セブンスソード

奏せいや

30

 だけど、女の子は嫌そうな顔をするだけだ。

「うざい」

 さらに、冷たく駆を突き放した。

「はっきり言ってあげる。もう、私に関わらないで」
「!?」
「顔も見せないで。メールもしないで。話しかけないで。絶交ってこと。ここまで言えば分かるでしょ」

 スマホを持つ手が下がる。駆は唖然としどういうことか本気で分からないようだ。辛そうで、苦しそうで、今にも泣きそうだ。

 それでも再度スマホを見せる。

 しかし。

「くどい!」

 女の子はその手を払う。そのせいでスマホが廊下を滑っていく。あれはただのスマホじゃない、駆にとってはそれ以上に大事なものだ。それを落とすなんて。

 それは駆も意外だったようで辛そうな顔で女の子を見る。

 そんな駆に向かって、彼女は言い放った。

「話したいことがあるなら直接言ったら?」
「!?」

 それで、今度こそ駆は項垂れた。顔を下げ泣いていた。

「おい! お前、それ駆が喋れないの知って言ってるのか!?」

 駆はその場に膝を付いている。

 許せない。駆の友達かなんだか知らないがそれを言うのかよ!

「ふん」

 彼女を睨む。女の子も横目でジッと見つめてくる。こいつは許せない。にらみ付けながら近づいていく。

「駆?」

 しかし駆に腕を掴まれた。

「だけど!」

 駆は泣きながら顔を横に振っている。ここまで言われて、こんなことをされて、それでもこの子を庇うのか? 駆にとって大事な友達かもしれないが相手もそう思っているとはとてもじゃないが思えない。

「ッ」

 許せないが、彼女から視線を外すと掴まれた手を優しく外す。次に落ちているスマホを拾い上げ駆に手渡した。

「ほら。大事なものだろ?」

 駆はそれを取ると両手で抱えた。涙は止まっていない。悔しさと悲しさが聞こえない悲鳴となって伝わってくる。

「……ふん」

 そんな駆を放って彼女は去っていった。ひどい。追いかけて一言なにか言ってやりたいが今は駆だ。

「駆? 大丈夫か?」

 なんとか立たせ一緒に教室へと向かう。

 教室に着くとお互い席に座った。駆は泣き止んでいたものの元気がない。当然だ。今も返事をする仕草もなく落ち込んでいる。

「駆は悪くないんだ、あまり気にしなくていいさ」

 そうは言っても無理だよな。駆から反応はない。

「なにか、心当たりはあるのか?」

 質問に顔を横に振る。いきなりあんな反応されたからショックを受けているんだ、あるわけがない。

「俺じゃなにも役に立てないかもしれない、でもなにかあったら教えてくれ。今度は俺が力になるよ」

 駆は小さく頷いてくれた。これ以上しつこく声をかけても迷惑だろうしそれからはそっとしておくことにした。

 駆とはさっき親しくなったばかりだ。だけど俺は彼に助けられた。そんな彼がここまで落ち込んでいる。心配だ。なにより悪魔召喚師の女の子と友達だったなんて。

 このままにはしていられない。

 それから時間が経ち放課後、俺はカバンも持たず席から立ち上がった。彼女の教室は休憩時間に確認してある。すぐにその教室を訪れ彼女の席の前に立つ。

「よお」

 敵意を露わに声をかける。彼女も睨むように見上げる。

「話そうぜ。お前もそうしたいだろ?」
「……ち」

 逃げられないと観念したか女の子は素直に従った。

「今なら中庭が空いてるからそこでいいでしょ」

 俺たちは揃って教室を後にした。

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