男の娘なCQCで!(未完)

百合姫

13わ かっしょく の しょうじょ

次の日。
入学手続きのために昨日いきなりというわけには行かなかったらしいが、今日は大丈夫である。
異世界の学校。
この言葉のニュアンス的なものだけですっごく楽しみな気分になれる。と言うわけではなく。
すでに学生という身分を脱した人間にとっては、懐かしさが胸をいっぱいにする。


ちなみに学校特有の制服は無い。
あるにはあるが原則で着てくる必要は無いため、問題ないのだ。
ただ、その耐久性とデザインが良いということでお金に都合の付く人は大抵の人が着てくるらしい。
着ていくのが無難だろうか。
とりあえず今日のところは私服で行くことにする。


「弁当は持ったし、もって行くものも特になし。
大丈夫かな・・・フィネア、いくよぉ。」
「ちょ、ちょっとまってくださいっ!」
「なにやってんのさ。」
「響から貰った服が少し着方が複雑でして・・・」
「そんな服買ったっけ?」
「いえ、その20年ぶりのワンピースですからちょっと着方を・・・」
「ワンピースの着方でてこずってるのっ!?」


さすがとしか言いようがないのだがっ!
というか、さりげなくまたもや貧乏アピールである。もうお腹一杯ですよ?


「この服は今日が初のお披露目です!
・・・えへへ、どうですか?」


くるくると回りながら玄関に出てくるフィネア。
白を基調とし、ところどころでアクセントに赤の線が入った簡素なワンピースである。
ゆえにシンプルに可愛いといえる。


「うん、可愛いよ。」
「はうあっ!?
ひ、響が普通に誉めるなんてっ!
な、何を企んでるんですかぁっ!?」
「・・・もう誉めないからな。」
「あうあっ!?」


失礼すぎる。
人がたまに誉めればこれである。
そっちがその気なら二度と誉めません。


「早く行くよ。」
「はいです!!
ちなみに腕組みませんかっ!?」
「なぜっ!?」
「そっちのがデートっぽいじゃないですか!!
昨今の兄弟・・・じゃなかった、姉弟はデートをするそうです!!
一度でいいからデートって言うのをやってみたかったんです!!」
「本音が後半に集約してる。正直なのは結構。けど腕を組むのは却下。
僕が恥ずかしいから。
さらに言えば遊びに行くわけでもなし、学校に行くだけだよ?
10分ほどの距離にある場所の。
そして、重ねて言うけど恥ずかしいからね。」
「まぁまぁ。
とにかく私は腕を組んでみたいんです!!」
「だから僕の恥ずかしさを無視するなよ!?」


寄ってくる前に瞬時に後ずさる。


「・・・ぶーぶー!」
「ぶーたれてもしません!」


全く、朝っぱらから疲れることを。


「…ふふ。」
「ん?なんか言った?」
「いいえ、なんでもないです!
はやく行きましょう。」


なにやらご機嫌なフィネア。
ワケが分からない。
いや、分かりそうで分からないといったほうが正しいか。




☆ ☆ ☆


「おや、来ましたね。」


学園長室にまずは来る。
細かい説明を受けるためだ。


「おはよう。校長。」
「おはようございます、学園長。」
「おはようございます。
やっぱりもう敬語は使ってくれないんですね。少々残念です。 フィネアさんは是非ともそのままで居てくださいね?」
「いいから進めてくれ。」
「それもそうです。私も暇じゃありませんから。と見せかけて暇ですけど響さんが凄く睨んでくるので本題に入ります。
ではまず・・・このパンフレットを渡しておきます。フィネアさんも休学して大分経ちましたからね。
念のため貴方にも。」


といって渡されるパンフレット。
そこには『どらごにっく学校の全て」と書いてあった。


「これを読め、と?」
「そのとおりです。
ぶっちゃけて言うと説明が面倒なので。」
「仕事しろ。」
「まぁいいじゃないですか。
疑問があれば後で聞きに来るなり、その辺の教師を捕まえるなりしてください。
今、ちょっと忙しいんですよ、丁度飼っているハンニバルの卵がハッチ(孵化)しそうなので。」
「そういう理由!?と言うか結局暇なのかそうじゃないのかはっきりと…
ていうか完璧な私情じゃ?
なおのこと仕事しろ。
ていうか・・・ハンニバルってあの?」
「アレ以外のハンニバルが思いつきませんよ?
見たいんですか?」
「いや・・・そうじゃなくて、それって確か第二種警戒モンスターじゃなかったっけ?
飼っていいの?」


