セブンスソード

奏せいや

174

 今までは誰かに殺されてもその相手がパーシヴァルを使ってくれた、もしくは未来で星都たちが保管してくれていたから過去に戻れた。でもここで殺されたらパーシヴァルは誰が発動する?

 いない。ずっと使われず管理人の手持ちになる可能性が高い。なんとしてでも逃げないと。

 走りながら振り返る。すると背後には管理人がおり片手を前に突き出していた。

 彼女の前方、そこに光が集い一本の矢になる。彼女が指を鳴らすと俺に向かって飛んできた!

「ぬあ!」

 それをなんとかかわす。前のめりになった体をなんとか正して走っていく。

 再び振り返ってみれば今度は三本の矢が浮かんでいた。それらが発射されていく。

「く、そおお!」

 走る方向を左右に揺らし二本をかわす。だが最後の一本が俺の正面に来る。

「パーシヴァル!」

 俺は黄色いスパーダを取り出し最後の一本をたたき落とした。

「頑張るわね、無駄だけど」

 女は平然と話しながら歩いてくる。

 これがやつの能力なのか? 遠距離攻撃をしかけてくるタイプ? それなら逃げるよりも距離を詰め倒しにいくほうがまだ勝機があるか?

 悩む。逃げてもいつかは追いつかれるんだしそれならいっそここで戦った方が。

 いや、駄目だ。相手は魔卿騎士団の幹部、そんなので勝てる相手じゃない。

 体を反転させる。パーシヴァルを消し俺はまたも走った。

「そう、まだ抗う気」

 女の冷笑する声が聞こえてくるが今は無視する。あんなの挑発だ。

 相手は油断している。たぶんだがやろうと思えば一撃で俺なんか倒せるはず。なのにそれをせず俺を泳がせているということは処刑を楽しんでいるんだ。性格が悪い。でもそのおかげでまだ生きている。相手が油断している隙に逃げ切らないと!

 振り返れば女がまたも矢を空間に浮かべていた。今度は四本。俺の限界を測るかのように本数を増やしている。くそ、ほんとに性格悪いぞ。

 さすがに四本は避けきれない。

 俺は一本目をなんとかかわし二本目、三本目を剣で防ぐ。だがそのせいで体が傾き最後の矢で後ろに倒れてしまった。

「ちい」

 すぐに立ち上がりスパーダを構える。追撃はなかった。今撃てば殺せたはずなのに。やはり遊んでいる。

 悔しいが俺とこいつとではそれくらいの差があるんだ。なんとか凌いだが次はどうなるか。

 それか、戦うしかないのか? 逃げていてはじり貧だ。いつかは追いつかれる。

「…………」

 戦うしかないか。

 女は矢を浮かべた。発射するには指を鳴らす動作と音が合図になる。それを見逃さなければいける。集中しろ。相手の矢を凌いで、その隙に距離を詰める!

 俺は女をまっすぐに見据え、女は指を鳴らした。

 今だ!

 正面から来る光の矢を体をひねってかわす。俺は走った。女との距離は十メートルほど。走れば数秒で終わる距離。

 だがその数秒が長い。女も俺の接近をさせずと矢を放ってくる。一本一本、俺の進行を妨げようと放たれる。顔に迫る矢をかわし、胸に来た矢を切り落とす。さらに胸にきた矢を再度弾いた。あともう少し!

 遮るものはなにもない。矢を出すよりも俺がパーシヴァルを振るう方が早い。取った!

「がああ!」

 が、俺がスパーダを振るう直前、腕に激痛が走った。さらに右足にも激痛が走り俺は前のめりに転倒してしまった。

 いったいなにが? 痛む箇所を見る。

「な」

 そこには、矢が突き刺さっていた。片腕片足ともに矢が刺さっていてこれじゃ満足に立つことも剣を振るうこともできない。

 どうして刺さった? 矢は全部かわしたはず。新しく矢を出した様子もなかったのに。

「ふふふ。勇ましかったけど残念ね。もしかして勝てると思ったかしら?」

 女は俺を見下ろしている。刺さっていた矢は霧消したが傷口からは血が流れている。動かすだけでかなり痛いがなんとか立ち上がる。スパーダを片手で構え女を見つめる。

「あらあら、頑張るわね。勝てないと分かったのだろうし諦めるかと思ったけれど」
「うるさい! 俺は負けるわけにはいかないんだ。ここで死ぬわけにはいかないんだよ!」
「そう。興味ないわね」

 そう言いながら女は小さく両手を挙げた。歩き出すと俺に背を向け距離を取っていく。

「あなたがどうやって街からここまで逃げてきたのか、それは分からない。もしかしたらなにかあるのかもと思ってみたけれど」

 俺との距離が数メートルほど離れた場所で立ち止まる。振り返りざま矢を放ってきた。

「く!」

 足がこれではかわせない。矢に合わせて刀身を盾にする。

 が、そこで矢が曲線を描いた。

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