男の娘なCQCで!(未完)

百合姫

8わ いがいな しりあす

「あの?」
「・・・。」
「やっぱり無理か。」


依頼屋に戻り次第、報告をしてお金を貰おうとしたのだが、一応、男性職員に話しかけてもリアクションが無い。
全くもって迷惑な。


「・・・横暴な上司のもと頑張ってください。」
「・・・ありがとうございます。」


僕のねぎらいに対して、男性職員はそれこそ涙を流す勢いでお礼を言った。
そこまでなのか。
大人しくレトさんのいるカウンターに向かう。


「レトさん。」
「・・・。」
「なぜ無視をする。」
「・・・。」
「おい、レト。」
「・・・。」
「くそばばーーーがはぁっ!?」


こ、拳が見えない、だとっ!?
ちょっとした冗談で殺しにくるとはっ!?
レトさんの拳が僕の鳩尾にめり込んだ。
というか、いくら防御力が少ないとは言え一撃で半分以上のHPが削られたんだがっ!?
どんだけぇっ!?


「痛いよぅ・・・ごふっ。」


思わず情けない声を出してしまうほどに痛い。
とにかく回復スプレーEXを取り出して、自分に吹きかける。
使う機会が味方からの攻撃を受けたときのほうが多いというのはどういうことだろうか。


「・・・えと・・・レト・・・お姉ちゃん。」
「はい、なんですか?」


満面の笑みで今までのことを無かったことにできるオンナノヒトはやっぱり怖い。
そして面倒くさい。


「依頼の報告にきました。」
「早かったのね。
偉いわぁ。」
「子ども扱いしないで下さい」


と一応言っておこう。


「ごめんなさい。
じゃあ、クエストカードとマップデータをお願い。
ついでにフレンド登録もしておきましょうか。
手を出して。」
「え゛?」
「早く。」
「いや、あの。」


ここで、彼女の容姿を述べておくなら非常に艶やかな美人さんとでも言っておこう。
切れ長の目に金髪のポニーテール。
顔の輪郭は軽く丸みも帯びており、服を可愛く着飾っても合いそうだ。
だが変態だ。
胸は結構な大きさで腰がくびれて、お尻もほどほどに大きい。
だが、変態だ。
僕が相手だと暴走しすぎているきらいがあるが、普段は別にとっつきづらいということも無くモテるそうだ。
だが、変態だ。
どうもショタ、それも可愛い系かつ歳を経ても見た目が変わらないらしい妖精族が特に好みだそうだ。


ゆえに、変態だ。


なので、仮に今日をかわしてもこれから先、ことあるごとにフレンド登録を望んできそうである。
ならばとっとと済ませてしまうのが吉。


今、この時でさえ彼女の目線は少し危うく、そして鼻息も荒い。
ついでに息遣いもおかしい。
ありていに言って身の危険を感じる。
普段であれば嬉しさもあっただろうが、こちとら失恋して間もない。
嬉しさどころか、疎ましさしか感じない時分である。


「あら?
緊張してるの?
すぐ済むから大丈夫よ?」
「ええ、はやく済ませましょう。
・・・吐血しかねん。」


主にストレスによる胃潰瘍で。


「はいどうぞ。」
「僕から・・・ですか。
まぁいいですけど。」


なにやら面白そうに笑って手を差し出すレトさん。
大丈夫。
周りには人もいる。さすがにいきなり襲われることはないだろう。


「そぉいっ!!」
「えいっ!!」
「っなんでやねーーーがはぁっ!?」


握手をした途端、抱きついてきたレトさん。
柔らかい。良い匂い。背丈の都合上、胸の感触が顔に。
そして抱きしめる力が万力のようだ。
一気に体力ゲージを振り切り、ツッコミもろくに出来ずに吐血する。
内臓を傷つけられただとっ!?


