タコのグルメ日記

百合姫

タコにとっては木刀程度の価値とロマンがあったりなかったり

「それじゃあ、早速素材の買い取りをお願いしたいんだけど」
「あいよ、中に入ってくれや。組合前で素材をおっ広げるわけにもいかんからな」


そういって中に案内されると意外にも綺麗に掃除された内装が目につく。
そして、気づいた。
中のホールと思わしき場所から右手に、ちょっと遠回りになってしまうにも関わらず、この街を目指すことを決めた物が鎮座されているではないか。
カウンターがあって売られてもいるらしい。値札が貼られているのがわかる。


「すごいっ!ちゃんとしてるっ!かっけぇーっ!!」


と思わず子供のようにはしゃいでしまったのも無理はない。僕の目の前にはアレがあるのである。


「これが貴方の言った…銃とかいうもの?
そこまで興奮する理由が分からないのだけれど、ただの鉄を細くしたものにしか見えないわよ」
「かっーっ!これのかっこよさが分からないなんて、グリューネってば、マジグリューネだわー、グリュってるわー」
「…私の名前を悪口のように使うのはやめて頂戴。刺すわよ?」


とか言いつつ、髪の毛から生えてる葉っぱを飛ばしてくるグリューネ。すでに刺そうとしてるのはどういう了見なんでしょうね。刺そうと思ったけど、刺さらなかったからそういう言い方をしたってだけですか?


「ふぅん、これがタコの欲しかったっていう銃って武器?すごく強い弓矢みたいの…なんだよね?」
「そうだよっ!たぶんねっ!」


そう。
僕の目の前にはまごう事無き、銃があるのだ。
銃の種類としては細かい小さな弾を一度にたくさん飛ばして弾を当てやすくするショットガン。
そして銃種の中では総合的に一番扱いやすいライフル銃のようなものがある。
すごく今更な話なのだけれど、僕は前世の頃、武器を選べるようなゲームをする際は基本的に銃を選んでいた。
銃の弾を装填したりしなかったり、火薬を使って鉛玉を飛ばすと言うギミック的な攻撃方法に、メカメカしさを感じてロボットじみたロマンを感じさせたためである。ゆえに銃を撃ち放つタイプのゲームであっても銃の装填がすぐ終わるようなゲームや、そうした動きが作り込まれていない簡易的なゲームはプレイしなかったりと、とにかく武器で言えば剣や槍、日本刀と言ったものよりも銃が好きだったのである。


水晶砦を目指しつつ、途中の村々でこの猟師街の話を聞き、その狩りに銃を使っていたなどと言う話を聞かされてしまえば、多少遠回りだと聞いても寄り付きたいと感じたのは必然ではないだろうか。


「なんだ、お前たち、銃を買いにきたのか?」
「ええ!」
「ならちょうどいい。査定はやっておく。待ってる間にそこで銃を見てればいいさ。」
「そうさせてもらいますっ!」


