男の娘なCQCで!(未完)

百合姫

19わ ちょうこう

私は彼に助けられてからというもの。
最初はただただ悔しかった。


自分があっという間にやられた相手。
キングオーク。
あれを相手に見事に立ち回る姿はカッコいいの一言に尽きる。
キングオークの一撃でも掠ればそれだけで腕の1、2本は持ってかれ、当たれば確実に致命傷。
そんな敵を相手に勇猛果敢に攻めていく、目の前の女の子のような姿をした彼。
響。
そういう名前だったはずだ。
始めは嫌いだった。
なぜなら彼は私を軽蔑するような目で見てきたからだ。
彼の目にはハッキリと私を見下す旨の視線を感じた。
まるで汚物を見るかのように。


それからしばらくして友人となったフィネアが言う。
『それは彼の過去に秘密がある』と。
彼は私という存在ではなく。
女性というものを嫌悪しているという。
ならばなぜ、フィネアが一緒に居られるんだ?と言うと。
「家族ですから。」
という答えが返ってきた。
私にとって少しまぶしく感じた答えだった。


上位親族。
私の種族は現在、絶滅の危機に瀕している。
20年前の戦争で能力の高かった私の種族は最前線に出され、その殆どが生きて帰ってこなかった。
そしてその事に関して族長が国に直談判をし、しかしそれは無常にも跳ね除けられた。
結果、一族の殆どが国を離脱。
しかし、戦闘能力の高い上位親族が他の国の味方をされると困ると判断した国はあろうことか私たちを殺しにかかった。
結果。
色々と悶着はあれど私たちの種族はそのままこの国にいることとなったと聞いている。
しかしその頃には人数は100を切っており、今では本当に少ない種族として国に保護されるレベルとまでなってしまった。
そしてそれはその後生まれる私たちに多大な影響を与えることとなった。
極端な話。
女性の性奴隷化、いや「繁殖機化」と呼んだ方が正しい。そのまま字面の通りでは無いのだが、それに近いことが行われるようになったのだ。
子供を産む女性には意志を認められず、ただ変わりばんこに色々な男に子を孕まされるという文化がここ数年で出来たのである。
もちろんそこに無理やり、複数でなどという部分は無い。
無いには無いが、実際は変わりないともいえる。


もっと表現をマイルドにするならば。
夫が子供を産み落とすたびに変わるということである。


そんな里に嫌気が差した私は母に習った護身術と刀、銃を持って里を出た。
もちろん他の女の子達も一緒に逃げ出したのが、一部は連れ戻され、一部ははぐれ。
一部は魔物の腹の中へ。


洗脳するように毎日毎日言い続ける男達。


私は認めたくなかった。
私の価値が。
私の生きてる意味が。
ただ子供を産みつづけるだけなんて。


だから里を出た。
違法奴隷商人に捕まりそうになったり、魔物に食べられそうになったりしながら苦労してこの学校に来て。
苦労して色々なことを覚えた。
それもどれも全て。
私の価値を上げるため。


そしていずれは出来る惚れた男性に振り向いてもらうためだ。
体だけではなく、内面も合わせて好きになってもらうように。
気高く。
強く。
美しく。
可愛らしく。
そうあるつもりだった。


なのに、それを全て叩き壊された。
私には何も残ってない。
もう何の価値も無い。
死んでしまえば子供を作る。その価値すら見出せない、ただの肉塊と化す。


何が悪かったのだろうか?
私は死に際に考えた。
私は自分の価値を上げたかっただけ。
自分の生きる意味をもっと強いものにしたかっただけ。
私が誰かに迷惑をかけた?
迷惑をかけて誰かを泣かせた?
誰かの幸せを奪った?
何もしてない。
私は何もしてないのに。
殺されそうになってる私。
そんな私を助けた彼。
本当に分からなかった。
どうして私なんかを助けたのか。
もう死ぬ手前の。
なんの価値も無い私に。
必要とされない私に。


心の底から嬉しかった。
助ける=私を必要としてくれている
そういうことだから。
でも、誰が?
そう助けてくれた人を見ると、信じられない人が居た。
誰よりも信じられない。
そう。
彼だった。
私を軽蔑していたはずの彼。
響だった。


☆ ☆ ☆


私は助けられた日。
考えた。
どうしたら良いんだろう。
彼と何を話してどんなことを言えばいいんだろう。と。


彼の瞳からは完全に軽蔑の色が消え、むしろ慈しむような色が見て取れた。
まぁそんなことは良い。
なぜ軽蔑の色が消えたとかどうでも良い。




ただ私は彼には礼を言っていない。
なぜ言わなかったのだろうか?
こんなにも助かったと。礼の気持ちを抱いているというのに。
なぜか礼を言い損ねた。
今までが今までなだけに言いづらかった。というのはもちろんある。
あるにはあるが。
それだけではない。
というよりもそういった理由は少ししか無い気がする。


「ふむふむ。とりあえず、お礼はいつでも言いと思いますよ?
別に響はどっかに逃げないんですし。」
「うん。分かってーーー」


そうか。
そういうことか。
フィネアに相談して分かった。
きっとお礼を言ったら、それで完結してしまう。
彼とのつながりがそれで切れてしまう。
そんな気持ちがあったからだ。
なんにせよ、どっかに逃げないと分かった以上。
出来るだけ早くに礼をするとしよう。


何が良いだろうか?


一種間ほど迷った末。
結局手作りのお弁当にすることにした。
母さんが男性はそういうものを一番喜ぶ。と言っていたし。




☆ ☆ ☆


上手くいった。
上手くいった。上手くいった。上手くいった。


喜んでくれた。
彼はニコニコとしてくれた。
なんだろうか。
彼が喜んでくれるとなぜかこっちも嬉しくなる。


何はともあれ。また作ろう。
明日も。明後日も。そのまた明日も明後日も。




目の前には彼の使った箸と弁当箱。
私は彼の”使った”箸をぺろぺろと舐めながらそんなことを思っていた。







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