セブンスソード
213
「馬鹿な」
あり得ない! 斬ってどうにかなるものじゃない。水の流れを斬ってもすぐに修復されるように、そこに障害物ができたわけでもないのに避け続けるなんてことはない。第一カリギュラは斬ろうと思って斬れるものじゃない。
この人は、概念すら切り捨てたのか。
さらに兄さんが天黒魔を振るう。
「ッ、ディンドラン!」
カリギュラからディンドランに移し多元攻撃を防御する。それによってカリギュラが解除され黒い霧が一気に晴れた。
それから動いたのは同時だった。俺はエンデュラスで走り兄さんは空間転移で移動する。互いに相手を追いかけ町中を走り回っていく。道路を走り角を曲がりさらに直線をマッハ十以上で走っていく。しかしその度に転移してぴったりと付いてくる。現れては天黒魔の斬撃が迫りかわしながら走り続けた。
振り切れないッ。
だがいつまでもやられっぱなしでいられるか。
兄さんが現れる。周囲の光景が高速で移り変わっていく中で何度目かも分からない刃がくる。
それを防ぐでもかわすのでもなく、
「グラン!」
弾く!
「ぬ!?」
グランの斥力により天黒魔の斬撃が弾かれる、まるで見えない壁にでも当たったかのようだ。
さらに兄さんの足場の重力を引き上げる。何倍ものGに晒され体勢が崩れた。
俺はすぐに引力で引き寄せ緑のホーリーカリスを打ち付ける。
が、それすらも兄さんは転移でかわしさらには俺の背後に現れてきた。
剣で防いでは遅すぎる。
「死ね」
「ディンドラン!」
黒刀と紫のオーラが一体となって迫るのを桃色のベールが防ぐ。
「ち」
「ち」
やりづらい!
すぐさま距離を取る。兄さんも転移すると距離を置いて現れた。再び向き合いスパーダを構える。
分かってはいたけれど、強い。ただでさえ強かった管理人の能力をすべて得た兄さんだ、弱いわけがない。それでも七つの能力を得たホーリーカリスでも苦戦するなんて。
俺のホーリーカリスは平行世界で得たスパーダを蓄積したもの。それが七つ揃ったからこそ発現できた能力だ。だがあくまでそれは別の世界での出来事、記録でしかない。実体を得たわけではないので以前のように二刀流や複数出して戦うことも同時に能力を使うこともできない、仮の完成品。だから攻めきれないのもあるが、きっと真に完成していても今の状況は変わらなかっただろう。
この人は強い。それは変わらない。
「なんで、あんたはここまで戦おうとするんだ?」
「力を得るためだ」
「力……」
それはさきほども言っていた。力を得ると。
「どうして力を求めるんだ?」
普通、殺し合いに身を投じてまで力を求めたりしない。自分が殺されるかもしれないのにそこまでしようとするからには相当な理由があるはずだ。
「どうして求める、か」
俺はそれを知っている。でも兄さんは覚えていないはずだ。それはおかしい。兄さんは忘れているはずで、こうまで戦う理由はないはずなのに。
だっていうのに、次の一言は衝撃だった。
「知らんな」
「そんな」
知らないってどういうことだ、この人は訳も分からずこんなことをしてるっていうのか?
