セブンスソード

奏せいや

167

「聖治さんは一人で行ってください。……最後まで一緒にいられずごめんなさい」
「俺のせいだ、君が謝ることじゃ!」

 彼女が俺を見る。その顔は焦りを浮かべていたが俺を見ると小さく笑った。

「そこの車のところまで運んでくれますか」

 言われ俺は彼女に肩を貸し車道に放置されていた車まで運んだ。彼女は座り込み車体に背もたれるとアサルトライフルの弾倉を交換していった。

「私はここに残り敵の足止めをしてみます。聖治さんは早く」

 彼女は自分にできることを精一杯しようとしている。俺を守るために頑張ってくれていたのに俺のせいで負傷させてしまうなんて。

「ごめん」

 彼女には感謝してもしたりない。出会ってまだ間もないけれど彼女には本当に助けられたし救われた。

「謝らないでください。あなたは私たちの希望なんですから」

 なのに、彼女は俺の失態を責めなかった。それどころか痛みを堪えて笑っていた。

「私たちの未来を、お願いしますね」

 彼女の笑顔が俺を先へと促していた。

「行って!」

 俺は走った。彼女の意思をバトン代わりにして引き受ける。

 止まっちゃ駄目だ。進んで、進んで、絶対にたどり着いてやる。

 必死に走り続けていくうちにだんだんと見慣れた道になってきた。さらに視界の先には校舎が見えた。もう少しだ。

「そこまでにしてもらおうか」
「な」

 なのに、止めないと決めていた足が止まった。

 俺の先にはあの仮面の男が立っていた。片腕を失ってはいるものの残りの手で槍を持ち俺に狙いをつけている。

「どうしてここが」
「熱には敏感でね」

 は虫類みたいな見た目をしているが蛇と同じピット器官でもあるのか?

「なにやら人類がきな臭い動きをしていると報告を受けていたが君がそうとはな。どれだけ大層なことができるかは預かり知らぬが、ここで果てればどの道同じこと」

 仮面の奥にある瞳がするどくなったのを感じる。槍の先がにぶく光る。 

「剣を出せ。あの男から受け取ったものがあるだろう」
「ち」

 俺はグランを取り出した。星都から託された力也の形見。俺が使える唯一の力だ。これで目の前の敵を倒しパーシヴァルを取りに行かないと。もたもたしていれば他の悪魔も駆けつけてくる。
 くそ、時間がないっていうのに!

「では、勝負!」

 仮面の男が跳躍する。一足で俺たちの距離を詰め突進してきた。速い。俺もグランを構え迎え撃つ。

「ミリオットォオ!」

 それを白い光が強引に引き裂いた。

「ぬう!」

 俺の背後から放たれた光線が敵に命中する。仮面の男はなんとか槍で受けるも勢いに押される。地面に膝を突き俺の後ろにいる人物を睨みつけた。

「ごめんごめん、遅刻しちゃった」

 緊張した戦いの場面にまるで学校に出遅れたくらいの雰囲気で声が聞こえてくる。

 振り返る。そこにいた白い女性に目を奪われた。

「でも頑張って敵の大部隊足止めしてたんだから許してくれるよね? 聖治さん」

 白色の長い髪に胸元が開いた全体的に白い服。部分的にピンクをあしらったその女性の手には、白い聖剣である聖王剣ミリオットが握られていた。

 そのスパーダを持っている人は一人しかいない。

「もしかして、日向ちゃんか?」

 そう言うと彼女はにっと笑いピースした。

「あったり~」

 その仕草と明るさ、変わっていない。

 安神日向。俺が知っているのは一つ年下の女の子だったけどそれに比べて背が伸びている。小柄だったのが俺よりも少し小さいくらいだ。体つきも大人っぽくなって、服装のせいもあって目のやり場に困る。なのに浮かべる笑顔は少女のようだ。

「聖治さんマジ久しぶりじゃん。てか変わってないよね、当たり前だけど。なんか時間の流れを感じるから複雑だなー」
「いや、日向ちゃんは今もすごく魅力的だし、そんな心配する必要ないと思うけど」
「本当に!? もーう、聖治さんやっさしー」

 この時代でも彼女は変わらないな。それがなんだか懐かしくてなによりも嬉しく思う。

 こんな時代でも彼女は変わっていない。それにすごく安心感を覚えた。

「聖治さんが目を覚ますのずっと待ってたんだからね」
「ごめん。もっと早く目が覚めるべきだったのに」
「ううん、いいよ。こうしてここに来てくれたんだもん。っと、いろいろ話したいことはあるんだけど」

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