セブンスソード
181
無人の港町は不気味ではあるがさっさと抜けてしまおう。そしてみんなと合流すればこの状況だって変えられる。
俺は一度頷き、再び走ろうと力を入れた。
「どこまで行くつもりだ」
が、その声に出掛かった足が止まった。ゆっくりと振り返る。
「トイレは出て突き当たりを右だ。外に出て真っ直ぐじゃない」
「どうやって」
体は痛んでいたが全力で走っていたのに。もう追いついたのか?
魔来名はやれやれといった顔をしていたがその目が一気に鋭くなる。
「なぜ逃げる」
「当たり前だろ」
その質問を本気で言ってるなら正気を疑うぞ。
「あんたは俺の敵だろう。そんなやつのところにいられるか」
「ではお前が向かっている先はどうなんだ。仲間だという保証でもあるのか」
「あるさ」
俺は確信を込めて言う。
「町にはみんながいる。俺の友であり仲間が。そこにあんたを連れていくわけにはいかない。あんたの狙いは俺を人質にして町のみんなを倒すことだろ。そんなことは絶対にさせない!」
魔来名はスパーダの中で唯一セブンスソードに積極的な男だ。そんな男がみんなと会えば殺そうとするに決まっているしそこに俺がいればみんなの足を引っ張ってしまう。そんなんじゃ未来は変えられない。
みんなとした未来での約束を果たすためにも、俺は、ここで、この男を止めなくちゃならない。
俺はパーシヴァルを取り出し魔来名に向ける。
「お前の好きにはさせない、魔来名!」
体は痛むし傷だってまだ癒えていない。おまけに魔来名は強敵だ。普通に戦っても勝てる見込みは薄い。
だけど、だからって諦めてなんになる。こうなっては戦うしかない。
俺は諦めない意思とともにパーシヴァルの柄を握りしめた。
「そうか」
俺の言葉のあと魔来名は嘆息気につぶやいた。
「頑固と言うべきか、愚かと言うべきか。お前は本当に学習しないやつだ」
呆れているのがありありと顔に出ている。それもこいつなりの挑発なんだろう。首もとを片手で広げやれやれと顔を振っている。
「敵か味方か。そんなもの嫌というほど味わってきただろうに。もういい、なにも言うな。その抵抗がどれだけ無意味か教えてやる」
「やってみろ」
スパーダを構える。ここで負ければすべてが終わる。集中し、魔来名に全神経を注いだ。
魔来名の手に天黒魔が握られる。いつもの居合いの構えを取り、青い目が急に見開かれた。それと同時に走り出してくる。
間に合え! 魔来名の動きに合わせ俺もパーシヴァルを振るう。
く!
傷口から痛みが走る。満足に体が動かない。油断なんかなく俺ができる最速の一振りだった。
まずい。
だが、間に合わない。パーシヴァルの刀身が魔来名に当たるよりも前に魔来名は俺に接近していた。
斬られる!?
「があ!」
が、魔来名は俺を斬ることなく代わりに突き飛ばしていた。俺は地面に尻餅をつく。その直後金属同士がぶつかる音が聞こえてきた。
すぐに魔来名を見上げる。そこには天黒魔を抜刀した姿勢の魔来名と、俺の背後にいた管理人の姿だった。
「解せんな」
聞こえてきた声に背筋が凍った。
その声は聞き覚えがある。フード姿で顔を隠していたが誰だか分かる。
俺と同じくらいの体躯になにより地面には打ち落とされた投擲用のナイフ。それを使う管理人は一人しかいない。
「半蔵……」
投げナイフを得物とし、無数のナイフを扱う管理人。
「ほう」
フードを脱ぎ半蔵の顔が露わになる。墨の紋様が入ったスキンヘッドをした青年で精悍な表情は修行僧のようだ。一瞥(いちべつ)されただけで全身に緊張が走る。
「どこでその名を聞いたのか興味深いがそれよりも憂慮(ゆうりょ)すべきなのは君の行動の方だ、魔来名」
だが半蔵はすぐに目線を魔来名へと向ける。
「なぜ彼をかばった。理由如何によっては君も処罰の対象にせざるをえんが?」
そうだ、それは俺にも分からない。
俺は一度頷き、再び走ろうと力を入れた。
「どこまで行くつもりだ」
が、その声に出掛かった足が止まった。ゆっくりと振り返る。
「トイレは出て突き当たりを右だ。外に出て真っ直ぐじゃない」
「どうやって」
体は痛んでいたが全力で走っていたのに。もう追いついたのか?
