セブンスソード
73
校舎の壁に手を伝い一花は歩いていた。さきの戦いで負った傷に手を当て懸命に歩いている。
「はあ。はあ」
息が荒い。体は満身創痍で動くのも辛い状態だ。尻尾と片翼も斬られ全身が痛みと痺れでどうにかなりそうだった。
「はあ、はあ。くっ」
体に走る激痛に眉が曲がる。それでも一花は歩いた。その中で考えていた。
さきほど、聖治に言われた言葉を。
『駆が悲しんでいるのが分からないのか!?』
転校生の訴えが一花の胸に重くのし掛かる。
棗駆。幼馴染みの少年で、いつも一緒にいた友人。誰よりも大切な人。
それは変わっていない。今も昔も。ずっと、彼のことを想ってる。
忘れることが出来れば楽だったのかもしれない。忘れることができればこんなにも辛い思いをせずに済んだ。自分の命を賭けて、相棒の命を捧げて、こんなにも痛い思いをして。
それでも歩いてる。歩く度全身に激痛が走るのに。それを知っていてもなお、歩くのだ。
「ぐ!」
一花は、一歩を踏み出した。知ってなお地面を踏みつける。
きっと、彼女は止めなかっただろう。悪魔召喚師になると決めたあの日。こんなにも痛い思いをすると知っていても。
選ぶ道など、一つしかなかったから。今歩いている道が一花のすべてだ。この先にあるゴールにしか彼女の望むものはない。この茨の道が、彼女に残された唯一の道だ。
その思いを、苦痛と共に踏みしめる。
聖治との戦いの後、歩き続けたため校庭からかなり離れた。ここに人はいない。とりあえず腰を下ろそうかと、そう思った時だった。
「苦戦したようだな、一花」
「秋和……?」
校舎の中から人影が現れる。それは秋和だった。悠然とした態度で外に出てくる。
同時に、校舎から何体もの悪魔が現れた。さらには屋上で待機していたのか、翼を広げ空から着地してくる。
ここには秋和の他に、二十体以上の悪魔が集まっている。悪魔たちが獲物を狙う笑みを浮かべ牙を覗かせる。
一気にして一花は多勢に無勢の苦境に立たされていた。
壁に片手を付いたまま一花は秋和を睨む。
「ひどい格好だ、風邪をひくぞ」
「決着を付けるつもり?」
「その通りだ」
秋和はすでに悪魔を召喚して臨戦態勢だ。万全の姿勢で挑んでいる。対して一花はぼろぼろだ。さきほど聖治と対戦したばかり。ダメージもかなり残っている。戦うどころかこうして立っているのも辛い状態なのに。
「やるわね、手負いの女の子を襲って勝ちを拾おうなんて。卑怯者しか出来ないわ」
「言ったはずだ、俺は勝つと。俺の勝ちはすでに決まっていたんだよ、一花」
一花の嫌みにしかし秋和は応じない。冷たく突き放してくる。そこに友人としての間柄は感じない。すでに敵として割り切った態度だ。
「……甘く見ないで」
一花は壁から離れ両足だけで立つ。彼女の体は傷だらけの有様だ。羽をもがれた鳥のように痛々しい。
けれどその威容。彼女は立っているだけ。それなのに他を圧倒するほどの迫力があった。痛みや逆境すら踏み越えるというその覚悟。
気迫が違う。
決意が違う。
彼女を形作る想いのすべてが、彼女を強者足らんとしていく。
「ああ、想定内だ」
一花の気迫に秋和も静かな戦意で応える。その目は友人との談話から敵との対決に切り替わっている。
「私は負けない! こんなところで、願いを叶えるまでは!」
一花は駆けた。その身に宿す強靱な力で前進する。立ちふさがる雑魚どもを蹴散らし片手で掴んでは投げ飛ばしてくる。
そんな一花めがけ五体の悪魔が一斉に飛びかかってくる。翼を広げ頭上から爪を振り下ろす。
「闇送り!」
だが、その悪魔たちの攻撃は届かず、一花が即座に展開した闇に飲み込まれていく。闇が消えると同時に五体の悪魔も消える。
「秋和ッ!」
いくら悪魔を相手にしていても仕方がない。狙うならば本丸の召喚師。
一花は闇による空間転移で秋和に襲いかかる。彼のすぐ背後に現れ攻撃しようとする。
しかし、一花が出現するとすでに悪魔たちが襲いかかってきた。
「ちぃ!」
攻撃を未然に防がれ一花は再び空間転移を行い別の場所から奇襲を行う。
しかし、その度に一花の邪魔をするように悪魔たちが襲いかかってくる。なかなか秋和に手が伸びない。