ちなみにであるが、どらぶれではモンスター飼育というシステムもあった。
ソロプレイヤーにとっては心強い味方で、なおかつどんなザコモンスターでも最強種にせまるステータスまで育てることが可能というライトでもヘビーでもユーザーが楽しめる仕様である。ただ弱いモンスターほど鍛えづらくなっており、序盤に出てくるモンスターを最強種並みに・・・となると非常に辛い作業となる。
フレンドに序盤に出てくる雑魚の代名詞、キメラアントを最強クラスにまで育てたマニアが居たがあの人は今頃何を育てているのだろうか?
確かバグボールとか言うダンゴムシみたいなモンスターを育ててるのを最後に見た気がする。
とはいえそんな彼にも飼育したくても出来ないモンスターがいて、それを残念に思っていた。
飼育できるモンスターには二種類いて、その中でも図鑑に“警戒”と付いた物はボスモンスターであり、飼育不可となっているのだ。


その警戒が付くモンスター。すなわちボスモンスターハンニバルであるが、見た目はトカゲを二足歩行に、体の各所に出張った鱗もとい鎧で包まれたカッコいいモンスターである。
口から炎塊を吐き出したり、炎の剣を作り出すなど技もカッコいい物が多い。
この世界ではそんな制限無いんだろうが、それでもちょっとやそっとじゃ上手くいかないと思うんだがどうなんだろうか?
まぁ出来てるんだから出来るんだろう。
僕もこの世界に来た以上、飼育モンスターが一匹は欲しい物である。
どらぶれではむしろ邪魔になるから捕まえても育てなかったしね。
そのハンニバルの卵がどんなのか?とか産まれた子供はどんな姿なのか?とか気になるところではあるが、そこは置いておく。


「それじゃ、失礼します。」


と言って部屋を退散する。


「響?
ハンニバルって何?」
「でかいトカゲだよ。
それよりもパンフレットを読まないと。
というか、フィネアは覚えてないの?」
「・・・き、記憶力にはちょっと自身が無くて。」
「・・・さいですか。」


学校の探検がてら適当に歩きつつパンフレットを読む。
ええと、なになに?
ふむふむ、ほうほう。
へぇへぇ。なるほどなるほど。
うむ。なむ。


「大体は分かった。大学みたいだね。」
「大学?」
「あ、いや、なんでもない。
とにかく何からやっていこうか。」


どうやら大学のように自分である程度好きな授業を選べるようである。
そしてその選んだ授業がある時間と教室に個人個人で集まるとのことのようだ。
とはいえそれは一番下のランクである“卵”のみでランクがいちど上がるとそれまでに受けた授業や能力でクラス分けとなるらしい。
クエストカードと同じでカエルの成長で表現し、ランク数も八段階。
手抜きだろうか?と思いつつ。


よし。


「ええと、鑑定眼だけでいいんでしょうか?」
「他には魔眼や護衛術。
んでもって、僕も一緒の授業を受けるから。」
「え、そうなんですか?」
「戦闘に必要なスキルはすでに習得してるし・・・今受けられるスキルで欲しいのは特に無いしね。
僕も店に関連するスキルを会得した方が有意義だもん。
あとはちょいちょい興味の惹かれたスキルを受けるってところ?
あと裏庭で他のハーブも育てるのもいいかも。となるとスキル「農耕水栽培」も必要かな。」
「・・・色々と大変そうです。」
「でも、やりがいはあるでしょう?」
「は、はい!」




ちなみに卒業はどんなスキルでもいいからマスターをして、なおかつ試験官による試験をクリアすることで可能とのこと。
月額は1人5000リーフ。
安いなぁ。
しかも貧乏な学生のために出世払い制度なんてのもある。
実に親切な学校である。
学びたい人間が学べる学校。
いい学校だ。


敷地内を歩いているとなにやらトラぶっている集団を発見した。
子供の喧嘩だろうか?
とはいえ15、6程度の歳ではありそうだが。


絡まれてるらしき女の子は褐色の肌に黒塗りされた漆黒の長髪。
少し釣り目気味だが、その顔は気の強さというより無愛想な感じを受ける。
そして驚いたのがその服装。
女性侍と言えるような格好をしている。少し胸の開いたワンピース型の服を基本に肩鎧、膝から下は脛鎧、手甲。そして刀を三本、腰に差している。
どこのロロノアゾロさんですか?とか思わないでもないけど、別にいっぺんに使うとかでは無いと思う。ここから見ても三本の刀には使い込みの差が出ており、太刀ほどの長さの刀を一番使っているようだ。
残り二つは折れたとき用の予備と思われる。
ま、刀だし。
ゲームでは同ランクの剣より攻撃力が高いものの、耐久性が低く、すぐさま使えなくなったはず。
そしてさらには・・・気づきづらいが服の下におそらく銃も携行している。
邪道な戦い方というか、良く言えば珍しい戦闘スタイルなんだろうなと思わせる。
前衛よりの遠近両用スタイルってところだろうか?
僕は完全後衛、ないしは遊撃タイプだしね。


