男の娘なCQCで!(未完)

百合姫

17わ はじめて の ちょうにんいらい

キングオークという本来ならありえないであろうボスモンスターと戦うことになって半月程が過ぎた。
もちろん学園にはワケを聞かれ、原因である貴族の息子には退学処分。
召喚石は戦争時に使うためのあくまでも敵国に対する、ないしは国民ひいては国を守るための兵器であり、その召喚石を所持していたとして親も厳しく処罰されたそうな。
召喚石は戦争が終わり次第、例外なく国に収めなければいけないものなのに、それを掠め取っていたということである。
キングオークが落とした魔斧はあのまま僕が貰った。
最初から持っていましたよ的な顔でいたら何も言われなかった。
ないしはもともとはキングオークの持ち物だからと言うのもあるかもしれないし。


そして、あれ以来マノフィカさんの僕に対する態度が軟化した。
さすがに、というやつであろう。
フィネアは大層喜んだ。


のだが、それでもぎこちないのは変わりなかった。
彼女の心境的に“今まで第一印象で嫌っていたやつが実は良いやつだった。ところが、今までが今までの態度なだけに今更愛想良くするのは些か以上に気まずい。”と言った所だろう。
僕としてはその辺は全く気にしてはいないが下手に距離を詰められてもと、困ってしまうのでむしろ好都合。
僕から歩み寄ったりはしないため、なおのこと距離感は離れていくわけだがそれもやむなし。


そんな予後話はともかくとして、現在は依頼屋に来ていた。


「レトお姉ちゃん。もう無いの?」
「ごめんなさいね。」


もうすっかりお姉ちゃんとつけるのが定着してしまったことに少し我ながら呆れを感じつつ。というか、そうしないとシカトされる。
なおかつちょっとここの依頼屋で僕は有名になっていた。
言わずもがな、その容姿と小ささでちょこちょこと殺伐とした依頼屋を受けにくる小さな女の子として。
皆が皆自分の娘や孫をみるかのように優しくしてくる冒険者どもにはちょっと鬱陶しい面もあるが、純粋な善意であるためどうにもつっけんどんにはできない。
ちなみに誰が何を受けたとかそういう情報は普通は知られないので、町人依頼専門の子供としてやたらと微笑ましく見守られているのが僕の現状である。
別にいいんだけどさ。
斧を背負って持ってきただけで、「おい?だ、大丈夫か?重くないか?」と心配そうに聞いてくる見た目50のいかついオッサーーーオジサマや、「それは・・・魔斧か?―――危険はなさそうだが気をつけて扱うんだぞ。何かあれば俺に言え」と行ってくる優男風のお兄さん。
「あら、大丈夫?魔斧・・・かしら?実力を勘違いして魔物を殺しにいったりとかしたらだめだからね」と一見、考えなしであろう子供が蛮勇を起こさないようにと念を押してくるお姉さんと。
気の良い人たちが多いようで逆に嬉恥ずかしいというものである。
いや、普通に扱えますからね?


とまぁ閑話休題。




ここにきた理由は生活費を稼ぐため。
お店はすでに開店プレオープンしているが、人が少ないのはどうしようもない。
ただでさえ少ないのに、来てくれた人が買っていってくれる人はさらに少ない。客の持ってきた物を買取ったりともあるので食っていくには全然足りない。すなわち貧乏な僕にとって、いまや依頼屋に来て依頼を受けるのは僕の本業と化している。
もちろん学園に入ったのは宣伝が目的であり、宣伝はするつもりなのだがいまだ僕たちの知り合いはマノフィカさん1人。
あれ?どうしてこんなことに。
とにかく試験に合格。クラスを上げて、一箇所に留まれるまではお預けである。


とまそれはマタの機会に考えるとして。


「討伐系はもう全部終わってるのよ。」
「・・・ううぅ・・・不便な。」


ゲームでは尽きずに何度も出来た依頼クエストもここは現実。
そうそう都合よくモンスターの討伐依頼があるはずも無く。幸か不幸かキメラアントの繁殖期も終えてしまった。
あるのは未開の地やダンジョンを探索しろとか、商人の護衛や盗賊の捕獲、または駆除などなど。
一日、二日では終わりそうには無いものばかりである。
遠出や探索に日数がかかる未開の地やダンジョンは不可。
現実である今。下手をすれば一週間どころではない。
行きと帰りの日数も合わせれば最低でも一ヶ月はまずかかるだろうし、長ければ半年。下手をすれば一年以上かかるかもしれない。
そんなのは勘弁被る。
商人の護衛なんかも多少は日を取られてしまうけれどベターな依頼ということで良いかもしれない。が、現実はそう甘くない。
不意打ちに対応できる手段を持っていないのだ。
不意打ちが運悪く商人を一撃で殺したらと思えば・・・
要は無理。というほどではないが、3割ほどで失敗するかもという程度。
3割は結構でかい。


