男の娘なCQCで!(未完)

百合姫

5わ きぞく は しっかりしてた

ここは現実である。
その事実はすなわち。


良くは分からないが僕は「どらごにっく☆ぶれいかぁ」に似た世界に来てしまった。


と言うことに他ならない。
そしてHPやMPなどの数値は“ただの目安”であることも理解した。
キメラアントを狩っている最中。


ありえないことが多々あったからだ。
信じたくなくて。
モンスターの体が何時まで経っても消えないことを認めたくなくて。
ただの仕様変更だと。信じたくて。
ただ無我夢中に照準にキメラアントを入れて撃っていたら、赤外線センサーの警戒音も認識できなかった。
結果、背後から攻撃を貰った。
やってきたモンスターは「キングアント」。キメラアントの上位種である。
しかも数匹のキメラアントを率いてやってきていた。
狙撃者を探し出して背後から仲間を引き連れて忍び寄る。こんな行動は見たことが無い。
こんな行動をプログラミングされてないはずだ。
そもそもキングアントはまだ先に出てくるモンスターで、初っ端のフィールドで出てくるような雑魚ではない。
何より、攻撃力が強く、今の防具もない僕では一撃かするだけでも即死である。
だというのに。


直撃を受けても体は霧散しない。
なおかつ体が動いた。
ずるずるとでも動けたのである。
ウェインドウで自分のHPを確認した。死に掛けているのにもかかわらず。
現実ではないということを否定したくて。


HPはゼロになっている。
霧散する。はず。
ポリゴン化して消えて欲しい。
消えて欲しかったのに。


自分の血溜まりの中で現実だと認識してしまった。
"会えないことが分かってしまった"。
もう"会えない"。
いや、会ったところでもうすべては遅い。
手遅れなのだ。
一度認識すればもういい。
あきらめは付く。
どうせ無理だった。
彼女にとっては好きでもなんでもないのだから。


でも、マキに会えない。
それが凄く嫌で。認めたくなかった。
女々しかった。
女の子のような見た目のせいだと思いたい。


結局のところ、キングアント含めて殺した。
関節を狙って。
あえて素の攻撃力で。
使わないと思っていたコンバットソードを使い、関節を狙って切り裂く。
ゲームならば切れるはずが無い。
だが、切れてしまった。
体重をかけて、しかっりと踏み込むと。
やりようによってはステータスの差を埋められる。
まるで現実だ。いや、違う。


これだけやればさすがにもう間違えようも無い。
背中の痛みの質と良い、これは確実に。
確定だ。


回復スプレーEXも間に合っちゃったし。
とはいえ、血を流しすぎたのがめまいがする。
めまいまでは治らないようである。
ま、現実だしね。


やたらと突き刺さる視線にうんざりしながら僕は依頼屋へと報告に行く。
なるほど。
依頼屋で珍獣を見るみたいな目で見られてたのは一見小さな女の子にしか見えない僕があんな場所に入っていたからか。
実際は男だし、中身はそこそこ歳を食ってるのだけど。
防具も無く、武器らしい武器も持たない。
そりゃ職員さんも無謀にも命を投げ出そうとしてる人がいればさすがに止めるくらいはするよね。




納得した。
だが、今度は街の人の視線も感じる。
なんだろう?
裏路地を通って行こうか。
不愉快だし。


☆ ☆ ☆


依頼屋に入るとまたもや無遠慮な視線にさらされる。
心なしか驚きの表情がほとんどだ。
ふふふ。
僕みたいなちびっ子が生きて帰ってこれると思わなかったとか?
少し心地良い。


「あの・・・」
「はいはい、今・・・って、きゃぁぁあぁぁあああああっ!?」


行く前にやたら心配してきた女性職員が僕を見て悲鳴をあげる。
し、失敬な。
スクール水着を着た変態を見ても動じなかった職員さんが悲鳴をあげるなんて、どれだけのものを見せれば良いというのだ。
そんな酷い見た目をしてるのか!?
と自分の姿を省みて気づいた。


