セブンスソード
166
「そのためには、七本のスパーダを同じ場所に集める必要がある」
「同じ場所」
この時代にはロストスパーダと呼ばれるものがある。紛失したスパーダ。そのせいで勢力は落ちた。団長もおらず悪魔との戦いもはじめから不利だったんだ。
「すべてのスパーダを集結させるんだ。お前は今までエンデュラス、グラン、ミリオット、カリギュラ、ディンドランと手に入れてきた。残りはあと一つだ」
残り? あと足りないスパーダと言えば。
「……天黒魔」
最後のスパーダにして前の沙城がロストスパーダと呼んでいたもの。
魔堂(まどう)魔来名(まきな)。最初の世界、そして五週目で俺たちを倒したあの男か。
「やつを倒せ。魔来名を。そして天黒魔を手に入れるんだ。七本集めて、セブンスソードを完成させろ!」
外で激しい音がしている。もう長くはもちそうにない。
「行け! パーシヴァルは俺たちの居場所にある」
「行きましょう聖治さん、こっちに裏口があります!」
「星都! 星都ぉお!」
女の子に手を引かれる。星都のそばにいたいのに離されのぞき穴も閉じる。扉越しに犬の雄叫びや爆音だけが伝わってくる。そこに星都がいるのに、せっかく会えたのに、もう姿を見ることもできない。
あいつは、この時代で出会えた一人の友達だったのに。
「信じてるぜ、相棒」
「星都ぉおおお!」
女の子に引かれたまま俺は司令部にあった隠し扉から通路を走っていた。
暗く狭い通路に俺たちの足音が響く。そこに混じって俺の泣き声が聞こえた。
「う、うう」
女の子に引っ張られていなかったら膝から崩れそうだった。涙が溢れて手で拭いていく。それでも泣きやまず、顔が下を向いてうまく走れない。悲しさや辛さが胸からわき上がってくる。
星都は俺を希望と呼んでくれたが、今のお前を救えないならなんの意味があるんだよ!
「……気持ちは分かります。人が死ぬのは辛いことです。でもここで下を向いていてはその人が報われません」
俺を見かねて女の子が励ましてくれる。今は一刻を争う。もたもたしている時間なんてない。
「その人のためにも、生きている私たちが」
「大丈夫だ」
俺は今一度強く目を擦る。熱がまだ残っていたが俺は顔を上げ正面を向いた。
「大丈夫。無駄になんかしない」
分かってる。今は弱音を吐く時じゃない。こんなところで悲しんでいてもなんにもならない。
託されたんだ、俺は。それを、叶えなくちゃならないんだ!
「無駄になんか、してたまるか!」
俺は女の子の手を放し自分から走り出す。突き当たりの扉を開け町の外へと出た。
「待ってください、場所が」
「場所なら分かってる!」
荒れ果てた町並みが広がるがここがどこだかは面影で分かる。俺は目的地へと走り出していた。
星都は言っていた、俺たちの居場所だと。そんなの一つに決まっている。
俺たちがいつも一緒にいて、いつも笑っていて、あいつが守りたかった楽しい日常って言ったら。
「学校だ」
俺と星都と力也。三人で過ごした時間は俺だけじゃない、星都だって守りたかった宝物だったんだ。
昔と同じじゃないだろうけれど、俺はみんなと過ごした居場所へと走っていく。
「聖治さん、上!」
顔を上げる。そこには一匹の悪魔が飛んでおり俺に襲いかかってきた。
「あぶない!」
女の子に背中を押される。それで悪魔の攻撃をかわせた。
不発に終わり着地した悪魔に女の子が銃弾をたたき込んでいく。頭や胴体にいくつも受けるのにそれでも歩いてくる。女の子との距離が近づいたところでようやく倒れた。
「ありがとう、助かったよ」
走ることばかりに気を取られ周りへの注意を怠っていた。もっと気を付けないと。
「大丈夫か?」
彼女は後ろを向いており打ち倒した悪魔を見つめていた。その彼女がその場に座り込む。
「え」
慌てて駆け寄り見てみれば彼女の足から血が流れている。
「すみません。よりにもよって足を負傷するなんて」
「そんな」
俺のせいだ。俺を庇った時に敵の攻撃を受けたんだ。
「早く治療しないと」
「そんな時間はありません」
彼女は上着を脱ぐとふとももをきつく縛っていく。
「同じ場所」
