タコのグルメ日記
二人組は荒っぽい
「おおうおおう、こんなところに美少女たぁ、なかなかに粋なこともあるもんだ。」
「まったくだな。」
という二人組。
一人はあからさまな剣士に、もう一人はローブをひっかぶったあからさまな魔法使いという感じである。
今日はさらに奥へ、おそらくグリューネがいるであろう場所に行こうとしたところで二人組の人間とばったり会ったのだ。
「・・・ふむ。」
一応警戒をしつつ、表情には出さないでおく。
昔は意識して表情を作らなくちゃいけなかったというに、最近はその逆をやらなくちゃつい顔の周辺の筋肉が感情に直結して条件反射的に動くようになってしまって、嬉しいやらめんどくさいやら。
なんて話はどうでもよくて。
言うまでもないと思うのだが、僕たちのいる現在位置は非常に深い場所だ。
森の外に出るには半月、それも早くて半月かかる程度には深い。
なおかつそれは僕とやまいの場合である。
この森に半年いる僕たちですらそれだけかかる。
言うまでもなく森に慣れない人間が入れば余裕で一月は丸々消費してもおかしくない程度には深くも厄介な場所である。
それだけではない。
これはあくまでも動物たちに襲われたりしない場合。
自身の身の安全にも気を付けて、となるとさらに倍かかってもおかしくないレベルなのだ。
しかも彼らは人間。
魔力の少ない人間は中型以上の動物の餌になりやすい。
前にも言ったがこの世界では中型以上の動物は相手の気配代わりとばかりに魔力を感じることができる。
もとい舐められやすく、ゆえに襲われやすい。
そういう危険な場所。
それがここだ。
さすがに傷一つないとまではいかないが、明らかな余裕を残してここにいるということが不思議だった。
とてもじゃないが無理、なはずだ。
ふと僕の頭にとある可能性がよぎる。
この森が、『豊穣の森』が『喰殺す森』に名を変えた原因はなんだったか?
やまいが森から出ることになったのはどうしてだったのか?
森に人間が攻め入り、資源を取りつくそうとした結果、崩れたバランスを補填するために『森喰み』を起こした元々の原因はなんだったか?
人間である。
その人間がどうしてここに?
一体、何を思ってここにいるのか?
目の前に立っているのか?
目的は?
森喰みで近くの街まで飲み込まれたというのはその辺の人にすら伝わっているはず。
身のふるまいからもただものじゃない彼らはもちろん知っているだろう。
中に入る前のダンジョンの情報収集など基本である。基本なはずだ。
また森を広げてしまう危険を、飲み込まれてしまう危険を承知で入ってきた物欲がすごい男たち、と考えるのが自然だろう。
いや、不自然だ。
そんな危険を冒さなくてももっと簡単に稼ぐことができる。
目の前の二人はそういうレベルの人間である。
戦闘狂なのか?
いや、動物よりも人間同士で殺し合いしないかな?それなら。
ではなんだ?
何かが頭に引っかかる。
男、剣士風の男は自己紹介をしながらフレンドリーに近づいてきた。
やまいは沈黙のまま、僕の背後に隠れている。
笑顔は本来、攻撃的なものとかなんとかどっかで聞いたことあったななんてことを唐突に思った。
「俺はジャック。ジャック・レイモンド。あっちのひょろいのはティム・レイモンド。
ん?苗字が一緒だって?兄弟だからな。一緒なんだよ。」
とあははと笑いながら近づいてくる。
一応準備はしておきますか。
「似てないってのはよく言われるんだけどな、同じババアから生まれてきたんだぜ。たぶん。あのババアが浮気してなきゃの話だけどな。」
と、ちょっとしたブラックジョークを交えて近づいてくる。
1、
2、
3歩目。
彼の間合いに僕が入った。
と同時にきらめく白銀が宙に舞う。
「もったいないけど死んでーーーぐっ!?」
剣は僕の体に少しだけ食い込み、しかし切り抜くことはできずに半ばから折れ、反動で男は腕を少し痛めたようだ。
