男の娘なCQCで!(未完)

百合姫

7わ きょうから がんばります

「おっはようございまーすっ!!」
「ひでぶっ!?」


朝っぱらから豪快なボディプレスで起こされる僕。
なぜ!?


「・・・何をするのかな?」
「何って・・・朝ごはんが出来たので起こしにきたんですよ?」
「そうではなく、おこし方があるでしょ?
そしてとっとと退いて。」
「えと・・・家族を起こすときはコレだったので・・・その、ごめんなさい。」
「・・・それよりもどうしてまだボロ布を纏ってるのさ。」
「わ、私に裸で過ごせと!?」
「ち、違うわっ!!
そうじゃなくて、汚いだろ。」
「しょ、しょうがないじゃないですか!!
お金が無いんですから!
それに汚くないです。
残り湯でしっかり洗いました!」
「替えの服をおいといたでしょうに。」
「あれは響君のじゃないですか。」
「いや、普通に考えて替えの服だと思わない?
状況的にあんたの服でしょ。」
「響君が服を着るのを忘れたんだな、と思ったんです!」
「どうしてそういう発想に行くの!?
ていうか、忘れないだろ!?常識的に!!」
「え?
忘れたんじゃないなら、響君は・・・は、裸で!?自分で望んで服を置いてったってことですよね!?
今も裸なのですか!?」
「なんでそうなる?
…もう、この子すっごくめんどくさい。」


なんだろうか、この子のボケっぷりは。
わざとではないかと思うほどだ。


「・・・まぁ僕がちゃんと言っておかなかったのが悪いか。
服はどうしたの?」
「椅子の上に置いてありますよ。
というか、今更な気もしますけどなんですか?
このベッドは!?」
「僕が元々持ってたものだけども。」
「そういうことではなくて、こんな高級ベッドがあるなら言ってくださいよ!!」
「・・・なぜ?」
「私だけボロボロの布団じゃ不公平じゃないですか。」
「僕にそれで寝ろ、と?」
「一緒に寝ればいいじゃないですか。」
「うーん…却下で。」


一緒のベッドで寝るとか。
なんか、マキと彼氏くんの情事がフラッシュバックしちゃうじゃないか。
恥ずかしいだけなんてことはないから。


「・・・うぅ~。」
「そんなことよりも、アンタの部屋は片付いたの?」
「は、はい大丈夫ですよ。
あとは明日の燃えるゴミの日に全て出せばとりあえずの終結です。」


彼女の部屋だけは立ち入らなかった。いや、入れてもらえなかった。
まぁプライベートルームだしね。
そこまでは立ち入りまい。のわりにはやたらと必死に頑なに入らせないようにとしていたが。
どうでもいいかな。もともとこっちが勝手に助けて勝手に居候してるようなものだし。


「そう。
で、ご飯は何にしたの?
というかそんなお金あるわけ?」
「それはもちろん!!
お金は無いですけど・・・その辺に生えてる雑草をーーー」
「・・・まぁ、命を粗末にするわけには行かないからね。
食べるけどさ。」


草といえど命であり、食材。残すことはしまい。せめてまずくないことを祈るとしよう。






☆ ☆ ☆


やはりまずは何をするにしても先立つ物が必要である。
というわけで僕はまたもや依頼屋に来ていた。
カウンター前に歩いていき、普通そうに見える男性職員に話しかけた。


「すいません~。」
「・・・。」
「あの?」
「・・・。」
「すいません!!」
「・・・。」
「寝てるんですか?」
「・・・。」
「ばーか。」
「・・・。」
「はげちゃびん!」
「・・・。」




返事が無い。屍のようだ。
なぜ無視をするのだろう?
この職員さんは。
僕のことが嫌いとか!?