そしてその少女に絡んでいると思われる少年が2人。
ガキ大将的なやつと狡賢そうなヤツ。
この2人が彼女になにやら難癖つけて絡んでいるということみたいだ。


「あの・・・助けなくていいんですか?
困ってるみたいですけど。」
「必要ないでしょう。ここは学校だし・・・子供の喧嘩にいちいち口を出すのもね。
喧嘩ってのは子供の頃には必要なことだよ?」


大人なら助けろと思うかもしれないが、大人だからこそ気軽には子供同士の問題に首を突っ込めないのだ。
大人から、もとい関係ない第三者が仲裁するだけで解決できるなら学校にて、いじめが問題にならないのである。


「響も十分子供に見えますけど?」
「ロリババアのあんたが言うな。」
「ろ、ろりばばあっ!?
また失礼なニックネームをつけて!!
響はいっつもそうです!!
いい加減、そういう変な呼び方は止めてください!!
第一、前にも言ったとおり私は18歳相当のーーー」
「前にも言ったとおり、18の癖には貧相な背だこと・・・ぷぷ。」
「わ、笑いましたねぇえぇぇええええっ!!
もういいです!!
そこまで言うなら見せてあげようじゃないですか!!」
「何を?」
「私の大人な対応ですよ!!
あの喧嘩を見事仲裁して見せます!!」
「いや、やめとけば?
無理だろうし、面倒そうだよ?」


2人組みが絡んでいる原因は少女の、この世界では珍しい黒髪で褐色、侍的な格好と言う異様さに言いがかりをつけているようである。
そして2人組みは貴族らしい。
鼻持ちならない偉そうな人と言うのは少なからず居る物だが、この世界でもそれは変わらないようでなんとなく和む。
見た目の違いでいちゃもんをつける。
その幼稚さに“これが若さか”と思ってしまう僕としてはほほえましい光景に過ぎない。


助けに行こうとするフィネアに僕も付いていく。
褐色の少女には本当に悪いとは思うけれど、ここで恩を売ってさっそくコネを作ろうと思う。
あわよくば仲良くなって掘り出し物屋の商品獲得に協力してもらおうという思惑である。
彼女の装備品や武器を見るにどらごにあでは珍しい。できれば刀を仕入れることの出来るラインを彼女が持っていてくれたらな・・・と思っても見たり。
彼女のどらぶれでは東のジパング大陸のジパング領で見られた装備である。
この世界でも多分それは変わらない。
ゲームと違うのはあまりこの世界では交易が盛んでは無いということ。ゆえに外国のものは非常に珍しい。物好きな貴族に高く売れそうである。




まぁ出来ればさわやかな青年が良かったとでも思わないでもないが。
この学校での僕の隠れた目的と言うのは男同士の熱い友情を育むことだったりする。
非常に残念である。


学園ラブコメ?
何それ食えんの?
失恋直後でホイホイ次のラブを、探せるほどポジティブじゃないや。


実は男の娘とかだったらいいな・・・とちょっと思ったが、胸あるし、その展開は無いだろう。多分。


「ちょっと貴方達、やめーーーあれ?」


フィネアが声をかけようとした瞬間、男たちが倒れた。
男が少女を殴ろうとしたからである。酷い男だと思いつつ、絶対にこれと関わらないと心のブラックリストに顔を追加。


「・・・それにしても珍しい。CQCとは。」


そう、男が倒れたのは男が繰り出した拳を少女がCQCさながらの動きで捻り投げたからである。
CQCのルーツは関節を理解し極める柔道と、円運動の相手の力を利用する中国拳法だと言われている。
すなわちCQCというのは“相手の力をまともに受けずに流しつつ、関節を極めて動けなくする”武術”である。
元々は軍格闘技だから当然だ。
殺すなら銃を使えばいいだけなのだから。
少女は男の拳を半身になりながら避け、拳が伸びきったところを掴み、そのまま足を引っ掛けて投げた。
その際に力を込めて関節を外している。