そのまま僕は腰に差してあった真っ黒から真っ青に変わった最早、どこが漆黒なんだと思いながらもそう名付けたし、そのまま漆黒と呼び続けている意味不明な漆塗り仕様の木刀を振りぬいた。
男は僕の体よりも剣が傷ついたというありえない光景を見ながらも、体を止めずに背後に飛び退いた。うむ、やはりベテラン臭い。
が、収納してあった触腕を伸ばしてこっそりと地面に書いていた魔方陣に魔力を込めて魔法を発動させる。
片方はしんでくれて構わない。もとい殺す気で魔法を放った。
僕の右手の平あたりから水球が発生。
圧縮された水が男の胴体を襲う。
ウォーターカッターを魔法で再現してみたものである。
だが、男の目の前には炎の壁が出現。
もう一人の魔法使い、ティムの仕業だろう。
だが、無駄。
魔力の量が、質が違う。
炎の壁を難なくぶち抜き、男の体はーーなかった。
「・・・どこに?」
「こっちだよ!」
ジャックはどこからともなく取り出した剣でもって僕の背後に下がっていたやまいに切りかかっていた。
うむ、それは間違いである。
「やっ!」
「なっ!?」
やまいはくろもやさんを体にまといつつも、くろもやさんを形状変化させてハリセンボンのように一気に針状に突き出す。
これも反応したジャックはすぐさま飛び退いた。
なかなか手ごわそうである。
だが、さすがにすべてはかわし切れておらず、体のあちこちに裂傷ができていた。
ちなみに彼の傷口にはくろもやさんがモヤモヤと張り付いている。
最近気付いたことだが、仮に致命傷を与えられなくてもやまいのくろもやさんに傷つけられた生物は、傷口が非常に治りにくく、細菌感染を起こしやすいという効果があった。
ジャックは懐から回復薬らしき物を取り出して飲むが一向に傷は治らなかった。
「どういうことだ?」
「その傷口のくろいモヤみたいのが原因なんじゃないか?」
「・・・それは分かる。わかるが、あの力はなんだ?って話だ。」
「何はともあれ油断はしないほうがいいってことじゃないか?
撤退も視野に入れないとだめだろう。なにせ、これからここの主を殺すっていう仕事があるんだから。」
その言葉に僕とやまいは反応する。
「主を殺す?」
「お前たちもそうじゃないのか?
それとも違うやつから依頼されたのかね。」
「・・・主というのはこの森の主、ということで間違いないんだ?」
「・・・答える必要はないな。」
「・・・ふぅん。じゃあそれはいいや。
いきなり襲い掛かってきたのはどうして?」
これが疑問である。
てっきり僕が魔獣だってことがバレたんじゃないかと思ったが、そういう振る舞いは見えない。
「報酬は独り占めしたいものだ。そうだろ?
それと主の血肉を食べると驚異的な力を得られる、っていう噂もある。」
「独り占めしたかった、と?」
「そうだが・・・やっぱりやめだ。
なぁ、俺たち協力しないか?」
なるほど。
「良いアイデアだ。」
「確かに殺そうとしたがそれはあくまで・・・はっ?」
「良いアイデアだと言ったんだけど、聞こえなかった?」
「・・・そ、そうか、なら協力してくー」
「だが断る。」
「はぁっ!?」
グリューネを殺す、か。
こいつはいろいろと面倒なことになってきた。
なるほど、ゆえにこいつらは『ここ』にいる、と。
僕たちの探索ももう終わりを迎えようとしていた。
それは『グリューネの位置がかなり割り込めたから』である。
おそらく今日、この付近で見つかる。
そう僕たちは確信していた。
周りの探索状況、植生、動物達の分布からここじゃないか?ということを分かっていた。
ゆえにこいつらは確実にここで仕留める。
一応、これも言っておこう。
「ここの主が僕だと言ったら?」
今、彼らにグリューネを見つけられては困る。
ならば僕が主だったということにすれば仮に見つけてもスルーするか、僕にだけ夢中になってくれるだろう。
「はぁ?そんなの信じられるわけ・・・第一、あの女の見た目も、感じる魔力もただの良い女・・・」
「いや、兄貴。待ってくれ。
あいつの魔法おかしい。」
「はぁ?
お前まで何を言い出すんだ?
