セブンスソード

奏せいや

169

 日向ちゃんがミリオットを両手で握る。刀身は光り輝き、彼女の表情も真剣になる。

「ミリオット!」

 彼女の声とともに放たれた光線が仮面男に迫る。仮面男はすぐにその場から離れるがそのため道が空いた。

「聖治さん!」
「ああ!」

 そこを通っていく。仮面男も俺を止めようとしてくるがその前に日向ちゃんの光線が動きを止めていく。

 通学路だった道を走っていく。校舎がだんだんと大きくなっていく。

 走る中で俺は思っていた。

 俺は多くの人の思いを受けてここにいる。この時代を生きる多くの人々。俺を守るために頑張ってくれた女の子。そして星都や日向ちゃん。亡くなった力也や此方だって今も俺の内にいる。

 全部の思いが一つになって、俺がいるんだ。

 胸の中で心が燃えている。みんなの思いが燃料となって俺の決意が燃え上がっていく。

 絶対に、この世界を変えてみせる!

 俺は水戸高校にたどり着いた。校舎自体はけっこうしっかり残っている。かなりぼろくなって窓ガラスは全部割れ廃墟になっているが形は残っているんだから御の字だろう。

 俺は教室に行くため昇降口に向かう。

 すると空から突然光の柱が落ちてきた。正面先に現れた光が剥がれ落ち中から人が現れる。

「間に合ったか」
「お前は!」

 それは、白いフードを被ったあの男だった。魔卿騎士団の幹部を苦もなく倒し、俺と香織を死なせた張本人。

「くそ。この時代にもいたのか」

 あとゴールは目前なのに、このタイミングで出てくるなんて。

「お前は何者なんだ? なぜ俺たちの邪魔をする!?」

 男の両手に光の剣が握られる。問答無用か。

「こい、グラン! カリギュラ!」

 俺も二つのスパーダを握り構える。こいつの能力は光を自在に操ることだ。しかも質量まで持っていて攻撃から防御まで行えるし、仮に傷を付けてもすぐに復元してしまう。

 攻撃、防御、速度、復元、すべてを兼ね備えていて間違いなく今までの敵の中で最強だ。勝てる気なんて全然しない。

 だが、対抗できる手段が一つだけ、ある!

「カリギュラ!」

 俺は此方のスパーダ、魔皇剣カリギュラを発動した。

 生命力を減衰させるこの能力なら防御も速度も関係ない。おまけに体を傷つけるのではなく生命力を直接奪うから回復もできない。これが通ればいける!

 カリギュラの発動を受けて周囲に生えていた雑草が一斉に枯れていく。緑色の葉が茶色に変色し萎れていく。

 それは白い男も同様でふらつくように足が一歩前に出た。よし、利いてる! 反撃に気を付けてこれを継続するんだ。俺はグランをいつでも振るえるように構える。 

「ふむ」

 カリギュラの力を受けて立っているだけですごい。俺もこれを受けたから分かるがとてつもない疲労感と虚脱感で立つことすら困難だというのに。白い男は下がっていた顔を上げると片手を胸の前に持ってきた。

 なんだ? なにをするつもりだ?

 その動作に集中する。

 白い男、その手に桃色の光が集った。

 まさか!

「こい、ディンドラン」

 光が弾け、そこから現れたのはピンク色の剣。香織のスパーダだった。

 それによりカリギュラの減退を回復される。

「ディンドラン? 香織!」

 あれは香織のスパーダだ。スパーダはその本人の魂そのもの。あの夜奪われてからずっと男の手にあったのか。

「香織を返せ!」
「ふん」

 白い男はディンドランと光の大剣の二刀流で近づいてくる。ゆっくり歩くが、瞬間俺の目の前に現れた。

「く!」

 振るわれる大剣にグランを合わせ、次のディンドランをカリギュラで防ぐ。

「く、そおおお!」

 許せない、こいつは許せない。みんなを襲い、香織まで奪われて。

 男の力に弾かれ後ろの下がる。男は光の剣をいくつも宙に浮かべると撃ち放ってきた。グランとカリギュラを使ってそれを打ち落としていく。

 が、直後またも瞬間的に現れた男の一閃にグランを払われしまう。

「しまった!」

 さらに地面から光の柱が二つ伸び俺の両腕が飲み込まれてしまう。腕が固定され、逃げられない。

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