服が血でどろどろっ!?
そうだ、ゲーム感覚で居た!!
一度死ぬと服は初期化されるので、その感覚でーーーとなると街での視線はこれを見てたのかっ!?
しかも後ろから爪でバッサリときられたので背中が尾てい骨あたりまで丸見えである。
これは恥ずかしい!!
ちなみにヒラヒラとしたゴスロリ風の服なので背面がぱっくり割れたドレスに見えないことも無い。服の種類や女装しているのはマキの趣味だったためで僕の趣味では無いことを言っておく。


何はともあれ、まるで露出狂のちびっ子である。
きっと街で見ていた人は「あの歳で変態とはーーー将来が怖いわね」とか思っていたに違いない。


は、恥ずかしすぎる。
何よりも気づけなかったことが恥ずかしい。


「だ、大丈夫ですか!?」
「ええ、まぁ。
それよりもクエスト報告をーーー」


鏡を見ればきっと顔が真っ赤であろう。
そんな顔を見られたくないので、俯きながらぼそぼそと話す。
早く宿屋に行きたい。
ここで着替えるわけにはいかないし。


「いや、そうは見えません!」
「それはだからーーー」
「傷を見せてください!!」
「だ、だから・・・というか、さ、触らないでっ!?」


おうわ、腕を掴んできて服を脱がしにかかる職員。
なぜここでっ!?
というか、大丈夫だって言ってるのに!!


「ちょ、ちょっとやめてくださいっ!!
てか、やめろぉぉおおっ!!
こんな場所で脱がすとか正気っ!?」


意外と力が強い。
攻撃力=筋力でもあるのでそれが低い僕は負けてしまう。


「あ、そうですね。
奥に行きましょうか。」
「ちょ、ちょっと、奥とかそうじゃなくてーーーそもそも掴むなーーーオンナイヤ、コワイ。」


と、ととと鳥肌が。
お、おかしいな?
僕はここまで女性が苦手なわけじゃなかったはずなのだが。
マキとの一件で必要以上に身構えるようになってしまったのだろうか?


「ごふっ!」
「ほら、やっぱり無理してたんじゃない!?
と、というか、回復アイテムをーーー」


吐血する僕。
これは別に無理してたとかじゃない。
強いて言えば今、無理をしている。目の前の女性のせいである。
肺もバッサリいっていたのでその傷が開いたのだろう。
ゲームなら回復薬ですぐに回復だが、ここは現実。
無理をすれば塞がりかけた傷が開くのは道理。


もがいて逃げ出そうとしていたのも手伝った。


ウィンドウメニューを開いて、いべんとりから回復スプレーを取り出す。
それをもう一度体に吹きかける僕。
さすがに二つも使えば完璧だろう。


「これは回復スプレー?
ほ、本当に大丈夫なのね?」
「大丈夫ですから、とにかく離してっ!!」
「むむむ。」


渋々と僕から離れる女性職員。
まだ心配そうな顔を向けてくる女性職員だが、それを気づかぬフリをして話を進めることにする。
再度驚かれたが、そこは気にせずお金を受け取る。
もって帰ってきた素材も合わせると50万リーフも貰った。
いやぁ、ぼろもうけである。
ゲームではバランス上、100匹狩って素材と報酬を合わせても1万が精一杯だが。
ここは現実で命の危険がある分、討伐報酬が高いのだと思う。
素材の値段はゲームと変わらなかった。
モンスターは武具の素材として使われるほかに、他のモンスターの餌にならないようにと街の畑の肥料などにするそうである。
大抵のモンスターは後者の意味合いが強いそうなのであまり高くは売れない。
なんにせよ良い仕事である。
200匹ほど狩って、キングアントも狩った為になかなか美味しかった。




「あ、それとこっちに来て。」
「な、なんですか?」


もう帰るというところで、引き止められる。
まだ何かあるの?