人間が・・・人間に・・・人間に化ける魔獣がいるって噂はあったな。」
「ああ、いつの時代もある噂の一つ。人間に化ける魔獣がいる。
実際はグールだったとか、ドラゴンが戯れに死体を操っていたとかそういう話もあるけど・・・」
といいながらこちらを見つめてくるティムとやら。
「あいつの魔力、俺なんか足元にも及ばない量だ。
いつか見た亜竜ですら比べ物にならない。」
「そういえば剣も刃が立たなかったな。
防御魔法でも使ってると思ったが・・・」
「たぶん、素、だと思う。
それだけじゃない。あいつの魔法の話に戻るけど俺の炎障壁があっさりと破られた。」
「相性や込めた魔力の問題、ではないんだな、その顔を見るに。」
「それも・・・ある。あるけど一番の問題はあいつの足元。」
「・・・ん?」
ジャックが僕の胸から足元へと視線を移す。
こいつさっきから僕の胸しか見てない気がする。スケベ野郎め。
一応言っておくとコレ、飾りだぜ?
やわらかいけど。
「まほうじん・・・か?あれ。」
「・・・そうだよ、信じたくないけどね。
魔方陣は魔力で文字を書く。
けどその作業は繊細で力強い。
たとえ魔方陣を暗記していたとしても、というかこれくらいは魔法士にとって当たり前なんだけど、魔力による魔方陣記入には特殊な道具がいる。
魔力を増幅して撃ち出す筆記道具が。」
「・・・いつの間にそんなの出してた?」
「出してない。」
「は?」
「出してないはずなんだ。」
「・・・どういうことだ?」
さっきからコソコソと二人で話し合っちゃって。
今度はこっちから攻めてやろうか?
けど動物相手ならともかく対人戦はほとんど経験が無い。
彼らくらいの手練れだと若干慎重にもなる。
あえて油断している姿を見せて、という作戦なのかも、とも思う。
懐から複数の石ころを取り出す。
石ころの一つ一つには魔方陣が刻まれている。
もとい魔法発動のための触媒である。
この半年の森籠り中、必要になりそうな魔法は常に書いていくつかもっているのだ。
ただ魔方陣を介して魔力が石ころ全体にも伝道してしまうため、1、2回使うだけで砂塵と化してしまうのが欠点である。
けどてっとり早く魔法を使えるため重宝する。
さて、これを取り出したということはもう分かるだろう。
このまま待っていても埒が明かない。
ただの作戦会議という可能性も低くはないだろうし、距離を取りつつ攻撃していき、様子を見ながら致命傷を与える、という作戦で行こうと思う。
『オペレーション・遠距離からブッパ』、開始だ。
「まったくだな。」
という二人組。
一人はあからさまな剣士に、もう一人はローブをひっかぶったあからさまな魔法使いという感じである。
今日はさらに奥へ、おそらくグリューネがいるであろう場所に行こうとしたところで二人組の人間とばったり会ったのだ。
「・・・ふむ。」
一応警戒をしつつ、表情には出さないでおく。
昔は意識して表情を作らなくちゃいけなかったというに、最近はその逆をやらなくちゃつい顔の周辺の筋肉が感情に直結して条件反射的に動くようになってしまって、嬉しいやらめんどくさいやら。
なんて話はどうでもよくて。
言うまでもないと思うのだが、僕たちのいる現在位置は非常に深い場所だ。
森の外に出るには半月、それも早くて半月かかる程度には深い。
なおかつそれは僕とやまいの場合である。
この森に半年いる僕たちですらそれだけかかる。
言うまでもなく森に慣れない人間が入れば余裕で一月は丸々消費してもおかしくない程度には深くも厄介な場所である。
それだけではない。
これはあくまでも動物たちに襲われたりしない場合。
自身の身の安全にも気を付けて、となるとさらに倍かかってもおかしくないレベルなのだ。
しかも彼らは人間。
魔力の少ない人間は中型以上の動物の餌になりやすい。
前にも言ったがこの世界では中型以上の動物は相手の気配代わりとばかりに魔力を感じることができる。
もとい舐められやすく、ゆえに襲われやすい。
そういう危険な場所。
それがここだ。
さすがに傷一つないとまではいかないが、明らかな余裕を残してここにいるということが不思議だった。
とてもじゃないが無理、なはずだ。
ふと僕の頭にとある可能性がよぎる。
この森が、『豊穣の森』が『喰殺す森』に名を変えた原因はなんだったか?
やまいが森から出ることになったのはどうしてだったのか?
森に人間が攻め入り、資源を取りつくそうとした結果、崩れたバランスを補填するために『森喰み』を起こした元々の原因はなんだったか?
人間である。
その人間がどうしてここに?
一体、何を思ってここにいるのか?