僕の吐血で汚れるレトさんだが、全く気にしないレトさん。
顔から胸にかけて血を垂らしつつ、僕に擦り寄る彼女。
客観的に見ればかなりシュールな光景である。


「ああ~、この抱き心地。
やっぱり妖精族の子は良いッ!!
これだけ可愛いい男の娘なら、なおさら・・・嗚呼、しああせ。
いや、幸せ。」


良く分からんが、ぬいぐるみ感覚も混じってないだろうか?
妖精族マニア?
確かに他に白髪で赤目の妖精族らしき人はあまりみない。(この世界の妖精族の特徴は髪と目の色らしい)


「もちもちで気持ちいい肌に、良い具合の体温。
腕ですっぽり囲める程度の手ごろな大きさ。
嗚呼、気持ちいい。昇天しそう。」


いい加減離して欲しい。
そしてもちもちではなくヌルヌルだろう。
吐血による返り血で僕の顔も彼女の顔もヌッチャヌッチャである。
気持ち悪い。そしてマジで死にかねん。


周りの職員もその光景を見て、戦々恐々といった顔を見せて逃げていく。
助けて欲しかった。
こうなってはシャレにならないのでCQCでも何でも使って逃げ出したいのだが、がっちりホールドされていて何も出来ない。
詰んだな。うん。




僕の意識は静かにブラックアウトした。




☆ ☆ ☆


「あう・・・ここは。
ひぃっ!?」


目を開けるとレトさんの顔がまん前にあった。
ついビビって後ずさりした僕に罪はあるまい。


「あら?
どうして逃げるの?」
「胸に手を当てて考えてください。」
「・・・う~ん、分からないな。」
「・・・マジですか。」


というか、この人寝てる僕に何をしようとしたんだろうか?
あれ?
ふ、服が無いっ!?


「ちょ、ちょっとっ!?
ふ、服を返してください!!」
「私は知らないわよ。
脱がして・・・その辺に捨てたっけ?」
「ツッコミませんよ?」
「ボケてないのよ?」
「ボケであって欲しかった。」


なぜ脱がしたのっ!?
シーツをかき寄せて体を隠す。
さっきから猛禽類が獲物を見るような目でこちらを見てくる。


「あ、その涙目そそるなぁ…」


なにそれこわい。
お、おそろしいよぉ。
周りを見渡すと服が散らばっている。
僕のパンツまで無造作に放られていた。
というか、彼女も服が無い!?


「寝てる間に何かしました?
いや、もう脱がされてますけど。
というか、服着てください。」
「あら、邪魔になると思ったのだけど。
着ながらが趣味なの?
それとまだ未遂よ。ちょっと興奮しすぎて傷を負わせてしまったことは私にとっては一生の不覚。もとい、反省…いえ、猛省しているの。
本当にごめんなさい。それを謝ってから、が筋でしょう?」


と言って涙を流す彼女。
そこまで反省してるならそれは許そう。
だがこれは許さん。


「・・・レトさん。そういう問題じゃない。
そういう問題じゃないんだ。」
「レトお姉ちゃん・・・でしょ?」
「いや、だからお姉ちゃんじゃなーーーひっ!?」


しなりを作って迫ってくるレトさん。
なにこれほんとこわい。




「ひぃあぁあああああっ!!」


シーツを体に巻きつけた後、逃げ出そうとしてドアへ向かう。
が、鍵がかかってるのか開かないっ!?


今開けなきゃ、今開いてくれなきゃ全部ダメなんだ。
何もかも終わっちゃうんだ!!
開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開けぇぇぇぇぇえぇぇぇええええええっ!!


「くっ、どうして開いてくれないんだ!?」
「そ、そこまで怖がられると傷つくよ?さすがの私も。」


そ、そうだ!
壊せば良い!!
ペレッタ90Twoを取り出してーーーいあ、むしろロケランを取り出して・・・


「落ち着きなさい。」
「あづっ!?」
「とりあえず今回は諦めるから、本題に入りましょうか。」
「・・・チョップは酷い。」
「そんな涙目で上目遣いだとーーーあは。だめだめ。
落ち着け。落ち着け、私。」


あははといきなり笑い出すレトさん。


「ひぃっ!?」


重ねて言うが、ほんとにこわい。
諦めてくれたのだろうか?
なんにせよ本題?
何のことだ?


