セブンスソード

奏せいや

18

「そんなの当然じゃん」

 日向ちゃんからの返事に顔を上げる。彼女はそう言ってくれた。

 日向ちゃんに続いて此方も口を開く。その顔は落ち着いている。

「らしくない真似しなくても、分かってるわよ、それくらい」
「ま、だわな」

 此方もそう言ってくれて安心する。

「うん。僕も同じ。聖治君を嫌いになるなんてこと絶対にないんだなぁ」

 星都の隣で力也もそう言う。そう言い切る表情に迷いや躊躇いはない。

「うん……」

 元気はないが、香織も小さく頷いた。

 みなからの返事を聞いて星都も頷いた。

「ありがと。俺たちになにができるのか、それはまだ分からない。でもはっきりしてることが一つある」

 これからどうするのか、仲間である聖治を苦境から救うためになにをするか。

 答えは分からないけれど、出来る限りのことをしようと星都はみなへ呼びかける。

「それは、諦めないことだ。俺はあいつを見捨てない、諦めない。今は無理でもいつか治る時がくる。その時まであいつを支えてやろう」
「うん」
「そうね」
「僕もそう思うんだな」

 そう言って星都は席を立った。

「言いたいことはそれだけだ。それじゃ出るか、話も終わったしな」

 聖治の立たされている状況。それを共有できた。それだけで要らぬトラブルは減るはずだ。

 全員席を立ちカウンターへ向かっていく。そこで星都は日向に声を掛けた。

「日向」
「ん?」

 立ち止まり二人はみなと離れる。

「さっきは強く言って悪かったな」
「べ、別に気にしてないし」
「そうか」

 それだけちょっと気になっていたのでとりあえず言っておく。

「ねえ」
「ん?」

 今度は日向ちゃんの方から星都へ話しかけてくる。

「私も、聖治さんのことは好きだから。その、一応」
「……そうか」

 心配しているのは自分だけじゃない。それは日向ちゃんもそうだし、他のみんなもそうだ。それを聞けて星都は少しだけ口元を持ち上げた。

 そこで会計をしようとしている先行組を見つけ星都が走り出す。

「いいよいいよ、ここは俺が払うわ」

 そして全員分の支払いを済ませ店を出た。

 カランカランと扉の鐘が鳴る。店の前に立ち仲間が出てくるのを待つ。みんなその表情は真剣だ。

 最後に香織が出てくる。その顔は未だに俯いていた。

「香織?」

 心配し此方が尋ねる。

「大丈夫?」

 泣き止んだとはいえ香織はまだ落ち込んでいる。きっと誰よりもだ。すぐに立ち直れるはずがない。

 けれどこのままじゃいけないと思ったのか口を開いた。

「そうだよね。泣いてる場合じゃないよね」

 このままじゃいけない、泣いてちゃいけない。罪悪感を使命に変えて自分を納得させていく。

「聖治君は、私のせいで苦しんでるようなものなんだから。私がしっかりしないと。私が支えてあげないといけないよね。私が聖治君を追いつめたんだから、私が」
「香織」

 それがあまりにも辛くて、悲しくて、此方は駆け寄ると彼女の肩を掴んだ。

「自分を追いつめないで。自分を責めちゃ駄目よ」
「でも、だって」

 弱気な彼女の顔を真っ直ぐと見つめる。

「聞いて。いい? 聖治がああなったのは香織のせいじゃない。あいつを襲った悪魔のせいよ。そうでしょう? あんたのせいじゃないし、あんたはなにも悪くない。悪いのは全部悪魔のせいよ。自分を責めるのは違うわ」

 此方からの力強い声と優しい言葉。それは否定できない説得力があって、嫌が応にも伝わってくる。

 誤魔化した心すらも、その言葉は破いていった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品