盗賊の討伐だ駆除なんてのは言わずもがな。
中身は普通の日本人。ゲームならばともかく現実で人殺しなんて出来るはずも無く。
いや、いずれする必要も出てくるかもしれないけど、今ここで自ら望んで行きたいとは思えない。
まぁ僕のことだから目の前でフィネアが殺されそうになったりとか自分が殺されそうになるくらいに追い込まれたらなどの状況に陥れば、勢いとノリと怒りで殺せるだろう。
殺せるだろうがそのまま殺されるかもしれない。そんな博打を打ちたくは無い。
あまり深く考えずに、僕が受けなくてもほかの誰かがやってくれるだろう精神でスルーしておく。
そういう殺伐としたのは苦手ですので。


ほかには違法奴隷商人の捕縛、殺害や違法魔技師の捕縛、殺害。脱走した違法貴族の捜索などなど。
違法が多いなっ!と思った。
そして捕縛と殺害では捕縛のほうが報酬が美味しいようである。


他のを見てみるが、対人依頼がこれでもかってほど多いのはゲームじゃないからか。
そら良く良く考えてみれば僕以外にもモンスターを狩っている輩は多々居るわけで。
そんな人達がこぞって周辺のモンスターを狩っていればもちろん結果的にモンスターが少なくなり、“モンスターを倒してくれ”という旨の依頼が少なくなるのは当然のことである。
どこからともなく出現するわけではなく、モンスターも生きて繁殖して増えていくのだから当然のことか。
ふむ。こうなってしまっては実際に町人依頼というのを受けてみようか。
若干儲けが悪いのだがそこはしかたない。


「町人依頼は何があります?」
「んと・・・今のランクで受けれるというとこれくらいかしらね?」


むむむ。少ない。


「ちょっと少なすぎないですか?」


町人依頼とはその名の通り、街の人からの依頼。街から出ずにすんだり、命の危険がほぼ無いというメリットがある。
そのためこうした依頼を専門にしている人もいるとかかんとか。基本的に若い子が多いらしく、僕がそうだと思われたのも無理は無い。
日本で言うところの学生のアルバイトみたいなものだろうか?
命の危険が無い分、普通の依頼屋の依頼よりは格段に報酬が落ちるのだが、それでも一日に1回~3回受けておけば質素に過ごす分には問題ない程度にはお金が溜まる。
それが10にも満たないというのはどういうことか。
依頼屋の依頼、もといクエストは僕のランク、オタマジャクシでも20以上はあったというのに。


「そういえば響ちゃんは初めてだったのよね?
町人依頼はクエストカードのランクじゃなくて、その裏に書いてある・・・貢献度というのがあるのよ。
そのポイント基準で受けられる依頼が増えていくの。」
「へぇ。それはやっぱり・・・」
「ふふ。そうよ。察しの通り、町人からの苦情をさけるためにある一定以上の依頼をこなした人・・・すなわち、信頼できる人じゃないと受けさせられないというわけ。
普通のクエストを失敗する分にはその冒険者が死ぬか怪我をするか・・・すなわち自己責任の範疇で済むのだけど、これは町人からの依頼だからね。
失敗されると依頼を受けた人間はもちろん、依頼屋の評判まで悪くなる。
だから一定の基準が必要なのよ。」
「その基準がこの貢献度?」
「そのとおり。ふふふ。可愛くて察しの良い子にはナデナデしてあげましょう。」
「遠慮します。」
「照れない照れない。」


撫でてくる手を払いのけつつ、町人依頼の用紙を見比べていく。
部屋の模様替えを手伝って欲しい。
庭の雑草掃除。
老夫婦の変わりに買い物を。
お店の店番。
新作服のテストモデル。
貴族の荷物もち。
などなど。
普通の依頼屋のクエストに比べると日本の手伝いレベルの簡単かつ平和的な依頼が全てのようである。
貢献度が上がるほど、難しい依頼も出てくるのだろうけどこれは大分楽そうだ。
とはいえ、その分もらえるお金は格段に落ちるのだが。


「ふむふむ・・・じゃあ、これにします。」
「あら、これにするの?」


とりあえず選んだのは庭の雑草掃除である。
たまには童心に返って土いじりをするのもいいだろうと思ったのである。
いや。土いじりとはちょっと違うけれども。
貴族の荷物もちも貴族が依頼者だけに報酬はいいとは思ったのだが、それはやめておいた。
この世界の貴族は基本的にちゃんと真面目な人が多いわけだが、それでも不正をする輩や悪代官に値する者は当然のことといる。
たかだか荷物もちを面倒がる人間となるとなんとなく人柄のイメージがつくので自重した次第である。