「依頼の報奨金は私から貴方のイベントリに直接送っておくから安心してね?
それとささやかなプレゼントも。これは個人的なもの。」
「いや、要らないんだけーーーいや、ありがとうございます。」


要らないと言おうとしたらすっごい眼力で睨まれた。
黙っておこう。


「そ、それで本題ってのは何ですか?」
「声が震えて今にも泣きそうだけど・・・その、ごめんなさい。」
「い、いいから早く言ってください。」


もう早く帰って寝たい。


「ええとね。
このマップデータなんだけど・・・」
「何かまずかったですか?」


全部問題ないと思うんだけどな?
ちなみにどらぶれのマップは“世界樹のラビリンス”という旧世代ゲーム機にあったソフトのデザインとシステムをそのまま使ってるらしい。
皆が使ってるのとはちょっと違うということか?


「いや、何も問題が無かったんだけど、この場合は問題が無さ過ぎたことが問題でね?」
「・・・はぁ。」


良く分からん。


「嘘じゃないのよね?」
「つく意味がありません。」
「そう、よね。
うん。話はそれだけよ。
じゃあ続きをしましょうか。」
「ひ、ひぃやぁぁあぁぁああああっ!!」
「じょ、冗談よ・・・ごめんなさい。」


もういやだぁ、はやくおうちかえるぅっ!!
そのままシーツを巻いたあられもない姿で彼女が部屋の鍵を開けるのも待たずに僕は窓を打ち破って逃げるのだった。
女性に対する苦手意識が悪化したような気がしないでもない。


街の人に見られまくったのは言うまでもないことである。


「あの・・・斬新なファッション?ですね。」
「うるさい。黙れ、ほっといてくれ。」


帰ってくると僕のシーツを適当に巻いた姿を見て苦笑いしながらそんなことを言ってくるフィネア。
ファッションなわけがないだろうに。
というか、誰も来ないと分かってるくせに店番なんてしても無意味だと思うのだが。


「ああ・・・そういえばいろいろ買うの忘れてた。」


トイレットペーパーとか調味料とか晩御飯の食材とかも。
机も依頼の帰りに買ってくるつもりだったのに。
レトさんのせいで何もかも買えてない。
そうと決まれば、お金の確認もーーーあら?
100万リーフ?
こんなに持ってたっけ?
キメラアント分の報酬は50匹程度だから12万ちょっとがせいぜいだろうし、クィーンアントも出来高制とは言え、どんなに精査に調査しても50万程度だと思うんだけどな?
個人的なプレゼントとやらだろうか?
いや。でも、あの人はお金をそのままなんていう捻りの無いことはしそうに無い。
そもそもイベントリのカテゴリ“こすちゅーむ”に見覚えの無いアイテムが一つ追加されてる。
恐らくはこれがプレゼントだろう。見ることすらするつもりは無いが。
多い分のお金は単に、僕の予想以上のお金が入るだけってことなのだろう。多分。


まぁ明日聞けば良いか。それに多いに越したことは無いし。
今はそれよりも買い物である。
とりあえず服を着替えて、もう一度出かけてくることにしよう。


「それと、なんで未だにボロ布なのさ。
アンタの服だって言ったでしょ?」
「え、でも・・・その、私が着るのはもったいないなと思って・・・」
「・・・はぁ。いいから着る!
いいね。」
「は、はい。」


