男の娘なCQCで!(未完)

百合姫

21わ はじめて の ごえいいらい2

次の日。
僕は予定通り、依頼屋の二階で待ち合わせをする。ここで今回、一緒に護衛以来を受ける人たち同士の顔合わせをするとのこと。
トクナガさんはすでに居て、優雅に紅茶を飲んでいた。


いや、優雅では無いな。


「おはようございます。」
「おはよう。他の三人は?」
「もうすぐ来ますよ。」


と話をすれば影。
ぞろぞろとやってきた。


「お、おはよう。えと・・・ひ、・・・・ひび、き。」


1人はマノフィカさんだった。
少し驚いたけど、まぁちらほら見かけてたのは確かだし、ここに居ても変ではない。
学園はあくまでも望む人間に望む技術を教えるためのものだし。
学園の生徒でも僕のように普通に依頼を受ける人間はいる。
マノフィカさんもその1人だと言うことだろう。
そして、何気に名前で呼ばれたのは始めてだったりする。


「おはよう。
えと・・・そのポニーテール。似合ってるよ。」
「あ、ありがと。・・・変じゃなくて良かった。」
「ん?」
「な、なんでもない。」


マノフィカさんはストレートの髪をリボンでまとめてポニーテールにしている。
仲直りした際の心機一転か。ただのおめかしか。それとも単に気分か。
とりあえず誉めておく。
女の子がいつもと違うおしゃれをしたならとりあえず誉める。
そんな感じのことを聞いたことがあるし。
誉められて照れたのか、少し顔が赤い。


「おう、嬢ちゃん達が今回の同伴者か。
よろしく頼むぜ。」


その後に来たのは40くらいのおっさん。
渋い短髪で髭のおっさんで、体格がガッチリしている。いかにも冒険してます!って感じの人である。武器は大剣だろう。
背中に成人男性1人分ほどの幅と長さを持つ大剣を抱えているため、なおのこと冒険者っぽい。
そして何気に人族を見るのはこの世界に来て二度目だ。
意外と普通の人間は少ないのかな・・・とか思ったけど、比較的貧弱な人間は冒険者に向かないということで僕の行動範囲内では見ない。というだけなのかも。ということを考えつつ。
よろしくお願いします。と返しておく。


「ああ、よろしくな。俺はテンガってんだ。」
「僕は響です。」
「マノフィカ。」
「友達なのか?お前ら?」
「えと・・・ええっと・・・」


友達って言って良いのだろうか?
こう聞かれると困るよね。
相手もそう思ってくれてるのか、自信が無い。


「べ、別にそういうわけじゃない。」


とマノフィカさん。
あ、やっぱりですか。
多少予想は出来てはいたけど、直接言われるとこうーーーなんて言うのか。
心が痛いです。


「友達と言うのは名前で呼び合う仲だと母さんから聞いた。
だから響とは友達じゃない。」
「・・・?
呼んでると思うけど?」
「マノフィカさんーーーじゃ、壁を感じる。だから友達じゃない。」
「さ、さいですか。」


なるほど。呼び捨てで呼び合うくらいじゃないと友達ではない。ってことか。
うん、まぁ確かに。それは知人って感じがする。
高校とか中学ではさん付けで呼び合うヤツは見なかったな。
中にはそういう人もいるけれど、なんとなく堅いイメージがあるのは仕方ない。
英語なら、毎回毎回ミスターやミスを付けて呼ぶようなものだし。


「だから友達じゃない。」
「うん、そうだね。納得したよ。」
「と、友達じゃない。」
「―――?うん。」


なんか泣きそうな目でこちらを見てくるマノフィカさん。
え、なんで?
むしろ友達じゃない発言されてちょっと泣きそうなのは僕のほうだと思うんだ。
いや、泣かないけど。
友達を増やすのなら、やっぱり男が良い。
と強がってみた。


「ぎゃ、逆に言えば呼び捨てで呼び合うようになれば友達。」
「え、うん。そうなるね?」


あれ?
なんでこんなしつこいくらいに解説されてるの?
あれか?
僕ってそんなにアホっぽく見えるか?
フィネアと暮らしてるから?
フィネアから周囲の人がアホっぽく見えるウィルス的な物が出ているのかもしれない。フィネア菌恐るべし。


そのままマノフィカさんはそっぽを向く。
いじけてしまったようだ。
ううむ。話の流れ的には呼び捨てで呼んで欲しい・・・のかな?
でも、友達じゃないと言われた直後だし。
友達になりたいならそのまま友達だと言い張っても良いような?


