俺とアイツと妹。

taki倫也

自己紹介なんてそんないっぱいやるもんじゃない。

セミがうるさい。
山でも行ってみたら、勢いでカブトムシでも捕まえられそうな時期。
そう、夏である。
俺こと、松風まつかぜ なぎはただの高校生だ。
絶対に…なんて言えないけど。
今日も暑さをしのぎつつ、青春を謳歌している。
色恋沙汰なんて物はない。
そりゃそうだ、なんたって俺はクラスの中では陰が薄い方でいつも隅っこに籠っているから。
たまに話しかけてくれる人もいるけど、それの大半は「なんだろうこの生き物は?」状態であり、面白がってからかう奴も少なくない。
『陰キャラ』と呼ばれても差し支えないと思う。


ああ、もし俺がラノベみたいな『主人公』だったらな。
世界を救ってお姫様をお嫁さんにしたり、魔王を倒したり、ハーレム王を目指したりなんて夢でもなくなるんだろうな。
俺はただの高校生。
力なんて身体能力だけだし、身体能力が凄いわけでもない。
だからとは言わないが、俺からしたらクラスで目立ってる奴は力があると思う。
現実に沿った力、仲間を作って楽しく過ごすっつ力が。


まあ、俺の考えなんてこれくらいでいいだろう。
ちなみに今日は夏休み前の最後の学校。
さっさと終わして遊びに行きたい輩が多くて先生も困っている。
静かにさせたいが俺が出たら逆にうるさくなるだろう。


「はいはい、みんな静かに…。ほら、そこ!席に戻りなさい。」


「はーい。」


先生が言うと、クラスメイトたちはそれぞれの席に戻っていく。
全員が席に着くと、先生が話を始めた。


「はい、君らにとって大切な時期が来ました。それは何でしょうか?相川君。答えてください。」


先生が相川君に質問をした。
相川君はクラスの自称ムードメーカー。
なぜ自称なのか。
それはあとででもいいかな。


「はーい、先生。明日から夏休みでーす。」


相川君がそう言うと、クラス中が騒がしくなる。


「こらこら、私は相川君には聞きましたがみんなには聞いてませんよ?」


それに…と先生は続ける。


「今騒がしくしても終わるのが遅くなるだけだからね。君らだけじゃなく先生も忙しいから。」


「先生は何が忙しいんですか?」


相川君が軽い感じで聞いた。
さっきのテンションなら普通に注意するはずの先生だったが…いきなり険しくなった。


「ほら、君たちも高校の真ん中、2年生でしょ?だから来年のためにいろいろ資料とか君らの将来の為の勉強するんだよ。」


「とか言って先生、やらないでしょ?」


「相川君。決めつけてしまったらそれまでだよ?みんなもそうだ。いいかい?私は君たちが好きだ、もちろん生徒としてね。一年後に焦って欲しくない。だから私は今からやることにしたんだよ。」


「…。」


さすがの相川君も黙り混んでしまった。
先生、話が長すぎませんかね。


「少し脱線が過ぎたかな?まあそれほどかかってないし。それじゃ改めて、明日から君たちは夏期の長期休暇に入る。くれぐれも問題行動がないゆうにな?私も嫌な気分で過ごししたくないからね。」


それから先生は注意事項と課題についてプリントを配り説明した。


「最後に、渡した書類の中に進路調査表があったと思う。これは夏休み中に完成させて持ってきてくれ。」


「何でですか?」


「さっきも言っただろう?進路の情報をまとめるためさ。それじゃ良い休日を。」


「起立、礼。」


こうして夏休み前の学校が終わった。
続々とクラスメイトが教室を出ていく。
俺も皆に見習い帰り支度を済ませ、帰ろうとしたが廊下に出たところで


「あ、松風君。ちょっといいかい?」


「はい?なんでしょうか」


え、俺なんで呼ばれたの?
もしかして怒られる?ええってなんかしたっけ…。
そう思いつつ、先生が残っている教室に戻る。
改めて教室を見てみると、誰もおらず俺と先生の二人。
もしや俺と先生の禁断の恋が!?
妄想に入りそうになり慌てて止める。


「それで、先生話というのは?」


「ああ、夏休みの間に進路の資料を調べてくるって言ってただろ?あれを手伝ってほしいんだ。」


「俺がですか?」


今、正直ビックリした。
何もしてないけど怒られるのかななんて思ってたけど、手伝いの話とは少し期待はずれというか良かったとは思うけれど。


「なんで俺なんですか?」


「君は収集能力が高いだろう?それでだ。」


「ああ、なるほど」


前に先生が言ってた事を調べて、先生が言ってなかった事を書いて先生に見せたときに驚かれた。
それ以来、先生には何かと頼まれている。
俺も担任ってことで断りづらいので続けてるけど。


「わかりました。」


先生の頼みを承諾して学校を出たのが、午後2時。
お昼の時間を過ぎてしまった。
先生からはお昼は奢るって魅力的な誘いを貰ったけど、今日は妹と食べる約束をしていたので断らせてもらった。
ということで妹に連絡した後、その足で買い物をしようと思い、スーパーの方に歩いている。
俺が通っている学校は地元ではレベルが高く、部活が盛んな高校と言われている。
相川君もバスケ部に所属している。
それにたいして俺は、無所属。
まあ、特に意味はないがな。
俺は部活がないから夏休みは学校に来なくていいので楽できる。
そんなことを考えていたら、いつの間にかスーパーに到着していた。
買い物カゴを取り、店内に入っていく。
今日は妹の要望で俺がカレーを作ることになった。
家では、俺と妹がご飯を作っている。
両親が帰ってくるのが遅いからである。
一度当番制なのかって聞かれたことがある。
俺はその時、特に決めてないと答えた。
理由は簡単で、お互い食べたい時に作って食べているから。
しかし妹は俺の作るカレーがお気に入りなようで、食べたいときはねだってくる。
今日はカレーの材料とその他って感じかな?


ピロンッ♪
妹からメッセージがきた
『アイス買ってきて兄さん』


そうだな、今日は暑いもんな。
俺の分も買って行けばいいだろう。
それから俺はカレーの材料をなんなく揃え、アイスは俺のセンスで決めた。
レジに行って会計を済ませ、スーパーを出る。
多分、お昼は軽く済ませてるんだろうな。
そういや、妹って彼氏いなかったっけな?
この前自慢された気がするけど…
うう、俺にもそういう話あっていいと思うんだけどな。


さあ、さっさと家に帰るか。
歩きながらの考えだし、どうせ明日には忘れてる。
そろそろ家が見える頃…?
家の前に誰かいるのか?
俺は近づきつつ、誰だろうと考えていたがまったく見当もつかない。



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