戸惑ってる感じだが、どことなく嬉しそうな顔を見ると、やはり女の子だと実感させてくれる。


「んしょ・・・んしょ・・・」
「こ、ここで脱ぐなバカっ!!」
「ひぃ、ひぃあ・・・そ、そういえばそうでした!!響君は男の子でしたね!!」


あいも変わらずアホの娘である。
いや、この場合は僕の見た目も悪いのか。確かに男という認識を常に持ち続けるのは難しいかもしれない。


「何か失礼なこと考えてませんか?」
「考えてないよ。
それじゃ、行ってきます。」
「い、行ってらっしゃい。」


少し戸惑いながら、はにかんで“行ってらっしゃい”を言うその顔は可愛かった。と位は言ってあげても良い。


買い物にて。
まずいくのは食材屋。
果物や野菜、穀物、お肉類をイベントリに次々と入れていく。
今更だけどイベントリって凄く便利である。
時の経過も無いしね。
その後、雑貨屋へ向かい、ランプやトイレットペーパーなどの生活必需品を購入。
バスマ・ジックリンというお風呂用洗剤に石鹸の予備、洗濯用の洗剤も購入。
キッチン用品なども購入していく。
お風呂用というよりは雨水をためておく壷を洗うための物らしいけどね。
店主は渋いオジサマ。沢山購入したので2割ほどまけてもらった。
正直助かった。
あとは家具屋で食卓である机、部屋に置く机やフィネアのベッド、ソファを買い、服屋では適当にフィネアの服を数着購入。
イベントリにも限界があるので、食材を入れておくための冷蔵庫も購入して今必要なのはこのくらいだろうか?
結果、残ったのは8万リーフほど。


新生活の始めなのでお金がかかることは覚悟していたが、ここまで簡単にお金が飛んでいくのは少し悲しい。
ある程度は貯蓄しておきたいというのに。


彼女の分もあるからだが・・・あれだろう。
自分だけ贅沢な生活をしてるのに同じ屋根で暮らしてる同居人だけに貧乏な生活をそのままに。
姿を見続けるというのは、少し居心地が悪い。
仕方ない出費といえる。
正直なことを言えば、大した手間じゃないというのが大きんだけどね。


「ただいまぁ。」
「お、おけいりなさい。」
「おけいり?」
「か、噛んだだけです!
その・・・久しぶりなので。」


久しぶり・・・ね。
深くはツッコまないでおこう。


「さっそくでなんだけど、部屋には入れないの?」
「な、なんでですかぁっ!!」
「その勢いが何でっ!?」


凄まじい過剰反応で言い返してくるフィネア。
なんで!?
幾らなんでも過剰でしょ!?


「いや、ベッドを買ってきたから・・・設置しようと思って。
そこまでイヤなの?」
「・・・別にそういうわけでは・・・イヤと言うより、その。
でも・・・とにかく見られたくないんです。」
「ふぅん。
なんか妙だけど、まぁいいや。今、出すからイベントリに収納できる?」
「ええ、大丈夫です。
私のイベントリは常に空っぽですから。」
「そういう余計な貧乏アピールはいらん。」


冷蔵庫はリビングで、食べ物も入れて、と。


「あ、これもね。」


服もイベントリから取り出した。


「なんですか?
これ?」
「まぁ、分かるとは思っとらんよ。
アンタの服ね。
適当に可愛い?のを数着選んできた。
3着が普段着で二着がパジャマ。とりあえずね。」
「・・・あ、えと。」


今までの貧乏生活が生活なだけに目の前の光景が信じられないようだ。
ぶっちゃけ、キメラアント狩ってれば誰でも金持ちになれないか?と思ったのだが、それは僕の能力の高さがあるゆえに言えることかもしれない。
もともとこの店にも執着があるみたいだし、冒険者にはなれない理由もあるのだろう。


「・・・ど、どうしてここまでしてくれるんですか?」
「?」




てっきり遠慮の言葉を述べてくるのかな?と思っていたのだが、予想に反してなにやら真面目な雰囲気で聞いてきた。
というか今更な疑問。
なんでといわれても気まぐれとノリと・・・くらいか?
正直成り行きでしかないのだが。
むしろ聞かれても困る。
強いて言えば見てられなかったから?
大した手間が必要なかった。
この二つに尽きる。


「別に特にコレといった理由は無いかな。」
「・・・そうですか。
とにかく、ここまでしてもらうわけにはいかないです。
布団もありますし、ベッドもなんて私には贅沢すぎます。」
「それは必要ないってこと?
余計なお節介だったのか。なら、正直すまんかった。」


お節介というのも自覚はしていた。
自分勝手な親切の押し売りだというのももちろんだ。
まぁ要らないというのなら、いずれ必要になるときもある。
イベントリの肥やしとなってもらおう。


一応言っておくが、がっかりなんてしてないからな!
本当だぞ!!