「そのまま街を歩くわけにはいかないでしょ?
部屋を貸すから、着替えていきなさい。」
「・・・えと。お言葉に甘えます。」




確かにそうだった。
この服はもう使えないな。
換えは・・・女物がほとんどで、あとは妖精族専用の服が何着か。
ここはやはり妖精族用のを着るべきだろう。
今となってはこの女の子みたいな顔した男の子ボディが僕なのだからして。
ゲームならばともかく、現実で女装をするつもりは無い。
いや、ゲームでは普通に女装していたし、女装自体はそれほど抵抗が無い。望んでしたいとも思わないけどさ。
男なのに女の子のような外見だからと女装をしていたら周りから変態扱いされるだろう。
それはイヤだ。
普通にイヤだ。
というわけで着ないのである。
一番はマキに「可愛い」と言われながら着せ替え人形にされたことを思い出すから、というのであるが。
今となっては"イヤな思い出"だ。


「さて、どれにしようか。」


妖精族の服はファンタジックな服でなんというかデザインが複雑すぎて伝えずらいのだが、民族衣装風。とでも言えばいいだろうか。
そんな感じで男性でも女性でも似合うという服である。


「服の換えはある?」
「あります。」
「そう。それじゃ、着替え終えたら言ってね。
クエストカードの更新をしておくから。」


クエストカードにはランクがあって、8段階。
両生類のカエルの成長過程をモチーフに決められているらしい。
なぜカエルなのかは知らない。


卵 ゼリーのような物に囲まれた卵がクエストカードに表記される
オタマジャクシ初期 小さなオタマジャクシが表記。
オタマジャクシ中期 後ろ足が出たオタマジャクシが表記。
オタマジャクシ後期 前足も生えたオタマジャクシが表記。
カエル初期 尻尾が生えてるカエルが表記
カエル中期 尻尾が半ばまで吸収されたカエルが表記。
カエル後期 尻尾が無くなったが小さなカエルが表記。
カエル成熟期 大きなカエルが表記。


となる。
それぞれにこの世界特有の名前があって文字で書かれてるため見てもこれらの言い方は分からないけれども。


今回はオタマジャクシ初期にランクアップ。
クエストカードに表記されていた卵の絵からオタマジャクシが飛び出てくる。
面白いギミックである。


ちなみにランクが上がった理由は200匹狩ったことよりも、キングアントを倒したことを評価されたらしい。
ちなみにレベルは1上がったので今は3である。
転生回数が10回のせいかひどくレベルが上がりづらい。
2~3レベルの雑魚敵200以上に20レベルを超えるキングアント。
それを倒してもようやく3レベル。
先は長い。
ただステータスが少なくとも50上がったのは凄い。
敏捷やディレイにいたっては100以上だ。




と、振り返りつつ着替えを終わらせる。
丁度職員さんが戻ってきた。
イキナリドアが開いたのでちょっとビビッた。普通、ノックくらいしない?


「はい、響ちゃん。
クエストカードの更新終わったよ。」
「ノックぐらいしたらどうです?」
「別にいいじゃない。女の子同士だし。」
「・・・男なんですが。」


これからもしばらく付き合っていかなくてはいけない以上、性別の訂正はしておこう。
しばらく通って、レベル上げがてらお金稼ぎに興じるとする。
なんなら一人称を俺に変えようか。


「またまたぁ、意味の無い嘘を!」
「というか、なれなれしいです。」


なぜこの人はここまでなれなれしいのやら。僕が“わざわざ”敬語を使って、離れた距離感というのを回りくどくアピールしているというのに。
もう、どうでもいいかな。
いや、良くないな。
死活問題だ。特に胃の。
なぜかストレスがすごい。
不愉快に感じるのは…ほんとうにどうしたことだろうか。