受付おじさんの言う通り、猟銃を見させてもらっているとふと気づく。
あれ、これどうなってるんだと。
僕はせいぜい火縄銃の延長線上の銃くらいをイメージしていた。
そしてそれを買うつもりでいたのである。
言ってはなんだが、この世界において仮に現代レベルの銃を用意できたとしてもそれでありとあらゆる脅威を退けられるかと言えば、そうではない。
なぜならば、この世界には魔法があり、魔力を持つ動物たちが跋扈しているためである。
僕をはじめとして魔力を持つ動物たちは地球のそれよりも余程力強く、素早く、強靭で生命力溢れている。ゆえに仮に強力な銃を用意してぶっ放したとしても致命傷どころか、傷を負わせる事すら難しいと思うのだ。
ゆえに基本的にこの世界で、銃というのは殆ど見られない。少なくとも動物を狩って糧を得る冒険者たちは持ち歩かない。
だからこそこの街に興味を覚え、どんな銃が使われているのかが気になっていたのである。
僕の予想としては、あまり扱われていないがゆえに地球よりも発展が遅いくらいに思っていたので、せいぜいが火縄銃の延長、ないしはそれを大型化させて謂わゆるロケットランチャーのような巨大砲を持ち歩いているのではと考えていた。
身体強化の魔法やらレベル、もとい動物から霧散する魔力を吸入する事で身体能力が増すという摂理があることから、地球じゃまず考えられない大口径の携帯銃、というか携帯できる大砲があるのでは?戦車の砲弾をぶっ放すくらいのロマン砲があるに違いないと予想していたのだ。
僕の感覚としては修学旅行でなぜか木刀にやたらと惹かれる学生のごとく。
そして分かっていることではあるのだが、ぶっちゃけ金を払ってまで手に入れる必要はかけらもなかったりする。
僕は魔法が使えるし、身体能力なんて人間とは比べものにならないくらいだ。下手に銃を扱うよりも近づいて殴った方が余程、効果が高く、そして強い。
仮に、強靭な生き物に通用するくらい強力だったとしても、銃なんてただのかさばる荷物にすぎないのである。
でも、いいじゃないか。修学旅行での木刀はロマンなんだ。異世界の銃もまたロマンなのである。


だがしかし。


「あれ…なんか見覚えあるな」


そこに置かれていたのは地球のそれとさほど遜色がないように思える銃が並んでいた。
冷静になって見れば見るほど地球のそれと変わらない気がするのだ。


まず手に取ったのは地球で言うところのハンドガンと呼ばれるもの。ミリタリーオタクと言うわけではないので詳しい解説はできないが、ハンドガンくらいは大体の人が聞いたことくらいはあるだろう。手のひらよりも何周りか大きい程度の手頃なサイズの拳銃類のことで、重さや銃を撃った際の反動が弱い事で女子供でも扱える物が多い銃種、だったかな。
値札にはこの銃とおもわしき名前があり、『Aー07』と記入がされている。
重量は2キロくらいだろうか。
そして見た目は完全に地球のそれだ。
これを持ってガンアクション映画に出ても違和感がないくらいには近代的な見た目の銃である。違いと言えば弾倉の有無くらいである。
現代の銃は基本的に弾倉と呼ばれる弾がたくさん入ったケースみたいな部品があり、弾がなくなったらそこだけを交換する事ですぐさま弾を補給できるようにしてあるのだが、その弾倉部分には空洞しかなく、取り外しはできないようである。銃上部から一個一個弾を入れて、弾を撃ち切ったら再度それをやり直すと言う形式らしい。


「お嬢さん、どうですかそちらのAー07は。
ハンドガンの中では一番人気のモデルでして、マイルドな反動とそこそこの精度、かつ量産されているモデルですので安価であるために、女子供にも扱いやすいと評判の拳銃です。」


カウンターにいた販売員であろう、お姉さんにそう言われた。


「弾薬ってどうなってるの?」


次に気になるのは弾薬。
弾薬の大きさや加工法によって威力が変わるらしいので、ハンドガンのみならず、他に並んでる銃もぱっと見、奇抜なものは無いように思える現状、そこに秘密があるのだろうか。


「弾薬は大きく分けて二つのタイプになりますね。
こちらが魔蓄鉱で出来たもの。こちらが火薬と周辺で取れた鉱物を鋳潰してつくられた弾薬です」


と言って見せてくれたのは二つの弾薬。
口径、謂わゆる弾自体の大きさの違いはあるものの、基本的にこの2種類の弾薬が扱われるとのこと。
うーん、この大きさの弾でこの世界の動物を仕留めることができるのだろうか?
今見せてもらってる弾薬が実際にこの街の狩りでも扱われる基本的なものだと言う。


その不審げな様子がお姉さんにもわかったのだろう。
彼女はこう説明した。
魔蓄鉱に秘密のがあるのだと。





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