ふむなかなかの技量。
とはいえマスターしている、というほどではないようだ。
せいぜい40レベルあたりかな?
(スキルは100レベルまであり、100に到達するとマスターとなる。)
CQCに加え、CQCEXもある僕から見ればまだまだヒヨッコ同然だけど、40とはいえかなり上がりにくいCQCスキルをそこまであげるとは驚嘆に値する。
この世界には普通の道場はあっても、スキル熟練度が10倍になる道場がないからなおさらである。多分ないだろう。
僕は結構道場に頼ってたからな…普通にやるのが面倒すぎて。
本当に凄い。




「て、てめぇっ!!
何しやがる!!」
「・・・それは私のセリフ。
イキナリ殴りかかってくる人間のセリフじゃない。」
「い、いい度胸だ!!
お、覚えてろよっ!!って、腕が変な方向にっ!?」


今更ですか。
それだけ見事に腕の関節を外したということだ。
あれは多分称号の「破壊王」もあるな。
攻撃力と魔法攻撃力に補正が付いて、なおかつモンスターの部位破壊や人間の関節を壊し易く上手くなるという物騒な称号である。
回復アイテムを使わずに真正面から戦って、倒した敵が2万に達すると手に入る称号。
どらぶれでは珍しくなかったが、現実となったこの世界ではそれなりに価値を持つ。
少なくとも結構戦いなれをしているみたいである。


もちろん僕は持っていない。
基本背後から・・・が普通だったし。
少年たちはひぃひぃ言いながら逃げて言った。


「えと・・・あの?
あれ?私要らない子?」
「そうなるね。」
「そこはフォローして欲しいです。」


しょぼんとするフィネア。そんなに人助けがしたかったのか?


「誰?貴方たち。」


褐色の少女は僕たいに今気づいたようである。
遅いな。
声が“水城奈菜みずきなな”さんっぽい感じ。ちなみに水城奈菜とは僕が死ぬ前に好きだった声優さんである。


「あ、私はフィネアです。こっちは私の妹の響。」
「弟だろ・・・男だし、いや、弟でも無いが。兄貴だな!うん。」
「まだ言ってるんですか?
往生際の悪い。」
「それ、僕のセリフじゃないか?」
「別に誰のセリフとかないでしょう?
台本でも読みながら暮らしてるんですか?」
「そういう話してないでしょ!?」
「この大根役者っ!!」
「なんでっ!?」
「あ、いえ、一回言ってみたかった言葉なんです。」
「・・・。」
「ついでに“この泥棒ネコっ!!”ってセリフも言って見たいです。」
「・・・言えばいいじゃない。」
「この泥棒ネコっ!!」
「・・・。」
「どうですか?」
「どうもしないわっ。
というか、この空気をどうにかしてくれ。」


なんでボケるの?


「愉快な人たち?」
「なぜ疑問系だ?
もしかして君もボケかな?
ボケ担当かな?」
「ボケてない。
普通に聞いた。
そして貴方は女?男?
男らしいけど信じられない。」
「男だよ。ちゃんと付いてる。なんなら見てみる?」
「い、いい。遠慮する。」


頬を染めてそっぽを向く少女。
初心なようだ。
ちらちらとこちらを見ている。
具体的には股間のあたりを。しょ、正直な子・・・なんだな、うん。


「や、やっぱり見る。」
「まさかの前言撤回っ!?このド変態っ!!」
「・・・・・・今のはジョークなの。
だから変態じゃない。」
「…あっさりとまたもや前言撤回したね…ジョークにしておいてあげる。」
「ありがとう。貴方はいい人?」
「とくにいい人ではないな。
悪い人だと思う。」


だって、彼女と話しているのはぶっちゃけ打算しかない。
純粋な友人になろうとは欠片も思っていないのだ。
そんな人間は間違いなく“いい人”では無いだろう。


「それにしても特徴的な肌色ですね?
どこの国の方なんですか?」
「ヒノクニというところから来た。」
「ま、まさかのそのまんまっ!?」
「ひぁっ!?
ど、どうしたんですか?いきなり大声を出して?」
「あ、いや、なんでもないよ。」


大抵、小説などで目にする異世界にくる展開の場合、日本もしくは日の国のようなそれだと言う名前はそのまま使われなかったりするのだが・・・ここでは普通にヒノクニと言うらしい。
とはいえ、大陸の形は全く違うみたいだけども。
驚いて即座につっこんでしまった。


