セブンスソード
208
事情を知ってみんなショックを受けている。俺だってそうだ。
スパーダと魂は一体だ。そのスパーダを破壊するということは魂を破壊するということで、そこに刻まれていたパーシヴァルの能力も破壊されたということか?
「そういうことかよ」
それしか思いつかない。兄さんを救うためにしたことがまさか兄さんとの繋がりを消してしまうなんて。
せっかく順調に進んでいたと思っていたのに。
最後はみんなで一緒になれると思ったのに、けっきょくこうなるのかよッ。
「さきほどからなにを話しているか知らんが妄言もそこまでだ。構えろ。お前たちのスパーダはすべて俺がもらってやる」
兄さんからすさまじい戦意がぶつけられる。相変わらずすごい。本気で睨まれて思わず竦(すく)みそうになる。
同時に、本当に俺のことを忘れているんだと実感した。
前の時見せてくれた優しい笑顔じゃない。敵に向ける、冷たい眼差しだ。
「向こうはやる気だぜ」
星都が隣に立つ。いつでも動けるようにエンデュラスを構える。
分かってる。でもこんなこと間違っている!
「ちょっと待ってくれ!」
俺は変えたかった。こんなことをするために世界を変えたんじゃない! 兄さんを救いたくて、俺はパーシヴァルを使ったんだ。
「兄さん、いや、魔堂魔来名。聞いてくれ」
押されそうになる眼光に食らいつくように俺も見る。
「本当に、覚えていないんだな?」
兄さんの顔を真っ直ぐと見て、聞いた。
「初対面だ」
「そうか」
確認した答えは変わらず俺の望んだものではなかった。この人は忘れてしまった。前の世界での出来事を。これまで自分がしてきたことを。
俺のためにしてきてくれたことを。
「分かったよ。なら魔来名と呼ぶよ。なってしまった以上は仕方がない。俺も覚悟を決める。いや、覚悟はもう決めていたんだよな」
「聖治君」
香織から声を掛けられる。
「ようやくやる気になったか」
「ああ、あんたと戦うよ」
「聖治君?」
力也から心配されるが俺は続ける。
「でも、それはあんたを倒すためじゃない。あんたを救うためだ!」
「救うだと?」
目の前にいるのは俺の家族であり仲間。たとえその人が敵として現れたとしても俺は諦めない。
「俺は決めたんだ、みんなと一緒に生き残ると。そのために守る覚悟を決めた」
かつて俺が犯した罪を思い出す。もうあんな思いをしないためにも今俺が取る選択肢は一つ。
最後まで信じ、続けること。
「信じないだろうけど、俺とあんたは昔兄弟だったんだ。昔と言っても未来での話だけどな」
「…………」
「あー、だからなんていうか、分かりやすく言うと~、未来の前世だ。……いや、いい。今のは忘れてくれ。とりあえず言いたいのは」
自分で言ってて混乱してきた。今は俺が下手くそだった。
「あんたに、思い出してもらいたいんだ」
「ふん」
兄さんは信じていない。当然だ、いきなりこんなこと言われても誰も信じない。それは今までも同じだった。
覚えているのは俺一人でいつも分かってもらうのに苦労していたな。なんだかもう懐かしく感じる。あの時はそれが辛くて挫けそうになったけど、でも今は違う。
今の俺は一人じゃない。
なにより、この人はその一人でも戦い続けてきたんだ。
「あんたは覚えていないだろうけれど俺は覚えている。あんたが俺にしてくれたことを」
感謝している。高速道路で助けに駆けつけて来てくれたことも、力也を助けてくれたことも。俺を管理人たちから守ってくれたことも。全部。
「たった一人で戦い続けてくれた。その旅路の終わりをこんな形で終わらせたりするものか。俺があんたを取り戻す。絶対に思い出させてやる。それが!」
叫ぶ。この人に対する思いを乗せて。
「あんたがしてくれた恩に返せる、俺のすべてだ! 魔来名、この戦いで俺たちの絆を取り戻す!」
「そんなものはない。あっても興味など無い。俺はただ力を求めるだけだ。剣を取れ。その世迷い言ごと切り捨ててやる」
「そうか」
言ったところで通じるものでもない。兄さんに引く気はない。
スパーダと魂は一体だ。そのスパーダを破壊するということは魂を破壊するということで、そこに刻まれていたパーシヴァルの能力も破壊されたということか?
