?
てか一応、一国の女王よ?私!!」
「ふん。妾はこれから成長するのじゃ。
少なくとも母様の”すたいる”は凄かったのじゃからな。」
「そういうことを言ってる人に限って・・・なんでもないわ。」
フェローの右手に魔力の集中が見られたためにすぐに話をそらしたティリア。
それを見て、フェローはとりあえずと言ったていで響の方へ向かう。
「ほれ起きんか。
いつまで寝ておる。」
「ちょっとそれは酷いと思うわ。」
「んぁ・・・ふぇろぉ?
てか・・どうしてこんなところで寝てたんだっけ?」


僕は一体何をしていたんだっけか?
ギルド内で寝てしまうほど、疲れてるとは・・・
困ったものである。
今日はやっぱり宿でゆっくりしようかな。と思いつつ。


「はい。これは換金された素材分のお金よ。」
「あ、どうもです。
いくらになったんですか?」
「ざっと、25万ガルドかしら?金貨が249枚と銀貨が8枚入ってるから結構の間、楽して暮らせるわよ。
重いから気をつけてね。」
「あ、ありがとうございます。」
金貨の入った袋はかなり重い。
バックパックに入れるのも一苦労である。


「それとギルドカードも更新しておいたわ。
ギルドポーンからナイトにクラスアップね。
実力で言えばキングの一歩手前ってところなんだけど・・・上位竜種を殺して高ランクの素材を売ってたとしても、ポイント制だからそうも行かないの。
ミッションはどんなに低ランクの物でも100以上あるのに対して、素材はどんなに高ランクのものでも一つに付き、50ポイントが限界だから・・・
ごめんなさいね。」
「それは別にいいです。」


お金は十分に集まった。
宿に戻るのも良いが、ここは馬車を買うべきだろう。
かっこいい馬車がいいな。
「馬車を売ってる場所って知ってますか?」
「それならこの建物の裏にあるわ。
すぐわかると思うから案内はいらないわよね?」
「はい、ありがとうございます。」
「馬車か・・・ふむ。
楽しみじゃのう。
一体どんな乗り心地なのか・・・」


「あ、それと私はティリアって言うの。
よろしくね?」
「あ、はい。」
「こやつに油断はせん方が良いぞ、響。」
「なんでそんなこと言うんだ?
失礼だろ?」
「響君が私とばっかり喋ってることにヤキモチを焼いちゃっただけよ。
私は気にしてないから、大丈夫よ。」
「も、餅など焼くかっ!!」
顔を真っ赤にして否定するフェロー。
そうか、そうか。
やきもちか。
漫画だけの話だと思っていたが、そんな感情が現実に存在してたとは思わなかったよ。
なんせ、友達といえば前述した冬香くらいなもので。
とはいえ、やきもちってどういう意味だったっけ?
しばらく漫画を見てなかったから、忘れたけど。


「今日の用事はこれで終わりかしら?」
「あ、いえ、ついでに何か依頼でも受けようかと思いまして・・・」
「あら・・・そうなの?
・・・・そうねぇ・・・・これなんてどうかしら?」
少し考えた後にティリアさんは一つのミッション板を取った。


「レッドゴブリンの討伐?」
「そうよ。
体長は5メートル強。
腕力、知力、丈夫さ共にかなりの物で武器や防具も使う、厄介な魔獣よ。
ゴブリン科では上級の魔獣に位置するわ。
討伐任務だと素材が証明代わりになるからちゃんと切り取ってくるように。
彼らの爪か牙が売れる素材よ。
本来ならビショップクラスの冒険者チェスに頼むのだけど・・・アースヘッドを倒した響君なら簡単だと思うわ。
がんばってね。」
「は、はい。」
「レッドゴブリンとは懐かしいのう。
一度、奴らの集まる集落に迷い込んだことがあったのじゃが・・・・あの時は範囲魔術ですべて塵にしたものじゃ。
特に強くはないから安心して挑むと良い。」
「・・・・フェローって今更だけど凄いよね。うん。
というかさすがに可哀想なんだけど・・・」
「わかっとるよ。
しかし、襲い掛かってきたのじゃからしかたあるまい?」
「まぁ・・・それはしかたないか。」


それで、話を終えてギルドの裏手にある馬車屋へと向かう僕達である。

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