セブンスソード

奏せいや

199

「そんなこと言ったら俺だってすごかっただろうが。人類最後の砦は俺だったんだぞ?」
「嘘みたいだけどほんとの話なんだよな」
「嘘みたいってなんだゴラァ!」
「いやー、まさかお前が司令官として出てくるなんて想像してなかったからさ」
「ほんとなんだよなぁ」
「にわかには信じられないけどね」
「まさか星都さんがねー」
「ちょっと信じられないよね」
「なんだよお前ら揃いも揃って! そんなに俺が司令官だったのが意外かよ!?」
「「「「「まあ」」」」」
「んだよくそー! って、言いたいとこだけど。まあそうだよなー。俺も自分のキャラは分かってるよ。実際柄じゃなかったしな」
「分かってるのか」
「当たり前だろ。俺だって必要だからしてただけだよ」
「まあなんだ、お前が司令官だったのはほんとのことだからな。それはすげえよ。お前に人を指示する才能があったなんて知らなかったしさ」
「あー、ないない。それはない。そうしたごちゃごちゃは部下に優秀なのがいてな。俺はほとんどシンボルみたいな存在だったよ。活躍してる場面もほとんど前線だったしな」
「それでも務まってはいたんだろ? よくやったよ」
「ま、貴重な経験ではあったよ。もうしたくないがな」

 そこで星都の声色が急に暗くなった。

「しない世界にしないとな」
「……ああ」

 世界は変わった。だからあの世界での出来事もないことになったわけだがそれでも俺たちの中では実際にあったこととして残っている。あそこにいた人たちの思いを俺たちは忘れてはいけない。
 そのことを思い俺と星都は表情が引き締まっていた。

「みんな、あれからの世界で頑張ってたんだよね。そんな中私だけがいなくて、なんだか申し訳ないな」

 俺たちの話に入ってこれない香織の目線が下がる。それだけじゃなく表情も悲しそうだ。

「なに言ってんだ、お前が体張って俺たちを守ってくれたから頑張れたんだろうが。順序が逆なんだよ」
「星都の言うとおりだ。香織が引け目を感じることなんてまったくない。むしろ誇っていいんだよ」
「うん。ありがとうね沙城さん。正直僕もそんなに活躍できた方じゃないから……」
「アホ。お前もそんなとこ気にしてんじゃねえよ」
「そうよ。あなたには感謝してる。言葉じゃ伝えられないほどね」
「香織さんはみんなの命の恩人なんだから。そんなこと気にしちゃ駄目ですよ」

 本人は気にしてるみたいだけど、星都も力也も、此方も日向ちゃんもそんなこと気にしていない。むしろ感謝しているくらいだ。俺たちがこうして生きていられるのはあの時香織が頑張ってくれたからなんだから。

「そういうことだ」
「うん。みんな、ありがとうね」

 ようやく香織から笑みがこぼれる。その顔を見れてほっとした。

「でも、それを言ったら聖治君もだけどね」
「はは。まあな」
「それでだ、話を戻すが未来じゃ俺たちの世界は悪魔たちのせいでめちゃくちゃにされた。人類もがんばってはいたがな、負けちまったよ。だが相棒が頑張ってくれたおかげで俺たちにはまだ猶予がある。こうして侵攻前の世界にいられるからな。でだ、問題はここからだ」

 普段のおちゃらけている様子とは違って今の星都は真剣だ。星都の雰囲気に当てられてみんなの顔も真面目になっていく。なんというか、星都は司令官なんて相応しくないみたいなこと言ってたけど、こうした姿を見ると選ばれた理由が分かる。

「なぜ人類は負けたのか。挙げればいろいろあるだろうが言ってしまえば力がなかったせいだ。それは俺たちスパーダが不足してたというのが理由でもある。あの戦いに勝つには七本のスパーダは必要だ。なんとしても」

 星都の拳が握り込まれる。彼の熱意と思いが伝わってくる。

 そこで香織が質問した。

「星都君、星都君の気持ちはよく分かる。私もそれは同じ。でもスパーダは七本集めただけじゃ駄目で、その能力を完全に使いこなすには相手のスパーダを吸収しなければならない。それはどうするの?」
「分かってる。スパーダにはリミッターが掛けられてるってな。実は未来でもスパーダのことをいろいろ研究してたんだ。どうやって作ったのかとかさ。分かったことは少ないがスパーダの能力は合わさって強化されるのではなくリミッターによって制御されているというのは裏付けが取れた。実はこれかなり重要なんだぜ? 要はリミッターさえ外せれば全段階の能力は使える」
「そっか。じゃあ、その方法は」
「それはこれから見つけ出す」
「うん、分かった」

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