普通のまっとうな職員さんのように思えるのだが、実は変態思考の持ち主とかなんだろうか?
幼女以外と話さないとか。
逆に美少年以外は相手にしないとか。
さすがに無いと思いたい。


「ふむ。
こいつも変態か。
ここは変態の巣窟なのかな?」
「さ、さすがにそれは聞き逃せないよ!?」
「・・・やっぱり無視してたんじゃないか。」
「あ、その。ごめんね。
上司から君が来ても無視するようにと言われていて・・・その、首にはなりたくないのでこれ以上は話せません。」
「・・・昨日のレトとか言う人?」
「・・・っ。」


ぴくりと動く職員さん。
なるほど。
昨日の意味深な笑みはこのためか。
なんてことをしてくれるのやら。
まぁ良い。
本当なら別の街の依頼屋に行くくらいのことをして、彼女を避けていきたいくらいなのだが転移ポイントもリセットされて、お金もリセットされてる僕にその余裕は無い。
ある程度お金を溜めたら拠点を移すべきだな、うん。
変態の居ない依頼屋がある街に。
僕の何をそこまで気に入ったのやら。


「レトさーん。
レトさーん!」


奥のカウンターへ向けて呼びかける僕。
ところがレトさんはこちらを向き、ただ突っ立ってる。
何か言いたそうな目をしてる。
もちろん無視。


「レトさーん!!
レトっ!!
・・・レトお姉ちゃん。」


最後は消え入るほどの声だったはずなんだが。


「はい、何かしら?響ちゃん。
“レトお姉ちゃん”が話を聞いてあげる。」


・・・僕の周りには面倒くさい女性が多いな。


「稼げる依頼を教えてください。
今日中に帰ってこられるもので。」
「となると討伐系か採集に限られるわね。
その中でも稼ぎが良いのはこれかしら?」
「“キメラアントの駆除”と・・・“クィーンアントの発見・調査”、“マッドキラーの討伐”か。」


ちなみにであるがキメラアントはアリの生態そのものだそうだ。
まず頂点にいるのがクィーンアント。アリで言うところの女王アリで、自分ひとりでは全く動けず、体の8割以上が産卵のための器官で出来ているらしい。
毎日食べては産む、食べては産むの繰り返しで生涯を閉じる。
日に5万匹ほどのキメラアントと300匹ほどのキングアントを生み出す。
生み出された巣の中の幼虫や卵の世話をするための物を除き、巣の遠近をさまよい歩いて各地から餌を集めてくる。200匹のキングアントは戦闘要員として巣を守り、残る100匹は各地でキメラアントのボスとして小グループの長になる。
という特徴を持つ。
そして今は繁殖期にあたる春。
ますます盛んになっている頃合だ。
どうりで一箇所に留まってるにも関わらず、一日で200も狩れたわけである。


発見・調査ということはこの付近にクィーンアントの巣を見つけたということだろう。
女王を殺しても生き残ったキメラアント、もしくはキングアントが女王の役割を変わる為、この世界ではゴキブリ以上にしぶとい生き物とされているそうである。


その分、他の肉食モンスターの良き餌になっているんだろうけどね。
僕の技能的にはこれがいいかな。
ちなみにマッドキラーというのはでかいでかいカマキリのようなモンスターだ。


一見昆虫のようだが植物型モンスターに分類される。
植物型の特徴である高いHPと高い防御力、そして名の通り、凄まじいまでの攻撃性を持つモンスターで、獲物を自慢の鎌で斬り潰した後に食べるという食虫植物といえるモンスター。
光合成も可能らしいが、基本は動物を狩って育つという獰猛な植物である。
そこそこ素早いが、攻撃力が高いといっても初心者の冒険者には辛いという程度。
なんとかなるレベルだろう。
しかし僕は防具を付けてないので致命傷になりかねない。
というわけで、これは却下。
キメラアントの討伐とクィーンアントの討伐。
この二つを受けることにする。


「確か二つでも受けることが出来ましたよね?」
「ええ、響ちゃんは“オタマジャクシ”でしょ?
丁度二つまでね。」


ランクは8段階。
ランクが上がればその段階と同じ数だけの任務を同時に受けることが出来るようになる。
僕は2段階目なので二つまで。ということだろう。
ついでにランク、オタマジャクシ初期のことは、そのままオタマジャクシというらしい。
中期、後期はなんて呼ぶのだろうか?
少し楽しみだ。
そういえば文字も読めるようにならないといけなかったことをふと思い出す。
やることが多いね。本当に。


