セブンスソード

奏せいや

224

 青い空が広がっている。きれいな空だ。空が青いというだけで心の中までも晴れ渡っていく。実際晴れているとそれだけで気分がよくなるんだよな。この空を見上げるとそれを実感する。

 未来で見る空とはまるで違う、青い空。それが俺を、この世界を覆っている。

 あれから、セブンスソードが終わってから二ヶ月が経った。その間俺たちは何事もなく過ごしている。学校にだって通っているし問題なく生活も出来ている。ほんと、セブンスソードなんてなかったんじゃないかと思えるくらいに平穏だ。

 スパーダは全員仲間となりこの儀式を仕切っていた管理人もすべていなくなった。もうみんなと殺し合いをすることもない。俺たちは平和を手に入れたんだ。こうして通学路を一人で歩いていても襲われることはない。心配はなくなった。

 だけど、なんだろうか。

 ふと、この胸の内に消化しきれない思いがあるのを感じる。まだ終わっていない。まだ他にやることが残っている。そう思うのにそれがなんなのか思い出せない。

 きっと未来において悪魔が侵攻してくる。それについての不安だろう。こうして平穏を教授している場合じゃない。そうした思いが無意識に訴えているんだと思う。

 そう思おうとしても、確信は持てないが。

「よう相棒」

 いったいなんなんだろうな、時折感じるこの思いは。悪魔の侵攻。それ意外に憂慮すべきことってなにかあっただろうか?

「おーい、無視すんな。聞こえてるだろうが」

 ないはずだ。じゃあこの思いは? ただの杞憂ならいいんだが。

「ぎゃあああ! 死ぬううう!」
「わーったよ、うるせえな」

 と、隣で騒ぐ星都が我慢できる上限をぶち抜いてきたのでさすがに振り返る。

「はいはい、そうだったな。寂しいと死んじゃうんだっけ?」
「そうだバカ野郎、俺のことは限界寸前のジェンガみたいに慎重に扱え~」
「嫌だよめんどくせえ」
「ぐはああああ!」
「うるせーな」
「星都君は朝から元気なんだなぁ」

 なんで朝っぱらからこんなに元気なんだ? なにを食ったらこんなにテンション上がった状態で一日を始められるんだよ。

「力也は力也でマイペースだけどな。力也からも星都に言ってやってくれよ」
「うーん。でもまあ、これが星都君のいいところでもあるわけだし」
「まったく」

 力也は今日も穏やかだ。その寛大さには思わず笑みがこぼれる。

「そうだぞ相棒、これが俺の長所なんだ。そもそも俺を無視しやがって、この中でお前が一番性格悪いからな」
「ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事をな」
「考え事?」

 確かに星都を無視していた俺が一番悪いのは事実だからな。とはいえこいつならそれくらい大丈夫だけど。

「まあ、ちょっとな」

 俺の中で答えがはっきりしていないことをわざわざ言う気にもなれず言葉を誤魔化す。

 そうして俺たち三人は通学路を歩いていと道の先に見覚えのある三人組の女子が見えてきた。

「だから私はそこで待ち伏せしてね、聖治君が出てきたとこを激写したわけよ」
「ガチ勢すげー」
「てか、それ普通に犯罪でしょ? あいつは了承してるわけ?」
「もちろん、してるわよ」
「してないぞ」
「聖治君!?」

 香織が驚いて振り返る。こいつは俺のいないところで虚偽の事実を作ろうとしているな。

「あ、聖治さんおはよう!」
「ああ、おはよう。此方もな」
「ええ、おはよう」

 日向ちゃんは今日も元気だな。此方もいつも通り落ち着いた様子だ。唯一慌てているのはこの女だけだ。

「ねえねえ聖治君、もしかして今の話聞いてた?」
「えっと」
「もしかして図書室で本を取り出している知的な場面を盗撮したとこも?」
「えー」
「まさか! 家庭科の実習で手を振るわしながらにんじんを切っている可愛い場面を撮ったとこも!?」
「その」
「それか! 水泳の授業でシャワーを浴びているセクシーなとこもぉお!?」
「いや、今来たところだ」
「なーんだ、よかった」
「…………」
「ちなみに今の全部嘘だから、全部忘れて」

 無理だろ。

「なあ相棒、お前こいつとほんとに付き合ってんの?」
「一応」

 止めてくれ、聞くなよ。自信なくすだろ。

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