セブンスソード

奏せいや

12

 それから時間は過ぎていき今日の日程は終わりだ。授業が終わった開放感から周りからはみんなの話し声が聞こえてくる。俺は一人荷物を片づけ教室を出た。

 正門を通り外へと出ていく。その間ずっと俯き加減だ。足下ばかりが見える狭い視界。気持ちがまだ立ち直れていない。

 俺は、どうしてしまったんだろう。以前はこんな風じゃなかった。あんなに楽しみにしていたみんなとの会話も全然楽しめなくて。それどころか避けてさえいる。

「はあ……」

 胸が重い。

「おーい!」

 え?

 背後から声を掛けられた。すぐに振り返る。

 そこには俺に手を振る星都と他にも力也や此方、日向ちゃんに香織までいた。

 星都は走って俺のところまで来ると肩に腕を回してきた。

「さきに行くことねえだろ、一緒に帰ろうぜ?」

 気さくに、なんの躊躇いもなくそう言ってくる。屋上のことなんてなかったかのようだ。きっと気を遣ってくれているんだろう。

 その後に続いてみんな揃い俺たちは一緒に歩いて行く。このメンバーが集まるといつも賑やかだ。ただの帰り道でも話題に事欠くことはないし楽しい時間になる。

 ただ、どうしても俺はその中に入っていけなかった。外野から眺めるようにここにいてしまう。
 頭は悪魔からの侵攻で一杯で楽しく話をする余裕がない。

 いつもの通り道。だけど油断ならない。曲がり角、自動販売機の影。どこに奴らが潜んでいるか。もしかしたら空から突然やってくるかもしれない。

 みんなが楽しそうに会話している間、俺は隙をみては周囲を警戒していく。

「聖治君はどうなの?」
「え?」

 すると香織が話しかけてきた。

「ハンドボール。聖治君のクラスはどうなのかなって」
「えっと」

 みんなは体育の内容で話していた。それで香織が聞いてきた。

 香織とは別のクラスだ。というか全員クラスは違っている。香織と此方が二年一組で星都と力也が二組、俺は三組だ。それに三組は棟が別なのでよっぽどのことがないとみんなとは会わない。
 俺の体育の調子といえば、正直あまりいいとは言えない。今になかなか集中できなくてみんなの動きについていくのがやっとだ。

「まあ、普通だよ」

 つい顔を逸らしてしまう。

「香織は? テニスは楽しい?」

 女子はテニスをしているのは会話から聞こえていた。

「うん! 初めてだからまだうまくないけど楽しいよ。ラリーが続くとね、それだけで楽しいんだよね」

 本当にテニスが楽しいんだろう、そう言う表情は笑っている。

 そう言うと此方が小さく振り返った。

「香織は筋はいいんだけど力が弱いのよ。もっと思いっきりラケットを振らないと」
「やっぱりそう思う? まだ加減がうまく分からなくて」

 きっと香織と此方のペアでやっているんだろうな。最近特に二人の仲が良くなっているように思う。

「まだ躊躇ってる感じかな。でもフォームはいいし動きもついてこれてるから。コツを掴んだら一気にうまくなるわよ」
「本当に? 此方ちゃんとまだうまく試合できてないから。うまくなってちゃんと試合できるようになりたいんだよね」
「ふふ、楽しみにしてるわ」
「ええー、いいなあ~。私も香織さんとテニスしたいなー」
「日向ちゃんもテニスできるの?」
「できるできる、マリパだけど」
「それは出来るって言わねえだろ」

 俺も星都と同意見だ。

「イメトレはばっちりだもん」
「なんの役に立つんだよ」
「立つかもしれないじゃーん」
「私も日向ちゃんとやってみたいな」
「じゃあ今日うちに来てマリパやろうよ!」
「いいの!?」

 日向ちゃんからのお呼ばれに声が上擦っている。

 日向ちゃんと香織が此方を見る。二人に見つめられ此方は観念したように肩を下げた。

「もう、少しだけよ」
「やった!」
「ありがと。此方ちゃんも一緒にどう?」
「ほんとは実物のテニスで試合したかったけど、前哨戦も悪くないか」

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