「マノフィカさん?」
「・・・うー。」


うむ、分からん。
呼び捨てで呼んでみようかとも思ったけど、もし僕の勘違いだったらと思うと。
そして、「呼び捨てで呼んで良いなんて一言も言ってないんだけど、きもーい」とか言われたらどうしよう。
きっと恐怖症が悪化するに違いない。
うん。放っておこう。
機嫌ならそのうち直るし、特別直す必要も無い。
もともと嫌われてたしね。これが噂に聞く乙女心というやつなのかも。
二度も浮気をされた僕には一生分かりそうにないが。というかそれを分かってなかったから僕は浮気をされたのかもしれない。
実は肉欲だなんだというのは建前で乙女心の理解できない男に愛想を尽かした結果ーーーいや、よそう。
もう過ぎたことを考えるのは良くない。
それに恐怖症は治しても、これから先女性と共になる機会は無いのだから乙女心を分かる必要は無し。
少なくとも一晩経てば機嫌は直るだろう。


「ガハハハ。面白い嬢ちゃんたちだな。んま、仲良くな。一応言っておくが、護衛中に私情を持ち込むなよ?」
「?
分かってますよ。」
「・・・。ヒゲうるさい。」
「ま、マノフィカさんっ!?」
「グハハハ!
言うねぇ。まぁ構わん。若い頃は俺もそんなもんだったしな。分かってるなら良いんだ。要らんお節介だったな。」


マノフィカさんの無礼発言も笑って許す。
テンガさんは見た目どおり中身も渋いオッサーーーオジサマのようである。


「オメエはどうなんだ?
少年。」
「はひっ!?」


テンガさんは後ろを振り返る。
いつの間にか最後の1人も来ていた様だ。
獣耳があり、髪は赤。全体的にだらしなくボサボサと伸ばした髪の隙間から鋭い眼光が覗く。
目も赤い。服装は俗に言うレザーアーマーとかそんな感じの物に鉄を加えて加工した防具レザーアイアン一式のようだ。
獣耳があることから獣人族のようである。
何気ない仕草と、盾と一般的な鉄のブロードソードという装備を見るに、特別強いと言うわけでもないが弱いと言うほどでも無いみたいである。
ただ、目つきに反して何やら挙動不審気味なのが不安要素である。
さっきから居たようだが、話の邪魔にならないようにと隅っこに寄っていたことと良い、テンガさんに話しかけられて、リアクションが激しいところと良い。


「だ、大丈夫です。」


声のイントネーション的にもーーーかなり気が弱いようだ。
本当、目つきだけは不良もたじろぐ感じの雰囲気を出してるのに。
形振りで台無しである。
そのちぐはぐさがなんというか・・・奇妙と言うか、可愛いと言うか。


「僕は響。」
「マノフィカ。」
「テンガだ。よろしくな、小僧。」
「は、はわわ、は、はい。よろしくお願いします。
私はユーリと言います。」


ぎこちない笑みを返しつつ、獣人族の少年改めユーリはお辞儀をした。


「さて、皆さん揃ったようですし、早速出発としましょうか。
準備は大丈夫ですね?」


トクナガさんの声に皆が一様に頷く。
念のため、もういちどイベントリ確認、よし。


「問題ないです。」
「問題ない。」


僕とマノフィカさんが答え、他2人も問題ないためそのまま出発。
こうして初めての護衛以来は始まったのである。




☆ ☆ ☆


がたこん、がたこん。
そんなこ気味良い音を発てて、馬車は街道を西のアルトネリ機械樹街へ向かってひた走る。
馬車が走り出して一時間。
とりあえず何事も無い。
最初こそどこからでもかかって来い。という感じで気を張り詰めていたんだけどね。