目の前に立っているのか?
目的は?
森喰みで近くの街まで飲み込まれたというのはその辺の人にすら伝わっているはず。
身のふるまいからもただものじゃない彼らはもちろん知っているだろう。
中に入る前のダンジョンの情報収集など基本である。基本なはずだ。
また森を広げてしまう危険を、飲み込まれてしまう危険を承知で入ってきた物欲がすごい男たち、と考えるのが自然だろう。
いや、不自然だ。
そんな危険を冒さなくてももっと簡単に稼ぐことができる。
目の前の二人はそういうレベルの人間である。
戦闘狂なのか?
いや、動物よりも人間同士で殺し合いしないかな?それなら。
ではなんだ?
何かが頭に引っかかる。
男、剣士風の男は自己紹介をしながらフレンドリーに近づいてきた。
やまいは沈黙のまま、僕の背後に隠れている。
笑顔は本来、攻撃的なものとかなんとかどっかで聞いたことあったななんてことを唐突に思った。
「俺はジャック。ジャック・レイモンド。あっちのひょろいのはティム・レイモンド。
ん?苗字が一緒だって?兄弟だからな。一緒なんだよ。」
とあははと笑いながら近づいてくる。
一応準備はしておきますか。
「似てないってのはよく言われるんだけどな、同じババアから生まれてきたんだぜ。たぶん。あのババアが浮気してなきゃの話だけどな。」
と、ちょっとしたブラックジョークを交えて近づいてくる。
1、
2、
3歩目。
彼の間合いに僕が入った。
と同時にきらめく白銀が宙に舞う。
「もったいないけど死んでーーーぐっ!?」
剣は僕の体に少しだけ食い込み、しかし切り抜くことはできずに半ばから折れ、反動で男は腕を少し痛めたようだ。
そのまま僕は腰に差してあった真っ黒から真っ青に変わった最早、どこが漆黒なんだと思いながらもそう名付けたし、そのまま漆黒と呼び続けている意味不明な漆塗り仕様の木刀を振りぬいた。
男は僕の体よりも剣が傷ついたというありえない光景を見ながらも、体を止めずに背後に飛び退いた。うむ、やはりベテラン臭い。
が、収納してあった触腕を伸ばしてこっそりと地面に書いていた魔方陣に魔力を込めて魔法を発動させる。
片方はしんでくれて構わない。もとい殺す気で魔法を放った。
僕の右手の平あたりから水球が発生。
圧縮された水が男の胴体を襲う。
ウォーターカッターを魔法で再現してみたものである。
だが、男の目の前には炎の壁が出現。
もう一人の魔法使い、ティムの仕業だろう。
だが、無駄。
魔力の量が、質が違う。
炎の壁を難なくぶち抜き、男の体はーーなかった。
「・・・どこに?」
「こっちだよ!」
ジャックはどこからともなく取り出した剣でもって僕の背後に下がっていたやまいに切りかかっていた。
うむ、それは間違いである。
「やっ!」
「なっ!?」
やまいはくろもやさんを体にまといつつも、くろもやさんを形状変化させてハリセンボンのように一気に針状に突き出す。
これも反応したジャックはすぐさま飛び退いた。
なかなか手ごわそうである。
だが、さすがにすべてはかわし切れておらず、体のあちこちに裂傷ができていた。
ちなみに彼の傷口にはくろもやさんがモヤモヤと張り付いている。
最近気付いたことだが、仮に致命傷を与えられなくてもやまいのくろもやさんに傷つけられた生物は、傷口が非常に治りにくく、細菌感染を起こしやすいという効果があった。
ジャックは懐から回復薬らしき物を取り出して飲むが一向に傷は治らなかった。
「どういうことだ?」
「その傷口のくろいモヤみたいのが原因なんじゃないか?」
「・・・それは分かる。わかるが、あの力はなんだ?って話だ。」
「何はともあれ油断はしないほうがいいってことじゃないか?
撤退も視野に入れないとだめだろう。なにせ、これからここの主を殺すっていう仕事があるんだから。」
その言葉に僕とやまいは反応する。
「主を殺す?」
「お前たちもそうじゃないのか?
それとも違うやつから依頼されたのかね。」
「・・・主というのはこの森の主、ということで間違いないんだ?」
「・・・答える必要はないな。」
「・・・ふぅん。じゃあそれはいいや。
いきなり襲い掛かってきたのはどうして?」
これが疑問である。
てっきり僕が魔獣だってことがバレたんじゃないかと思ったが、そういう振る舞いは見えない。
「報酬は独り占めしたいものだ。そうだろ?
