セブンスソード

奏せいや

231

「そんな」

 香織が捕まった。悪魔は香織を引きずりながら来た場所へと戻っていく。

「待て! 香織をどうするつもりだ!」

 叫んでも止まらない。悪魔は元の場所に戻るとエンデュラスに持ち替え空に向け持ち上げた。周囲の空間が歪んでいく。

「させるか!」

 ここに現れた時みたいにどこかへ消えるつもりか。

 悪魔はカリギュラを発動し周囲に黒い霧を発生させる。これではみんなが動けない。

「ディンドラン!」

 ホーリーカリスがピンク色に発光する。俺はカリギュラの中を突き進んでいく。

「香織!」
「聖治君!」

 手を伸ばす。香織も俺に手を伸ばす。

 ここまできたんだ、せっかくここまで。死にものぐるいで頑張って、ようやく手に入れた未来なんだ。

 また失ってなんてたまるか!

「香織ぃいいい!」

 俺は走るが、悪魔の周囲が歪んでいく。そしてまばゆい光が一帯を覆った瞬間、香織は悪魔と一緒にこの場から消えていた。

「香織……?」

 さきほどまで二人が立っていた場所に着く。けれどもう遅い。そこにはなにもない。

 香織は、連れ去られた。俺の、目の前で。

「香織、そんな。なんだよあいつは!? どこから現れた? どうして香織を!」
「落ち着け相棒」

 星都に肩を掴まれる。

「お前がパニクってどうするんだよ。焦るな、今のお前は一人じゃないんだろ?」

 言われてハッとする。すぐに周りを見渡す。力也や日向ちゃん、此方が俺を見ている。

 星都の言うとおりだ、俺だけ焦ってみんなに心配かけてどうする。

「俺たちは一人じゃない、みんんがいる。そうだろ?」

 俺を落ち着かせようと優しく話しかけてくれる。

「聖治君、大丈夫だよ。僕たちがいるよ」
「そうだよ聖治さん。もう一人だった時とは違うんだから、私たちがついてるよ」
「やられたのは悔しいけどね。気持ちはあんたと同じよ、聖治」
「みんな」

 みんなの顔を見て荒れていた気持ちが落ち着いていく。

「ごめん。ありがと」

 みんなの励ましに感謝する。ほんと、みんないいやつらだよ。こんな俺を支えてくれるんだからな。

「それで、今のやつはいったい」

 落ち着いたところでもう一度聞くがさきほどのあいつはなんだったんだ。

「今までの悪魔とは明らかに違う。スパーダを持っていたこともそうだしどうして香織を連れていったんだ? いや、そんなことよりもすぐに連れ戻さないと!」

 あいつの目的がなにかなんて知ったことじゃない。なにかされる前に助けないと。

「そうだな、謎は多い。分からないことは今までも散々あったが最後にとびっきりのが来たな」
「どうにかして追いかけることはできないのか?」

 あいつがどこに行ったのか、それどころかどこから来たのかも分からない。だからといって諦めるなんて出来ない。なにか手がかりはないのか。

「それなんだがな、来るときもしやと思ったんだが」
「なんだよ」

 星都はなにか心当たりがあるのか? そういえばあいつが現れる前から星都は気付いていたようだった。

「ああ、最後のを見て確信した。あいつは未来から来た。しかも、こいつを使ってな」
「エンデュラス」

 星都は片手で持ったエンデュラスを小さく持ち上げる。

「それは俺も見てたから分かるが」
「あいつがエンデュラスを使って未来に行ったっていうなら、俺にも出来るってことだ。お前にもな」
「そうか! ん? でも今のお前じゃ」
「一本しかないから加速しかできない、だろ?」

 ホーリーカリスにはエンデュラスの力も備わっている。あいつが光帝剣の力で来たっていうなら俺にもできるのは道理だが、星都は一本しかスパーダを持っていない。タイムスリップなんて上位能力発動できないはずだが。

「俺もそう思ってた。だけど俺はあいつの襲来を感じることができた。俺には一本以上の能力が備わってるってことだ」

 確かに。そういうことになるな。

「たぶんだが、お前のスパーダと連動、連結してるんだろうな。お前のホーリーカリスはエンデュラスが宿っている。ということはエンデュラスは七本の状態ってことだ。そしてお前のエンデュラスと俺のエンデュラスがリンクし俺も七本の状態になっているらしい。俺だけじゃない、他のみんなもな」
「同じスパーダ同士繋がってるってことか?」

 まさかそんなことになっていたなんて。

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