「そういうことかよ」
それしか思いつかない。兄さんを救うためにしたことがまさか兄さんとの繋がりを消してしまうなんて。
せっかく順調に進んでいたと思っていたのに。
最後はみんなで一緒になれると思ったのに、けっきょくこうなるのかよッ。
「さきほどからなにを話しているか知らんが妄言もそこまでだ。構えろ。お前たちのスパーダはすべて俺がもらってやる」
兄さんからすさまじい戦意がぶつけられる。相変わらずすごい。本気で睨まれて思わず竦(すく)みそうになる。
同時に、本当に俺のことを忘れているんだと実感した。
前の時見せてくれた優しい笑顔じゃない。敵に向ける、冷たい眼差しだ。
「向こうはやる気だぜ」
星都が隣に立つ。いつでも動けるようにエンデュラスを構える。
分かってる。でもこんなこと間違っている!
「ちょっと待ってくれ!」
俺は変えたかった。こんなことをするために世界を変えたんじゃない! 兄さんを救いたくて、俺はパーシヴァルを使ったんだ。
「兄さん、いや、魔堂魔来名。聞いてくれ」
押されそうになる眼光に食らいつくように俺も見る。
「本当に、覚えていないんだな?」
兄さんの顔を真っ直ぐと見て、聞いた。
「初対面だ」
「そうか」
確認した答えは変わらず俺の望んだものではなかった。この人は忘れてしまった。前の世界での出来事を。これまで自分がしてきたことを。
俺のためにしてきてくれたことを。
「分かったよ。なら魔来名と呼ぶよ。なってしまった以上は仕方がない。俺も覚悟を決める。いや、覚悟はもう決めていたんだよな」
「聖治君」
香織から声を掛けられる。
「ようやくやる気になったか」
「ああ、あんたと戦うよ」
「聖治君?」
力也から心配されるが俺は続ける。
「でも、それはあんたを倒すためじゃない。あんたを救うためだ!」
「救うだと?」
目の前にいるのは俺の家族であり仲間。たとえその人が敵として現れたとしても俺は諦めない。
「俺は決めたんだ、みんなと一緒に生き残ると。そのために守る覚悟を決めた」
かつて俺が犯した罪を思い出す。もうあんな思いをしないためにも今俺が取る選択肢は一つ。
最後まで信じ、続けること。
「信じないだろうけど、俺とあんたは昔兄弟だったんだ。昔と言っても未来での話だけどな」
「…………」
「あー、だからなんていうか、分かりやすく言うと~、未来の前世だ。……いや、いい。今のは忘れてくれ。とりあえず言いたいのは」
自分で言ってて混乱してきた。今は俺が下手くそだった。
「あんたに、思い出してもらいたいんだ」
「ふん」
兄さんは信じていない。当然だ、いきなりこんなこと言われても誰も信じない。それは今までも同じだった。
覚えているのは俺一人でいつも分かってもらうのに苦労していたな。なんだかもう懐かしく感じる。あの時はそれが辛くて挫けそうになったけど、でも今は違う。
今の俺は一人じゃない。
なにより、この人はその一人でも戦い続けてきたんだ。
「あんたは覚えていないだろうけれど俺は覚えている。あんたが俺にしてくれたことを」
感謝している。高速道路で助けに駆けつけて来てくれたことも、力也を助けてくれたことも。俺を管理人たちから守ってくれたことも。全部。
「たった一人で戦い続けてくれた。その旅路の終わりをこんな形で終わらせたりするものか。俺があんたを取り戻す。絶対に思い出させてやる。それが!」
叫ぶ。この人に対する思いを乗せて。
「あんたがしてくれた恩に返せる、俺のすべてだ! 魔来名、この戦いで俺たちの絆を取り戻す!」
「そんなものはない。あっても興味など無い。俺はただ力を求めるだけだ。剣を取れ。その世迷い言ごと切り捨ててやる」
「そうか」
言ったところで通じるものでもない。兄さんに引く気はない。
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