セブンスソード
7
駆は床に倒れた。痛みに悶える。例えるなら体の内側を破壊して作り直していく感覚。肉を引き裂かれ、溶かされ、別物にされていく。意識が飛びそうな激痛だ。駆は苦悶の表情を続ける。
その後、ようやく痛みが収まった。それでも強烈な痛みの余韻に体はすぐには動けず、まるで車に弾かれたように体が重かい。指を動かすのも億劫だ。
それでも駆は両手を動かした。さきほどから胸の辺りがおかしい。熱いのか冷たいのかも分からない、妙な違和感。駆は服を破いて胸を見る。
「? ……!?」
そこには、円となった痣が盛り上がっていた。
まるで、大きな指輪(リング)のように。
それを見ていた女性が意外そうな顔をする。
「これは……、そうですか。幸運な少年よ、陛下からいただいた寵愛(ちょうあい)を無碍(むげ)にせぬよう、お願いしますよ」
駆は女を睨み上げる。あれほどの痛みに耐えて、こんな事態に立たされて、どこが幸運だと言うのか。
しかし女性は冷たい視線に微笑を浮かべ駆を見下ろすばかり。
その後、老人は踵を返し二人は歩き出してしまった。
駆は睨む。見続ける。
だが、次第に意識が遠のいた。二人はそのまま消えていく。
知りたいことがたくさんあった。ここはどこなのか? さきほどの怪物はなんなのか?
一花は、無事なのか?
知りたいことは叶わぬまま駆は限界を迎える。瞼は意思とは反して閉じ、意識は奈落へと沈んでいく。
その間際、駆は手を伸ばした。
その手が求めたのは老人か、彼女か。
はたまた、力か。
*
朝日の明かりが自室を照らす。時計の針が律儀に動き、音が部屋中に鳴り響く。
駆は目を覚ました。
「!?」
上体を勢いよく起こす。さきほどまで見ていた、否、体感していた世界が脳裏に浮かび上がる。
しかし、ここは自分の部屋だった。
ビリリリリリ――――ピタ。
目覚めの放心状態から数秒経って、ようやく目覚まし時計の音を止める。それで辺りを見渡してみた。異変はなにもない。自分の部屋だ。世界は変わっていない。そんなことあるはずがない。
夢か。
駆に数時間ぶりの安堵が訪れる。大きな息を吐いた。
が、いつからだ?
頭をひねる。いつから夢だった? そもそも今はいつだ?
駆は自室にある小さなテレビをつけた。朝のニュースが映る。
画面右上に写るのは七月一四日。月曜日。
目を疑った。
今日は七月一三日。日曜日のはずだ。それで一花や秋和、千歌と遊ぶ予定だ。
だが、今日は一四日。月曜日。
駆はどういうことかと悩み、次に日曜日のことを思い出そうとした。一花と出会い、デパート前で秋和や千歌と合流したところは思い出せる。そこで自分がトラックに弾かれるところも。
そして、滅んだ街へ迷い込んだことも。
だが、あれは夢のはず。
どういうことか分からない。現実と記憶が水と油のように組み合わない。
駆は携帯を手に取りメール画面を開いた。宛先は一花。
【件名・教えて欲しい
突然で悪いんだけど、昨日なにをしていたか教えてくれないか? 四人でデパートから歩き出した後がなぜか思い出せないんだ。頼む】
駆はメールを送信する。画面には送信しましたの文字。とりあえず今できるのはこれくらいか。
「…………」
息を吐く。
しかし、いざ送った後だんだんと後悔の念が沸いてきた。思い出せない? 自分は酒でも飲んだのだろうか? 飲んだことなどもちろんないが、自分が言っているのはいわばそういうことで、なんとも馬鹿げたことだ。
その後、ようやく痛みが収まった。それでも強烈な痛みの余韻に体はすぐには動けず、まるで車に弾かれたように体が重かい。指を動かすのも億劫だ。
それでも駆は両手を動かした。さきほどから胸の辺りがおかしい。熱いのか冷たいのかも分からない、妙な違和感。駆は服を破いて胸を見る。
「? ……!?」
そこには、円となった痣が盛り上がっていた。
まるで、大きな指輪(リング)のように。
それを見ていた女性が意外そうな顔をする。
「これは……、そうですか。幸運な少年よ、陛下からいただいた寵愛(ちょうあい)を無碍(むげ)にせぬよう、お願いしますよ」
駆は女を睨み上げる。あれほどの痛みに耐えて、こんな事態に立たされて、どこが幸運だと言うのか。
しかし女性は冷たい視線に微笑を浮かべ駆を見下ろすばかり。
その後、老人は踵を返し二人は歩き出してしまった。
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だが、次第に意識が遠のいた。二人はそのまま消えていく。
知りたいことがたくさんあった。ここはどこなのか? さきほどの怪物はなんなのか?
一花は、無事なのか?
知りたいことは叶わぬまま駆は限界を迎える。瞼は意思とは反して閉じ、意識は奈落へと沈んでいく。
その間際、駆は手を伸ばした。
その手が求めたのは老人か、彼女か。
はたまた、力か。
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駆は目を覚ました。
「!?」
上体を勢いよく起こす。さきほどまで見ていた、否、体感していた世界が脳裏に浮かび上がる。
しかし、ここは自分の部屋だった。
ビリリリリリ――――ピタ。
目覚めの放心状態から数秒経って、ようやく目覚まし時計の音を止める。それで辺りを見渡してみた。異変はなにもない。自分の部屋だ。世界は変わっていない。そんなことあるはずがない。
夢か。
駆に数時間ぶりの安堵が訪れる。大きな息を吐いた。
が、いつからだ?
頭をひねる。いつから夢だった? そもそも今はいつだ?
駆は自室にある小さなテレビをつけた。朝のニュースが映る。
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目を疑った。
今日は七月一三日。日曜日のはずだ。それで一花や秋和、千歌と遊ぶ予定だ。
だが、今日は一四日。月曜日。
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そして、滅んだ街へ迷い込んだことも。
だが、あれは夢のはず。
どういうことか分からない。現実と記憶が水と油のように組み合わない。
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しかし、いざ送った後だんだんと後悔の念が沸いてきた。思い出せない? 自分は酒でも飲んだのだろうか? 飲んだことなどもちろんないが、自分が言っているのはいわばそういうことで、なんとも馬鹿げたことだ。
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