「私はレト。
よろしくね。」
「そんなこと聞いてません。
というか最初の時の敬語はどこへ?
なによりも僕は女性が苦手なんです。
あまり近づかないで下さい。」
「う~ん。やっぱり男の子ってのは嘘でしょう?
自分で言うのもなんだけど、私って一番人気のある受付嬢なのに。
思春期真っ盛りの男の子が女の子を苦手にってのも少しおかしいし。男色家なの?」
「ち、ちゃうわっ!」


こいつに敬語はいるまい。
無礼千万だ。
男色家?
バカを言っちゃいけない!!
確かに女性がより苦手にはなったみたい。が、だからといって男に走る!というわけでは断然無いのだ。
ありえないのだ。
バカなこと言わないで欲しい。
男とはそうした薔薇色の気色悪い関係ではなく、少年漫画に出てくるような熱い友情を前提とした関係を持ちたい。
これが夢である。


「・・・もう話は終わり?
僕はもう帰りたいんだけど。」
「今度からここに来たときは私を呼んでね。
レトお姉ちゃんって呼べば来るから。いや、むしろそう呼ばないと来ないから。」
「別の職員に頼むから結構だ。」
「ふふふ、それはどうかしらね。」
「?」


不気味なレトの笑みを尻目に宿屋へと帰る僕であった。
そして次の日。




「ふぁあああ。
良く寝た。ベッドは同じでよかった。」


トイレも不安だったし、ご飯も不安だったが良かった良かった。
どらぶれは中世ヨーロッパを再現した世界観だが、トイレやベッドは現実そのままである。
ただやはりここは異世界のようでお風呂や石鹸が無かった。
お風呂、というかお風呂代わりは宿屋の裏に引いてある川の水で体を流すらしい。
そんなのイヤだ。
冷たい川の水じゃ体が冷えるため長時間洗えないし、石鹸が無いのも耐え難い。
石鹸は仕方ないとしてもお風呂。少なくともお湯で体をしっかり洗いたいものである。


石鹸が無い以上、垢すりが基本なのか?
昨日は暗くなっていたのと、色々あって疲れていたのと髪の毛も血でごわごわになったために止むを得ず水で我慢した。
が、それが毎日なんて耐えられない。
家を買って、お風呂を作るべきだろう。
水道自体は通ってるため、風呂釜と湯を温める機構を取り付ければ上手くいくはずだ。
というわけで50万リーフを使ってまずは家を買わねばなるまい。
不動産屋へ行こうとなった。
宿屋で朝食を取り、外へ出る。


湯を温める機構はどうしようか。
火の精霊石を上手く使えばなんとかなるかな。
お風呂の設計を考えながら歩いていくと掘り出し物屋が目に入った。
もちろん、スルー。
自分から面倒そうなイベントと接触するなんてナンセンスである。


ところがどっこい。
なにやら揉め事のようで・・・小太りの身なりの良い男性に絡まれていた。
うん?
貴族かな?
本来のどらぶれならば貴族は大抵文字通りの良い人、ないしは誇り高い人が大半だ。
イベントで悪役の貴族がいたりとかするがそれはごく少数でしかない。
問題ないだろうと見なかったことにしようとすると。
声がちょいちょい聞こえてきた。
奴隷とか体とかそんな単語も聞こえてくる。
ううむ。
これは奴隷になりそうなところを助けるフラグ?
雰囲気的に多分違うと思うのだが。


もう少しだけ近寄って話を聞いてみようか。
野次馬根性丸出しで近くに周りのギャラリーに加わってみると話の内容がようやく聞こえた。


「イヤです!!
私は奴隷になんてなりません!!
ここでお店をするんです!!」
「そんなわがままを言われても困るブヒ。
オラの元で働けブー。
オマエだけ特別に扱えるわけがないブヒ。」


おはぅ。
またもや強烈なキャラだなオイ。
今、僕が喋れているのは称号のほんやくかのおかげだ。
そのほんやくかの翻訳システムには一部に欠陥があることが有志による検証で分かっているらしく、おそらくはその欠陥でこんなアホっぽい言葉づかいになっているのだと思われる。