「そ、そんな悲しい顔をしないでください・・・別に要らないというわけじゃなくて、そこまでしてもらう理由が無いのにこれ以上の恩は受けられないです。
ただでさえ土地代も払ってもらっているのに。」
「そんなの気にしなくてもいいのに。」


いや、助けられる側としては気にするか。


「それに・・・いえ。なんでもないです。」




なんかすっごい暗い雰囲気になってきたんだけども?
もういやだなぁ!!
もっと気軽に受け取ってもらえれば良いのに。


「土地代を払った後で今更遠慮されてもね。」
「そ、それは・・・この店を失いたくなかったから・・・体を。内臓を差し出して売れば」


体ってそういう意味ですか。ブラックすぎでしょう。


「・・・なんでそこまで?今はいない親のため?」
「・・・。
とにかく今の私には何も貴方に渡せる物が無い。
となれば、これ以上恩を受けても私には何も出来ません。」
「キャラ変わってない?」
「茶化さないでくださいっ!!」


いつになく真面目な内容。
何時になくといってもたかだか二日の付き合いだけど。
あやふやにしようと思ったのに冗談が通じないとは。


「もらえるものは貰っておけばいいじゃないか・・・まったく。
じゃぁ、こうしよう。いつかお店が復興したらで良いや。その時にお金を返してもらえればいいよ。」


これならば問題ないと思う。


「ダメです。保障がありません。
むしろ今の状況を考えれば返せないことの方がありえそうです。」


ご、ごもっとも。
いつものアホの娘じゃないよ?
どうしちゃったの、この子。
復興させるつもりでもそれが成功するとは限らないし、むしろ逆に一生分の恩を背負ってしまいそうだ。
面倒な娘だと思っていたが、こういう面でも面倒だとは。
というかこうまで受け取らないという断固とした態度を見ると、むしろ受け取らせたくなるのが人情では無いだろうか?
僕は押してはいけないボタンがあれば押したくなるし、押すなといわれたら遠慮なく押すタイプの人間である。
はいてはいけないと注意書きがあるタイツがあれば、とりあえずはいてみようと思うのは致し方ないことだろう?


「受け取ってくれないと捨てるだけなんだけども。」
「・・・っ。」


反応した。
しめしめ。
ま、実際、捨てるしかない。


「土地代に関しては勝手な親切の押し売りだから、こっちからすれば恩義に感じてこうして同居生活をしてくれてるだけでも設け物だと思ってるんだよ?
そもそも“あんたが勝手に助けたんでしょ?なんでそんなことをしなくちゃいけないの”くらいのことを言われるの覚悟で助けたんだし。」


これは本当。


そうなっていたとしても勝手な人助けによる自己満足なので別に構わないのだ。
というか、ほんとに成り行きでしかないから。
僕からすれば彼女に関わったのは苛められてるみたいな構図で困っていたのを、興味本位で首を突っ込んだにすぎない。
野次馬根性である。
正直なところね。
家に住まわせろうんぬんも、土地代を払ったのも全てはついで。
思いついたままに行った挙句にこうなった。
でなければ、多少お金がかさんでも気楽に過ごせる1人暮らしを前提に、一軒家を購入したはずだ。
根っこからして違うのである。


「ぶっちゃけて言うと今の状況って全部、ついで。成り行きなんだよ。恩義に感じてもらっても構わないし、貰わなくても構わない。もらえるならそこにつけ込み、もらえないならもらえないで適当にやってく。その程度なの。
だから、気にする必要は無いよ。」
「・・・貴方が分からないです。」
「二日で人の成りを分かってたまるもんですかっての。それで、これだけ言っても分からないなら部屋に押し入ってでも無理やり置いて行くけどどうする?」
「・・・お、お礼は言いませんよ?
貴方がそういったんですから、感謝もしません。
恩義にも思いません・・・何の得もないです。
それでもいいなら勝手にすればいいじゃないですか。」
「じゃあ勝手にさせてもらいましょう。
はい、どうぞ。」


なんとか論破できて良かった。
少なくとも服は捨てるしかなかったし。
取り出した服を差し出した。


「あ、ありがとうございます。大切にしますね。」




そういう彼女の笑顔は野に咲く可憐なタンポポのようだったと言っておこう。






「お礼は言わないんじゃなかったの?」
「い、今のはちょっと間違えただけです!!
は、はかりましたねっ!?」
「なんでっ!?」




少しづつ彼女に対する違和感を大きくしながら、今日という日は終わった。







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