幾度も攻めるもその繰り返し。
一花の行動、その先を制してくる。
「はあ。はあ」
息が荒い。体は満身創痍で動くのも辛い状態だ。尻尾と片翼も斬られ全身が痛みと痺れでどうにかなりそうだった。
「はあ、はあ。くっ」
体に走る激痛に眉が曲がる。それでも一花は歩いた。その中で考えていた。
さきほど、聖治に言われた言葉を。
『駆が悲しんでいるのが分からないのか!?』
転校生の訴えが一花の胸に重くのし掛かる。
棗駆。幼馴染みの少年で、いつも一緒にいた友人。誰よりも大切な人。
それは変わっていない。今も昔も。ずっと、彼のことを想ってる。
忘れることが出来れば楽だったのかもしれない。忘れることができればこんなにも辛い思いをせずに済んだ。自分の命を賭けて、相棒の命を捧げて、こんなにも痛い思いをして。
それでも歩いてる。歩く度全身に激痛が走るのに。それを知っていてもなお、歩くのだ。
「ぐ!」
一花は、一歩を踏み出した。知ってなお地面を踏みつける。
きっと、彼女は止めなかっただろう。悪魔召喚師になると決めたあの日。こんなにも痛い思いをすると知っていても。
選ぶ道など、一つしかなかったから。今歩いている道が一花のすべてだ。この先にあるゴールにしか彼女の望むものはない。この茨の道が、彼女に残された唯一の道だ。
その思いを、苦痛と共に踏みしめる。
聖治との戦いの後、歩き続けたため校庭からかなり離れた。ここに人はいない。とりあえず腰を下ろそうかと、そう思った時だった。
「苦戦したようだな、一花」
「秋和……?」
校舎の中から人影が現れる。それは秋和だった。悠然とした態度で外に出てくる。
同時に、校舎から何体もの悪魔が現れた。さらには屋上で待機していたのか、翼を広げ空から着地してくる。
ここには秋和の他に、二十体以上の悪魔が集まっている。悪魔たちが獲物を狙う笑みを浮かべ牙を覗かせる。
一気にして一花は多勢に無勢の苦境に立たされていた。
壁に片手を付いたまま一花は秋和を睨む。
「ひどい格好だ、風邪をひくぞ」
「決着を付けるつもり?」
「その通りだ」
秋和はすでに悪魔を召喚して臨戦態勢だ。万全の姿勢で挑んでいる。対して一花はぼろぼろだ。さきほど聖治と対戦したばかり。ダメージもかなり残っている。戦うどころかこうして立っているのも辛い状態なのに。
「やるわね、手負いの女の子を襲って勝ちを拾おうなんて。卑怯者しか出来ないわ」
「言ったはずだ、俺は勝つと。俺の勝ちはすでに決まっていたんだよ、一花」
一花の嫌みにしかし秋和は応じない。冷たく突き放してくる。そこに友人としての間柄は感じない。すでに敵として割り切った態度だ。
「……甘く見ないで」
一花は壁から離れ両足だけで立つ。彼女の体は傷だらけの有様だ。羽をもがれた鳥のように痛々しい。
けれどその威容。彼女は立っているだけ。それなのに他を圧倒するほどの迫力があった。痛みや逆境すら踏み越えるというその覚悟。
気迫が違う。
決意が違う。
彼女を形作る想いのすべてが、彼女を強者足らんとしていく。
「ああ、想定内だ」
一花の気迫に秋和も静かな戦意で応える。その目は友人との談話から敵との対決に切り替わっている。
「私は負けない! こんなところで、願いを叶えるまでは!」
一花は駆けた。その身に宿す強靱な力で前進する。立ちふさがる雑魚どもを蹴散らし片手で掴んでは投げ飛ばしてくる。
そんな一花めがけ五体の悪魔が一斉に飛びかかってくる。翼を広げ頭上から爪を振り下ろす。
「闇送り!」
だが、その悪魔たちの攻撃は届かず、一花が即座に展開した闇に飲み込まれていく。闇が消えると同時に五体の悪魔も消える。
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いくら悪魔を相手にしていても仕方がない。狙うならば本丸の召喚師。
一花は闇による空間転移で秋和に襲いかかる。彼のすぐ背後に現れ攻撃しようとする。
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