「そ、そんなこと言って体を求めてくるんでしょ!!
お母さんが言ってました!!
いやぁあああっ!!だれか助けてっ!!犯されるっ!!」
「ひ、人聞きの悪いことを言うなブヒ!!
貴族たるもの、弱みに付け込んで無理やりするなんてないブヒっ!!
そもそもオマエはオラの好みじゃないブヒ!!」


相手方がかわいそうになってきた。
その後の話も聞いてみるに、どうやら土地代というものがあるらしくそれを滞納してるのが今回の問題の発端らしい。
目の前のブヒブヒ言う豚っぽい体型の彼はそうした土地代を回収する役目を持つ王宮貴族のようで、20年もの間見逃してきたが、これ以上は見逃せない。ということで土地代を払えってことだ。
オカッパ少女の両親は今の掘り出し物屋をやるまでは有名な傭兵で、数十年前の戦争で命を落としたとのこと。
両親を国が奪ってしまった慰謝料として10年は土地代をなくし、生活保護のお金も渡した。本来なら許されないことだが、さらに10年は見逃した。
ここまでしたけれど、これ以上は見逃せないということである。
すなわち。
少女は見た目よりも歳を食っているということに他ならないわけだ。
すくなくとも20歳ではあるようである。
うむ。
オンナノヒトはコワイ。
って、そこじゃないね。
とにかく国の所有物となり、国の雑用をしてお金を稼げ。とのことらしい。
ちなみにお店と土地は国に貰われ、打ち壊されて別の公共機関がたてられるとか。
奴隷制度に関してはそうそう非道というわけではないようだ。
簡単に言うと奴隷=国保有の職員の扱いみたい。
実際に良くあるファンタジーのように奴隷=酷い扱いということもあるらしいがそれは犯罪として取り締まられているようで、滅多に居ないらしい。
心配して損したね。
・・・いや、心配なんて毛ほどもしてないけど。
ほ、ホントだぞ!!
心配なんかしてないんだからな!!
…なんでツンデレしたんだろう?
正直に言えば心配はした。まぁ、なんだかんだで年長者としてはいたいけな子供を心配して当然であろう。


さらに言えば周りの人はどうやら近所の人ばかりのようで、口々に少女への非難を浴びせている。
この世界における税金もとい土地代を20年もの間払ってないのだから、周りの土地代を普通に払ってる人から見れば面白くないだろう。
そしてなにやら嫌われている事情があるらしく、気味悪いあの子が居なくなるのねとかそんな感じのことを近所の奥さん同士で話している。
見た目の問題も含むが、何か別に含むところもある感じ。


オカッパ頭が全体的に悪いのだが、それでもこの状況を見るに少し面白くないところはある。
ま、あれだ。
彼女には会いに行くと約束してしまったしな。
明日にはお金持ちになってると。
とりあえず、会うだけ会おうじゃないか。




「どうしたんです?破廉恥娘。」
「だ、誰が破廉恥娘ですかっ!!私にはフィネアという可愛い名前があります!!
って貴方は・・・昨日と服装が大分違いますね?」
「まずはそこをツッコムのか。
約束どおり来てあげたのに。」
「へん!
き、聞くまでも無いです!!
世の中・・・はっ?」
「この手から溢れんばかりに漏れ出る金貨が見えませんか?」




ガタガタぬかす前にどんと見せてやろう。
金貨の山を。
おっとっと。
金貨がこぼれちまったぜ。
ちなみに金貨一枚につき、1000リーフの価値を持つ。銀貨は100、銅貨は10。
僕の手持ちは金貨500枚に銀貨が10枚、銅貨が9枚である。
ふふふ。
恐れ入ったか。


ちゃりんと音を発てて落ちる金貨がオカッパ改めフィネアの視線を釘付けにする。


「それで。
おっさーーーオジサマ。いくらの滞納金があるんですか?」
「ぶ、ブー!?
あ、えと、約50万リーフブヒ。なんだブヒ?
オマエが払うのブヒか?」
「・・・まぁ。そうなります。」
「え!?」