「知ってるの?」
「あ、いや・・・多分・・・僕の知ってるヒノクニの住人は肌がもう少し白かったような?」
「・・・あなた物知り。」
「そいつはどうも。」


そうして話していくと、彼女はヒノクニのみに存在する特有の種族で上位親族と呼ばれるらしい。文字違いではない。
日本で言うところの魑魅魍魎、万物に宿る力、精霊、そういったものの力が体に宿った種族で褐色に黒髪というのが一番の特徴らしい。
どらぶれでは物体に魔力を込めると他の種族がやるよりも遥かに強力になるっていう“物質との親和性”が一番の特徴だっけ?
また褐色に近い色で黒髪の人族もいるにはいるが、上位親族の場合は黒い目ではなく、赤黒い瞳と言うのもまた特徴である。


「刀を始めて見るけどカッコいいな。
どこで買ったんだ?」


軽く探りを入れてみる。もちろん初めてというのは嘘・・・のようで本当。ゲームでは見たことあるんだけどね。本物は今日が始めてでむしろ普通に一本くれないかと思うくらいだ。
とはいえ宝の持ち腐れになってしまうだろうから少し気が引ける。
なんにせよ店のヴァリエーションのためにも出所を出来れば聞きたい。
すると彼女は少し迷うそぶりを見せた後に、答えてくれた。


「・・・私が自分で打ったもの。
他人の作ったものは信用できない。」


なるほど。
これはなかなか良い人材をイキナリ見つけられたようでなにより。
さっそく交渉。と行きたいところだが、もう少し彼女の現状と性格を把握してからで問題ないだろう。
焦って変な印象を与えるのはあまり良くない。
もう少し仲良くなってから・・・いや、仲良くなるとダメだな。
利用するという行為が出来なくなってしまう。


知人までに抑えて、お互いに利用し利用されるという関係がベストだろう。




「それと、もう一つ。」
「何かな?」




彼女は僕を睨みながら言った。




「貴方から何を頼まれてもそれに答えるつもりは無い。」
「ど、どうして?」


な、んですとっ!?
まさか、たくらみがばれたっ!?
いや、ばれても別に心象が悪くなるだけで実際には問題ないはず。
用は「他よりも少し高く買い取るから何かレアなアイテムを手に入れたら売って欲しい」という相互利益を得る関係を築こうってことである。
さっきから打算的とは言ってるが、実際はそこまで悪いことではない・・・はずだ。
winwinの関係だ。
そんなことを考えてる僕に対して、目の前の彼女はこう言った。




「貴方が私を見る目は不可解。そんな人間と一緒にいるつもりは無い。」
「っ!?」
「もっと言うと貴方は信用ならない。私を・・・信用してない目だから。
そんな目をしておきながら私に優しくしている振る舞いもまた不可解。
何よりも貴方は”侮蔑”している。
そして私を”見下して”いる。
さっきの男たちよりも私は貴方が嫌いだ。」
「い、言うじゃないか・・・」
「そっちの子。
助けようとしてくれたことには感謝をする。
ありがとう。
貴方もこの人とは関係を考え直すべき。
・・・それじゃ。」


そういって少女は翻って、去っていこうとする。
その背にフィネアが抗議の声を向ける。


「ちょ、ちょと、待ってくださいっ!!
響のことを何もしらーーー」


が、僕は彼女の肩をつかんで首を横に振った。




「な、なんでですかっ!?」
「・・・事実だよ。
何を言えるのさ。」


何よりも彼女が恐ろしい。
僕の内面をーーー自分すら自覚してるかしてないのかという曖昧な部分を的確についてきた。
そうだ、確かに僕は彼女を信用していなかった。
何よりも僕自身が”僕を”侮蔑、すなわち卑下していることまで見抜いていた。
価値がない、と。
僕の根源を改めて知った気分だった。
一番の問題は失恋ではなく、僕が僕に愛想を尽かしているということを。




「・・・私は一緒に居ますからね・・・絶対。」
「・・・分かってるよ。」


分かってるといいつつも心のどこかでは“きっといつか・・・”という思いがある。
女性から無価値だと勝手に判断し、僕から距離を取る。離れていく。
そう無意識的に思い込み、それを初対面の何も知らない女性に押し付けていたのだ。
なんと傲慢で見下した行為か。


フィネアのことは見下してはいない。
しては居ないはずだ。
だが、信用してるか?と問われれば微妙なところだ。
まだ出会って一ヶ月も経ってない。
多少の不信感はあって当然だろうとは思う。
だが、それならば何時から僕は彼女を信用できるのだろうか?と思うと。


自分を殴りたくなる気持ちになるのだった。




褐色の少女。
僕の根源トラウマをいきなり見抜くとはやるじゃないか。
まったく・・・困った物である。
本当にね。
出来ればずっと目を背けていたかったものだ。





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