この時代にはロストスパーダと呼ばれるものがある。紛失したスパーダ。そのせいで勢力は落ちた。団長もおらず悪魔との戦いもはじめから不利だったんだ。
「すべてのスパーダを集結させるんだ。お前は今までエンデュラス、グラン、ミリオット、カリギュラ、ディンドランと手に入れてきた。残りはあと一つだ」
残り? あと足りないスパーダと言えば。
「……天黒魔」
最後のスパーダにして前の沙城がロストスパーダと呼んでいたもの。
魔堂(まどう)魔来名(まきな)。最初の世界、そして五週目で俺たちを倒したあの男か。
「やつを倒せ。魔来名を。そして天黒魔を手に入れるんだ。七本集めて、セブンスソードを完成させろ!」
外で激しい音がしている。もう長くはもちそうにない。
「行け! パーシヴァルは俺たちの居場所にある」
「行きましょう聖治さん、こっちに裏口があります!」
「星都! 星都ぉお!」
女の子に手を引かれる。星都のそばにいたいのに離されのぞき穴も閉じる。扉越しに犬の雄叫びや爆音だけが伝わってくる。そこに星都がいるのに、せっかく会えたのに、もう姿を見ることもできない。
あいつは、この時代で出会えた一人の友達だったのに。
「信じてるぜ、相棒」
「星都ぉおおお!」
女の子に引かれたまま俺は司令部にあった隠し扉から通路を走っていた。
暗く狭い通路に俺たちの足音が響く。そこに混じって俺の泣き声が聞こえた。
「う、うう」
女の子に引っ張られていなかったら膝から崩れそうだった。涙が溢れて手で拭いていく。それでも泣きやまず、顔が下を向いてうまく走れない。悲しさや辛さが胸からわき上がってくる。
星都は俺を希望と呼んでくれたが、今のお前を救えないならなんの意味があるんだよ!
「……気持ちは分かります。人が死ぬのは辛いことです。でもここで下を向いていてはその人が報われません」
俺を見かねて女の子が励ましてくれる。今は一刻を争う。もたもたしている時間なんてない。
「その人のためにも、生きている私たちが」
「大丈夫だ」
俺は今一度強く目を擦る。熱がまだ残っていたが俺は顔を上げ正面を向いた。
「大丈夫。無駄になんかしない」
分かってる。今は弱音を吐く時じゃない。こんなところで悲しんでいてもなんにもならない。
託されたんだ、俺は。それを、叶えなくちゃならないんだ!
「無駄になんか、してたまるか!」
俺は女の子の手を放し自分から走り出す。突き当たりの扉を開け町の外へと出た。
「待ってください、場所が」
「場所なら分かってる!」
荒れ果てた町並みが広がるがここがどこだかは面影で分かる。俺は目的地へと走り出していた。
星都は言っていた、俺たちの居場所だと。そんなの一つに決まっている。
俺たちがいつも一緒にいて、いつも笑っていて、あいつが守りたかった楽しい日常って言ったら。
「学校だ」
俺と星都と力也。三人で過ごした時間は俺だけじゃない、星都だって守りたかった宝物だったんだ。
昔と同じじゃないだろうけれど、俺はみんなと過ごした居場所へと走っていく。
「聖治さん、上!」
顔を上げる。そこには一匹の悪魔が飛んでおり俺に襲いかかってきた。
「あぶない!」
女の子に背中を押される。それで悪魔の攻撃をかわせた。
不発に終わり着地した悪魔に女の子が銃弾をたたき込んでいく。頭や胴体にいくつも受けるのにそれでも歩いてくる。女の子との距離が近づいたところでようやく倒れた。
「ありがとう、助かったよ」
走ることばかりに気を取られ周りへの注意を怠っていた。もっと気を付けないと。
「大丈夫か?」
彼女は後ろを向いており打ち倒した悪魔を見つめていた。その彼女がその場に座り込む。
「え」
慌てて駆け寄り見てみれば彼女の足から血が流れている。
「すみません。よりにもよって足を負傷するなんて」
「そんな」
俺のせいだ。俺を庇った時に敵の攻撃を受けたんだ。
「早く治療しないと」
「そんな時間はありません」
彼女は上着を脱ぐとふとももをきつく縛っていく。
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