「退屈だな・・・」
「なんだ、響。オマエさん、護衛依頼は初めてか。」
「え、は、はい。どうして分かったんですか?」


素人っぽい振る舞いはしてないつもりだが。


「ガハハハ。護衛以来を始めてやるやつは必ずその一言を言うんだよ。」
「な、なるほど。」


素人っぽい振る舞いだったな。うん。


「基本的に護衛以来ってのは行動が縛られる上に、荷物を守るために先陣きって戦わないといけない。だからこそ戦術が限られるとか初心者にとっては難度が高めな依頼だ。その分報酬も良いわけだが・・・
でも、実際平常時ってのは基本的に何もすることがないもんでな。
始めてやるやつは基本的に嬢ちゃんみたいに、肩透かしを食らうことが多いな。」
「う・・・ぐ。」
「そうして油断したヤツが真っ先に足元をすくわれるわけだ。」
「ぐぬ。」


言い返せない。
どれぶれでもそうだったな。うん。
あっちはゲームだが、こっちでは現実。依頼を失敗すればお金では買えない“信頼”も失うし、下手をすれば命も失う。
なかなかにヘヴィな仕事と言えるだろう。


「まぁ安心しな。だからこその複数人依頼だ。
誰かが気を抜いても誰かが気づけばいい。そんなもんだ。」
「な、なるほど。」
「ある程度の不意打ちに反応できる程度には気を張って置け・・・ということだな。」
「べ、勉強になります。」
「クックックッ。響は貴族の出か?」


面白そうに笑うテンガさん。


「い、いえ。そういうわけでは。
どうしてですか?」
「雰囲気・・・とでも言うか?言葉遣いと良い、振る舞いなんかもだ。いやに礼儀がなってる。冒険者ってのは大体がお金に困った一般市民がーーーってとこだからな。そういったことを知らないやつのほうが多い。」


そうなのか。またもや勉強になった。
どれぶれではそんな設定無かったし。


「テンガさんは冒険者になって、長いんですか?」
「ん?ああ、かれこれ30年はやってるな。」
「ほう・・・。」
「冒険者にしか見れない景色、得られない達成感。そんなのを求めて生きてきたせいか妻にも愛想を尽かされてな。娘ともろくに会ってねぇな。そういえば。」
「そ、それは・・・」


じっとしてられない男ってやつか。
家庭に収まってられない男。
うむ、カッコいいな。
テンガさんの奥さんと娘さんには申し訳ないが素直にそう思う。ちょっと憧れる生き方だ。


「それとテンガさんなんて他人行儀に呼ぶな。一緒に仕事する以上、俺たちは仲間だ。
さん付けはしなくていい。」
「あ、はい、テ、テンガ。」
「おう!」


明らかな年上を呼び捨てにするってすっごい抵抗があるな。


「・・・呼び捨てで呼び合う。」
「ん?なんか言った?」
「・・・別に。
死ねば良いのに。」
「なぜ!?」


ちょっと機嫌が直ったかな?と思ったらまたもやマノフィカさんが不機嫌モードに。
やっぱり呼び捨てで呼び合いたいのか?
た、試しに呼んでみようか。
あ、でも。
どうしよう。
いや、でも大丈夫か。
嫌われても、所詮はアレだ。
もともとそこまで好感度が高いわけでもなし。


「ま、マノフィカ・・・さん。」
「っ!?
・・・ばか。あほ、まぬけ。」


呼び捨てにしようと思ったんだけど、すっごい勢いでこちらを振り向いてきたもんだから怖くてついサン付けにしてしまった。
やっぱり違ったのか?
ばか、あほ、まぬけは呼び捨てにしようとした僕に対する罵倒だろうか?
「おめえ、何ちょーしこいてんだゴラァ」的な意味での。


くそう、分からん。
そんな様子を見てたテンガはただただ豪快に笑ってるし、ユーリはユーリでおろおろしている。
け、ケンカはダメですよぉ、と情けない声を出してるのがまた滑稽だった。



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