「そんなはずないだろ! 自分がなにをしてるのか分かってるのか? 殺し合いだぞ!? 人を殺すのも、自分が殺されるのも、理由もなくしてるっていうのか?」
それこそあり得ない。なんの得がある? リスクしかない。単純に殺し合いが好きなんて変人でもない限りそんなこと。
だがこんな発言をしていても兄さんの表情は変わらない。戦いが始まってもその顔つきが変わったことは一度もなかった。
「理由は知らん。だが、ずっと消えない思いがある」
そのずっと変わらなかった表情が、この時変わった。どこか遠くを見つめるような顔。
「なにかを、忘れている気がする」
「!?」
その一言に、心が震えた。
それって。
あり得ない! 斬ってどうにかなるものじゃない。水の流れを斬ってもすぐに修復されるように、そこに障害物ができたわけでもないのに避け続けるなんてことはない。第一カリギュラは斬ろうと思って斬れるものじゃない。
この人は、概念すら切り捨てたのか。
さらに兄さんが天黒魔を振るう。
「ッ、ディンドラン!」
カリギュラからディンドランに移し多元攻撃を防御する。それによってカリギュラが解除され黒い霧が一気に晴れた。
それから動いたのは同時だった。俺はエンデュラスで走り兄さんは空間転移で移動する。互いに相手を追いかけ町中を走り回っていく。道路を走り角を曲がりさらに直線をマッハ十以上で走っていく。しかしその度に転移してぴったりと付いてくる。現れては天黒魔の斬撃が迫りかわしながら走り続けた。
振り切れないッ。
だがいつまでもやられっぱなしでいられるか。
兄さんが現れる。周囲の光景が高速で移り変わっていく中で何度目かも分からない刃がくる。
それを防ぐでもかわすのでもなく、
「グラン!」
弾く!
「ぬ!?」
グランの斥力により天黒魔の斬撃が弾かれる、まるで見えない壁にでも当たったかのようだ。
さらに兄さんの足場の重力を引き上げる。何倍ものGに晒され体勢が崩れた。
俺はすぐに引力で引き寄せ緑のホーリーカリスを打ち付ける。
が、それすらも兄さんは転移でかわしさらには俺の背後に現れてきた。
剣で防いでは遅すぎる。
「死ね」
「ディンドラン!」
黒刀と紫のオーラが一体となって迫るのを桃色のベールが防ぐ。
「ち」
「ち」
やりづらい!
すぐさま距離を取る。兄さんも転移すると距離を置いて現れた。再び向き合いスパーダを構える。
分かってはいたけれど、強い。ただでさえ強かった管理人の能力をすべて得た兄さんだ、弱いわけがない。それでも七つの能力を得たホーリーカリスでも苦戦するなんて。
俺のホーリーカリスは平行世界で得たスパーダを蓄積したもの。それが七つ揃ったからこそ発現できた能力だ。だがあくまでそれは別の世界での出来事、記録でしかない。実体を得たわけではないので以前のように二刀流や複数出して戦うことも同時に能力を使うこともできない、仮の完成品。だから攻めきれないのもあるが、きっと真に完成していても今の状況は変わらなかっただろう。
この人は強い。それは変わらない。
「なんで、あんたはここまで戦おうとするんだ?」
「力を得るためだ」
「力……」
それはさきほども言っていた。力を得ると。
「どうして力を求めるんだ?」
普通、殺し合いに身を投じてまで力を求めたりしない。自分が殺されるかもしれないのにそこまでしようとするからには相当な理由があるはずだ。
「どうして求める、か」
俺はそれを知っている。でも兄さんは覚えていないはずだ。それはおかしい。兄さんは忘れているはずで、こうまで戦う理由はないはずなのに。
だっていうのに、次の一言は衝撃だった。
「知らんな」
「そんな」
知らないってどういうことだ、この人は訳も分からずこんなことをしてるっていうのか?
「そんなはずないだろ! 自分がなにをしてるのか分かってるのか? 殺し合いだぞ!? 人を殺すのも、自分が殺されるのも、理由もなくしてるっていうのか?」
それこそあり得ない。なんの得がある? リスクしかない。単純に殺し合いが好きなんて変人でもない限りそんなこと。
だがこんな発言をしていても兄さんの表情は変わらない。戦いが始まってもその顔つきが変わったことは一度もなかった。
「理由は知らん。だが、ずっと消えない思いがある」
そのずっと変わらなかった表情が、この時変わった。どこか遠くを見つめるような顔。
「なにかを、忘れている気がする」
「!?」
その一言に、心が震えた。
それって。
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