それと主の血肉を食べると驚異的な力を得られる、っていう噂もある。」
「独り占めしたかった、と?」
「そうだが・・・やっぱりやめだ。
なぁ、俺たち協力しないか?」
なるほど。
「良いアイデアだ。」
「確かに殺そうとしたがそれはあくまで・・・はっ?」
「良いアイデアだと言ったんだけど、聞こえなかった?」
「・・・そ、そうか、なら協力してくー」
「だが断る。」
「はぁっ!?」
グリューネを殺す、か。
こいつはいろいろと面倒なことになってきた。
なるほど、ゆえにこいつらは『ここ』にいる、と。
僕たちの探索ももう終わりを迎えようとしていた。
それは『グリューネの位置がかなり割り込めたから』である。
おそらく今日、この付近で見つかる。
そう僕たちは確信していた。
周りの探索状況、植生、動物達の分布からここじゃないか?ということを分かっていた。
ゆえにこいつらは確実にここで仕留める。
一応、これも言っておこう。
「ここの主が僕だと言ったら?」
今、彼らにグリューネを見つけられては困る。
ならば僕が主だったということにすれば仮に見つけてもスルーするか、僕にだけ夢中になってくれるだろう。
「はぁ?そんなの信じられるわけ・・・第一、あの女の見た目も、感じる魔力もただの良い女・・・」
「いや、兄貴。待ってくれ。
あいつの魔法おかしい。」
「はぁ?
お前まで何を言い出すんだ?
人間が・・・人間に・・・人間に化ける魔獣がいるって噂はあったな。」
「ああ、いつの時代もある噂の一つ。人間に化ける魔獣がいる。
実際はグールだったとか、ドラゴンが戯れに死体を操っていたとかそういう話もあるけど・・・」
といいながらこちらを見つめてくるティムとやら。
「あいつの魔力、俺なんか足元にも及ばない量だ。
いつか見た亜竜ですら比べ物にならない。」
「そういえば剣も刃が立たなかったな。
防御魔法でも使ってると思ったが・・・」
「たぶん、素、だと思う。
それだけじゃない。あいつの魔法の話に戻るけど俺の炎障壁があっさりと破られた。」
「相性や込めた魔力の問題、ではないんだな、その顔を見るに。」
「それも・・・ある。あるけど一番の問題はあいつの足元。」
「・・・ん?」
ジャックが僕の胸から足元へと視線を移す。
こいつさっきから僕の胸しか見てない気がする。スケベ野郎め。
一応言っておくとコレ、飾りだぜ?
やわらかいけど。
「まほうじん・・・か?あれ。」
「・・・そうだよ、信じたくないけどね。
魔方陣は魔力で文字を書く。
けどその作業は繊細で力強い。
たとえ魔方陣を暗記していたとしても、というかこれくらいは魔法士にとって当たり前なんだけど、魔力による魔方陣記入には特殊な道具がいる。
魔力を増幅して撃ち出す筆記道具が。」
「・・・いつの間にそんなの出してた?」
「出してない。」
「は?」
「出してないはずなんだ。」
「・・・どういうことだ?」
さっきからコソコソと二人で話し合っちゃって。
今度はこっちから攻めてやろうか?
けど動物相手ならともかく対人戦はほとんど経験が無い。
彼らくらいの手練れだと若干慎重にもなる。
あえて油断している姿を見せて、という作戦なのかも、とも思う。
懐から複数の石ころを取り出す。
石ころの一つ一つには魔方陣が刻まれている。
もとい魔法発動のための触媒である。
この半年の森籠り中、必要になりそうな魔法は常に書いていくつかもっているのだ。
ただ魔方陣を介して魔力が石ころ全体にも伝道してしまうため、1、2回使うだけで砂塵と化してしまうのが欠点である。
けどてっとり早く魔法を使えるため重宝する。
さて、これを取り出したということはもう分かるだろう。
このまま待っていても埒が明かない。
ただの作戦会議という可能性も低くはないだろうし、距離を取りつつ攻撃していき、様子を見ながら致命傷を与える、という作戦で行こうと思う。
『オペレーション・遠距離からブッパ』、開始だ。
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