「手続きは終わったわ。
気をつけてね。」
「分かってます。」




とりあえず、調査をしつつキメラアントを潰していくことにする。


☆ ☆ ☆


どらごにあ森林街道。
そこを南下していくと、切り立った崖が見える。
あそこにクィーンアントの巣があるという。
消音器サプレッサー付きのペレッタ90Twoで道中に出てくるキメラアントを撃ち潰しつつ、死体をイベントリに回収。
進んでいく。


「ええと・・・巣の規模をできるだけ調べ、クィーンアントの大きさも確認しろ・・・か。それとマッピングも出来るところまで、ね。」


ウィンドウメニューを開き、“じゅたく”を選択。
現在受け持ってる依頼の詳細が表示される。
それにしても、こういう潜入は今も昔もワクワクするものだ。
ばれるかばれないかのスリル。たまらない。
そして、報酬はその出来のよさによって変わるらしい。


巣の入り口らしき場所にたどり着くと、入り口周辺を見て回ってるキメラアント発見。
暗いところでも見えるように赤外線ゴーグルを身につけ、気配遮断と気配隠蔽を使ってやり過ごす。
全員眠らせていくのもいいが、どこまでの知能を持つかは不明。
少なくとも頭が悪くないことは承知しているので、下手に警戒されるのは面白くない。念には念を入れて、見つからないこと。
これを第一目標に潜入をしていく。


「おっと、ここは・・・卵の一時保管場所かな?」


ジメジメした洞窟をこそりこそりと歩いて行くと、卵がずらりと並ぶ部屋に辿り着く。
なんかエイリアンの卵みたいで中身が少し透けてるのが尚のこと生々しく感じる。
中には孵化間近なのか、目や足が透けてるものもある。
少しげんなりしながらそれを見ていると、後ろからカシンカシンとキメラアント独特の足音が聞こえてきた。
新しい卵を持ってきたようだ。
奥の方の卵の影に隠れてやり過ごす。
乾燥から卵を守るためか粘液がべちゃべちゃして気持ち悪い。


そして、目の前までくる敵の気配。
自分の呼吸音すら五月蝿く聞こえるほどの静寂な巣内。
ばれるかばれないかの瀬戸際。
この緊張感。実にエクスタシーである。
いや、そこまでではないけどね。
バレた時ように身構えて置く。


ちなみに臭いでばれることはない。
僕の体臭は昨日使った石鹸、ミントフローラルの香りがするから。
彼らも“こんな良い臭いのする生物が敵であるはずも餌であるはずも無い!”と思って、そのままなんら気にせずどこかへ行く事だろう。


・・・こほん。
冗談はさておきスキル「無味無臭」も使っているので、臭いでも僕を見つけることは不可能である。


無味無臭は自分の体臭と自分の使用するアイテム、装備の臭いも消すという優れ物。
毒薬系のアイテムの場合は味も無くすので違和感無く相手を忙殺できるというある意味、怖いスキルでもある。
滅多に使わないけどね。


「いったかな?
・・・よし。」


卵の影からぬっと出て、赤外線ゴーグルを付け直し、再度探検である。
マッピングを繰り返しつつ、蛹室、貯蔵庫、ゴミ収集所などを書き加えていく。
そして驚くことに非常口のような場所もあった。
逃げ道を作っておくとは大した奴らである。


「なかなか見つからないなぁ。」


クィーンアントがなかなか見つからないのが困った物。
入り組んでいたり、行き止まりだったりする部屋も結構あるし、巣ゆえに真っ暗なだけあって気が滅入ってきた。


「むっ。」


やたらとキメラアントの出入りが激しい部屋を見つけた。
入っていったキメラアントは出てくると真っ白っぽい何かを持っている。
卵だろう。


「見つけた。」


ついぼやく。
真っ暗な洞窟に侵入してから3時間。
ようやくである。


中をこっそり除いて見ると、女王という名に恥じない威圧を放つクィーンアントが居た。
頭、胸はキメラアントと同じような大きさだが、目が退化し、お腹だけがアンバランスに張り裂けそうなほどに大きい。
ゾウの二倍はある。
軽く見積もっても8トンはありそう。
観察していると噂にたがわず、絶えず産卵をしているみたい。


