セブンスソード

奏せいや

187

「魔卿騎士団幹部、ロハネス、ガンブルクだ。楽しい時間にしようぜ、なあ?」
「そうだな」

 戦意を引き締めたまま魔来名も同意する。

「待てよ、魔来名は傷だらけなんだぞ。そんなのフェアじゃないだろ。戦うのがそんなに好きなら怪我が治るのを待ったらどうなんだ!」
「ハ、くだらねえ」
「なに?」

 俺は言うがロハネスはつまらないと言いたげだ。

「そんなのそっちの事情だろ。戦場っていうのは出会ったその時にやり合うもんだ。勘違いするんじゃねえぞ。俺たちはスポーツマンじゃねえ、ウォーリアーだ。勝つことが至上であって正々堂々なんてお遊びなんだよ」
「それは」

 そうかもしれないけど、それじゃ相手を倒しても勝ったとは言えないだろ。

「手負いだっていうならそれは相手の落ち度ってことだ。それが分からないようなガキは黙ってろ」
「まったくだ、引っ込んでろ」
「お前なあ!」

 なんであんたにそんなこと言われなくちゃならないんだ! お前の心配をして言ったんだぞ!

「来い、お前の力も取り込んでやる」
「そう簡単にいくかな」

 管理人との三戦目。しかも今度は連戦だ。強がってはいるが魔来名が負っている怪我は深い。そんな状態で戦うなんてやっぱり心配だ。

 それでも魔来名は戦っているんだ。きっと、俺のために。

 理由は分からない。どうして傷だらけになってまで俺を守ってくれるのか。

 だけど、俺を守るために立つ背中を見て感じていた。自然と、胸に熱い思いがわき上がってくる。

「は!」

 さきに仕掛けたのはロハネスだった。魔来名の足下にいくつもの波紋が起こり、そこから槍が突き出してくる。すぐさま横に転がり込み回避する魔来名だったがその隙をすぐさに突いてくる。

「ち」

 一の突き、それを抜刀してなんとか防ぐ。好きな空間から攻撃してくるそれに気が抜けない。

「よくかわしたな、それか知ってたりするのか?」
「さて、どうだろうな」

 天黒魔で槍を払う。そのまま刃を返し攻撃した。ロハネスは槍を回し魔来名の刃を弾くと姿が消え離れた場所に現れる。

 空間転移。空間を操作して自在に位置を入れ替えている。それで槍を取り出したり自身を別の場所に移動するのがロハネスの戦法だ。前から知っていたが厄介だ。

 なにより接近戦において間合いが取れないというのは圧倒的に不利だ。

「さあ、いくぜ魔来名。せっかくだ、楽しくいこうぜ」

 そう言うと魔来名の周辺にいくつもの波紋が現れた。すぐに槍が襲ってくる!

 それを察して魔来名も走り始める。だが魔来名の進む先にも波紋は現れており魔来名めがけ槍が飛び出してきた。

 何本もの槍が同時に襲いかかる。何十本もの槍の突撃はまるで茨の道のようだ。前はもちろんのこと左右や上からだって襲いかかってくる。

 どうあっても刀じゃ防げない。

 だが、その刃は一本たりとも魔来名に当たることはなかった。

 突然突風が起こり無数とも思える斬撃が発生しすべての槍を切り刻んでいたのだ。

 絶対命中による完全防衛。狙った得物は外さない因果の輪が魔来名を無敵の要塞に変えている。

「ハッ」

 それを見てロハネスが引きつった笑いを浮かべる。驚きと喜び、それらが同居した瞳で魔来名の技を見つめている。

「なるほど、絶対命中か。そういう使い方をするとはな。能力も使い手次第か」

 この能力がある限りロハネスの攻撃は通らない。いくら攻撃をしたところで当たらないのは半蔵戦で実証済みだ。空間から自在に襲ってくる槍の集団も因果の前には意味がない。

 この勝負はもらった。

 しかし、そうではなかった。

 天黒魔を振るった後、魔来名の体から血が滲み出している。俺が縛った応急処置なんてもうほとんど役に立っていない。あの一瞬で何回も天黒魔を振るっているんだから解けて出血が始まっているんだ。

 もたもたしていれば出血多量で死んでしまう。

「ふん」

 それが分かっているから魔来名の表情にも余裕がない。厳しい目でロハネスを見つめている。

 これが万全だったなら魔来名が勝っていたのに。悔しい。

 これは時間勝負だ。倒れる前にロハネスを倒すか、それまで魔来名から逃げ切るか。そういう戦いになっている。

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