魔来名はやれやれといった顔をしていたがその目が一気に鋭くなる。
「なぜ逃げる」
「当たり前だろ」
その質問を本気で言ってるなら正気を疑うぞ。
「あんたは俺の敵だろう。そんなやつのところにいられるか」
「ではお前が向かっている先はどうなんだ。仲間だという保証でもあるのか」
「あるさ」
俺は確信を込めて言う。
「町にはみんながいる。俺の友であり仲間が。そこにあんたを連れていくわけにはいかない。あんたの狙いは俺を人質にして町のみんなを倒すことだろ。そんなことは絶対にさせない!」
魔来名はスパーダの中で唯一セブンスソードに積極的な男だ。そんな男がみんなと会えば殺そうとするに決まっているしそこに俺がいればみんなの足を引っ張ってしまう。そんなんじゃ未来は変えられない。
みんなとした未来での約束を果たすためにも、俺は、ここで、この男を止めなくちゃならない。
俺はパーシヴァルを取り出し魔来名に向ける。
「お前の好きにはさせない、魔来名!」
体は痛むし傷だってまだ癒えていない。おまけに魔来名は強敵だ。普通に戦っても勝てる見込みは薄い。
だけど、だからって諦めてなんになる。こうなっては戦うしかない。
俺は諦めない意思とともにパーシヴァルの柄を握りしめた。
「そうか」
俺の言葉のあと魔来名は嘆息気につぶやいた。
「頑固と言うべきか、愚かと言うべきか。お前は本当に学習しないやつだ」
呆れているのがありありと顔に出ている。それもこいつなりの挑発なんだろう。首もとを片手で広げやれやれと顔を振っている。
「敵か味方か。そんなもの嫌というほど味わってきただろうに。もういい、なにも言うな。その抵抗がどれだけ無意味か教えてやる」
「やってみろ」
スパーダを構える。ここで負ければすべてが終わる。集中し、魔来名に全神経を注いだ。
魔来名の手に天黒魔が握られる。いつもの居合いの構えを取り、青い目が急に見開かれた。それと同時に走り出してくる。
間に合え! 魔来名の動きに合わせ俺もパーシヴァルを振るう。
く!
傷口から痛みが走る。満足に体が動かない。油断なんかなく俺ができる最速の一振りだった。
まずい。
だが、間に合わない。パーシヴァルの刀身が魔来名に当たるよりも前に魔来名は俺に接近していた。
斬られる!?
「があ!」
が、魔来名は俺を斬ることなく代わりに突き飛ばしていた。俺は地面に尻餅をつく。その直後金属同士がぶつかる音が聞こえてきた。
すぐに魔来名を見上げる。そこには天黒魔を抜刀した姿勢の魔来名と、俺の背後にいた管理人の姿だった。
「解せんな」
聞こえてきた声に背筋が凍った。
その声は聞き覚えがある。フード姿で顔を隠していたが誰だか分かる。
俺と同じくらいの体躯になにより地面には打ち落とされた投擲用のナイフ。それを使う管理人は一人しかいない。
「半蔵……」
投げナイフを得物とし、無数のナイフを扱う管理人。
「ほう」
フードを脱ぎ半蔵の顔が露わになる。墨の紋様が入ったスキンヘッドをした青年で精悍な表情は修行僧のようだ。一瞥(いちべつ)されただけで全身に緊張が走る。
「どこでその名を聞いたのか興味深いがそれよりも憂慮(ゆうりょ)すべきなのは君の行動の方だ、魔来名」
だが半蔵はすぐに目線を魔来名へと向ける。
「なぜ彼をかばった。理由如何によっては君も処罰の対象にせざるをえんが?」
そうだ、それは俺にも分からない。
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