キメラアントの数は数匹のみとなるみたいなので、それらを麻酔弾で眠らせた後、すばやく探索。
音でばれない様に気をつけながら女王クィーンアントの部屋もマッピングしていく。
これでようやく巣の全貌が明らかになった。
この部屋から繋がる道は複数の卵部屋へ繋がっているようだ。
最後にライトを取り付けた対比双眼鏡を取り出して、それで女王を見る。
レンズに大きさの比が書き込んであり、遠距離でも正確にものの大きさを測れる双眼鏡だ。


女王が大きすぎて、小さなライト一つじゃ細かい部分が見えないがこれだけ調べれば十分だろう。
ライトに反応してこちらを見てきた気がするが、どうせ物を見るための複眼は無いように見える。
問題は無い。
と思いきや。
女王は突然、大きな声で“泣き”出した。


「キィィイイイアアアアアアアアアアアアッ!!」


女性の悲痛な叫びのようにも聞こえるその高音の叫びは良く通り、洞窟内を反響し、増幅され、回りの仲間に自身への異常を知らせる。
ただの光一つでアウトかっ!?
そういえば昆虫には二種類の目があったことを思い出した。
物の形を見極めたり、動くものを認識するための複眼。
そして光の強弱のみを認識する単眼。


複眼はその名の通り目が何個も集まった昆虫の体組織で、単眼もまたその名の通り、一つの目。そして小さく目立たない物が多い。
ぱっと頭を見てみるとアリのようなその顔の中央には小さな小さな黒い粒のようなものが三つほど並んでいた。
図体がデカイくせにちょっとした光で大騒ぎとは、困ったやつである。
いや、この暗闇の中で一生を過ごすからこそ光の強弱を感じることが万が一の時のための武器なのだろう。
今のように。


カシカシカシッ!!


ここ目掛けてキメラアント達がやってくる。
くそう。
早く逃げなくては。
幸い、やることは全て終えた。
あとは無事逃げ帰るのみ。


「っとわっ!?」


横合いからの爪による斬撃を間一髪でかわす。
どうやらステータスの高いキングアントからやってきたようだ。
僕は赤外線スコープがあるからともかく、相手もこの暗闇の中では昆虫で言う鼻と耳の役割を持つ触覚しか使えない。
すなわち。
少し残酷なようだが、ハンドガンで触覚を打ち抜けばそれだけで良いのだ。
あとは混乱して味方にも攻撃するはず。


ごめんね、と呟きつつ。
打ち抜いていく。
おろおろとしながら立ち止まるもの。
よたよたとこけるもの。
中には奇声を上げながらあたりにぶつかりまくってるのもいる。
こうして見ると人間にしか見えないので、余計に良心が痛む。
しょうもない偽善とは分かってはいるものの、やっぱりこの手段は取り囲まれたときだけにしよう。
戦わざるを得ない場合は、できるだけ殺していく。
社会性を持つアリである以上、アリの社会―――もとい、洞窟での生活が出来なくなった個体はただあぶれて衰弱して、何もできずに死んでいくのみ。
それは少々を越して残酷すぎるだろう。
さきほどまで触覚を打ち抜いた個体を出来るだけ撃ち殺しつつ、出口に向かう。


「ぷはぁっ!!
ようやく出られたぁっ!!」


一度外に出ればもう安心。地図を見ながら逃げる必要も無いしね。
少し服が泥や砂で煤けた以外は特に問題は無い。
帰り道で軽く50ほどキメラアントを狩りながらのんびりと街へと帰る。
今回みたいなモンスターの生態に深く関わるようなクエストは今まで無かった。
どらぶれには無かったのである。
しかしこの世界にはこれを含めて色々あるようでこれから先が少し楽しみでないこともない。
割と楽しかったなと充足感を得れた良いクエストだった。










数日後。
この「クィーンアントの発見・調査」が凄い反響があることに僕は予想の端もつかなかった。







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