「これにするのね?
ベラッセンさんのお宅は・・・知らないわよね?」
「ええ。もちろん。」


知らない人の家を知っていたら変態だろう。


「地図を描くから待っていて。」
「はい、わかりました。」


そのまま地図を描いてもらうのを待ち、描いてもらってからベラッセンさんのお宅を訪問する。
呼び鈴(この世界では風鈴のようなものが玄関に垂らしてある。それが呼び鈴)を揺らしてベラッセンさんを呼ぶ。


「すいませーん。」
「はいはい、今出ますよ。」




出てきたのは少々豊かなーーーありていに言えば中年らしい中年の体型のおばさんが出てきた。
ふむ、これくらいなら・・・恐怖症は大丈夫みたい。


「響と申します。雑草掃除の町人依頼を受けて来ました。ベラッセンさんのお宅で間違いないですか?」
「あらあら?可愛いお嬢さんが来たのね。はい、間違いありませんよ。えーっと響さん?
さっそくお願いしても構いませんか?」
「はい。」


可愛いお嬢さんか。男としてはちょっと複雑である。


「あらあら?お嬢さん、分かってるのねぇ。」
「はぁ?何がでしょうか?」


2人で雑草を抜いてると、唐突に話しかけてきたベラッセンさん。
無言で黙々と作業し続けるというのはおばさんと呼べる年の人にとっては辛かったのかもしれない。
すぐ終わる程度ならともかく、日本と違って人口密度が少なく土地も広いどらぶれでは一軒当たりの敷地がかなり広い。
庭も相応に広くて一時間はかかりそうである。


「雑草の根元をもってシッカリ根まで抜いているでしょう?
根っこが残ってるとまたすぐに再生してくるから困り者なのよね。」
「そうなんですか?」
「あら?知らなかったの?」
「ええ、まぁ。単純に根っこが残ってると邪魔かな、と思いまして。」


根っこだけ残しておけばそのまま肥料になるかなぁとか思ったが、それならば後から混ぜ込んでも構わないわけだし。下手に肥料として残すと後からまた雑草が生える原因になりかねないし、家庭菜園をやる場合はそうした根っこが、埋めた植物の根の成長を阻害するかもと思っただけである。


「その調子でお願いね。」
「はい。」


言われずともお金をもらえる以上、手抜きをするつもりは無い。
再度沈黙が続き、しばらくひたすら抜いていると。


「そういえば貴方は彼氏とかいるの?」
「ぶふっ!」


つい噴出した。
黙っていられないのはおばさんという生き物の性か。
そして俗に言う恋バナを唐突にいきなりにするのは女という生き物の性か。
彼氏なんて居てたまるかって話である。
男なのだからして。


「い、いえ、いません。」


僕は男だ!と叫ぼうとも思ったが、止めといた。
信じられないだろうし。
最近買った鏡で自分の姿を見てそう思ったね。
僕の容姿はもう男の欠片も無い。
絶望しました。
僕が男ということをすぐに忘れるフィネアの気持ちも分かるものである。
男性ホルモンにもっと頑張れよっ!熱くなれよっ!と叫んでやりたい。が、そもそもこの姿は自分で設定したものであり、男性ホルモンのせいにするのは少々どころか多大な筋違いであろう。
男性ホルモンだって涙目に違いない。
今更なのだが、仮に死んでこの世界になんらかの原因で来たとしてもだ。
なぜゲームそのままのアバターなのだろうか。
実に不思議かつ、不条理である。


「もったいないわねぇ。そんなに可愛いのに。貴方の周りの男の子は女の子を見る目が無いのね。」
「ははは。」


空笑いをするしかない。
見る目が合ってたまるかって話だ。
そもそも男の知り合い自体、学園長やスネークさんとかルークとかいうバカっぽいやつとか、年上しか居ないのだからして。
彼らが僕に欲情したら二重の意味で変態だろう。
BとLの関係で尚且つ見た目14頃の娘に・・・ロリコンである。
男だと言っても「それでも構わん、好きになってしまったこの気持ちは誰にも止められんっ!!」とか言い出したらどうしよう。
と鳥肌の立つおぞましい想像をして身震いをする。
うん、やめよう。
こんな危惧は無意味だろうから。
さすがにそんなことにはならないはずだ。


「じゃあ、好きな子はいないのかしら?」
「い、いませんっ!!」


勘弁してつかぁさい。
その後もそうした話を交えて、肉体的というよりは精神的に疲れた一日だった。











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