まぁ驚くか。
フィネアは悪いと思ってるのか、でも店は止めたくないと思ってるのか。
葛藤で揺れている感じだ。
すごく悩んでいる。


「オラとしては構わないブヒが・・・後から返せとか言われても無理ブヒよ?」
「大丈夫です。」


一日で稼げるしね。


「・・・分かったブヒ。
いべんとりに入ってるブヒか?」
「ええ。」
「ならフレンド登録してそこから送ったほうが早いブヒ。いちいち出して渡してしまうというのは面倒ブヒ。ほら、さっさと手を出すブヒ。」
「え゛!?」
「その嫌そうな声は何だブヒ?」
「いや、だって・・・豚と友達―――あ、いえ、貴族と友達だなんて・・・恐れ多くて。」
「・・・オマエ、凄く失礼ブヒな。
この口癖はただのキャラ作りブヒなのに。」


おいっ!ほんやくかの欠陥じゃないのかよっ!!


「もう良いブヒ。
とっとと出せブヒ。」


という貴族は少し涙目だった。


「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!
べ、別にそんなつもりで約束をしたわけじゃ・・・」
「何を言う?
嫁になるとか言うくらいだったのに。」
「ふぇっ!?
あ、あれ本気なんですかっ!?
そ、その・・・あれは実は冗談で・・・せめて男性じゃないと・・・」
「安心しろ。
僕は男だ。」
「は?
嘘ぉっ!?
いや、でも、それならそれで甲斐性溢れる男性がお婿に・・・って、そうなると私、ええええ、ええ、え、えっちなことをしないといけないことにっ!?
でもでもでも!!
そういうことは好きな人とーーー」
「ひ、飛躍しすぎっ!
てか、真に受けすぎっ!!
冗談だからっ!!
冗談に決まってるでしょっ!?」


ボケにボケを返したら、さらにボケ返しおった。
この子怖い。
このままボケてたら取り返しのつかないことになっていたかもしれん。
やむを得ず、ツッコんでしまった。
それに嫁とか、ね。


「…僕のお嫁さんなんてこの世に見つかるのかね。」
「はい?」
「いや、なんでもない。」
「そ、そうなんですか?
ってそれどころじゃなくて、昨日今日会った貴方にお世話になる義理はーーー」
「まさか。
僕がただの善人だとでも?
きっちり対価は貰うさ。」
「ぱ、パンツですかっ!?」
「それはもう忘れろっ!!」


疲れる娘ッ子だ。


「あ、あれだよ。
丁度僕は家が欲しくてダナ・・・その・・・それでだ。
宿屋とかじゃない、自分だけの空間を持てるような空き部屋があるような古くても良い一軒家が無いかなとか・・・まぁ、その。
それをだな。目的にというか。
あれだ・・・さ、察しろよ、もう!!」
「・・・つ、ツンデレですか?」
「ち、違うわッ!!属性を察しろとは言ってない!!
そしてツンデレじゃない!!
なれないことをしたから言葉が出てこなかっただけだ!!
決して恥ずかしかったわけじゃないと断固として言っておく!!」
「へぇ~、そうですか。そうですか。
ではそういうことにしてあげましょう。」


にやにや笑うフィネア。
忌々しい!!


「そ、そのニヤニヤ笑いを止めんかっ!!
本当に違うんだからなっ!!
くそ!
やっぱり助けずに放っておくんだった!!」
「やっぱり助けてくれたんじゃないですか。」
「あ、がっ!?
い、今のは、その・・・ち、違ってっ・・・」
「ボロボロですね。」
「う、五月蝿い!!」




あれだぞ。
助けてないんだ。
ただ単に、落ち着ける住処が欲しくて、僕好みの一軒家に住まわせて欲しい家をだな。
丁度探していただけで、それ以外に含む理由は本当に無いのである。
ボロッちい家が大好きなのだ!!
風情があるというかね?







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